古物
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古物(こぶつ)とは、既に一度消費者によって利用されたものが何等かの理由により手放され、再び売りに出されている工業製品などのこと。「中古(品)」(ちゅうこ(ひん))やセコハン(secondhand)ともいう。
販売はされたが、一度も利用されずに再び売りに出されたものは俗に「新古(品)」(しんこ(ひん))という。反対語は工場から出荷されたままの状態であり、メーカーによる品質保証のついた状態で販売される新品である。
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[編集] 法定義
法律上の古物は、古物営業法第2条で次のように定義される
- 一度使用された物品(鑑賞的美術品及び商品券、乗車券、郵便切手その他政令で定めるこれらに類する証票その他の物を含み、大型機械類(船舶、航空機、工作機械その他これらに類する物をいう。)で政令で定めるものを除く。以下同じ。)若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたものをいう。
古物については、施行規則第2条で次のような分類がある
- 美術品類(書画、彫刻、工芸品等)
- 衣類(和服類、洋服類、その他の衣料品)
- 時計・宝飾品類(時計、眼鏡、宝石類、装身具類、貴金属類等)
- 自動車(その部分品を含む。)
- 自動二輪車及び原動機付自転車(これらの部分品を含む。)
- 自転車類(その部分品を含む。)
- 写真機類(写真機、光学器等)
- 事務機器類(レジスター、タイプライター、計算機、謄写機、ワードプロセッサー、ファクシミリ装置、事務用電子計算機等)
- 機械工具類(電機類、工作機械、土木機械、化学機械、工具等)
- 道具類(家具、じゅう器、運動用具、楽器、磁気記録媒体、蓄音機用レコード、磁気的方法又は光学的方法により音、影像又はプログラムを記録した物等)
- 皮革・ゴム製品類(カバン、靴等)
- 書籍
- 金券類(商品券、乗車券及び郵便切手並びに古物営業法施行令 (平成七年政令第三百二十六号)第一条 各号に規定する証票その他の物をいう。)
ここでは、一般に中古品市場が形成されている、主に上記の古物(金券類は除外)に加え、中古住宅などの建築物についても触れる。
[編集] 概要
これらの工業製品は、過去に一度、誰かしら手によって利用されていた事が在るため、新品に比べて汚れや傷・磨耗等が見られ、製品の品質にやや難があるものの、一定の機能が問題無く動作する物とされる。主に新品の製品がある程度高価な耐久消費財などでは、中古品の製品を扱う市場が存在している。これらを専門に扱う業者は一般に古物商と呼ばれる。
ある程度の機能的な欠陥(磨耗や汚損・風化によるもの)が見られる場合もあるが、特に高価な耐久消費財ともなると、新品では手が出なくとも、機能的な問題が在るために値引きされて販売されているこれら中古品なら、何とか買える場合もあるため、これを好んで利用する消費者まで見られる。
近年では特に資源の枯渇や環境保全といった理由から、循環型社会の形成が求められ、再使用やリサイクルが重要視されているが、それ以前にも高価な消費財を安価に購入できるとして、家電製品や自動車(中古車)、または住宅(中古住宅、ただし古物営業法の古物ではない)といった物を扱う市場が存在している。大きなものでは、ほとんど法人が対象であるが、中古トラックや中古バスのほか、法律上の古物ではないが、中古航空機、中古船舶などの市場も存在する。
なおコンピュータ等の精密機械製品では、一定時間の動作(エイジング)をさせないと発現しない初期不良の問題もあるため、概ね一ヶ月前後の使用では問題を起こさなかった中古品の場合は、新品よりも不良率が低いケース(勿論、使用環境にもよる)も見られ、特に摩滅が起き難い精密機械に関しては、短期間使用された中古品に限り、新品と然程区別されない・むしろ一部では評価される場合も見られる。
[編集] 新古品
新古品は、まだ一度も使用されていない工業製品では在るが、一度販売されているというやや複雑な事情が絡む。一部では事故品と呼ばれる、運送中の問題によってキズ・へこみ等の問題が発生した物も、これら新古品の範疇で扱われたり、店頭で消費者にデモンストレーションに展示されていた物も新古品として扱われる場合もあるが、厳密に云えばこれらは新古品の範疇としては扱われない。前者は事故品、後者は展示品と呼ばれ、予め断った上で未開封の新品よりも安い価格で販売される。この場合、新品同様のメーカー保証が付けられることが多い。
厳密な意味での新古品は、一度は納入・開封されたものの、何等かの理由(契約破棄など)ですぐに梱包されなおされたり、購入して梱包状態のまま保管していたが、使われることも無く不要品として売却されりした物などである。とりわけ、自動車で販売店(ディーラ)が販売ノルマ達成のために、試乗車などの名目で自社登録を行った車両が、走行距離数十キロの新古車として中古車市場に流れることが多い。
これら新古品では、動作されないまま専用の倉庫ではない場所に保管されている場合が多く、また潤滑油や使用期限が設定されている部品などの劣化が見られる場合もあるため、何等かの問題が発生する可能性がある。場合によっては付属品に不足がある場合もあるため、購入には注意が必要である。
[編集] 広義の中古
その一方で、近年では一種のファッションとして、古い工業製品の持つ意匠や、ある程度使い古された風合いが好まれる様式があり、製造中止となった自動車をスクラップから再生するレストア産業や、着古された衣服を売買する古着商もある。
また使い古された生活民具なども、アンティークの範疇で人気があるが、これは幾人もの消費者の手を経ている事もあり、あくまでもアンティークの範疇として人気が在るため、中古とは言われない場合もある。
[編集] 社会と“中古”品
中古品は上に挙げたとおり、ある程度高価な工業製品であれば、一定の市場が存在するが、中には様々な理由により、中古市場が上手く機能せず、全般的に低調な市場も存在する。
[編集] 中古白物家電
例えば冷蔵庫・洗濯機などの白物家電であるが、これらは食品を収めたり、洗濯によって肌着などの直接肌に触れる衣服を洗う事もあるため、(気分的・感覚的な問題ではあるが)中古を嫌う人もあり、またその一方で、機能的に不備があった場合に食中毒が発生したり、洗濯物がきちんと衛生的な状態に洗い上がらないといった問題も出るため、中古白物家電は人気が無く、このため白物家電を取り扱う業者も少ない。
一方で、家電リサイクル法の施行以来、これら白物家電を含む大型の・または廃棄に際して環境負荷の大きい家電製品の処分には消費者負担(リサイクル料金+収集運搬料金)が必要となったため、例え少額でも中古品として買い取り価格が付くのであれば売却したい、とする傾向も見受けられ、このため全般的に大型家電や白物家電では、商品(中古品)が市場にだぶつく傾向が見られる。
[編集] 中古パソコン
またパーソナルコンピュータのような進歩の激しいものでは、中古として出回る頃には性能面で如何ともし難い能力的な不足が見られる事もあり、やはり中古パソコンを求める市場が限定される。しかしながら、以下のようなニーズも存在している。
- いわゆる「2台目」として(予備機やバックアップ用途、あるいはファイルサーバーなどとして)
- 初心者がインターネットに接続したり、Eメールを活用する
- 子供や高齢者向けにパソコンに慣れ親しんでもらう(壊れても構わない・惜しくない)
これらでは価格も安い中古パソコンで充分というニーズもある。中古パソコン市場については、国内外を含め、年間約200万台が輸出・販売されている。しかしながら、左近の新製品の価格低下により、旧来の製品の販売価格を考慮して中古価格を決定すると、逆に中古品の方が割高になってしまう逆転現象も一部起こり始めている(ただし、現在のPCには搭載されていない機能などを求めて、最新型よりかえって高くついてでも、中古を求めるマニアも存在する。)。
世界的には、中古パソコン市場は年々拡大をしており、当面その需要は増加するものと見込まれている。日本からアジア方面への輸出も堅調な模様だ。米Gartnerの2005年のレポートでは、米国から海外に売られた中古パソコンは、2004年度で約1億5250万セットに上り、世界中のパソコンの1割が二次利用の物だという(CNET記事)。
しかし旧式パソコンの処理性能の低さは現行機種と比較して如何ともし難い格差があり、特にサポートの終了したOSを搭載したパソコンの利用価値は、特に先進国に於いて一部の利用者以外には、ほとんど見出されない。加えて最新OSの導入には性能的に対応できない場合も多い。このため中にはOSのアップデートを行わずに、古いパソコンを使い続ける向きもあり、これらはセキュリティホールが放置される事から、ユーザーの気付かない間に乗っ取られる危険性があり、「ゾンビパソコン」とも呼ばれて、コンピュータセキュリティ上の問題にもなっている(→DDoS攻撃)。
ただ、発展途上国などでは最新のパソコンは高価で入手し難い事もあり、先進国で廃棄されたような旧式なパソコンを、輸入して販売したり、あるいは教育方面で使ってもらおうと無償配布する活動をしているNGO慈善団体もみらる。またLinuxやFreeBSDのような、無償で利用でき、旧式パソコン上でも問題なく動作するOSを利用すると言った動きもある。
- これらでは上に挙げたセキュリティホールの放置による被害拡大を、OSを入れ替えてきちんと保守することで、食い止めたいと言う考えもあるようだ。特にパソコン用OSとして圧倒的シェアを誇るMicrosoft Windowsでは、それを狙う攻撃も必然的に多くなる部分があり、中古パソコンの利用に際しても、Windows以外のOS乗換えと並行して行われる傾向も見られる。ただ、それらOSは技術者や技術愛好者のためのOSでもあるという側面も強く、乗り換えには相応の技術知識を必要とし、また事実上の標準として数多いWindows用のアプリケーションソフトウェアやデバイスドライバが使えなくなるデメリットも見られる。この場合には、専門の技術者がOSの導入を行って設定し、一般のユーザーはX Window System上でGUIを使って「インターネットやEメール、またはOpenOffice.orgのワープロ・表計算を利用」して、実質的に「MS Windowsと同じような感覚で利用する」という形になる。
また、先進国でも一部市場がマニアなど向けに存在しており、8Bit/16Bit時代の極めて古い物や、ノートパソコンやPDA・ポケットコンピュータに関しては、特定の機種に熱烈なファンがいる場合もあり、こちらでは当時の販売価格に迫る程の高値取引市場も存在しており、そのような人気機種では、販売価格は堅調である。
[編集] 自動車・住宅等の耐久消費財
逆に古くから、自動車と住宅は、簡単に買う事が出来ない価格であるため、現在でも極めて活発に売り買いされている。ただ住宅に際しては、日本に於いては地価の下落が起きた事から価格の低下が見られ、特に地価の高騰期に住宅を購入した場合では、購入価格よりかなり安い値段でしか売れない事もあって、現在それらを所有している人が手放したがらないなどの問題も見られる。
[編集] 中古品の問題点
中古品の売買に際しては、機能面や法が絡んで問題が発生するケースがある。
[編集] 中古自動車
事故歴の隠匿、整備手帳の処分、走行距離計の巻き戻しなどさまざまな問題がある。
- ※詳細は中古車を参照
[編集] 中古ゲームソフト
コンピュータゲームのソフトウェア等といった著作物では、それらの中古販売によって発生する著作利用権に絡む金銭授受が行われない。この取引により新品の売り上げが落ちると言う主張がコンピュータソフトウェア著作権協会などによって行われていた。1998年1月にコンピュータソフトウェア著作権協会・コンピュータエンターテインメントソフトウェア協会(当時)・日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会は共同で「違法中古ゲームソフト撲滅キャンペーン」を開始し、コンピュータエンターテインメントソフトウェア協会会員各社のソフトには「NO RESALE」マークが添付されるようになった(2002年5月に廃止)。
なおこの問題に際して、有志の弁護士・法学者らが「中古ソフト問題研究会」を結成、同研究会は疑問を提示した。また中古ゲームソフトを扱う販売店の多くは新品のゲームソフトも販売しているが、この中古ゲームソフト販売に不満を持ったソニー・コンピュータエンタテインメントが商品の卸売りで圧力を掛けた際に、公正取引委員会が同社に「販売店に中古品取り扱いをさせないことをやめること」を含めた排除勧告を行っている。
また、これと並行してカプコンなどメーカー7社が東京地裁と大阪地裁で中古ゲームソフト販売店に対する訴訟を起こしていたが、この裁判は2002年4月に最高裁判所で「中古ゲームソフトの販売は著作権法上の頒布権(第26条)の侵害に当たらない」とするメーカー側全面敗訴の判決が下され、決着した(2003年7月に閣議決定された知的財産推進計画ではこの最高裁判決を立法により破棄することを目指す項目が盛り込まれたが、一般国民や学識経験者の反対意見が多かったことを受けて2005年6月の第3次改訂時に当該項目は削除されている)。
諸外国の著作権法では一旦、適法に販売された物に対して引き続き頒布権を行使することが出来ない「権利の消尽」原則が明文で定められており、日本でも前述の裁判が係争中であった1999年6月の著作権法改正で新設された譲渡権(第26条の2)では同様の規定が置かれている(同条第2項以下)。頒布権は前述の裁判が係争中であったことから「権利の消尽」原則の明文化が見送られたが、最高裁判決は頒布権も明文の規定が存在するか否かに関わらず「権利の消尽」原則が適用されることを宣言したものである。
[編集] 中古電気製品
電気用品安全法の施行される2006年4月以降、「PSEマーク」の付いていない中古電気製品や電気楽器などの販売が不可能になる。このため、中古品業界の壊滅的な打撃が懸念される(PSE問題)。
対策として、
- 一定期間レンタル(貸し出し)する形式を取り、レンタル期間終了後に無償で譲渡する(期間途中の解約返却も可能)
- 中古品販売店自身が電気用品安全法上の「製造事業者」となって、中古品を検査した上で「PSEマーク」を添付して販売する
などの方策が検討されている。ただし、後者については商標権や不正競争防止法の問題が指摘されている。
[編集] 中古パソコン
中古電気製品同様の、上記電気用品安全法の施行に伴う問題のほか、パソコン特有の次のような問題点がある。
- 中古パソコンでは、付属のCDメディアが紛失していたりする場合、ソフトウェアの使用ライセンス上の問題が出る場合がある。(ソフトメーカーが自社の売上げ増になるように使用ライセンス権の転移を認めていない場合もある)
- リカバリー(メーカー出荷時への初期化)を、特定のキーを押しながら電源を入れるなどの特殊なキー操作で、内蔵ハードディスクドライブの領域の一部から行うタイプ(ハードディスクリカバリー)の場合、パソコンメーカーによるリカバリー用CDメディアの販売が既に中止されている機種が多い。この場合、ハードディスクドライブの交換時に問題を生じることとなる。
- 中古パソコンを購入してOSをバージョンアップした場合、CD-R書き込みソフトやDVD再生ソフトなどの初期付属ソフトウェアの対応(パソコンメーカー、あるいはソフトウェア開発元による対応バージョンの無料送付や優待販売ができない)などの問題もある。
- 対応するメモリボードやビデオカードなどの部品や周辺機器の入手が難しい、あるいは機能や容量の割に割高になる場合がある。
- デスクトップパソコンで、純正モニタと本体の接続に特殊なコネクタを使用している場合、本体のみだからといって市販ディスプレイを購入しても、流用出来ない場合がある。
- ノートパソコンでは、バッテリーが劣化している可能性が高く、メーカー補修部品扱いで購入すると本体の中古売価よりも高い場合すらある。
- CD-ROMドライブを内蔵しないノートパソコンの場合、その機種に付属のリカバリーCD-ROMが利用可能な純正などの外付けCD-ROMドライブが入手困難な場合があるなど、使えるようにするための技術的な敷居が高い。
- 各種電気的端子の劣化はパソコンに限らないが、外部接続機器の利用が前提となるパソコンでは致命的な問題となる。
なおメーカーによっては修理扱いでプリインストール状態(工場出荷状態とも)にハードディスク内のデータを書き換えるサービスを行っているところ(大抵は有償)もある。メーカー製パソコンでは、そのような初期化サービスの有無も、中古パソコンの購入前に確認したほうが良いだろう。
[編集] 中古住宅
構造物としての住宅自体の劣化のほか、不動産取引特有の問題点がある。
- 建物自体の経年による狂い、劣化。特に水周り関係の劣化に注意が必要。
- 地盤の不等沈下など。
- 市街化調整区域にある物件の場合、再建築できないことがある(分家住宅の許可で建築、店舗の許可で建築されていたが、実際には住宅として利用されていた、道路に接している部分の縮小など)。
[編集] 関連項目
- 古物商
- 競売 - インターネットオークション
- 古本
[編集] 外部リンク
- 中古ゲームソフト販売問題に関する弁護士の藤田康幸によるページ。合法判断に関するニュース記事へのリンクを含む。