商社
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商社(しょうしゃ)とは、輸出入貿易ならびに国内における物資の販売を業務の中心にした、商業を営む業態の会社である。幅広い商品・サービスを取り扱う総合商社と特定の分野に特化した専門商社に区分される。広義の卸売業である。特に総合商社は日本特有の形態とされる。商事会社のことを指す場合もある。
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総合商社
総合商社は「ラーメンからミサイルまで」といわれるように取扱商品・サービスが極めて多い点で、日本独自の業態であるといわれている。ただし、商社冬の時代を経て、旧来のような単純な貿易・販売や商社金融業務のほとんどは現在では子会社・関係会社に移管されており、国内・海外企業への出資ならびに経営管理、経営層を含めた人材の派遣、インベストメントバンクやベンチャーキャピタル、ITの蓄積やシステム開発など、金融持株会社に近い機能が総合商社本社の業務内容となってきている。また、これらの機能を活かして、自ら新規事業を立ち上げることも多い。
現在、一般的・慣習的に「総合商社」と呼ばれているのは下記の5社ないし7社である。
- 三菱商事 - 売上高 19,067,153百万円:「商事」
- 三井物産 - 売上高 14,885,728百万円:「物産」
- 伊藤忠商事 - 売上高 10,473,885百万円:「伊藤忠」
- 住友商事 - 売上高 10,336,265百万円:「住商」
- 丸紅 - 売上高 8,686,532百万円:「丸紅」
- 双日 - 売上高 4,972,059百万円、2004年4月1日に旧·ニチメンと日商岩井が合併して誕生。「双日」
- 豊田通商 - 売上高3,945,319百万円。2006年4月1日にトーメン - 売上高 1,810,844百万円を合併した。新社名:豊田通商。「豊通」
- 豊田通商の合併後の売上高は双日を超える5兆円規模を予定している。
- 合併後も豊田通商の自動車関連:非自動車関連の売上比率は65:35と、引き続きトヨタグループ内の専門商社の性格が強い。
- 日本貿易会において、慣習的に総合商社各社の社長が副会長(そのうち1人が持ち回りで会長)に就任しているが、豊田通商の会長が2006年4月の役員改選で副会長に就任した。このことから、総合商社に分類されていたトーメンを合併した豊田通商を、業界としても総合商社の一員として認定したという見方もできる。
- 他方で、マスコミでは依然「大手商社6社」(朝日新聞)、「大手商社五社」(日経新聞)という表現がほとんどであり、豊田通商を総合商社とみなしている記事はほとんどない。また、日経新聞の記述を見ても、双日すら大手総合商社から除外する方向にある。
- 上述の総合商社の業務内容を勘案するとき、総合商社は専門商社と比較した場合に投資活動の結果として子会社・関連会社数がかなり多くなるが、豊田通商の子会社・関連会社数(合計360社:旧トーメンの子会社・関連会社156社を含む)は総合商社各社と比較してかなり少なく、この面でも豊田通商は引き続き専門商社のカテゴリに分類されると見られる。(いずれも2006年3月期)
- 三菱商事:550社
- 三井物産:582社
- 伊藤忠商事:651社
- 住友商事:878社
- 丸紅:555社
- 双日:597社
- トーメンが総合商社に分類されていたことから、それを合併した豊田通商も総合商社になったという見方もあるが、以上の根拠により同社は引き続きトヨタグループの中核専門商社であるという見方が一般的と考えられる。
※売上高は2006年3月期・連結
「総合商社」「○大商社」という表記について
そもそも「総合商社」という名称は上記のように「専門商社」との対比で使われる用語であり、どこまでの商社を総合商社に含めるかという点に関しては多分に慣習的な部分が大きい。1970年代前半までは三菱商事、三井物産、住友商事、伊藤忠商事、丸紅(丸紅飯田)、日商岩井(日商)、トーメン、ニチメン、兼松江商、安宅産業の10社を「総合商社」「10大商社」と呼ぶことがほぼ一般的であったが、その後の安宅産業破綻、兼松の専門商社転換、日商岩井・トーメン・ニチメンの合理化(不採算部門閉鎖)ならびに合併など、特に下位商社の動きが激しくなったために、現在ではどこまでを「総合商社」と呼ぶかについては諸説がある。
トーメンを合併した豊田通商に関しては上述のとおりの状況となっているため、これを除外した「6大商社」あるいは双日も外した「5大商社」というのが現時点では最も一般的な表現と思われる。しかし、歴史的な経緯を考慮すると双日・豊通を含めた「7大商社」とするのが妥当という考え方もある。
就職活動をする学生達の間では丸紅までの上位5社を指す「5大商社」という表現が根強くなされている。一部学生の間では、いわゆる「勝ち組」商社を指す表現として丸紅も除いた「4大商社」という表現や、財閥系3社の「3大商社」、商事・物産の「2大商社」という表現すらある。従って、「○大商社」という言葉の妥当性については異論が多いというのが現状である。
なお、日本語の表現として「○○の総合商社」という表現も使われる。(例:「疑惑の総合商社」「家庭用品の総合商社」)これは、「○○」に該当するものはすべてそろっているといった程度の比喩で、例として挙げたうち後者は上記の「総合商社」の定義から言って矛盾した表現となっている。
成立の経緯による分類
- 財閥系:三菱商事・三井物産・住友商事
- 商事・物産は戦前から存在し、財閥解体による分割を経て再統合されたが、住商は戦後になって設立されたもので比較的歴史が新しい。
- 関西五綿:伊藤忠商事、丸紅、東洋棉花(のちにトーメン→豊田通商)、日本棉花(→ニチメン→双日)、江商(→兼松江商→兼松)
- 繊維商社から発展した上記5社を指す。繊維製品は戦前から日本の重要な輸出品であり、棉花などの原料の輸入も活発に行われていたので、これらの商社は充実した海外ネットワークと貿易に対応できる人材・ノウハウを保有していた。戦後、その特徴を活かして高度成長期に金属・機械・エネルギー・化学品などの取り扱いを伸ばし、また、その分野の専門商社を合併して総合商社化した。
- その他:日商岩井(→双日、旧鈴木商店出身の日商と鉄鋼商社の岩井が合併)、安宅産業(鉄鋼商社系)
かつての総合商社
- 兼松 - 1990年代半ばの債務免除後に専門商社に転換。IT・食料など主要4分野に特化。
- 安宅産業 - 1977年に破綻し、伊藤忠商事に吸収合併された(安宅産業破綻)。
- 鈴木商店 - 戦前には三菱商事・三井物産以上の売上高を誇ったが、1927年に昭和金融恐慌のあおりを受けて破綻。貿易部と傘下の日本商業会社が独立して日商となり、これが後に岩井産業と合併して日商岩井となった。日商岩井はさらにニチメンと合併し、現在の双日につながる。
総合商社と次期主力戦闘機
総合商社と次期主力戦闘機は切り離すことができない関係にある。ダグラス・グラマン事件で知られるように、現在の航空自衛隊の主力戦闘機であるF-4 (戦闘機)92機、F-15 (戦闘機)203機の機種選定時は、日商岩井(現:双日)がメーカーの代理店となっていた。2009年度に退役が始まるF-4の後継機をめぐり次の各社がそれぞれ防衛庁・航空自衛隊に売込みを図っている。
- 三菱商事 - F-22(ロッキード・マーチン・アメリカ)
- 住友商事 - ユーロファイタータイフーン(ユーロファイター・イギリス、ドイツ、イタリア、スペイン共同開発)
- 伊藤忠商事 - F/A-18E/F(ボーイング・アメリカ)
- 双日 - F-15E最新型(ボーイング・アメリカ)
専門商社
専門商社とは、特定の分野、業種において商社活動、機能を果たす企業を指す。企業の数は非常に多い。
総合商社やその分野の大手メーカーの子会社・関係会社であることが多く、総合商社とは違って旧来通りの物流・金融が現在でも業務の中心となっている。しかし、単純な輸出入・販売だけではなく、商品企画・マーケティングや流通ITなどの機能で付加価値を追求するようになっている。独立系の専門商社などでは総合商社と同様の投資業務に乗り出しているところもある。
取扱商品についてはあくまでも基本となる部分で、会社によっては新規分野への進出を図っているところもある。業務内容としては貿易を中心とするものと国内卸を中心とするもの、その両方を取り扱うものに分類できる。
紙・パルプ
化学製品
- 長瀬産業 - 売上高 648,023百万円
- 稲畑産業 - 売上高 423,374百万円
- オー・ジー - 売上高 135,633百万円
- 明和産業 - 売上高 119,738百万円
- CBC
- 岸本産業 - 売上高 97,860百万円
- ソーダニッカ - 売上高 93,174百万円
- 内村 - 売上高 12,333百万円
食品
金属
機械
エレクトロニクス
- 日立ハイテクノロジーズ
- マクニカ
- 菱電商事
- リョーサン
- キヤノンマーケティングジャパン
- 東京エレクトロン