日本語教育
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日本語教育(にほんごきょういく、Teaching Japanese to speakers of other languages)とは、通常、日本語を母語としない人(主に外国人)に対し、海外や日本国内で、日本語を指導することを指す。ただし、「国語教育」を「日本語教育」と表す場合もある。(日本教職員組合、自由の森学園、その他)
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[編集] 日本語教師
例えば、「私は同僚に車を貸してもらった」という文で、「私」は車を借りたのに、どうして「貸す」を使うのだろうか、「貸してもらった」と「貸してくれた」は何が違うのかなど、生まれながらに日本語が普通に使えるのに説明に苦しむことからもわかるように、日本語を母語とする者なら誰でも日本語が教えられるというわけではない。日本語教師は日本語を含む言語の音声、文法、意味、運用などといった言語学的な知識だけではなく、語学教授法や言語習得理論、さらには異文化間コミュニケーション、言語政策などといった広範な知識に精通している必要がある。以上のように、日本語教師には、さまざまな技能が必要なため、就業のハードルは高く、大卒であることを前提に、日本語教育能力検定試験に合格していること、大学院で日本語教育を専攻していることを採用条件にしている教育機関もある。1990年代後半以降、各地の大学に文学部日本文学科ならぬ外国語学部日本語学科が次々に登場したのも、日本語教師育成に主たる狙いがあった。
世界各地の日本語教育の需要に応じて、日本人の日本語教師も、日本国内をはじめ、世界中で活躍している。日本の近隣、特に、大韓民国や中華人民共和国、そして、オーストラリアなど日本との交流や友好関係の深い国、地域では、日本語学習者の数も多く、教育機関も整備され、現地の(日本語が母語ではない)教師やスタッフも揃っていることから、教師養成機関の実習やアシスタントなどとして活躍している日本人の教師も多い。
一方、アジアの開発途上国など多くの国や地域では、教材や施設、現地の教師・スタッフが揃わず、日本人の教師が大きな役割を果たす機関も多い。例えば、カリキュラムを自分で作成したり、現地の教師や教育関係者との連携をとったり、現地の教師の育成を行ったりと、授業以外の業務に携わることも多い。国際交流基金やJICAなどといった機関は「専門家」や「青年海外協力隊」などとしてこのような地域に重点的に日本語教師を派遣したり、教師研修として現地の教師を日本へ招聘したりすることで、現地の日本語教育の充実を目指している。
また、日本国内の日本語教育機関に勤務する教師は非常勤の比率が大きい。日本語教師のみを職業として生計を立てるには、非常勤をかけ持ちしても満足した収入が得られないという問題がある。専任として勤務する場合には、一定の教育経験などが必要であるところが多い。大学など高等教育機関の専任の場合はそれに加えて相当の研究実績も必要で、しかも、専任ポストの空きがそれほど多くないことから、非常に高いハードルであるといえる。
[編集] 日本国内における日本語教育
日本の高等教育機関(大学、大学院、短大、高専)が受け入れた外国人留学生数は2004年に過去最高の9万人を超えた。これら留学生は日本国外の教育課程で日本語を履修した者が中心であるが、大学ごとに留学生のための日本語教育が行われる。日本国外で日本語を履修していないが、日本の大学へ留学を目指す者は日本語教育振興協会に認可された日本語学校に入学することになる。日本語学校在学者数も23,000人を越えており、留学生と合わせると11万人を超える。国籍別に見ると、中国が77,713人で最も多く、韓国の15,533人、 台湾の4,096人、マレーシアの2,010人、タイ王国の1,665人がこれに続く。
さらに在住外国人のために各地の自治体やNPOがボランティア教師による日本語講座や日本語教室を開催している。対象者は中国残留日本人孤児帰国者や日系人、国際結婚により来住した外国人女性などが多い。
[編集] 日本国外における日本語教育
日本語は中国語と並んでアジアの主要な言語であり、日本国外の主要な大学には日本語学科が設置され、日本語を第二外国語として教える学校も多い。さらに大韓民国、オーストラリア、フランスなどでは初等中等教育でも日本語教育が行われており、学習者数は格段に増加する。
韓国の高校では日本語が第二外国語のひとつになっており、履修率も高く、大学などでの履修者も含め学習者総数は約90万人となり、世界最大の日本語学習国である。中華人民共和国の日本語教育は大学が中心だが、人口が多いので日本語学習者総数は39万人に達し韓国に次ぐ日本語学習国である。オーストラリアではLOTEプログラムのもと小学校から日本語を教えるところもあり、初等中等教育での日本語教育が充実しており、学習者数は約38万人で第3位。モンゴルは人口は少ないものの、国民人口あたりの日本留学率は世界一。フランスの高校やアメリカ合衆国のいくつかの州の高校でも日本語が外国語選択科目として提供されているが、印欧語話者には難しい言語なので履修率はそれほど高くない。それでも米国の日本語学習者総数は14万人に達し、第4位となっている。国別日本語学習者数は以下、台湾12.8万人、インドネシア8.5万人、タイ王国5.5万人などとなり、世界全体の日本語学習者数は約230万人と算定されている。
(注)数字の出典は国際交流基金最新サイト(外部リンク参照)
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 国際交流基金関連サイト
- パリ天理語学センター日本語学校、日本語教師養成講座、子供日本語教育、フランス語教室等
- 森の池(英文): アメリカ合衆国ミネソタ州で日本語と日本文化を教えるイマージョン・プログラムサマーキャンプ