星野スミレ
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星野 スミレ(ほしの スミレ)は、藤子・F・不二雄の漫画『パーマン』・『ドラえもん』に登場する架空の人物。
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[編集] 『パーマン』での星野スミレ
美少女アイドル歌手として幅広い世代に絶大な人気を誇る。年齢は須羽みつ夫と同い年なら11歳前後。歌番組のほか数々のCMに出演している、年収数千万円とも噂される売れっ子であり、女優として映画出演歴も持つ。小学生ながら分刻みのスケジュールで動く多忙な毎日を過ごしており、移動中の自動車の中で居眠りすることもしばしばだが、学業もおろそかにせず見事両立させている。
人気を呼ぶ一方で、学校にいても街を歩いていても常にアイドルとして特別扱いされてしまい、本当の自分を見てもらえず友達ができないことを寂しく思っている。
家は大財閥かと疑うほどの超大邸宅。家族は母親と飼い犬のダックスフント・ロングが確認されている[1]。本名不詳、1960年代連載の原作では「鈴木伸子」という設定[2]もあったが、これは本編では一切明かされない。1980年代版ではクラスメートから「星野さん」[3]、母親から「スミレちゃん」[1]と呼ばれているため本名・芸名とも同じである可能性がある。苦手は料理で、電気炊飯器で炭の固まりを作ってしまうほど。
星野スミレは1960年代版の連載では、パーマン3号との関連を容易に想像できるように描写されているものの、星野スミレとして直接物語に関わることはなく登場回数も少ない。これらのキャラクター設定・描写はほぼ1980年代版の連載によるものである。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] パー子
星野スミレのもうひとつの顔が、正義のヒーロー「パーマン」の3人目のメンバー・パーマン3号、通称パー子である。ある日現れた異星人・バードマンよりパーマンセットを渡され、パーマンに任命された。間に合わせに選ばれた1号・2号とは違い、パーマンとしての基本的な教育も施されている。マスクの色は赤、マントとバッジの色は緑。パーマンとして活動中は、コピーロボットが仕事または学業を担当する。当初は「3号」という番号や「パー子」と呼ばれるのを嫌い「パーレディー」を自称していた[4]が、呼ばれ続けるうちに「パー子」で馴染んでしまったようである。
パーマンの掟として仲間以外に正体を知られることは許されないが、アイドルであることを知られて特別扱いされることを嫌い、パー子は仲間のパーマンにもその正体を明かすことはない。パーマンマスクを被った姿こそが本来の自分をさらけ出せる、「星野スミレ」にとっての素顔であると言える。そうすることでパーマン仲間といるときだけはのびのびできると感じており、スミレでいる時もバッジが鳴って呼び出しがかかるのを心待ちにしている。
マスクを被りパー子に変身すると、スミレの時とはうってかわってお転婆で短気な性格になる。これは性格が変わるというよりも、地の性格が出ているといった方が正しい。特にパーマン1号=須羽みつ夫とは頻繁に口喧嘩をするばかりではなく、ビンタやパンチ、投げ飛ばすなどの暴力に訴えることも多々ある。そのため1号や2号からは常日頃「女の子らしくない」と指摘される。それに応えておしとやかに振る舞おうと努力することもあるが、あまり長続きはしない。
やや頼りないものの正義感の強いみつ夫にほのかな好意を寄せており、みつ夫が同級生の沢田みち子をちやほやするのを見て女の子らしくない自分にコンプレックスを感じることもある。また、みつ夫が星野スミレの熱狂的なファンであるがゆえに、正体を明かせば一人の普通の女の子として扱われなくなってしまうことを恐れている。原作漫画では直接に好意を示すことはないが、アニメ版(1983年-1985年)では好意を抱いているが素直になれない性格を示すことが多々ある。特に最終回「パー子の宝物ってなーんだ?」は、秘密の宝物を特別に見せてあげる、とみつ夫に手鏡を渡し、実は本当の宝物は鏡に映ったみつ夫自身だったという愛の告白をするストーリーであり、原作に比べてラブコメ色を相当に強くしている。
原作最終回でみつ夫が日本のパーマンの代表としてバード星への留学に旅立つ際、パー子はみつ夫にだけ素顔を見せ、笑顔で送り出した。この描写は1980年代のてんとう虫コミックス収録時に加筆されたものであるが、それ以前にアニメ版(1967年-1968年)の最終回で同様の描写が存在する。
[編集] 『ドラえもん』での星野スミレ
『ドラえもん』では、大人になった星野スミレの姿が見られる。本作では少女アイドルとしての座は伊藤つばさに譲っているが、映画で主演をつとめるなどスター女優として成長している様がうかがえる。ドラえもん、のび太、さらにはスネ夫、ジャイアンともスミレの大ファンである。
初出は「オールマイティパス」(てんとう虫コミックス15巻)。このときはスターとしての登場のみで『パーマン』との関連は特に見られない。前述の主演映画が確認できるほか、オールマイティパスを使ったのび太・静香と自宅の豪邸で談話をする。
次に登場する「影とりプロジェクター」(同19巻)では、二枚目スターの落目ドジ郎に言い寄られている。落目はゴシップ週刊誌にスミレの恋人疑惑を吹き込んだり、勝手にスミレの自宅に上がり込むなどストーカー行為を繰り返していたが、ドラえもんとのび太により追い払われた。スミレはその礼として二人に秘密を明かしており、作中では「遠い遠い国」に好きな人がいることを仄めかすに留めている。
「めだちライトで人気者」(同24巻)では、芸能レポーターに追い回されるスミレの姿がある。めだちライトを浴びて同じく追い回されていたのび太と再会し海辺へ誘うが、そこで落としたロケットにはみつ夫の写真が収められており、スミレはのび太に「今は遠い世界に行っている、大切な人。いつかきっと帰ってくる」と説明する。みつ夫がこの時点までバード星から戻っていないことがわかるが、スミレの登場はこの話が最後であり、以後みつ夫と再会できたかどうかは描かれることがなかった。
『ドラえもん』にはその他の藤子キャラクターもたびたびカメオ出演しているが、既に終了した作品の後日談が語られるのはこれらの星野スミレ登場編のみであり、藤子Fの『パーマン』及びスミレへの特別の思い入れをうかがい知ることができる。また、作品内での時系列は『ドラえもん』が『パーマン』の後になるが、実際に作品が発表されたのは「めだちライトで人気者」が1980年であり、『パーマン』で星野スミレが大きく扱われるようになるのはその3年後の1983年からの連載である。『ドラえもん』で描かれた星野スミレの須羽みつ夫への想いが、新作の『パーマン』へと還元される形になっている。
なお、『ドラえもん』にはパーマン1号と一緒にパー子が登場するシーンがある。のび太と同程度の身長であり、上記の内容を考えると年代的に矛盾が生じてしまうが、藤子作品だけではなく、古めの漫画作品は人物の設定を現在ほど厳密にしておらず、多少の矛盾点は致し方がない事である。 『パーマン』自体は1979年に特別編『ドラ・Q・パーマン』で再登場し(アニメ化は1980年)、ドラえもんやオバケのQ太郎らと競演している。そして1983年には先述の通り、再びレギュラー放送でアニメ化と同時に新設定で漫画が連載され、時系列をドラえもんに合わせざるを得ない状況になった。これらの競演は、単なる読者サービスと考えた方が良い。
[編集] キャラクターデザイン
新旧の原作で、星野スミレの外見上のデザインは大きく異なる。唯一の共通点は頭に着けたカチューシャと、後頭部の横に突き出た髪の毛である。
1960年代版の原作では、スミレは他のキャラクターとは異なり少女漫画風の絵柄で描かれていた。髪の毛はベタ・トーンなどの処理はされず、白地に髪の流線を何本か描き込むかたちで表現されている。黒目が大きく、まつげが多い。
1980年代版では、絵柄は他のキャラクターと同様の児童漫画風のものになっている。顔のパーツは、やや吊り目で黒目がちの大きな目と上向きの尖った鼻で構成されている。
[編集] 声の出演
[編集] 脚注
- ^ a b てんとう虫コミックス『パーマン』5巻「さらわれてバンザイ」
- ^ 虫コミックス『パーマン』4巻カバー裏の図解コーナー
- ^ てんとう虫コミックス『パーマン』6巻「パー子の秘密」
- ^ てんとう虫コミックス『パーマン』1巻「はじめましてパー子です」
[編集] 関連項目
カテゴリ: ドラえもんの登場人物 | パーマン