剛田武
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剛田 武(ごうだたけし)は、藤子・F・不二雄のSF漫画作品「ドラえもん」の登場人物。1964年(昭和39年)6月15日生まれ。主人公・野比のび太のクラスメイト。あだ名はジャイアン。妹にジャイ子がいる。母親とその妹が大の苦手。
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[編集] 設定
[編集] 性格
クラスのガキ大将であり、短気と毒舌なゆえに粗暴で言う事を友達が聞かないとすぐ怒鳴って殴るため、皆に恐れられている。また、「お前のものは俺のもの、俺のものも俺のもの」というセリフに代表されるように、きわめて自己中心的(ジャイアニズム)であり、強引に人の漫画やゲーム等を取り上げたり、「ムシャクシャしている」という理由でのび太等を殴ったりしている。未来の道具で世界征服を目論んだり[1]、「逆らう者は死刑」と発言する[2]など、独裁的な心理描写も多い。それに似たキャラクターとして「金曜ドラマ」の「いつも心に太陽を」の登場人物の相川俊男(演じたのは野村祐人)がいる。
その一方で、極めて義理固い一面も持ち合わせている。面倒見がよく親分肌で妹をかわいがり、不承不承ながらも家の手伝いをしたりする。友情に篤い面もあり、「心の友よ!」と叫んで抱き付いたり泣きじゃくったりする。劇場用長編では特に男気溢れる性格が顕著であり、友達のために命までを掛けて守ろうととするなど仁侠的な印象が強い。
[編集] 運動能力
極めて高く、一般の小学生以上と思われる。草野球チーム「ジャイアンズ」の特訓で行なった町内十周マラソン(のび太、スネ夫、安雄、はる夫参加)で一位になる[3]など高い持久力を持ち、のび太と尻相撲をした際にはのび太を数メートルも突き飛ばすほどの力を持つ[4]。また、父親からは柔道を習っており[5]、まねごとながら多少は空手の心得もあるようである[6]。ひみつ道具「正確グラフ」による計測結果によると、力はスネ夫の約1.4倍、静香ちゃんの約1.7~2倍、のび太の約3.3倍[7]。また、腕立て伏せを100回もするなど、その力は計り知れないものがある[8]。
[編集] 知力
勉強は大の苦手で、テストの点数も悪い。100点を取った事は1回だけあるが、それはドラえもんの道具を使った不正によるもの[9]。普段の点数は15点など[10]で、のび太と大して違わない。ただ、「正確グラフ」での計測結果によると、一応頭の良さはのび太の2倍という事になっている(なお、静香ちゃんの1/3、スネ夫の4/7でもある)。「表の模様が裏に、裏の模様が表にある珍しい50円だ。」という巧みな台詞でのび太を騙すなど、ずる賢い面もある(9巻『世の中うそだらけ』)。また、「領収書」を「良集書」と書いたり、固有名詞である「のび太」を「のび田」と書き間違えたり、漢字については特に苦手のようだ[11]。
[編集] 趣味
おれはジャイアンさまだ!も参照
歌が好きで、本人は得意だと思っているが実際はかなりの音痴。しかも本人はそのことに自覚がない(ただし、コミックス35巻『ま夜中に山びこ山が!』では、寝ぼけて聞いた自分の歌を「へたくそな歌」と評した)。レパートリーは恋する心を歌ったオリジナルの歌が中心[12]。しばしば皆を集めて独演会「ジャイアン・リサイタル」等を開催しては皆を困らせている[13]。声紋キャンディをなめると上手に歌うことから正確には音痴なのではなく、独特のダミ声が悪いだけのようだ[14]。
その破壊的な歌唱力は窓ガラスや壁を破壊するほどのエネルギーを持ち、有害な部分を強めて害虫駆除に利用されたこともある[15]。大長編『のび太の魔界大冒険』では、歌で悪魔セイレーンを追い払ったり、怪獣「ツノクジラ」を一撃でノックアウトにする程の威力を見せた(ただし、魔界のジャイアンと現実世界のジャイアンが同程度の歌唱力を持つかは不明)。
人間への神経症状も強く、聞いた者の体調は直ぐに悪化する。(のび太達曰く、「命に関わる」。)また、テレビやラジオなどのAV機器に音を入力すると破損してしまう。(出力するスピーカー等も破損する。テレビでは映像に影響が出たりする。アニメでは音声ミキサーが漏電して破損したり、スピーカーのウーファー部分が飛び出したりする程。特に彼の十八番は超危険。)そのため、マスメディアを用いての歌の報道は、メディアが麻痺する恐れがあり、極めて危険である。
他には料理を趣味としているが、料理の腕は歌唱力と同様に壊滅的。匂いで犬や鳥が気絶するほどで、蝉の抜け殻を使ったりするなど、味もこの世のものとも思えないようなものらしい。自分で試食して倒れてしまった事がある[16]。
秘密の趣味としてままごとがある[17]。
[編集] 将来の夢
歌手になると張り切っており、ノビタレコードからレコード「乙女の愛の夢」をリリースしたこともある[18]。また、ファッションモデルになるという夢も持っている[19]。しかし将来は実家を発展させて「スーパージャイアンズ」という名のスーパーマーケットを経営する[20]。実家である剛田雑貨店の建物自体は同じ時期に近くに存在しているので、剛田雑貨店を改装もしくは建て直したのではなく、実家の近くに新たにスーパーを建てたものと思われる。
[編集] 苦手なもの
母親が大の苦手。姿を見なくても、声を聞いただけで震え上がって逃げ出すほど。また、本人は「(母ちゃんを除いて)怖いものはない」と語っているものの、大男[2]やお化けを怖がる[21]描写があるため、それらのオバケや妖怪の類も多少苦手なようである。基本的に大人の前では乱暴なことをしない。先生や神成さんなども苦手な人物の1人である。
[編集] 実家
アニメ版では「剛田雑貨店」という雑貨店。原作では何の店かよく分からないし店名も不明。卵や缶詰が売られている[22]ので乾物屋に思えるが、別の話[23]ではカボチャなどの野菜を売っている所も見受けられ、八百屋であるようにも思われる。母ちゃんによく店番を頼まれているが、サボっていることもしばしばある。また、アニメ版では、ジャイアンの母ちゃんがもしもボックスを使った影響でアメリカに引っ越すことになりかけたのび太のママに「剛田雑貨店のホームページ、アクセスしてね」と言っていたことから、ホームページを公開しているらしい。
[編集] あだ名の由来
ジャイアント(巨大)をもじった説とジャイ子のあんちゃん省略説[24]があるが真相は不明。
[編集] その他
- 野球チームであるジャイアンズのキャプテンである。ピッチャーを務めているが、三振を奪う事は少なく、ヒットを打たれている描写が多い。彼は大抵ジャイアンズが試合に負けるのを「のび太のせい」として怒るが、実際にはピッチャーである彼の責任の方が大きい。なお、打者としてはホームランを幾度か打つ[25]など、それなりに活躍している。
- 尊敬する人物は宮本武蔵[26]と柔道十段のおじさん(後述)。
- ドラえもんの道具「雨男晴れ男メーター」で、彼は晴れ男の最高値+10を記録するほどの「超強力な晴れ男」である[27]。
- ツチノコの発見者であり、未来の百科事典にも名を残している[28]。
- アイドル・星野スミレ[29]、青空ゆかり[30]のファン。
[編集] 両親、親戚
以下の設定は、原作およびテレビ朝日のアニメ版に関するものである。
日本テレビ版アニメ(いわゆる旧ドラ)では母親は故人であり、父親の手一つで育てられていたが、この父親は気弱な小男という、原作とは明らかに異なるキャラクターとなっていた。
[編集] 母親
母親は実直で息子に厳しく、しかも男勝りで豪放であり、ジャイアンにとって大の苦手な人物で雑貨店を営んでいる。
[編集] 父親
父親については明確な職業が描かれていない(店番をする場面が描かれているのは4巻『ソノウソホント』のみ)。無精髭を蓄えていて頭は角刈りにしている。
ジャイアンの父親は原作、アニメともほとんど登場しないが、原作では9回登場している。
- 1巻『一生に一度は百点を…』で、ドラえもんの道具「コンピューターペンシル」を使ってズルをして100点を取ったジャイアンを「できの悪いのはしかたがないとして、不正だけはするなと教えてきたはずだぞ!」 と叱り殴る。
- 1巻『走れ!ウマタケ』に1コマだけ登場。家の中で暴れるウマタケに困り果てる。
- 4巻『ソノウソホント』では、のび太の父親と相撲をとる。町内一の力持ちと自負しており、他の登場話と比べ自分勝手で乱暴。 なお、この話では鼻の下にヒゲを生やしている。
- 4巻『ラッキーガン』ではジャイアンを映画に連れて行く。
- 20巻『ふくびんコンビ』では、ジャイアンを厳しく叱る妻に難色を示し、ジャイアンに小遣いをあげようとする。
- 22巻『無事故でけがをした話』では、たい焼きを買って帰る途中でひき逃げに遭う。
- プラス3巻『ばくはつこしょう』では、食事中、道具の効力で吹き飛ばされたちゃぶ台を追いかける羽目になる。
- 藤子不二雄ランド10巻『クエーヌパン』では、食事中、ジャイアンが道具の効果により吐き出したご飯を顔中に浴びる。
- 未収録『旅行窓セット』(「小学三年生」1987年5月号掲載)では、家族で箱根に出かける。原作では最後の登場であり、前回の登場からブランクが開いたためか頭頂部が禿げている。
[編集] 妹
ジャイ子という妹がいる。ジャイアンはジャイ子をこの上なく可愛がっており、これが災いしてトラブルになることも度々あったが、ジャイ子自身もジャイアンのことをとても尊敬しているようである。
[編集] 息子
ヤサシという息子がいる[20]。あだ名は「ジャイチビ」で、ジャイアンとは異なり気が弱く心優しい性格。
[編集] 子孫
映画『ドラミちゃん ハロー恐竜キッズ!!』に、アントンという子孫が登場する。
[編集] 他の親戚
- 叔母さん
- 3巻『おはなしバッジ』で登場。母親の妹。姉と性格が似ており、ジャイアンはこの叔母も苦手にしているようである。
- おじさん
- 36巻『ジャイアン反省・のび太は迷惑』で登場。ヒゲが濃く、大柄。柔道十段の腕前で、ジャイアンが尊敬している。喧嘩に強くなりたいために柔道を教えてくれと頼むジャイアンに、人間としての真の強さ(心理的な強さ)とは何かを語ってジャイアンを諌める(ただし、ジャイアンはその言葉を誤って捉え、まるで理解していなかった)。
- おじさん
- 37巻『しかしユーレイはでた!』で登場(姿は見せず)。山奥の寺で住職をしている。ジャイアンのことは「たけ坊」と呼んでいるらしい。
- いとこ
- 29巻『ペタンコアイロン』、カラー作品集3巻『なんでもそうじゅう機』に登場。格闘技や武道を趣味としており、柔道三段・剣道五段の段位を持つほか、ボクシング・合気道・少林寺拳法もたしなんでいるという。なお、登場した話の両方とも、「ジャイアンたちに引越しの手伝いをさせる」という役回りで登場している。花子という名前の恋人がいる。他にプラス2巻『大きくなってジャイアンをやっつけろ』にもいとこは登場するが同一人物なのか定かではない(顔立ちはやや異なる)。
[編集] その他
アニメ版の声優は1973年の日本テレビ版では肝付兼太、テレビ朝日版では1979年4月~2005年3月がたてかべ和也、2005年4月から現在が木村昴。余談だがビーストウォーズメタルスのリミックスの物まね大会にて、梁田清之が演じるデプスチャージが彼の物まねをしていた(似ていたのになぜかお仕置きを受けたが、本人はいたって平気そうだった)が、梁田氏がオーディションに出たかは不明。
前髪は1979年~1985年まではアニメオリジナルの丸まった感じだったが、1986年以降~現在まで、原作に準じたとんがっている感じになった。
目についても、1979年以来、原作と違って白目があり、黒目が小さかったが、2005年の声優リニューアルを機会に、原作に準じた、中央が白い黒目がちの目に改められた。
[編集] 脚注・出典
- 特記のない「x巻」は、てんとう虫コミックス「ドラえもん」の単行本の巻数を表す。
- ^ 4巻『未来世界の怪人』
- ^ a b 12巻『大男がでたぞ』
- ^ 21巻『まねコン』
- ^ 26巻『おもかるとう』
- ^ 5巻『黒おびのび太』
- ^ 4巻『おもちゃの兵隊』
- ^ 8巻『グラフはうそつかない』
- ^ 39巻『ハンディキャップ』
- ^ 1巻『一生に一度は百点を…』
- ^ 28巻『大ピンチ! スネ夫の答案』
- ^ 11巻『Yロウ作戦』
- ^ 16巻『シンガーソングライター』ほか
- ^ 8巻『キャンデーなめて歌手になろう』ほか
- ^ 8巻『キャンデーなめて歌手になろう』
- ^ 17巻『狂音波発振機』
- ^ 41巻『恐怖のディナーショー』
- ^ 5巻『おしかけ電話』
- ^ 11巻『ジャイアンの心の友』
- ^ 3巻『きせかえカメラ』
- ^ a b 映画『ドラミちゃん ミニドラSOS!!!』
- ^ 31巻『つめあわせオバケ』
- ^ 2巻『タイムふろしき』
- ^ 39巻『ジャストホンネ』
- ^ 『野比家の真実』/日本ドラえもん党・著/1993年/ワニブックス
- ^ 『天井うらの宇宙戦争』など
- ^ 11巻『名刀〔電光丸〕』
- ^ 34巻『雨男はつらいよ』
- ^ 9巻『ツチノコ見つけた!』
- ^ アニメ「さかさカメラ」
- ^ オリジナルアニメ「ほんものだゾウ」