暦表時
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
暦表時(れきひょうじ、Ephemeris Time 、ET )とは、地球から観測した太陽・月・惑星など天体の観測を元に求められた純理論的、純力学的な時間を表す方法である。地球の自転に基づいて決められる世界時(Universal Time、UT )とは異なるものである。
暦表秒、すなわち回帰年のある整数分の1で定義された秒に基づく時刻系で、現在は使われていない。暦表秒は1956年から1967年まで SI 秒の基準であったが、1984年に廃止された。1976年の国際天文学連合の決定により、地球表面での用途については ET は地球力学時 (TDT) で置き換えられ、天体暦の計算用途には太陽系力学時 (TDB) で置き換えられた。TDT はその後地球時 (TT) として再定義された。またTDB の定義では不足があったため、太陽系全体での用途については太陽系座標時 (TCB) で、また地球近傍での用途には地心座標時 (TCG) で再度置き換えられている。
[編集] 概要
時間は地球の公転から求めるのだが、実際には地球は歳差や章動など大きな長期間の変化や短期間の小さな変化を起こしながら複雑な運動をしていることが19世紀末に発見された。そこで、純粋に力学的で論理的な観点から時間を規定したのが暦表時である。
[編集] 定義
太陽の黄経の位置を歳差の影響だけを考慮し、章動の影響を取り除き、また視差、光行差の影響も取り除いたものを太陽の幾何学的平均黄経という。(ただ、実際に太陽が見える位置にはこのほか、大気差や極運動の影響も考慮しなければいけない。)
1900年の年初に近い時で、太陽の幾何学的平均黄経が279度41分48.04秒になった時刻を暦表時1900年1月0日12時0分0秒と定義する。暦表時秒とは、この基点からちょうど1年過ぎた(地球が太陽の周りを1周した)時間の1/31556925.9747と定義されている。
この時間はサイモン・ニューカムによって求められた太陽の幾何学的平均黄経を求める式によって計算される。Lを太陽の幾何学的平均黄経に光行差である-20.47秒を加えた太陽の見かけの平均黄経、Tを1900年1月0日12時から測った36525日を単位とする時間とする。
ここでニューカムはTを世界時として扱ったが、これを暦表時としてとらえ直す。
Lが360度(=1296000秒)変化すると1年であるから。1年(=365.24219878日)は 秒 となり、これが暦表時秒の定義の根拠となっている。
これらの定義によって決定された暦表時秒を使用して年月日や時分秒を決めたものが暦表時である。
暦表時は、数々の修正すべき要素があり、実際に天体観測を行ってから真の暦表時を求めるまで数ヶ月もかかっていた。
[編集] 協定世界時との関係
現在の時間は、より正確なセシウム原子時計を利用した協定世界時が使われる。ところが、この世界時と暦表時は当然ずれていく。実際の天体の動きと世界時があまりずれないようにうるう秒などの修正が世界時の方に行われている。