柔道形
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柔道形(じゅうどう かた) は柔道において、技の習得のために行う。一般には単に「形」と呼ばれる。
形(型)は日本の武道(日本武術)に普遍的に見られる修行法で、技を掛ける「取り」と技を受ける「受け」にわかれ、決められた手順とフォームで技を掛け、それを反復することによってその技を習得するものである。
柔道形には投の形、固の形、極の形、講道館護身術、精力善用国民体育の形、柔の形、五の形、古式の形がある。柔道形の中には、試合や乱取りでは禁止されている技を含むものがある。昇段審査で審査の対象となり、また、形の大会も存在する。
現代の柔道では、技の習得に際して、形よりも自由度の高い「打ち込み」や「投げ込み」といった修行法がとられる場合が多い。「打ち込み」や「投げ込み」は「取り」の体格にあわせたり、連絡変化(コンビネーション・連続技)を組み入れるといった独自の工夫を加えて、技を反復することができる。
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[編集] 投の形
投の形は手技、腰技、足技、真捨身技、横捨身技各3本ずつ、計15本からなる。手技、腰技、足技は男子の初段の審査の対象であり、真捨身技、横捨身技と先の3つをあわせて2段の審査の対象である。
また、受(投げられるほう)が打ちかかってくる技が背負投、浮腰、裏投、横車があるが、これらは、攻防の展開を意図した時代背景があると考えられる。
[編集] 歴史
投の形が作られたのが明治17、18年頃で、その頃は10本であったとされる。現在の15本にいたるまでの経過は明らかではない。
[編集] 固の形
固の形(かためのかた)は、抑技、絞技、関節技、各5本からなる固め技の形。試合では禁止されている技もある。
- 抑技(おさえわざ)
- 絞技(しめわざ)
- 片十字固
- 裸絞
- 送襟絞
- 片羽絞
- 逆十字絞
- 関節技(かんせつわざ)
[編集] 極の形
柔道の技法(投げ技、固め技、受身技)を駆使し実戦的な形。両者座って行う「居取」8本、両者立って行う「立合」12本からなる。
- 居取(いどり)
- 両手取(りょうてどり)
- 突掛(つっかけ)
- 摺上(すりあげ)
- 横打(よこうち)
- 後取(うしろどり)
- 突込(つっこみ)
- 切込(きりこみ)
- 横突(よこづき)
- 立合(たちあい)
- 両手取(りょうてどり)
- 袖取(そでとり)
- 突掛(つっかけ)
- 突上(つきあげ)
- 横打(よこうち)
- 蹴上(けあげ)
- 後取(うしろどり)
- 突込(つっこみ)
- 切込(きりこみ)
- 抜掛(ぬきがけ)
- 切下(きりおろし)
[編集] 歴史
明治39年(1906年)7月京都大日本武徳会本部にて、講道館の嘉納治五郎委員長と戸塚派揚心流の戸塚英美委員、四天流組討の星野九門委員、他17名の委員補(双水執流組討腰之廻第十四代青柳喜平、不遷流柔術四代田邊又右衞門など)柔術10流・師範20名で構成される「日本武徳会柔術形制定委員会により1週間で制定された。その内容は1908年に便利堂書店から『大日本武德會制定柔術形』として出版される。現在は講道館柔道の形の一部となっているが、本来は講道館柔道を含む全柔術流派を統合する形であった。(月刊「武道」 2006年7月号に経緯が掲載される。)
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[編集] 講道館護身術
講道館護身術は、昭和31年(1956年)に制定された護身術としての柔道技術を形としたもの。徒手の部12本、武器の部9本からなる。制定にはのちに富木流合気道を興す富木謙治八段が尽力した。1995年世界柔道選手権大会での演武では演者が学生、チンピラなどのコスプレをほどこしコント風に演じられた。
- 徒手の部
- 甲、組み付かれた場合
- 両手取(りょうてどり)
- 左襟取(ひだりえりとり)
- 右襟取(みぎえりとり)
- 片腕取(かたうでとり)
- 後襟取(うしろえりどり)
- 後絞(うしろじめ)
- 抱取(かかえどり)
- 乙、離れた場合
- 斜打(ななめうち)
- 顎突(あごつき)
- 顔面突(がんめんつき)
- 前蹴(まえげり)
- 横蹴(よこげり)
- 甲、組み付かれた場合
- 武器の部
- 甲、短刀の場合
- 突掛(つっかけ)
- 直突(ちょくづき)
- 斜突(ななめづき)
- 乙、杖の場合
- 振上(ふりあげ)
- 振下(ふりおろし)
- 双手突(もろてづき)
- 丙、拳銃の場合
- 正面附(しょうめんづけ)
- 腰構(こしがまえ)
- 背面附(はいめんづけ)
- 甲、短刀の場合
[編集] 精力善用国民体育の形
精力善用国民体育の形は、体育的要素を取り込んだ1人でできる当身技の形の「単独動作」23本と、2人が組んで行う「相対動作」20本がある。「国民体育」というように、体育的に行う。
- 単独動作
- 第一類(15本)
- 五方当(5本)その場で足を動かさずに当身の動作
- 左前斜当
- 右当
- 後当
- 前当
- 上当
- 大五方当(5本)足を踏み込んで当身の動作
- 大左前斜当
- 大右当
- 大後当
- 大前当
- 大上当
- 五方蹴(5本)
- 前蹴
- 後蹴
- 左前斜蹴
- 右前斜蹴
- 高蹴
- 五方当(5本)その場で足を動かさずに当身の動作
- 第二類(13本)
- 鏡磨
- 左右打
- 前後突
- 上突
- 大上突
- 左右交互下突
- 両手下突
- 斜上打
- 斜下打
- 大斜上打
- 後隅突
- 後突
- 後突前下突
- 第一類(15本)
- 相対動作(20本)
- 第一類(極式練習、10本)
- 居取
- 両手取
- 振放
- 逆手取
- 突掛
- 切掛
- 立合
- 突上
- 横打
- 後取
- 斜突
- 切下
- 居取
- 第二類(柔式練習、10本)
- 一教
- 突出
- 肩押
- 肩廻
- 切下
- 片手取
- 二教
- 片手上
- 帯取
- 胸押
- 突上
- 両眼突
- 一教
- 第一類(極式練習、10本)
[編集] 柔の形
柔の形(じゅうのかた)は明治20年(1887年)に作られた攻防の理合いの動きをゆっくりと正確に行う。また平服で行え、稽古する人の体力に応じ、動きの速さを加減するように勧められている。
- 第一教
- 突出(つきだし)
- 肩押(かたおし)
- 両手取(りょうてどり)
- 肩廻(かたまわし)
- 腮押(あごおし)
- 第二教
- 切下(きりおろし)
- 両肩押(りょうかたおし)
- 斜打(ななめうち)
- 片手取(かたてどり)
- 片手挙(かたてあげ)
- 第三教
- 帯取(おびとり)
- 胸押(むねおし)
- 突上(つきあげ)
- 打下(うちおろし)
- 両眼突(りょうがんつき)
[編集] 五の形
五の形(いつつのかた)は明治20年(1887年)に作られた攻防の理合いを「水」にたとえて表現したもの。5本の動きからなるが、それぞれには名前がない。天神真楊流に口伝で伝えられていた奥伝形であったという説もある。
- 一本目(水の押し流す力のように受を押し倒す)
- 二本目(受の押しに逆らわず、引き落とす)
- 三本目(渦巻く波のように回り、その流れのまま取は横に身を捨て投げる)
- 四本目(波が引く動きのようにして受を倒す)
- 五本目(波と波とがぶつかり合うように、受と取がぶつかる直前、受の足元に身を投げ出し受を倒す)
[編集] 古式の形
嘉納治五郎は柔術の「起倒流」と「天神真楊流」を学んだが、古式の形は起倒流の竹中派に伝えられていた形である。現在の乱取りではありえないようなこともあるが、柔道の勝負上の高尚な意味合いを理解させる為といわれている。表の形14本、裏の形7本。
明治27年に、講道館道場が新築され、落成式の際に嘉納が小田勝太郎を相手に演じ、勝海舟が感極まったといわれる。
- 表の形
- 体(たい)
- 夢中(ゆめのうち)
- 力避(りょくひ)
- 水車(みずぐるま)
- 水流(みずながれ)
- 曳落(ひきおとし)
- 虚倒(こだおれ)
- 打砕(うちくだき)
- 谷落(たにおとし)
- 車倒(くるまだおれ)
- 錣取(しころとり)
- 錣返(しころかえし)
- 夕立(ゆうだち)
- 滝落(たきおとし)
- 裏の形
- 身砕(みくだき)
- 車返(くるまがえし)
- 水入(みずいり)
- 柳雪(りゅうせつ)
- 坂落(さかおとし)
- 雪折(ゆきおれ)
- 岩波(いわなみ)
[編集] 関連書
- 小谷澄之、大滝忠夫『最新柔道の形』不昧堂出版 1987年 ISBN 4829300930
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