検証と反証の非対称性
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検証と反証の非対称性(けんしょうとはんしょうのひたいしょうせい) は、科学哲学者ポパーが提唱した反証主義の(あるいは批判的合理主義の)用語である。
命題の真偽の判定にはその命題を肯定する証拠を出す場合(「検証」、もしくは「実証」と呼ばれる)と否定する証拠を出す場合(「反証」と呼ばれる)の二種がある。全称命題の「検証」には対象となる範囲の全ての証拠が必要であるが、反証には僅かな証拠で構わない。これを「検証と反証の非対称性」と呼んでいる。
例えば、水の入ったコップが並んでいて、「コップの水は全て塩水である」かどうかを確かめるとする。そのとき、初めに舐めた水が砂糖水ならば、その時点で全部が塩水ではないと分かり、他の水を舐めてみる必要はない。しかし一個目が塩水でも次のコップが砂糖水かもしれないので、一個目だけで全部塩水であるとはいえない。同じく次のコップが砂糖水かもしれないので二個でも全部塩水とはいえない。以降も同じことであり、結局最後まで舐めてみないと全部塩水だとはいえない。
自然科学で扱う自然法則も全称命題であるから、上の例のようにどれほど検証目的の実験を行おうとも、「次の実験で間違いが判明する」ことがありうる。
反証主義では、この問題を、どんな理論も誤りがありうるという可謬主義を前提にし(つまり理論群が全て真であることを保証はせず)、反証によって次第に正しい理論に近付いてゆく(あるいは、次第に誤った理論を取り除いてゆく)という逆の発想をとることで解消した。
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