歓喜天
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
歓喜天(かんぎてん)は、仏教の守護神である天部の一つ。サンスクリットのガネーシャ(Ganesa)、ヴィナヤカ(Vinayaka)またはナンディケシュヴァラ(Nandikesvara)に当たる。古代インドのシヴァ神の子で、もともと粗暴で邪悪な神だったものが仏教に帰依して護法神となったもので、象頭人身の異様な姿で表わされる。なお、ヒンドゥー教のガネーシャ神については、別項目「ガネーシャ」を参照。
歓喜天はまたの名を大聖歓喜自在天、あるいは聖天(しょうてん)という。ちなみに「聖天」は「しょうでん」と濁って読む場合が多い。
長い鼻をもつ象頭人身の像で、日本では男女2体の像が向き合って抱擁している形に表わすものが多い。他に単体のものや多臂像(腕が4本または6本)もあるが、造像例は少ない。男女抱擁像のいわれは、もともと乱暴な神であった歓喜天の欲望を鎮めるために、十一面観音が天女の姿に化身して抱擁したというものである。こうした像の性格上、歓喜天は秘仏とされ、一般には公開されないのが普通である。
密教では福徳を祈る歓喜天法(聖天法)の本尊とされているが、一般には夫婦和合、子授けの神として信仰されている。奈良県生駒市の宝山寺(通称生駒聖天)、東京都台東区の本龍院(通称待乳山聖天)、埼玉県熊谷市の歓喜院(通称妻沼聖天)を日本三大聖天と称している。
歓喜天の彫像は、円筒形の厨子に安置された小像が多く、浴油法によって供養することから金属製の像が多い。鎌倉市宝戒寺の歓喜天像は高さ150センチを超す木像で、制作も優れ、日本における歓喜天像の代表作といえる。
真言はオン・キリ(ク)・ギャク・ウン・ソワカ。 最初のクは苦しみを抜くと言う意味から抜いて唱えることが多いといわれることもあるが、実際は、日本で「キリク」と読む部分はもともとの音「フリーヒ」が訛ったものであり、「フリーヒ」を真言宗では「キリク」、天台宗で「キリ」と読むに過ぎない。よって、その他の真言陀羅尼でも、「フリーヒ」の日本での読みが宗派によってそのようになる場合がある。
[編集] 供物
歓喜天の供物として、歓喜団(かんぎだん)、または、歓喜丸(かんぎがん)という菓子がある。インドの菓子であったが、日本では、歓喜天・双身毘沙門天に限った供物になる。材料や作り方については、さまざまな説があり、蜜・石榴(ざくろ)・苺(いちご)など11種あるとされ、また、調伏・息災など祈願の目的によっても種類が違うという説がある。今では、米粉を水で混ぜて、平たい餅にして、中に小豆粉、切った串柿、薬種を入れて油で煮る。形は、端をひねって、石榴(ざくろ)の形に模す。聖天供(歓喜天供)に供物として、酒・大根と一緒に供えられる。