武田高信
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武田 高信（たけだ たかのぶ、享禄2年（1529年）？ - 天正4年5月4日（1576年5月31日））は戦国時代の因幡国の武将。官職は三河守、元亀初年には刑部少輔を名乗ったこともある。山城守、美作守という説もある。父は武田国信。
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[編集] 略歴
因幡武田氏は若狭国の守護大名を務めた若狭武田氏の庶流とされ、因幡山名氏のもとにあって客将として優遇されていた。高信の父・武田豊前守国信は、因幡守護・山名誠通の時に自ら申し出て鳥取城番となった。一国一城の主への野心を秘める国信は鳥取城の大改築を行う。父のあとを継いだ高信は鵯尾城（鳥取市玉津）にあったが、引き続き因幡山名氏への叛意を露わにし、鳥取城の奪取に成功する。高信は安芸国の毛利氏と結び、永禄6年（1563年）に鹿野城にいた山名豊成（旧守護・山名誠通の子）を毒殺し、次いで湯所口の戦いで山名氏の重臣・中村伊豆守秀重を敗死させる。さらに守護館・布勢天神山城を攻撃して因幡守護・山名豊数を鹿野城に逐い、同じ山名一族の山名豊弘を擁立して因幡国での優位を決定的にする。
因幡国を実質的に支配した高信は、毛利氏に従って但馬国・美作国に転戦するが、有力国人層の掌握に苦しみ、さらに因幡への進出を図る美作の草刈氏や尼子勝久・山中幸盛ら尼子党の出没に悩まされるようになる。元亀2年（1571年）高信は、山名氏に属していた但馬国芦屋城の塩冶高清を攻めて大敗、嫡男・又太郎と次男・与十郎を失った。翌元亀3年（1572年）高信は、因幡の国人衆の多くと誼を通じて甑山城に進出した山中幸盛率いる尼子党と戦い、決定的な敗北を喫して、ついに居城・鳥取城を山名豊国に明け渡すこととなった。高信が山中幸盛に敗れた甑山城での戦いを「鳥取のたのも崩れ（田の実崩れ）」と呼ぶ。
甑山城の戦いで尼子党に敗れた武田高信は、鳥取城を守護・山名豊国に明け渡し鵯尾城に退いたが、その後因幡国内の情勢は急変する。すなわち山名豊国および但馬山名氏が尼子氏から離れ毛利氏と和議を結んだのである。毛利氏の忠実な手兵として因幡を支配していた高信は、これによって微妙な立場に追い込まれた。高信は天正3年（1575年）3月7日以前に豊国によって鵯尾城を追われる。但馬に逃れた高信は、かつて攻撃した芦屋城の塩冶高清を頼り、塩冶を通じて毛利氏に助命を願った。因幡国内で山名豊国の勢力が伸張する中で、但馬の山名祐豊も高信の排除を吉川元春に求める。同年8月28日には息子・武田徳充丸への家督相続が毛利氏から認められ、高信の復権への道は事実上閉ざされた。9月25日頃、高信は小早川隆景のもとに家臣２名を送り再度の助命嘆願を行うが、隆景は高信の身の安全について言葉を濁している。高信は毛利氏から見捨てられてしまったのである。そして翌天正4年（1576年）5月4日に高信は不慮の死を遂げる。5月18日付の書状で吉川元春は「武田高信は織田方への内通歴然につき、山名豊国によって切腹させられた」と伝えている。鳥取県八頭郡八頭町佐貫にある大義寺の境内には、武田高信の墓と伝えられている五輪塔がある。 天嶮・鳥取城に拠って戦国大名化し、一時は因幡国一円を支配した武田高信だったが、国内の有力国人を掌握しきれず、結局山名氏に勝てなかった。
[編集] 高信の死に関して
[編集] 謎の多い死
前記5月18日付の吉川元春書状に記された、武田高信の織田方への内通は文面通りに受け取ることはできない。高信の死に先立つ天正3年11月頃に、毛利氏と但馬山名氏との和議は実質的には破棄されており、但馬山名氏は織田氏への接近をうかがわせていた。因幡の山名豊国も総領家・但馬山名氏に追随して織田氏に心を寄せていたと見られる。そのような状況下では高信が織田方に通じても、高信の再起にとっては何らのメリットもない。書状に伝えられるとおり、失地回復をねらって織田氏と結んだ高信が豊国に処断されたのか、それとも高信の叛意を警戒した豊国が織田氏への内通にかこつけて高信を抹殺したのか、高信の死の真相は謎に包まれている。
鳥取城を失ってからの武田高信の消息については不明な点が多く、天下統一期における因幡国の状況を解明するためにも、今後の詳細な研究が待たれる。
[編集] 高信の死の影響
すでに因幡での実力を失っていたとはいえ、高信の死の影響は各方面に影響を及ぼした。因幡国内では再び尼子党による騒乱が始まる。毛利氏の忠実な手駒として尼子党と対峙していた高信を結局は見殺しにしたことで毛利氏は信用を損ない、のちの伯耆南条氏の離反の一因になったとも考えられる。
[編集] 因幡民談記の伝える高信の死
『因幡民談記』が伝える武田高信の失脚と死は次の通りであり、従来はこれが通説とされてきた。
鳥取城を守護・山名豊国に明け渡した高信は鵯尾城に退いていたが、高信の叛意を警戒した山名豊国は天正6年（1578年）に、美作の草刈氏を討つと称して高信を佐貫の大義寺におびき寄せ、斬殺したと伝えられている。因幡民談記によると、高信の死は天正6年8月17日（1578年9月18日）という。
[編集] 関連書籍
- 高橋正弘『因伯の戦国城郭･通史編』（高橋氏の自費出版、1986年）
- 高橋正弘『山陰戦国史の諸問題・上』（自費出版、1993年）
- 高橋正弘氏は鳥取市在住の中世史研究家。現在残されている古文書をもとに因幡・伯耆の戦国史について的確な批判・考察を行い、因伯戦国史の再検証を図っている。この２冊には武田高信についても詳しく記されている。前掲書はそれぞれ『因伯の戦国城郭・遺構編』『山陰戦国史の諸問題・下』が続編として予定されているようだが、刊行が待たれる。
[編集] 外部リンク
- 『因幡民談記』『陰徳太平記』『雲陽軍実記』をもとにしながら、武田高信の生涯を詳しく解説している。
