気胸
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気胸(ききょう Pneumothorax)とは、胸腔内で気体が肺を圧迫し、肺が外気を取り込めなくなった状態である。
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[編集] 病因
多くは自然気胸(原発性自然気胸 Primary spontaneous pneumothorax および特発性自然気胸 Secondary spontaneous pneumothorax)で、肺胞の一部が嚢胞化したもの(ブラ Bulla)や胸膜直下に出来た嚢胞(ブレブ Bleb)が破れ、吸気が胸腔に洩れる事でおこる。胸痛をきっかけに受診することが多い。
年配の人の気胸の場合は肺気腫・結核・肺癌などの基礎疾患に伴う続発性気胸が多い。女性の場合は子宮内膜症が横隔膜や肺に広がり月経とともに剥がれ落ちて起こる、月経随伴性気胸の場合もある。交通事故などによる肋骨骨折が原因となる外傷性気胸や、中心静脈カテーテル穿刺などによる医原性気胸もある。
重傷の場合は静脈や動脈の損傷に伴う血気胸となり、左右のバランスが崩れる緊張性気胸では対側や心臓・大血管を圧排し、これらの場合では呼吸循環動態が極めて不安定なショックを呈することもある。
[編集] 疫学
自然気胸は、背が高く痩せ型の若い(10代〜20代)男性に起こりやすい傾向にあるが、背の低い人、太った人、年配の人、女性が発病する事も稀ではない。嚢胞が発生する原因や破れる原因ははっきりとは判っておらず、それ故に自然気胸と呼ばれる。喫煙・運動や気圧変化などによって肺に強い負担がかかったため、成長期に骨の急成長に肺の成長が間に合わず肺が引き伸ばされてしまったため、心的ストレスや睡眠不足等の生活習慣の悪化のため、などの説があるがどれも確証は得られていない。
その他、マルファン症候群やホモシスチン尿症などでも発症率の上昇が認められている。
[編集] 症状
多くは突然発症する。呼吸困難、酸素飽和度の低下、頻脈、動悸などが見られる。発症初期には胸痛や背中への鈍痛が見られることがあるが、肺の虚脱が完成すると胸痛はむしろ軽減する。緊張性気胸の場合は血圧低下、ショックを来たし、死に至る場合もある。
[編集] 診断
- 聴診において患側の呼吸音減弱が見られる。
- 胸部X線写真で血管影を伴わない空虚な領域は気胸と疑われる。血胸・血気胸では血液を含む胸水によるX線透過性の低下した像を認める。
- 胸部CTによって比較的大きな嚢胞であれば場所が確認できる。
- 胸腔穿刺は胸水の性状を確認するため施行される。
[編集] 治療
- 初期段階では安静にするのみで自然治癒を待つ。
- 軽度の気胸や止血された血気胸であれば、胸腔ドレナージ術による吸引を行う。これは胸腔内を脱気し肺が膨らみやすくなるようにするのが目的で、原因病巣の治療は自然治癒を含む他の手段に求める。
- 繰り返す自然気胸やドレーン後も改善しない気胸では、手術によって嚢胞の切除が行われる。胸腔鏡下で行われるのが一般的だが、開胸する事もある。事前に胸部CTで原因病巣と思しき大きな嚢胞を探して目標とする。しかし実際に破れたのはCTで確認できないような小さな嚢胞の場合もある。
- 化学熱傷をわざと起こす胸膜癒着術は、肺が潰れなくなるため根本治療となる可能性があるが、癒着が不十分であると再発の可能性が残る。再発時は癒着しなかった部分のみが潰れるため軽度の気胸に留まるものの、ドレーンが挿入できなくなる事がある。また手術を行う時は、癒着を剥がす必要があるために癒着のない場合より困難で、多くは開胸を要する。
- 緊張性血気胸・血胸では緊急手術となることもある。
- 緊張性気胸による呼吸困難に対し、人工呼吸は禁忌である。胸腔内圧を更に上げる事になり、肺の虚脱が亢進する。
[編集] 予後
基礎疾患の無い自然気胸でも、再発を繰り返す場合がある。再発率は自然治癒の場合約50%、胸腔鏡下手術の場合5〜10%、開胸手術の場合2〜3%と言われているが、人によって違いは様々である。閉塞性肺疾患などが基礎にある場合はさらに難治性となる。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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