X線写真
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X線写真(エックスせんしゃしん)・レントゲン写真は、エックス線を目的の物質に照射し、透過したエックス線を典型的にはフィルムに焼き付けることによって可視化し、内部の様子を知ることのできる非破壊画像検査の一種である。主に医療分野で実用化されている。単にレントゲンと言う場合もある。
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[編集] 原理
最も一般的に知られているX線写真では、X線照射装置とフィルムの間に体を置き、焼き付けて画像化する。X線は感光板を黒く変色させるため、体がX線を通過させた部分では黒く写り、体がX線を阻止した場合には、その部分が白く写る。通常の診療では、前者の黒く写った部分を「明るい」、後者の白い部分を「暗い」と表現するが、これはすなわち、肺炎や腫瘍などでは、X線透過度が低くなってフィルムに白い影を落とすところからきた表現である。X線の透過度が高い組織としては皮膚や空気(肺)、筋肉などがある。逆にX線の透過度が低いものとしては骨や、組織をより明瞭に描き出すために入れる造影剤がある。
感光剤を塗りつけたフィルムの代わりにセンサーを使う、フィルムレスのX線写真も、大病院をはじめ普及しつつある。
[編集] 医療分野での利用
レントゲンがX線を発見して以来、医療分野では、主に骨や肺の病変を描き出す画像診断として積極的に利用されてきた。主な利用法として以下のようなものがある。
- 骨折・骨病変の診断
- レントゲンは骨病変の診断に最も有効であり、2004年現在でも骨折の診断には最も有用な検査方法のひとつである。特に頭部・頚部や四肢の骨折で有用性が高い。
- 歯科的診断
- 歯も骨の一種であり、歯科診療の領域では頻繁に利用される。
- 胸部X線
- Chest X-ray(CXR)と呼ばれ、肺癌、肺炎、結核、胸水、気胸をはじめとし、非常に多くの肺病変の診断に利用されている。
- 腹部X線
- Abdominal X-ray(AXR)は、腸閉塞や腹水、腹腔内、胆石、尿路結石の空気の様子を診断するのに利用される。
- 造影X線写真
- X線を通さない造影剤(バリウムなど)を経口・経静脈的に投与したのちに撮影することで、普通は描出されない消化管や血管の様子をも描出できる。造影剤を使わないX線写真は、造影X線写真に対して単純X線写真と呼ぶ。
- 透視
- X線を連続的に照射し、テレビモニタを通じて映像を観察する。被曝量は多くなるが、病変によっては診断や治療に必要となる。
X線撮影に比べMRI、CTのほうが画像の有用性が高い場合もあるが、X線撮影は簡便性や経済性に優れており、現在でも検診など大部分の診療施設で用いられている。救急では、CTは従来は撮影時間が長かったが、ヘリカルスキャン、MDCTの登場で撮影時間が減り、単純X線写真の割合は減ってきている。また、放射光X線を用いたCTでは非常に細かい部分まで分かるので顕微鏡的な画像が期待されている。
[編集] 頭部所見
- 塩胡椒(salt and pepper)
- 頭蓋骨に細かく粒径の不ぞろいな粒々が見える事。
- 病態
- 異所性石灰化による
- 鑑別
- 打ち抜き像(punched out lesion)
- 多発性骨髄腫参照
[編集] 胸部X線写真
胸部X線写真では、心臓、肺、肋骨、縦隔、気管、気管支、等が見える。
[編集] 心陰影
心陰影(しんいんえい)は、心臓のX線写真像の事。
心陰影の上側(頭側)は縦隔と連続していて、境界ははっきりしない。下側(尾側)は横隔膜と連続していてはっきりしない。右側は2つの膨らみからなり、上から順に右第1弓(みぎだいいっきゅう)、右第2弓(みぎだいにきゅう)と言う。左側は4つの膨らみからなり、上から順に左第1弓(ひだりだいいっきゅう)、左第2弓(ひだりだいにきゅう)、左第3弓(ひだりだいさんきゅう)、左第4弓(ひだりだいよんきゅう)と言う。正常では
- 右第1弓は、上大静脈が写っている陰である。
- 右第2弓は、右心房が写っている陰である。
- 左第1弓は、大動脈弓が写っている陰である。
- 左第2弓は、肺動脈が写っている陰である。
- 左第3弓は、左心耳が写っている陰である。
- 左第4弓は、左心室が写っている陰である。
[編集] 胸部所見
- 気管支透亮像(air bronchogram)
- 気管支透亮像(きかんしとうりょうぞう)は、気管支が浮き彫りに見える事。
- 右第1弓拡大
- 右第1弓は上大静脈が写っている陰なので、右第1弓拡大は上大静脈が拡張する疾患で見られる。
- 右第2弓拡大
- 右第2弓は右心房が写っている陰なので、右第2弓拡大は右心房が拡張する疾患で見られる。
- 左第1弓拡大
- 左第1弓は大動脈弓が写っている陰なので、左第1弓拡大は大動脈弓が拡張する疾患で見られる。
- 鑑別
- 左第2弓拡大
- 左第2弓は肺動脈が写っている陰なので、左第2弓拡大は肺動脈が拡張する疾患で見られる。
- 鑑別
- 心房中隔欠損症 : 高圧系の左心系から低圧系の右心系へ心房中隔欠損孔から血液が流れてくる事による左→右シャントにより、肺動脈の高血圧が生じて、肺動脈が拡張する。
- 左第3弓拡大
- 左第3弓は左心耳が写っている陰なので、左第3弓拡大は左心耳が拡張する疾患で見られる。
- 左第4弓拡大
- 左第4弓は左心室が写っている陰なので、左第4弓拡大は左心室が拡張する疾患で見られる。
- 鑑別
- 左室肥大 : 左心室が肥大する。
[編集] 腰椎所見
- ラガージャージ(rugger jersey)
- 腰椎がラグビー選手が切るジャージの様な横縞模様に見える事。
- 病態
- 異所性石灰化による。
- 鑑別
[編集] 骨軟部所見
- 多胞状骨融解像(soap-bubble appearance)
- 多胞状骨融解像(たほうじょうこつゆうかいぞう)は、骨が石鹸の泡の様に見える事。
- 鑑別