水滸伝 (漫画)
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『水滸伝』(すいこでん)は横山光輝の漫画作品。1967年から1971年にかけて潮出版社の希望ライフおよび希望の友に連載された一連の中国物の第一弾であり、中国四大奇書の1つである『水滸伝』(水滸傳)を漫画化したものである。現在同社から単行本全八巻、文庫版全六巻が発行されている(単行本の内本編は第七巻までで八巻には後に描かれた武松、項充、樊瑞をそれぞれ主人公とした外伝三本が収められている。文庫版には四,五,六巻の巻末に一話ずつ収められている)。百二十回本を準拠にほぼ原作に忠実に進行するが、少年誌という性格上残虐描写、性描写は殆ど削られており、また随所に改変、省略が見られる。また当時は日中国交正常化前だったため資料不足からか細かな誤りも見受けられる。
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[編集] 登場人物
好漢
- 公孫勝 終始「一清道人」と呼ばれている(ただ、樊瑞の外伝で、公孫勝と呼ばれたことはある)。こちらも小柄で丸坊主、ガリガリで目つきはギョロリとしている。当初はややヤクザらしい性格だったが、文庫版第3巻以降は、多少貫禄がついてきた。道士というより禅寺の修行僧のような衣装をしている。後述するが作者が彼と劉唐を混同していたらしく始めは妖術が使えず拳法で戦っていた。途中山に戻ってから術が使えるようになる。
- 林冲 登場するたびどんどん若返り、後年の「三国志」の劉備そっくりになる(ちなみに脚本家の三谷幸喜は「三国志文庫版」のあとがきで、劉備がどうしても林冲に見えてしまい好きになれなかったと語っている。)行動などはほぼ原作通りだが得物が蛇矛ではなく棍になっており、これは資料不足で作者が蛇矛の形状を知らなかったためとおもわれる(事実「三国志」の張飛も官渡の戦い直前あたりまで蛇矛ではなく薙刀のようなものを得物にしている)。
- 柴進 筆者の描く紳士の特徴を持つ容姿。原作とほぼ同じ。李逵が柴進邸に居た理由は朱仝との対立を避けるためではなく、林冲が柴進の所へ礼を述べるためやって来た時李逵もついてきて林冲は仕事が出来て先に帰り、柴進に引き止められたため李逵だけが滞在を延長したためとされている。
- 魯智深 日本的な衣装の荒くれ坊主。肉屋を殺した経緯は同じだが五台山へは向かわず荒れ寺の追い剥ぎを倒したあといきなり東京へ向かって相国寺で出家する。また二竜山入りへの経緯は省略されている。原作より若干影が薄い。得物である六十二斤の禅杖は金棒の先に輪を付けたいわゆる錫杖の形で描かれているが、本来は棒の片端に三日月型の刃、もう一方にスコップ型の刃の付いた形で、別名「月牙産」である。
- 誤植があり、文庫版第1巻で、柴進邸での洪教頭とのやり取りの際、「やめとけ」が「やとめけ」になっている。
- 武松 精悍な青年と言った容姿。水滸伝でも有名な人物にもかかわらず本編には名前すら登場せず、後に外伝が一話立てられている。理由は様々だが「武十回」が他の物語との整合性が薄く武松もそれ以外は目立った活躍が無いこと、そして姦通や大量殺戮などが少年誌という性格上当時としては好ましくない内容であったためと思われる。
- 外伝と原作の相違点はまず宋江との邂逅が省かれている。潘金蓮は原作より悪女振りが強調されていて事件の主犯格になっている。また美人局の王婆さんは登場しない。殺害方法も毒殺による死体の腫れをごまかすため、買収したごろつきに命じて武大にひどい暴行を加えさせそれが死因に見えるようにするなどより周到になっている。西門慶に対する仇討ちの舞台は酒屋から西門慶の邸宅に変わっておりそこに居た汚職役人や屋敷の使用人も皆殺しにされており、原作の鴛鴦楼のエピソードと織り交ぜたものとなっている。
- 楊志 痣は左半面にべっとりとついており細身で目つきは鋭い。再登場時は前髪の形がかわり、瞳の色が抜けている。ゴロツキを殺害した後、北京へは向かわずそのまま行方をくらます。そのため生辰綱を奪われるのは名も無い武官である。
- 索超 白目に二本の口ひげ。楊志が北京へ行かないため御前試合の場面は無く、後半に梁山泊を迎え撃つため登場。同僚の李成の方が目立っており影が薄い。李成の口から梁山泊に捕らえられた事は言及されるが、梁山泊入りした事には触れられていない。
- 戴宗 糸目で短身痩躯。濃い眉とモミアゲが特徴的。行動は原作とほぼ同じだが飄々とした兄貴キャラがさらに強調され作中屈指の人気を持つ。
- 劉唐 赤毛で目は前髪で隠されており、伊賀の影丸などに登場する忍者と酷似した容姿を持つ。前述の通り作者が公孫勝と混同したせいで最初は妖術使いとして登場、活躍したが後半は原作どうり公孫勝が妖術使いとなり、原作の豪傑性も持ち合わせていなかったせいで後半は背景と化してしまった。
- 李逵 終始「鉄牛」と呼ばれている。全身真っ黒で顔の輪郭もパーツも体もでかい。ただ髭はない。原作で時折見せる残虐性は垣間見られず粗忽者だが腕は立つと言う日本人にも受け入れられやすい愛嬌のあるキャラになっている。
- 史進 眉太くモミアゲの濃い若者。原作とほぼ同じだが、梁山泊入山の経緯は割愛され、後半は原作以上に影が薄い。死亡シーン有り。外伝では項充に敗北する。
- 穆弘 口ひげを生やした目付き鋭い男。宋江との邂逅シーンは変更され李俊と同時にまとめられている。以後名前しか登場しない。
- 李俊 顎鬚を生やしマントを羽織った精悍な男。原作どおり宋江と出会うが、それから入山までの活躍は割愛され以降名前しか登場しない。
- 黄信 花栄と宋江を護送中に清風山の山賊に奪われてしまった後、原作では上司の秦明が討伐に向かうが、本作では黄信が自ら討伐に向かう。討伐に失敗してから仲間入りする過程も原作での秦明のエピソードに沿っている。
- 項充 本編には登場せず、三本ある外伝のひとつに登場する。容姿は、後年の三国志に登場する曹操に似ており、三日月の飾りが付いた兜を持つ若武者。文庫版の三国志、項羽と劉邦、水滸伝にはおまけとして栞が一枚挿んであるが、文庫版五巻に登場する項充は、外伝の人物にも関わらず特別に栞にデザインされている。
- 特別に氏による幼少時代の話が追加されており、小作料をきつく取りしぼり、母を奪い、幼い弟を死なせた地主を殺害して芒碭山へ向かうという内容になっている。
- 李忠 序盤で史進の昔の棒術師範として登場する際にはナマズひげの間の抜けた顔をしているが、桃花山の山賊として再登場した際には全く面影の無い凶悪な顔つきになっている。相棒の周通の顔立ちが以前の李忠によく似ているのと終盤・原作での李忠の死亡場面で周通が死亡しているため、両者を取り違えた可能性が考えられる。
[編集] 登場しない好漢
[編集] その他原典との相違
[編集] 関連項目
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