浮島
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浮島(うきしま)とは、池沼で水草などの植物の遺骸が積み重なり泥炭化して、水面に浮いているものをいう。世界的に多数分布し、なかには面積数ヘクタールに及ぶものもある。自然のものが圧倒的に多いが、人工の浮き島も存在する。
[編集] 成因
浮島は熱帯から寒帯まで見られ、その成立や素材は地域によって異なる。
寒帯ではミズゴケなどの生育する湿地で、分解されにくい植物質が蓄積し、その表面で成長がおこなわれるうち、下面が水底に届かない部分が水面に広がるようになり、それが切り離されると浮島となる。
暖帯や熱帯ではアシ、フトイ、ガマなどの抽水性の水草は比較的水深の浅いところに生育するが、水深が深くなると根が底質を離れて浮いたまま生育することがある。これが長期間続き、嵐などで岸から離れると、島のようになる。大きくなるとその上に水草以外の植物からなる植生が生じることも多い。
日本では新宮市の「浮島の森」が最大(約0.5ヘクタール)で、上には木が生えている。この場合、地下にわき水があり、水温が低いため、植物質の分解が遅くなり、浮島化を助けたとも言われる。ごく小規模のものは他にもある。
[編集] 人工浮島
人工の浮島は水草を積み重ねて作るもので、最も有名なのはウロス族の人々がトトラ(フトイに近縁の植物)で作るチチカカ湖の浮島である。彼らは新しいトトラで修復を繰り返しながらその上に住んでいる。彼らは元来、近隣の民族による侵攻を防ぐためにこれを始めたといわれる。
アステカの首都テノチティトラン(現メキシコシティ)の周囲にはチナンパという人工の農耕用の島が多数あった。これも浮島と呼ばれることもあるが、実際には泥土が積み重ねられるため埋立地となったものである。