海潮音 (詩集)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
海潮音(かいちょうおん)とは、上田敏が1905年10月、本郷書院より出版した訳詩集。雑誌帝国文学や明星上で発表したイタリア・イギリス・ドイツ・フランス・プロヴァンスといった海外の詩の翻訳したものをとりまとめている。特に当時文壇の注目を集めていたフランス象徴主義に代表される詩人の作品を、象徴詩として紹介している点で有名であり、日本の象徴詩の隆盛の一端を担った。但し、「象徴詩」として紹介されたのは僅かに七編の作品のみであり、他には高踏派の作品やシェークスピアのWinter's taleの一節など敏が得意とする英文学の詩人の作品がある。特にテキストの一遍目と最後の編はダンヌンチオの詩で統一されており敏の傾倒ぶりを見て取れる。
カール・ブッセの作品「Pipa Passe」の劇中歌を翻訳した「山のあなた」や、ポール・ヴェルレーヌの「Chanson d'Automne」の翻訳「落葉」は国語の教科書で採用・紹介しているものもあり、有名である。