液化石油ガス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
液化石油ガス(えきかせきゆがす)LPガス、LPG(Liquefied petroleum gas)とは、ブタン・プロパンなどを主成分とする圧縮することにより常温で容易に液化できる気体燃料のことである。一般にはプロパンガス(propane gas・和製英語)ともよばれる。液化石油ガスの名前から「完全な石油生成物」と誤解されやすいが天然ガス随伴など石油由来以外のものも世界的に約半分を占める。多様なエネルギーソースを持つガス体燃料である。
目次 |
[編集] 精製・貯蔵・輸送・販売
油田・天然ガス田または製油施設などの副生ガスから不純物を取り除き、簡単な圧縮装置や冷却容器で液化する。圧縮圧力はブタン0.2MPa(約2気圧)、プロパン0.8MPa(約8気圧)で容易に液化でき、体積は気化ガス時の250分の1になり、可搬性に優れる。このときのガス自体は無色、無臭の気体である。耐圧の低いタンクで貯蔵・輸送が可能である。
また、ガスが漏れると爆発を起こしやすく危険なことや、さらに、比重が空気より重く下に滞留するためガスが漏れた際に感知できるようメルカプタン等を添加して着臭(タマネギの腐ったような臭いと表現されることが多い)し最終消費者へ供給される。
大量輸送の場合は、専用船・タンクローリーが使用される。LPG自動車は専門のガス(ガソリンではない)スタンドが「LPガススタンド」として存在する。(日本では約1900ヶ所)小分け配送の場合10キロや50キロのボンベに詰められる。家庭用は、米穀店(米屋)や灯油などの燃料店や酒屋が兼業しており、一緒に配達される。また、携帯用燃焼機器用に専用容器に充填して販売されている。
販売に当たっては、カセットボンベなどの一部を除き、液石法に基づき、経済産業大臣または都道府県知事への登録が必要となる。なお、簡易ガスの場合はガス事業法の適用し経済産業大臣の事業許可及び料金認可を得らければならない。
1997年にはバルク供給システムも認可されており、最終消費者に貯槽を設置し、その貯槽へのガスの直接供給・運搬装置として、バルクローリーが使用される。
[編集] 用途など
- 都市ガスの熱量調整などの原料。
- 天然ガス燃料の1つ:家庭用のコンロ・風呂、業務用機器のなど熱源
- 主成分はプロパンで着臭剤により玉葱が腐ったような臭いを付けてある。供給形態は、シリンダー(ボンベ)供給、
小規模導管供給、簡易ガス(大規模導管供給)、バルク供給、都市ガスなどがある。災害時の復旧が早い事や火力が強い事などが長所であるが、一般的に都市ガスよりも価格が高いと言う短所もあるが会社によっては特別料金(ファンヒーターやストーブ)マイホーム発電エコウィル、温水セントラルシステム及びGHP(ガスヒートポンプエアコン)を使うと一般料金に比べ割安になる場合もある。但し簡易ガスが認可料金適用されているので適用されない場合がある。
- 土木工事用の加熱バーナーの燃料
- 一部地域での火葬場の火葬炉の燃料あるいは緊急用燃料
- 携帯用燃焼機器用(カセットコンロ・発電機・ライターガスなど)
- 主成分はブタン。
- LPガス自動車の燃料
- 日本では主にタクシーだが(約23万台・全タクシーの95%)、LPGバス・トラック(約3万台)・約2万台のマイカーも存在する。日本でのLPG車保有台数は約30万台。世界では約1050万台あり、日本・韓国・香港等ではタクシーでも使用されている。韓国では195万台(総自動車の約23%)がLPG車でタクシーはそのうち日本と同等の23万台で残りはマイカーである。その他の国では欧州等殆どがマイカーである。ガソリンを予備燃料とするバイフューエルも欧州では多い。自動車用はブタン8:プロパン2の混合ガスで「オートガス」とも呼ばれ、オクタン価はハイオクガソリン並以上の105程度。タクシーに乗った際の臭いは、前述のガス漏れ検知用の臭い成分が燃焼により化学変化を起こしているためだが、最近は排出ガス規制強化で無臭になりつつある。LPガススタンドでの販売価格は1L単位で販売し、1L=60円~70円程度とガソリン・軽油に比べて安価。
- 火力発電の燃料の一つ。
- 万一漏れて爆発した場合、強烈な爆風が発生し鉄筋コンクリートの建築物でさえ粉々に破壊する威力を持つ。そのためガスが漏れた場合に備え、ガス漏れ警報機を設置するが空気より重いガスのため警報機は床面近くに設置する必要がある。
- テレビ朝日が放送した「西部警察」では爆破シーンが頻繁に出てきたがこのシーンを再現するためにボンベを建物内に持ち込み、ガスを充満させて爆発させる手法も使われた。
[編集] 規格
日本工業規格では、7種類の規格がある。(JIS K2240:1991 液化石油ガス(LPガス))
- 1種 : 家庭用燃料及び業務用燃料 1号から3号
- 2種 : 工業用及び自動車用燃料 1号から4号
この他に自動車用としては、日本LPガス協会自主規格がある。
[編集] 関係法令
- 液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律(昭和42年(1967年)12月28日法律第149号)
- 高圧ガス保安法(昭和26年(1951年)6月7日法律第204号)
- ガス事業法(昭和29年(1954年)3月31日法律第51号)
- 計量法
- 消防法