灯油
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灯油(とうゆ)とは、沸点範囲が170~250℃程度の石油製品(および中間製品)の総称である。日常生活では灯油を「石油」と呼ぶことも多い。
ジェットエンジンやロケットエンジンの燃料用のものは、ケロシンと呼ぶことが多い。
元来は灯のための油のことであり、このときはともしびあぶらと読む。
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[編集] 概要
原油の常圧蒸留およびその後の精製によって得られる製品である。無色透明の特有の臭いのする液体で、主成分は炭素数9~15の炭化水素である。硫黄分80ppm以下、引火点は40℃以上で取り扱いが容易であるため、家庭用の暖房機器や給湯器の燃料に使われる。また工業用、産業用途として洗浄、溶剤にも用いられる。
また、精製度を高めたものは航空機のジェットエンジンなどの、ガスタービンエンジンの燃料に使われる(ケロシンを参照)。一般に身近な動力源としての自動車に使われる燃料がガソリンであるゆえ、その連想としてジェットエンジンの燃料もガソリンであるとの誤解が多いが、油種としては灯油が最も近い。
[編集] 性質
引火性があるが、引火点は常温より高いため常温では引火しない。しかし引火点以下の状態にあっても霧状の粒子となって空気中に浮遊することがあるため、この時はガソリンに匹敵する引火性を持つ。人体の影響としては皮膚炎や結膜炎を引き起こすことがある。
[編集] 取り扱い
強酸化剤と一緒に貯蔵したり、ガソリンを混入することは避ける。換気に注意し、蒸気の発生に気を付ける。又、直射日光をさけ、膨張による流出を防ぐため、冷暗所に保存する。ポータブルストーブ等の精密燃焼器に利用する場合、黄色に変質していたり、臭いが変わっている場合は機器の故障の原因となる可能性があるため、使用を避けるべきである。
[編集] 品質
灯油の品質は日本工業規格 (JIS)で規定されている。
- 1号灯油
- 一般に利用されるものは精製度が高く不純物(特に硫黄分)が少ないという意味で、「1号灯油」通称「白灯油」の名称が与えられている。1号灯油に要求される品質は、発煙性成分が少なく燃焼性がよいこと、燃えカスがでないこと、刺激臭等がないこと、適当な揮発性を有していることとされている。
- 2号灯油
- 精製度が低く淡黄色をしており、主に石油発動機用の燃料であった。その色から「茶灯油」とも呼ばれる。2005年時点では日本国内で生産・流通されていない。
硫黄分 | 0.008質量%以下(80ppm以下)(1996年以前150ppm) (2号灯油は0.05質量%以下(500ppm以下)) |
引火点 | 40℃以上 |
色(透明度=セーボルト色) | +25以上 |
95%流出温度 | 270℃以下(2号灯油は300℃以下) |
煙点(えんてん) | 23mm以上(11月~4月は21mm以上) |
銅板腐食(50℃で3時間測定法) | 1以下 |
[編集] 販売
冬の寒さが厳しい北海道・東北地方を主体に一般家庭での利用が多いため、ガソリンスタンド(一部店舗と高速道路内のサービスエリア・パーキングエリアを除く)のほか、ホームセンターや米穀店、生協、移動販売など広い販路で販売され、家庭への配達が行われることが多い。
特に北海道・東北では、一世帯あたり平均で年間約1500~2000リットル程度の灯油を消費することから、一軒家に500~1000リットルクラスの灯油タンク(ホームタンク)が常備され、家屋内のストーブ、ボイラー等に自動的に給油されるシステムを持つことが一般的である。そのため、灯油が切れるとタンクローリーを呼んで、ホームタンクに給油を行ってもらう光景をよく見かける。
ガソリンスタンドでは灯油の販売機会が少ないためか、まれではあるが間違えてガソリンを販売するミスが発生し騒ぎになることがある。近年では価格の安いセルフ式のガソリンスタンド、ホームセンターでの持ち帰り購入が増えている(2004年現在)。
[編集] 「ともしびあぶら」としての灯油
古来より神事等に使用されてきた灯油としては、魚油、榛油、椿油、胡麻油等が使用されてきたが、9世紀後半に離宮八幡宮の宮司が荏胡麻(エゴマ)の搾油機を考案してからは荏胡麻油がその主流となった。17世紀以降は荏胡麻油に替わり菜種油や綿実油が灯油として主に用いられるようになった。
[編集] 各国語での呼称
英語でのその他の呼称
- Coal oil
- Range oil
- Stove oil (カナダ)
((英語版Wikipediaを参考Kerosene)から)