湯豆腐
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湯豆腐(ゆどうふ)は、豆腐を使った料理の一つ。冬の代表的な鍋料理のひとつ。
鍋に昆布を敷き、水を張った中に一口大に切った豆腐を入れ、温まったところを引き揚げてつけダレで食べる。あまり長く煮ず、豆腐がぐらりと動いた程度で食べるのがよいとされる。 なにしろ豆腐、水、昆布だけが材料であるからそれぞれに高品質なものが求められる。特に水が良質であることは絶対条件であり、京都のものが名高いのもその所以である。
つけダレには、醤油、または醤油、酒、みりん、出汁等を合わせたもの、あるいはポン酢醤油などが用いられ、薬味としてネギ、ユズ、大根おろし(紅葉おろし)、削った鰹節などがよく用いられる。
塩ひとつまみ、あるいは刻んだ大根をいれると豆腐にスが入らず、やわらかく仕上がるという。豆腐と一緒にハクサイや鱈の切り身を煮る場合もある。しかしあまり味の濃いものをいれると淡味が身上のこの料理が台無しになってしまうとされる。
主に冬に食べられることが多いが、夏の鍋として食べる人もいる。池波正太郎は小説の中で登場人物に、梅雨時の冷える日に食べさせており、「梅雨の湯豆腐」という短編作品もある。食通の池波らしく、あるときは焼き干しの鮎を出汁に使うと言う贅沢なものもあった。
なお、江戸時代の料理本「豆腐百珍」に「絶品」とある「湯やっこ」は、湯豆腐の湯のかわりに葛湯を使い、食するまで冷めにくく、豆腐と葛湯の相性を楽しむもの。
湯豆腐を詠んだ名句に久保田万太郎の「湯豆腐やいのちのはてのうすあかり」がある。