出汁
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出汁(だし)は、調味料の一つで、料理に甘・酸・苦・鹹の味覚に加えて、肉や野菜、キノコや海藻に含まれるうま味を抽出して加えるための液体。うま味成分である呈味性のアミノ酸や核酸を豊富に含み、栄養上の価値も高い。
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[編集] 日本料理における出汁
日本料理において、出汁は最も基本的な材料のひとつである。日本料理では主にコンブ・鰹節・鯵節・煮干し(いりこ)・あごなどを煮て作るほか、干し椎茸などの乾物を水に浸して徐々に成分を抽出する方法が用いられる。鶏肉やスッポン、ウミガメを使うことも稀にある。精進料理においては、コンブ、椎茸の他に、大豆、モヤシ、六条豆腐(塩蔵した乾燥豆腐)なども用いられる。(西洋料理でいうフォンやブイヨン、中国料理でいう湯(タン)にあたるが、それらの料理では素材を長く煮詰めることが多い。中国料理・西洋料理における『出汁』については下に記述) 日本料理の出汁は、しばしば短時間で素材の風味を抽出し利用することが多く、特徴的である。
鰹節で出汁を取る際には、鰹節を投入してすぐ火をとめ鰹節が沈むのを待って漉(こ)して取る一番出汁(いちばんだし)と、一番出汁の後の鰹節に再び水を差し火にかけて取る二番出汁(にばんだし)とがある。一番出汁は澄まし汁、二番出汁は味噌汁や煮物に用いる。
出汁は上記の汁物のほか、おでんなどの鍋料理に用いる。また酢などを割って二杯酢・三杯酢を作り、あるいは和え物の和え衣に少量を加えることもある。 なお、讃岐うどんにおいて「出汁」と表記する場合は、上記の意味ではなくうどん用のつゆそのものを指す場合が多い。また香川県ではつゆの作成のために出汁の成分をそのまま醤油に抽出させただし醤油というものが、よく家庭に置かれている。
沖縄料理では、鰹出汁と昆布出汁の他、豚の三枚肉を茹でた茹で汁を濾して豚出汁としてよく用いる。
[編集] 西洋料理における出汁
牛・鶏・魚および野菜・香草類などを素材として作る。肉のほか、すじ肉や骨も使い、オーブンでこげ目をつけた上で長時間煮込む。においを取るためにブーケガルニと呼ばれる香草類のセットを用いる(パセリ、タイム、ローリエ)。 フランス料理では、子牛を素材として使ったものはフォン・ド・ヴォー、仔羊のものはフォン・ダニョー、シカ、イノシシ、ウサギやウズラなど野鳥獣のものはフォン・ド・ジビエ、鶏のものはフォン・ド・ヴォライユ、魚のものはフュメ・ド・ポアソンと呼ばれる。
[編集] 中華料理における出汁
中国の料理では、鶏肉、鶏がら、豚肉、中国ハム、貝柱、干し海老などが材料としてよく使われる。
[編集] 韓国料理・朝鮮料理における出汁
牛肉、鶏肉などが材料としてよく使われる他、煮干し出汁や貝の出汁も用いられる。
[編集] 簡易的な出汁
近年では、上記の方法で出汁を取ることが長時間かかる作業であるという理由から、科学的に旨味成分だけを取り出したものが広まっている。大きく分けて2種類あり、液体、固体に分けられる。多くはうまみ調味料と呼ばれる。
[編集] 液体出汁
各種の液状の出汁が、瓶・袋入りで市販されている。多くは濃縮液となっており、使用時に水を加えて薄める必要がある。うどん・汁物・鍋物用の白だし、煮物用の朱だしなどが市販されている。
[編集] 固形出汁
水分を飛ばして粉末や固形に加工した出汁である。カツオの旨味成分であるイノシン酸のみを取り出し、食塩を加えて粉末状にしたものなどが有名。市販の製品としては味の素の「ほんだし」などのカツオ風味や、鶏がらスープ、ブイヨン、コンソメなどの種類がある。(総称的に『味の素』と呼ばれることが多いが、この名は登録商標である。)
[編集] 出汁パック
基本的に、上の二つとは製法が異なるが、短時間で出汁を取る為の製品である。鰹節、コンブなどの材料を紙などの袋に入れ、熱湯に入れて出汁を取る。
[編集] 関連項目
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