準ひきこもり
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準ひきこもり(じゅん-)は富山国際大学専任講師樋口康彦が論文『大学生における準ひきこもり行動に関する考察』に中で提唱した概念である。インターネット上では準ヒキと略され、樋口本人も使用している。
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[編集] 概要
論文[1]によれば「大学には真面目に登校するものの家族を除く他者との交流がほとんどなく、対人的な社会経験が不足している状態」をいい、ニート、フリーター問題の隠された要因になっていると指摘している。引きこもりのように部屋に閉じこもるわけではなく、問題が顕在化するのは就職活動期や大学卒業後という。2006年、論文のPDFがネット上に公開され、2ちゃんねるなどインターネット上で話題となった。同年、さらに講談社+α新書から『「準」ひきこ森』が出版された。
なお、著者によると、本人も過去に準ひきこもりであったと告白している。
[編集] 特徴
著者によれば、準ひきこもりは以下のような特徴を持つと主張する。[2]
- たくましさに欠けるため、社会で期待されている男性役割を身に付けていない
- 自己中心的で視野狭窄の傾向
- 被害者意識が強い
[編集] 批判
以下に準ひきこもりに関する主な批判を列挙する。
- 学術的な検証がなされていない点
- 提唱者本人が心理学の専門家でない点
- 「準ひきこもり」の判断基準が恣意的である点[3]
- 特徴的な自閉傾向とオタク趣味(マンガやアニメ)の強い相関関係を主張している点
- 男性差別的な傾向(男性にたくましさを要求している点)[4]
- 強い偏見的表現が散見される点[5]
- 交友関係の少なさを極端に否定的に捉えている点
- 著者の独断による決め付けが多い点[6]
- 学術論文というよりは、随筆に近い点
- 「準ひきこもり」に対する批判が中心であり、具体的な解決方法を提示していない点[7]
内藤朝雄は、東京新聞の取材に対して「『社会性』なるものをビジネスで成功しやすいタイプに限定した上で、どこにでもいそうな、ちょっとズレているボンヤリ系の若者に印象的なレッテルを張って、新しく『問題化』しようとしている」と批判している。
[編集] 解決法
著者の主張する準ひきこもり状態からの脱出の方法は以下の通りである。
- サークルやボランティアで人との交流を積極的に持つこと[8]
- 髪を美容室で切ってもらったり、ブランド品(時計やネクタイなど)を身に付けること
- 大学教授や公務員など自己主張に乏しくても勤まる職業に就くこと[9]
また、問題解決が不可能と思われる場合は、ブルーカラー的な単純肉体労働に従事すると良いとしている。
[編集] 脚注
- ^ 何らかの学会で公式に発表されたものではなく、富山国際大学の紀要に掲載されいるに過ぎないため、学術的には「準ひきこもり」を肯定ないし否定する批判的検証がなされていないのが現状である。
- ^ 統計年月日、サンプル数、調査対象、調査方法、因果関係等が不明
- ^ アマゾンに寄せられた書評には、「著者の挙げている準ひきこもりの要件にまったく当てはまらない人のほうが少ないのでは」という意見が掲載されている。
- ^ 女性に「女性らしさ」を求めることは女性差別とみなされる現代社会においては、男性に「たくましさ」を求めることが同様に「男性差別」となるのではないかという批判。
- ^ 「妄想と現実を行き来」という文言や、準ひきこもりが変態性欲やストーカー的な性癖を持っていると受け取れる表現がある。
- ^ 対人関係が苦手であることを特別な論拠もなく「母親に甘やかされているため」とか「自己中心的であるため」と断言している。
- ^ 著者によれば、「気付いたときは手遅れになっている可能性が高い」とされる。
- ^ 交流を長期間持続できないければ、準ひきこもりとなってしまう点に留意すること。
- ^ あくまで著者の意見であり、大学教授や公務員がそのような性質の職業であるとは限らない点に留意すること。
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- 「準」ひきこ森―人はなぜ孤立してしまうのか?(著者:樋口康彦 講談社) ISBN 4-06-272405-7
- 2006年7月13日付東京新聞