漆紙文書
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漆紙文書(うるしがみもんじょ)とは、使用済みの紙を漆の入った容器の蓋紙にし、それに漆が付着したことによって廃棄されたあとも腐らずに残った古代の文書。全国的には1973年(昭和48年)に多賀城跡(宮城県多賀城市)で見つかったのが最初の例。
当時、紙はたいへん貴重であったので、廃棄文書はさまざまな形で再利用したものとみられるが、いっぽうで漆は空気に長い間さらすと固まってしまう性質があるので、紙を蓋にして曲げ物や陶器などの容器に糸などで縛って密閉することが多かったと思われる。固着した漆の保存力のおかげで土中でも腐食が免れた文書だが、そのため、その部分だけ(蓋のかたちだけ)が残っており、だいたいは円形を呈する。
肉眼では解読が不可能で、赤外線カメラを用いて解読作業をおこなう。
このように、漆紙文書は不完全かつ部分的な資料といえるが、読み書き能力の備わった人がごく少数であった古代にあっては、木簡や墨書土器などとともに貴重な文字資料となっている。いくつもの偶然が重なって残った遺物であることは疑いない。
手紙などのほか戸籍・計帳・死亡帳など当時の公文書も見つかっている。
[編集] 漆紙文書出土遺跡
- 藤原京跡(奈良県)
- 平城京跡(奈良県奈良市)
- 長岡京跡(京都府向日市・長岡京市・京都市)
- 平安京(京都府京都市)
- 太宰府跡(福岡県福岡市)
- 多賀城跡(宮城県多賀城市)
- 胆沢城跡(岩手県奥州市)
- 山王遺跡(岩手県奥州市)
- 秋田城跡(秋田県秋田市)
- 払田柵跡(秋田県大仙市)
- 城輪柵跡(山形県酒田市)
- 鹿の子遺跡(茨城県)
- 下野国府跡(栃木県)
- 磯岡遺跡(栃木県上三川町)
- 矢部遺跡(群馬県太田市)
- 東今泉鹿島遺跡(群馬県太田市)
- 社宮司遺跡(長野県)
- 吉田南遺跡(兵庫県)
- 弥布ヶ森遺跡(兵庫県)
- 出雲国府跡(島根県)
など
[編集] 関連項目
- 平川南
- 考古資料