物権
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物権(ぶっけん)は、特定の物を直接的に支配する権利。特定の者に対して特定の行為を請求する債権と対比される概念。
目次 |
[編集] 物権の種類
日本国の民法上の物権
- 占有権
- 本権(占有を法律上正当づける実質的な権利)
[編集] 物権に関連する各種の法概念・法原則
[編集] 物権の排他性
同一物に対しては、同一内容の物権は、一つしか成立しない。同一の物に対して同一内容の物権が複数成立すると、物への直接的支配が失われるからである。このような性質を物権の排他性、一物一権主義と呼ぶ。
[編集] 物権の優先的効力
一般に物権は内容の抵触する債権に優先する。これを物権の優先的効力という。もっとも、この優先的効力は特別法により相対化されており、たとえば借地借家法により対抗力を有する借地権は借地権の対抗要件具備より後に生じた物権変動に対抗し得るとされている。
[編集] 物権的請求権
物権の内容の円満な実現が妨げられ又は妨げられるおそれがある場合、物権を有する者はその様な事態を生じさせている者に対して、妨害を除去・予防するために必要な行為を請求することができる。この請求権を物権的請求権、または物上請求権と呼ぶ。
物権的請求権の理論的根拠については学説上の対立があるが、物権の排他性から認められると説明されるのが一般的である。また、条文上の根拠としては占有訴権の規定の存在に求めることもできる。
一般に物権的請求権の種類として、返還請求権、妨害排除請求権、妨害予防請求権の3種が認められている。
なお、物権同様の排他性を理由に人格権についても妨害排除請求権や妨害予防請求権が認められている。
[編集] 物権法定主義
法律で定められたもの以外の物権を新たに創設することはできないとする法原則を、物権法定主義と呼ぶ。
古くは、物権法定主義は、封建的権利を廃止し、個人の所有権の自由を確保するために制定されたものと説明されてきた。現在では、物権は債権に優先する効力を有し、また制度上債権以上の保護をあたえられているため、各人が自由に物権を創出し得るとすると法制度の混乱を招くために、このような原則が設けられていると説明されることが多い。
物権法定主義にいう「法」は、民法に限られず、たとえば商法、鉱業法、漁業法などによって規定される物権もある。また、成文法に限られず上記の物権法定主義の趣旨に反しない限りにおいて、慣習法上の物権も判例により認められている。慣習法上の物権として入会権、温泉権がある。
[編集] 対抗要件主義
- 動産に関する物権の譲渡の対抗要件(民法178条)