田中覚

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田中覚（たなかさとる、男性、1909年 12月15日 - 2002年 8月10日）は、日本の政治家で、三重県知事（5期）、衆議院議員（1期）を務めた。三重県出身、東京帝国大学卒。元四日市市長の加藤寛嗣は従兄弟。昭和19年（1944年）佐藤喜代子と結婚、2女をもうける。死別後の昭和50年（1975年）には三木睦子の妹三重子と再婚。

明治42年（1909年）12月15日、三重県四日市市に生まれる。塩浜尋常小学校、塩浜高等小学校、三重県立第二中学校（現・四日市高校）から東京府立第五中学校（現・小石川高校）へ転校し、第八高等学校 (旧制) を経て東京帝国大学農学部農業経済学科を卒業。

昭和9年（1934年）農林省（現・農林水産省）に入省後、昭和15年（1940年）応召するも3年後に帰還し、戦後は経済安定本部（後の経済企画庁）に出向して加工食品課長を務める。昭和25年（1950年）三重県へ出向し農林部長、農地部長、企画本部長を兼務し、宮川総合開発事業に携わった。昭和28年（1953年）に農林省に戻り官房調査課長に就くが、昭和30年（1955年）に辞職して4月の三重県知事選に出馬した。このときは自由党・民主党が現職の青木理を推したため、右派社会党・左派社会党の支援を得て初当選。この時42歳で当時としては全国最年少知事。この知事選では社会党の支援を得たが、県議会では保守系の農政会や自由民主党が与党となった。

5期17年の任期中は、道路整備、治水、観光開発、伊勢湾台風の復興などに尽力したが、特筆すべきは四日市石油化学コンビナート造成とその後の公害対策である。昭和30年（1955年）8月に旧海軍第二燃料廠跡地が払い下げられ、四日市第1コンビナートの建造が始まったが、これにあたって国道1号、国道23号、四日市港などの整備を進め、さらに第2・第3コンビナートの埋め立て・誘致などに積極的に取り組んだ。これによりそれまで赤字財政に苦しんでいた三重県も、生産所得が飛躍的に向上し各種整備も進んだ。しかし昭和33年（1958年）コンビナートが操業を開始すると、まもなく大気汚染によって四日市ぜんそくとして知られる公害病が蔓延することになる。第2コンビナートの操業が始まった昭和38年（1963年）には市全域で大気汚染が深刻化したため、全国初の公害対策室を設置して対策に取り組み、昭和47年（1972年）には国の規制値を上回る三重県公害防止条例を制定した。同じ年に四日市公害裁判で原告勝訴の一審判決が下ると、被告企業に働きかけて控訴を断念させ、原告側の研究者であった吉田克己を所長とする公害センターや、被害者救済のための公害対策協力財団を発足させるなど、抜本的解決に向けて奔走することになる。

昭和47年（1972年）知事5期目の途中で、田中角栄・三木武夫の説得に応じて自民党三木派から衆院選に立候補し当選。公害対策並びに環境保全特別委員会、社会労働委員会、法務委員会などで活動し、昭和48年（1973年）には公害健康被害補償法を実現した。しかし改選では三木おろしのあおりを受けて落選、翌1977年には参院選三重地方区から新自由クラブ公認で立候補するが落選、1980年の衆議院議員選挙にも出馬しているが落選している。

戦後日本の重化学工業化の先陣を切ったという自負とともに、公害を出したことに対する慚愧の念があったらしく、周囲にはたびたび「罰があたる」と漏らしていた。平成4年（1992年）に脳梗塞で倒れ、その後（公害とは無関係な）心臓ぜんそくを発症するが、本人は四日市ぜんそくにかかったといって譲らなかった。平成14年（2002年）8月10日逝去。