礒貝正久
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礒貝 正久（いそがい まさひさ （十郎左衛門 じゅうろうざえもん） 延宝7年（1679年）-元禄16年2月4日（1703年3月20日））は江戸時代の武士。父は礒貝権左衛門。母は貞柳尼。播磨国赤穂藩士、物頭側用人、150石。赤穂浪士の一人。
父権左衛門は幕臣松平隼人正に仕えていたが、主家が断絶して浪人になる。そのため、十郎左衛門は京都愛宕山教学院の稚児小姓となった。14歳のとき、父と懇意だった赤穂藩士堀部弥兵衛の推挙によって浅野内匠頭に側小姓として仕えるようになった。美童で利発だった十郎左衛門は浅野内匠頭に寵愛され、物頭側用人、150石にまで引き立てられる。
元禄14年（1701年）3月14日、浅野内匠頭が江戸城松之大廊下で吉良上野介に刃傷に及んだ。浅野内匠頭は切腹を命じられ、田村右京大夫の屋敷に預けられ、その日のうちに切腹した。
浅野内匠頭は十郎左衛門と側用人片岡源五右衛門に宛てて「このたびのこと、かねてより知らせおくべきであった」との遺言を残している。十郎左衛門は源五右衛門らとともに浅野内匠頭の遺体を引き取り、泉岳寺に葬って、髻を切って仇討ちを誓った。
その後、十郎左衛門は源五右衛門とともに赤穂へ赴き、筆頭家老大石内蔵助に仇討ちを説いた。浅野家再興を第一と考えていた内蔵助はこれに同意せず、失望した十郎左衛門は江戸に戻り独自の行動を取った。
十郎左衛門は江戸では内藤十郎左衛門と変名し、酒屋を表向きの生業にして仇討ちの機会をうかがった。元禄15年（1702年）3月、江戸に下った吉田忠左衛門の説得により、内蔵助の義盟に加わる。
忠臣蔵の物語では美男であったので吉良家の女中に近づき内情を探ったという。
12月15日未明、47人の赤穂浪士が吉良屋敷へ討ち入り、十郎左衛門は裏門隊に属して手槍を持って屋内へ突入した。夜中だったため屋敷内は暗く浪士たちの進退は自由でなかったが、十郎左衛門が機転を働かせて吉良家の台所役を脅して蝋燭を出させ、それを各室に立てて屋敷内を灯した。後の取調べで、大目付仙石伯耆守はその機転を大いに褒めたという。
2時間あまりの激闘の末に赤穂浪士は吉良上野介を討ち取り、その本懐を果たした。泉岳寺へ引き揚げる際に、十郎左衛門の家が往路にあったため立ち寄って病床の母貞柳尼を見舞うよう内蔵助に勧められるが、十郎左衛門は固持している。
泉岳寺の浅野内匠頭の墓前に吉良上野介の首級を供えて仇討ちを報告した後、十郎左衛門は細川越中守の屋敷にお預けとなる。元禄16年（1703年）2月4日、幕府の命により切腹。享年25。
十郎左衛門は幼少より能や太鼓に秀でていたが、浅野内匠頭が芸事を好まないことを知りやめている。しかし、琴だけはひそかに続けており、切腹後の遺品に琴の爪があった。
