秋岡芳夫
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秋岡 芳夫(あきおか よしお、1920年4月29日-1997年4月17日、熊本県宇城市松橋町出身)、は日本の工業デザイナー、童画家、著述家、ディレクター、教育者。
東京高等工芸学校(現千葉大学工学部)卒業。終戦後、進駐軍住宅(DH)の家具デザイン等を経て童画家初山滋に師事。コドモノクニの挿絵、間もなくキット式真空管ラジオ「クライスラー」のキャビネットのデザインを担当。1953年、金子至・河潤之介とデザイン事務所であるKAK(カック)を共同で設立し、黎明期の中小企業に対するデザインで草分け的存在となる。成光電機工業(現・株式会社セコニック)露出計、丸正自動車ライラックのオートバイ等のデザインで高い評価を得る。学習研究社に従来の紙を主体とした付録ではなく、あらゆる素材を活用した学習的価値のある「モノの付録」を提案、1964年から始められた科学と学習の画期的な付録のデザインは、工業デザイナーとしての代表的な仕事となる。
次第に行き過ぎた工業化社会に危機感を持ち、1968年頃から工業デザインから距離を置きはじめ、消費者から愛用者になることを提唱。丸善のギャラリーでのモノモノ運動や1100人の会を主宰するなど全国でデザイン運動を展開し、低迷していた手仕事による伝統技術者やクラフトマンなど、生産者の支援に力を注いだ。東北工業大学第三技術研究室と岩手県大野村(現・洋野町)の「一人一芸の村」、北海道置戸町のオケクラフトを長年に渡りディレクト。私財を投じて収集した江戸期からのあらゆる生活道具や生産するための道具・工具などの膨大な資料は「モノの図書館」(2006年現在未着工)の建設を条件に1998年、置戸町に寄贈された。
後年、消費するだけの類猿人ではない「生活者」の育成を目指し自宅に「ドマ工房」を建設、多くの私塾を開く。その一つに古典的竹とんぼの性能を格段に飛躍させてた「スーパー竹とんぼ」を考案したことでも有名に。生涯の製作数は5000機とも言われている。1982年に設立した「国際竹とんぼ協会」は全国に支部をもつ。
元東北工業大学、共立女子大学教授。
[編集] 経歴
- 1920年 - 著名な図書館人・秋岡梧郎の長男として熊本県松橋(現 熊本県宇城市)に生まれる
- 1939年 - 画家を志すが父の勧めで東京高等工芸学校木材工芸科に入学
- 1942年 - 東京市の技手として勤務、学校家具の研究をするが間もなく召集
- 1946年 - DH計画(進駐軍家族の住宅から什器までを設計生産する計画)の民間人デザイナーとして唯一の参加。およそ30点の家具デザインをする
- 1950年 - クライスラー(現サトームセンの前身)キット式真空管ラジオのキャビネットケースのデザインを始める
- 1953年 - 金子至・河潤之介と共同でデザイングループKAKを結成。放送開始間もないNHKテレビに出演し「日曜大工」を普及させる(日曜大工は金子至による造語)
- 1959年 - 日本初のCI(コーポレートアイデンティティ)として成功した露出計メーカー・セコニックへの仕事が評価され毎日産業デザイン賞を受賞
- 1964年 - 学習研究社1~6年の科学・学習の付録デザイン開始
- 1968年 - 日本インダストリアルデザイナー協会(JIDA)の推薦により財団法人クラフト・センター・ジャパン(CCJ)の選定委員に参加
- 1969年 - 画一化し個性を失しなった日本の工業化社会への疑問から工業デザイナーとして立ち止まる。東京・中野区に個人事務所(104会議室)を開設
- 1971年 - 「消費者をやめて愛用者になろう!」を合い言葉にグループモノ・モノを結成
- 1972年 - 「室内」誌で「道具拝見」連載開始
- 1974年 - 全国の丸善のギャラリーで「素木のモノ」展をグループモノ・モノの協力で開催
- 1977年 - 東北工業大学工業意匠学科の教授・学科長に就任。持論であった「本当にいい工芸品は裏作モノ」の実践的研究に着手
- 1979年 - 有限会社モノ・モノを共同で設立。主に秋岡が資金を負担していたグループ・モノモノでの活動を分離。元104会議室(秋岡事務所)で継続してクラフトの販売を行う。
- 1981年 - 自宅内に「ドマ工房」を建設。腰痛がきっかけで竹とんぼづくりを始める
- 1982年 - 共立女子大学生活美術学科教授に就任。「生活技術」の指導をはじめる
- 1991年 - 幻に終わった「千葉県工芸村構想」(1975年)を北海道置戸町で実現するために始動。「モノの図書館」構想や「生活技術」伝承のための場を創ることを提案
- 1994年 - 生活技術伝承施設「どま工房」が置戸町に建設される。「モノの図書館」実現への足掛かりとして秋岡生活道具コレクションの一部展示や講師として「どま塾」が随時行われる
- 1997年 - 死去(享年76)
- 1998年 - 遺族により秋岡生活道具コレクションが寄贈される
[編集] 主著
- ABCの歴史(挿絵) (さ・え・ら書房)
- あそびの木箱 (淡交社)
- いいものほしいもの (新潮社)
- 木と漆 (文化出版局)
- 木のある生活(ティビーエス・ブリタニカ)
- 暮しのリ・デザイン (玉川大学出版部)
- 暮しのためのデザイン (新潮社)
- 工房生活のすすめ (みずうみ書房)
- 食器の買い方選び方 (新潮社・とんぼの本)
- 新和風のすすめ (佼成出版社)
- 住 (玉川大学出版部・玉川選書)
- 竹とんぼからの発想 (講談社・ブルーバックス)
- 創 (玉川大学出版部・玉川選書)
- デザインとは何か (講談社現代新書)
- 伝統的工芸品とデザイン (伝統的工芸品産業振興協会)
- 日本の手道具 (創元社)
- 木工-指物技法 (美術出版社・新技法シリーズ)
- 木工道具の仕立 (美術出版社・新技法シリーズ)
- 木工入門樹の器 (講談社)
- 割ばしから車まで (柏樹社)
[編集] 外部リンク
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