笙野頼子
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笙野頼子(しょうの よりこ、1956年3月16日 - )は日本の小説家。本姓・市川。
1956年三重県に生まれる。三重県立伊勢高等学校、立命館大学法学部卒業。大学卒業後創作活動に入り、1981年『極楽』で群像新人文芸賞を受賞。1990年代のいわゆるJ文学を代表する小説家。笙野の作品のテーマは、世界への違和感・夢・フェミニズム・猫などのテーマにまとめることができる。初期の作品は一般に難解といわれるものが多く、発表できても一部のファン以外からの反応はほとんどなかった。2004年現在では絶版になっているものもあるが、初期作品集『極楽』は2001年に講談社文芸文庫で再版されている。
[編集] 作家論
笙野の作品の主人公はほとんどの場合作者をモデルとした文筆家の姿を持っており、容姿や財力に恵まれない中年のさえない独身女性として描かれる。笙野の主人公たちは孤独であり、結婚しない女性というマイノリティの苦悩を味わいながら生活している。その弱い立場から見た世界が、作者がなかなか部屋が借りられない様子は『居場所もなかった』に、異常なまでに私生活に干渉される様子は『パラダイス・フラッツ』に、それぞれ誇張・戯画化した形で作品化されている。
しかしその生活は苦しいばかりではなく、東京という大都市でそれなりの自由を得て、猫をパートナーとしながら創作にいそしむという満足もある。年を経るにしたがって笙野の作品は生活に密着していくようになり、猫との生活を描く作品が増えていく。『S倉迷妄通信』では安心して猫が飼える千葉県「S倉市」への引越しが描かれ、作者による写真までもが掲載されているほどであるが、これは単に溺愛を示すものではなく、猫を介して見た現代社会を自らの小市民性に自覚的な見地から描いているものだと考えることができるだろう。
代表作『レストレス・ドリーム』は夢の中のロールプレイングゲームという形を借りて、日本の言語による性差別・封建的因習に真っ向から対決しており、初期の創作で感じてきた抑圧をフェミニズムの文学的表現によって表現している。『タイムスリップ・コンビナート』はいくらか自伝的な作品で、いつもの女主人公は「マグロからかかってきた電話」によってホームの片側が海になっている駅、海芝浦に旅するうち、京浜工業地帯を見ながら故郷のコンビナートを思い出していく。この作品は語呂合わせや回想によって時間と空間があいまいになっていく夢幻的な雰囲気によって高い評価を得ており、芥川賞の受賞もあって笙野がマスコミに登場するきっかけにもなった。
近作に『水晶内制度』、『絶叫師タコグルメと百人の「普通」の男』がある。
[編集] 受賞歴
- 1981年 『極楽』で第24回群像新人文学賞。
- 1991年 『なにもしてない』で第13回野間文芸新人賞。
- 1994年 『二百回忌』で第7回三島由紀夫賞。
- 1994年 『タイムスリップ・コンビナート』で第111回芥川賞。
- 2001年 『幽界森娘異聞』で第29回泉鏡花文学賞。
- 2004年 『水晶内制度』で第3回(2003年度)センス・オブ・ジェンダー賞大賞。
- 2005年 『金毘羅』で第16回伊藤整文学賞。
[編集] 外部リンク
- ファンサイト