編成 (鉄道)
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編成(へんせい)とは、鉄道における列車や車両の組成のことである。
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[編集] 列車と編成
「列車」はもともと複数の車両が列をなして構成されることから名付けられた言葉であるが、現在では「ダイヤに基づいて走行する鉄道車両」を意味するため、1両であっても列車と呼ばれる。したがって、組成を示すときは「編成」が用いられる。
列車の編成長は、停車場の有効長で定められるのが通常である。旧国鉄・JRでは、長距離輸送主体であったことや長大な貨物列車を運転してきたことから、一般に有効長が大きく取られており、長い編成を組むことが可能となっている。また、機関車が牽引する列車では、運転される線区の状況(勾配)や運転速度によって編成重量が制限される。そのため、長編成の列車を牽引しようとする場合には、機関車を2両以上連結して列車を牽引する重連運転が行なわれたり、より強力な機関車に交換されたりする。1950年代にナハ10形をはじめとする軽量客車が開発されたのも、輸送力増強を車両の軽量化による長編成化により解決しようとした結果である。また、JR東日本の中距離列車用グリーン車やMax、TGV-Duplexが2階建てとされたのは、編成長を増加させずに乗車定員を増加させようとした結果である。
[編集] 車両と編成
[編集] 車両編成
鉄道車両ではあらかじめ特定の組成を組んでいる場合があり、これも編成と呼ばれることがある。たとえば、電車においては、走行するための電動機を搭載している電動車と搭載しない付随車、運転席を有する制御車と有しない中間車などから構成される。電車は走行あるいは旅客サービスに必要となる機器・設備を各車両に分散して配置し、車両ごとに機能を分担させていることが多いため、車両の連結方法や連結順序には制約が多い。そのため、個別の車両をその都度連結解放するより、あらかじめ、必要な順序に組成して、その単位で運用する方が有利であり、この組成についても編成と呼ぶ。さらに、複数の編成を併結して1本の列車の編成として運転される場合もある。
完全に切り離しできないような構造になっている場合は固定編成と呼ばれる。こうした車両は、永久連結器を用いることにより、工場での検査時以外は、車両同士の切り離しができないようになっていることも多い。また、固定編成であっても、検査施設の都合により、ある部分で編成の分割ができるようになっていることがあり、その部分に構内運転用の簡易運転台が設備されていることもある。
古くは、固定編成の概念がなく、車両を編成単位ではなく車両単位で管理するため、検査などのために編成の一部分を別の車両と入換えるのは日常茶飯事であった。編成組替えや中間車の回送に使用する事業用車(牽引車)が車両基地に配置されており、編成の構内移動などに使用されている。現在でも気動車や客車は、車両単位で管理されていることが多い。そのため、乗客の増減に対応して、1両単位で弾力的に編成の伸長・短縮ができるのが、増解結に制約の多い電車に対する気動車、客車の利点の一つとされている。
また、ふだんは編成に組み入れない車両(増結用車両)を別に保有し、必要に応じて編成中に組み入れることもある。
[編集] 編成番号
JRの電車では編成そのものに番号をつけることが多い。番号はアルファベットと通し番号により表されているものが多く、アルファベットは車両の形式や編成用途を示し、番号は編成固有の番号を示している。編成番号は先頭車の前面や側面に表示されている。
私鉄では編成そのものに番号を付けている例は少なく、編成中の代表的な車両(先頭車など)の番号に編成を示すF(=Formationの略)を付加して表す。たとえば、1101 - 1201 - 1301 - 1401の編成であれば、「1101F」のように表記する。
[編集] 編成内の車両における記号
国鉄・JR各社では、電車・気動車の各車両について次のような記号を用いて編成を表す場合がある(編成略記号)。
これらには、さらにプレフィックスをつけることで詳細を表すことができる。
片方に運転台のある電動車(制御電動車)をMc、動力のない中間食堂車をTD、動力のない中間グリーン車をTS、のように表す。また、主制御器を持たない中間電動車をM'と表したり、双方主制御器を持つが役割が異なっている中間電動車をそれぞれM1、M2と表す場合がある。