蘭州級駆逐艦
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蘭州級駆逐艦 | ||
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概歴 | ||
就役開始 | 2004年 | |
退役完了 | 就役中 | |
前級 | 広州級駆逐艦(052B型) | |
次級 | 瀋陽級駆逐艦(051C型) | |
要目 | ||
艦種 | (防空ミサイル)駆逐艦 | |
艦級 | 052C型(旅洋II型) | |
排水量 | 満載排水量 | 6,500t |
全長 | 154m | |
全幅 | 17m | |
吃水 | 6m | |
機関 | CODOG 2軸推進 | |
ディーゼル2基 | 8,840hp | |
ガスタービン2基 | 48,600hp | |
速力 | 29ノット | |
乗員 | 280人 | |
武装 | 100mm単装砲 | 1基 |
730型30mmCIWS | 2基 | |
鷹撃62または鷹撃85 SSM4連装発射機 |
4基 | |
海紅旗9SAM 8連装発射機 | 1基 | |
18連装ロケットランチャー | 4基 | |
324mm短魚雷 3連装発射管 | 2基 | |
搭載機 | Ka-28またはZ-9対潜ヘリコプター | 1~2機 |
レーダー | 348型フェイズドアレイレーダー | 1式 |
517H-1型対空レーダー | 1基 | |
327G型火器管制レーダー (CIWS) |
2基 | |
戦闘システム | H/ZBJ-1 |
蘭州級駆逐艦(らんしゅうきゅう、052C型、Lanzhou-class)は、中国人民解放軍が開発したミサイル駆逐艦。 NATOコードネームは、旅洋II型。中国側の型式名称は052C型(Type 052C destroyer)である。船体は広州級駆逐艦と同じ設計で、特徴はアクティブ・フェーズド・アレイ・レーダー (Active Phased Array Radar)システムと中国国産のHQ-9の垂直発射式長距離防空ミサイルシステムである。
目次 |
[編集] 概要
2002年に上海江南造船所は052B型と同じ設計の船体を用い、より先進的な武器システムと艦隊防空用センサーを搭載した052C型の建造を開始した。1番艦の蘭州(艦番号170)は2002年後期に起工され、2003年4月29日に進水し、2004年に就役した。2番艦の海口(艦番号171)は2003年10月30日に進水し、2005年に就役した。
旧ソ連・ロシアの武器システムを国産の船体に装備した052B型と違い、052C型はいくつかのセンサーを除いて、元パワー・パラゴン社技術主任のチー・マック(麦大智)ら中国系米国人4人がアメリカから盗み出した技術情報に基づいて開発された。(米国にて公判中。チー・マックらは20年間に渡り米海軍から情報を盗み出していたことが判明した) 最も注目すべき特徴は、アメリカのAN/SPY-1に外観や配置がよく似ている、4面の中国国産多機能アクティブフェーズドアレイレーダーと、これも中国国産の垂直発射式のHQ-9長距離防空ミサイルシステムおよび最新型のYJ-62(C-602)対艦ミサイルである。これの装備はすべて蘭州級で初めて運用されたものである。
本型艦が予期されていた通りの性能を発揮できるなのであれば、人民解放軍海軍は西側諸国の戦闘艦に追いつくレベルの同時多目標処理能力を持った艦隊防空艦を手に入れることになる。しかしながら、人民解放軍海軍は現代の艦隊防空艦としては能力の見劣りするソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦とほぼ同等の対空システムを備えた052B型をこの級と並行して建造しており、米国から盗み出したものとはいえ、純国産かつ最新鋭の複雑なシステムを備え、その信頼性や性能が未知数な052C型に対する保険をかけていると思われる。
[編集] 戦闘システム
戦闘艦の全体的な対空、対地、対艦戦闘能力は各種のの武器システムとセンサー類を統合的に管理する戦闘統合システムの能力に大きく依存している。中国の大部分の艦艇はフランス製Thomson-CSF TAVITACをコピーした戦闘統合システムを使用しているが、052C型は盗み出した米国のイージス艦のデータに基づいて、処理能力が強化された新型の国産戦闘統合システムを装備していると思われる。 処理能力を強化した新型戦闘システム導入の要因としては、対艦ミサイルの脅威の増大に加え、艦載機のKa-28対潜ヘリコプターが収集した情報を処理する自機情報処理能力の不足も挙げられるだろう。つまりこの場合、Ka-28が収集した情報を一旦母船に転送し、処理された情報を母船からデータ転送リンクを通し再び受け取るようなシステムであろう。
052C型が装備する戦闘システムは未だ詳細が明らかではないが、多機能フェーズドアレイレーダー、指揮統制、戦域表示、火器管制の各システムから構成されると思われる。 指揮統制システムが艦のセンサーから情報を受け取って命令を下し、管制を与え、脅威の程度を評価する。 火器管制システムが指揮統制システムから迎撃指示を受け、射撃管制システムより武器およびインターフェースを選択する。
長距離防空ミサイルとCIWSを備えた052C型は中国初の本格的な艦隊防空能力を備えた水上戦闘艦であり、人民解放軍海軍は初めて巡航ミサイルや航空機など複数目標への同時迎撃能力を獲得することになるだろう。 また本艦は一つの海上戦闘ネットワークを構成するデータ転送リンクと衛星を通じて他艦や航空機に戦闘情報を伝送する能力も備えている可能性がある。
[編集] ミサイル
052C級は6セルのVLSを8基備え、あわせて48基のHQ-9艦対空ミサイルを運用する。ロシアの技術(より具体的にはS-300)をベースに開発されている従前の艦とは対照的に、052C級に装備されたVLSはアメリカから盗み出したイージス艦の技術情報に基づいたものである。ロシアのリボルバー式VLSと異なり、VLSのそれぞれのセルに蓋が備えられているが、その発射方式はロシア同様のコールドガス発射方式である。この発射方式はコールドローンチと呼ばれていて、西側のVLSのようにセル内部でミサイルのロケットエンジンに点火してそのまま発射するのではなく、いったん艦のガス発生器で発生させたガスでセル内のミサイルを打ち上げ、艦から離れたところではじめてミサイルのロケットに点火する。このような発射方式では、西側のホットローンチ式VLSのような複雑で頑健なセルや高熱に耐えミサイルの発射炎を放出する配管が不要になるという利点がある。しかしながら、052C級のコールドローンチ式VLSはロシアの同様のVLSと異なり、リボルバー式にセルを回転させて順次ミサイルを発射するシステムを採用せず、それぞれのセルに蓋とコールドガスを用いた発射装置を持たせ、セルごとに独立して中のミサイルを発射することを可能にした。この結果、VLSシステム全体を簡素化でき、寸法や重量、コストを削減し、整備性を向上させることが出来たと中国自身は主張している。また、リボルバー式発射法を採用しないことにより、電力その他の動力(power)をも削減することが出来た、とも主張されている。
このVLSの中には、HQ-9艦隊防空ミサイルが装填されている。HQ-9は中国における新世代の中長距離対空システムであり、その誘導にはセミアクティブレーダー方式が採用されている。HQ-9は1990年代にロシアのS-300地対空/艦対空ミサイルをベースに開発されたとされているが、その誘導システムにはアメリカのMIM-104 パトリオットミサイルの技術が導入されているとも言われている。艦対空のHQ-9は地対空バージョンのそれと同一のものである。また、未確認の情報ではあるが、新しいHQ-9ではパトリオット同様のTVM誘導方式が適用されているとされている。この未確認情報はおそらく真実であろうと思われるが、それはHQ-9の母体となったロシアのS-300も、艦対空バージョンではTVM誘導を用いているからである。
また、052C級は対艦ミサイルの4連装発射機を2基、後檣とヘリコプター格納庫の間に装備している。装備するミサイルにはYJ-85/C-805とYJ-62/C-602の2説があって議論がある。従来の対艦ミサイルであったYJ-8X/C-80X系列の直方体状の発射機とは異なり、この発射機は円筒形をしている。この対艦ミサイルは艦橋直上のバンド・スタンドレーダーによって誘導され、ヘリ格納庫前部のライト・バルブデータリンクでデータリンクを行われる。未確認情報によればこのミサイルの最大射程は280kmに達し、弾頭は、300㎏で破壊力、射程で、ハープーンに勝ると言われている。この対艦ミサイルの誘導にバンド・スタンドレーダーが使用されている点を考慮すると、ソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦などに搭載され、誘導に同じレーダーを用いる3M80 モスキート対艦ミサイルといくつかの類似点を有しているのではないかと思われる。
[編集] 艦載砲
052C型は短距離防空用にゴールキーパーCIWSに極めて類似している730型30mmCIWSを2門(艦橋前方後方1門ずつ)装備している。この機関砲は一分間に最大4600~5800回の発射を行える。
艦の主砲は713機関がフランス製のCreusot-Loire T100Cを基に開発した100mm単装砲である。この砲は地上目標および戦闘機や低速なミサイルのような空中目標に対して使用可能で、最大で毎分90発を発射できる。 この砲はレーダーもしくは艦載光学照準システムにより管制され、砲塔は無人で自動発射できる。 また、砲塔はステルス性を強く意識した形のシールドをもっている。
[編集] 対潜システム
Yu-7(Mk-46の改良型)324mm3連装魚雷発射管を2門装備している。また、艦前部デッキには18連装多機能ロケットランチャー(MRLs)が4基設置されており、使途はまた不明であるが対潜、対地ロケット、もしくはデコイ/チャフの発射に使用されると考えられる。
[編集] センサー
艦の主センサーは四面配置の多機能アクティブ・フェーズド・アレイ・レーダーである。このレーダーは浙江省南京にある14機関が、米海軍イージス艦の技術情報を元に開発した国産レーダーで、1998年に開発したH/LJG-346型SAPARS(Shipborne Active Phased Array Radar System)の後継型である。また、これの補助用と思われる517H-1型(NATO名: ナイフレスト)長距離2D対空レーダーも装備されている。そのほかに対艦ミサイルと主砲用のロシア製バンドスタンド火器管制レーダー、CIWS用の327G型(EFR-1、NATO名:ライスランプ)火器管制レーダー2基が装備されている。
[編集] ヘリコプター
蘭州級艦後部には格納庫と飛行甲板が設けられており、格納庫には1~2隻のKamov Ka-28対潜ヘリコプターか、2隻のZ-9C対潜ヘリコプターが収容可能である。Ka-28は母船から200kmの範囲内で全天候運用できるが、機載のディッピング・ソナーの有効距離はZ-9の半分しかない。また、Ka-28は情報処理能力に欠けるため、収集した情報を一旦母船にデータリンクを通して転送し処理する必要がある。Z-9は収集した情報を自機で処理できるが、行動範囲がKa-28より狭い。
両機種が装備する武器装備およびセンサーは彼らの西側のライバル達に近い性能を持っているが、対潜ヘリコプターとしての全体的な性能は大きく制限されたものになっている、これは彼らのレーダー設置によるためである。西側のような360度をカバーする胴体設置型のレーダーと違い、Ka-28とZ-9が装備しているレーダーはそれぞれ顎と鼻部分に設置されており、これによりレーダーが届かない盲点範囲が大きく作り出されている。この盲点問題を解決するには、Ka-28とZ-9は複雑な飛行パターンで飛行する必要があるが、これは燃料消費を非常に早めるため、西側の対潜ヘリコプターと比べ耐久力および行動範囲の面で結果的に劣る結果となる。
[編集] 仕様
- 費用 - 8億ドル、CIWS・SAM・VLSの費用2億ドルと、C4Iシステムの費用4億ドルを含む
- 機関 - ウクライナ製DN80ガスタービンエンジン2基、MTU 12V 1163TB83 ディーゼルエンジン2基
- 戦闘システム - H/ZBJ-1 Information processing system designed by the 704th Institute (Reported speed: > 100MBPS)
[編集] 同型艦
- 170 蘭州
- 171 海口