裁量労働制
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裁量労働制(さいりょうろうどうせい)は、労働時間の制約を受けず、業績に応じて給与が算定され支払われる形態の労働をいう。労働時間と業績が必ずしも連動しない職種において、この制度が適用される。
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[編集] 法的根拠
裁量労働制を採用するには、労働基準法38条の3及び38条の4の要件を満たす必要がある。
専門的職種・企画管理業務など、労働時間と業績が必ずしも比例関係に無い職種であることが条件。当初は極めて専門的な職種にしか適用できなかったが、現在では適用範囲が広がっている。厚生労働大臣指定職種も含めた主な職種は以下の通り。
- 新製品や新技術の研究開発業務
- 情報処理システムの分析・設計等の業務
- 記事の取材や編集を行う業務
- 公認会計士、弁護士、建築士など
- デザイナー
- 経営企画担当
- 営業企画担当(※)
- 人事・労務担当
- ゲームソフトウェアの開発
- プロデューサー、ディレクター
- 金融商品の開発
専門的職種では労働者の過半数を組織する労働組合(無いときは過半数の代表者)との労働協約、企画管理型職種では労使委員会の全員一致での決議が必要である。
※ 個別の営業活動自体は裁量労働の対象外。代わりにみなし労働時間の規定がある
[編集] 給与体系
労働時間が不確定であるため、月ごとの業務実績に基づいて給与が決定される。いわば、「月俸制」ともいえる給与体系である。給与管理のコストを減らすため、年俸制が採用されることも多い。
労働時間の概念がないため、時間外労働に対する手当は支給されない。そのため、長時間の時間外労働を行っていた労働者は、裁量労働制の適用により「給与額が減る」場合がある。
[編集] 勤務時間
勤務時間帯は固定されず、実働時間の管理もされない。あくまで、一定期間ごとの「職務成果」が評価され給与に反映される。
出勤・退社の時間は自由に決められるが、一定の成果を出すことが求められるため、裁量労働適用以前より長く働かざるを得ない場合もある。
[編集] 職能との対応
職能に応じた社内資格を設定している企業では、特定の資格から上位に対して裁量労働制を適用することが多い。
[編集] 批判
時間外労働手当て(残業代)の支給を逃れ、人件費削減を図ろうとする企業側のエゴイズムであるとする批判が存在している。裁量労働制とは名ばかりで、実際には勤務時間に制限を設けている企業も存在する。