西武311系電車
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西武311系電車(せいぶ311けいでんしゃ)は、西武鉄道に在籍していた通勤形電車。主に昭和20年代から40年代にかけて使用された、17m級旧型国電の払い下げ車両である。
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[編集] 概要
主にクモハ311(371)+クハ1311の2連を基本として使用された。いずれも当時の国鉄形機器搭載の自動ブレーキ車両と連結できたため、701・801系以前の各系列と併結し、4~10両編成の列車にも使用されていた。
多くの車両が1970年代に廃車されたが、クハ1311形のうち1313・1314・1336の3両はサハ1311形に改造され、多摩湖線国分寺駅~萩山駅間用にクモハ351形の中間に挟まれ、同線が20m車4連の使用が可能になる1990年まで使用された。 なお、301系にクハ1313・1314が登場してから、本系列のサハ1313・1314が廃車されるまで、西武には同一番号の車両が2組在籍していた。
[編集] 車体
外観は種車に準じるが、ベンチレータなどは(クモハ371形を除き)後年西武独自のものに換装された。全車とも半鋼製である。初期に復旧された車は内装が粗末なつくりであったと言われているが、後年ファンデリアの装着、窓枠に細いアルミサッシが使われるなど近代化改造をうけた。
形態分類は、以下の通り。形式・車号は便宜上1967年頃(311系廃車開始直前)のものを使う。
- クモハ311形:331~340(31系)
- クハ1301~1304(30系)、1305~6・1308(31系)
- 戦災で焼失した旧30系・31系を国鉄から譲り受け、上石神井(大野組請負)や保谷もしくは西武所沢工場で修復した戦災復旧車(通称「焼け電」)。旧30系については丸屋根化された。他のタイプとの外観上の違いは、前面が非貫通で雨どいが直線状(雨天時に雨水が運転室窓に落ちるのか、後年に他タイプと同様の弓型に改造された)であること、客用扉間の窓が4枚等間隔配置ではなく、木造車時代の設計を踏襲して扉間中央に太い柱が立てられていたため、4枚の窓を2枚1組で2セット並べる古風な配置となっていたことが挙げられる。
- 後に全車電装解除してクハ1301形となった。これは車種が古いので他のタイプより早く整理されたことと、武蔵野鉄道出身のモハ301(初代)を挟まれてcM-Tc-cT-Mcを組む為、番号を揃えたことが理由であるものと思われる。クハ1301~1304は一時期HL制御で電装され、モハ251~254となっていた。
- クモハ335・338の2両が荷物電車クモニ1形の3・4号車に改造された。正面スタイルの屋根形状などはそのままだが、Hゴム非貫通窓で、ノーシル・ノーへッダーの車体となった。1978年荷物輸送の廃止により廃車されている。
- クモハ311形311・312・315~318・320~330
- クハ1311形:1315、1318
- (国電50系鋼体使用車両)戦災復旧車、事故復旧車、譲受車からなるグループ。315が事故復旧車で、318と328が譲受車である。種車は50系。320~330は鋼板屋根で、325・326を除き雨樋が高い位置にある(いわゆる張り上げ屋根)。また、竣工当時のままの埋め込み式ヘッドライトをそのまま踏襲した車両がある。
- クモハ311形313・314・319
- クハ1311形:1311~1330(除1315・1318)
- 戦災車や木造車の台枠に国鉄50系に準じた設計の新造車体を載せた、いわゆる鋼体化車で、同じ鋼体化車のクハ1411形と殆ど同じ。違いはクハ1411形が20m車体で扉間窓5つに対し、車体長が短い本系列では扉間窓数が1つ減って4つとなった程度で、その車体断面等の基本設計は類似している。
- クモハ371形371~377・379
- クハ1311形1331~1334・1336
- 1959年以降国鉄からクモハ11・クハ16(旧50系の400番台)を譲り受けた車両で、大きな改造も受けずに使用されていた。最終増備は1965年である。一部を除いて正面窓上に通風口があること、屋根上通風器を国鉄時代にグローブ形に交換(373・1333を除く)していたことが50系鋼体使用車両と異なる。
- 当初はモハのみの増備だったが、クハ代用で使われていた車両は、後にクハ1311形1331~に改番された。なお1333のみ張り上げ屋根である。
クハ1311形のうち1313・1314・1336はサハに改造されたが当初はスタイルに大きな変化はなく、1980年頃の更新工事時に乗務員扉が撤去された。また、この更新工事時に内装のアルミデコラ化や客室部の床のリノリウム化などが行われた。
[編集] 台車・電装品
電動車は当初TR14・22・25台車を履いていたが、501系の登場にともないTR22・25はそちらに転用され、基本的にすべてTR14付となった。制御車はTR10・11・14の混用が基本であったが、クハ1301形はボールドウィン系の釣合梁式台車を履いていたことがある。
なお、本系列を含め、この時期の西武鉄道では701系まで球山形鋼を側枠に使用するTR10・11・14台車を大量使用したが、これは国鉄からの払い下げによる定数確保が容易で、保守上有利であったことの他、自社で木造車の鋼体化工事を実施すべく国鉄大井・大宮工場でモハ50・クハ65形の鋼体化改造工事を手がけた経験者を大量に迎え入れた際に、TR10・11・14の扱いに長けた熟練工員が入社し、その保守に万全を期すことが可能となったためであったと伝えられている。
電動機は定格出力100kW(端子電圧675V時)のMT7・15と定格出力128kW(端子電圧675V時)のMT30の混用であったが、やはり501系の新造時に大出力のMT30は台車ごと転用され、さらにMT7・15系もクモハ311形については451系に転用するため定格出力85kW(端子電圧675V時)のゼネラル・エレクトリック社製GE-244A(MT4)などに換装された(但し、最晩年の313~315はMT7・15系を搭載)。
制御器は鉄道省制式の電空カム軸式制御器であるCS1・CS5がそのまま使用された。
[編集] 他社への譲渡
本系列は以下の各社へ譲渡されたが、現存するものはない。