震災
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震災(しんさい)とは地震によって引き起こされた災害のことである。関東大震災など大きな被害の出た地震では、地震現象の代名詞的に使用されることがある。被害の無い微小地震や人が居住していない地域での地震は震災にならない。
震災における被害の主因は、震災ごとに異なる。例えば、関東大震災では、地震後の火災による死者が多かった。島原大変肥後迷惑では地震で崩れた山が海に流れ込み、それが引き起こした津波が対岸を襲い「肥後迷惑」と呼ばれるほどの壊滅的な被害を与えた。2003年にイランで起こった地震では日干し煉瓦製の住宅が倒壊して多数の住民が犠牲になった(バム#2003年の地震参照)。
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[編集] 揺れによる災害
地震の強い揺れによって引き起こされる災害。強い振動によって崖や斜面が崩壊したり、人為的建造物が破壊される。
[編集] 揺れの大きさ
揺れが大きいほど被害が大きくなる。揺れの強度は基本的に 地震自体の強さ、震源からの距離、地盤の構造によって決まる。地震自体の強さはマグニチュードで示される。マグニチュード8クラスの地震を一般に巨大地震と呼び、震源地から数百kmの広い範囲で大きな被害が出る。1923年に発生した関東大震災はマグニチュード7.9の巨大地震だったが、東京府・房総半島・神奈川県・伊豆半島の全域が震度6の激震に襲われた。マグニチュード7クラスの地震でも震源が地下の浅いところにあれば震源周辺に激甚な被害を与える。1995年の阪神・淡路大震災はマグニチュード7.3で、震源に近い神戸市や阪神間に大きな被害を与えた。
大きな地震があったとき、わずか数十~数百m隔てた場所で被害が大きく違うことがある。これは地質構造によって揺れ方がかなり違うことが原因。すなわち地下の浅いところに硬い岩盤があるような場所では揺れは比較的小さいが、砂や粘土が厚く積もった場所では揺れが大きくなる。同じ原理で、谷間を埋め立てた造成地も揺れが大きくなる傾向がある。日本全国の揺れやすさについては国土省が調査した結果が公表されている。上図参照。大河の河口周辺の沖積層では、震度が1ポイント近く高くなる(赤く表示されている範囲)ことが想定されている。
揺れの大きさを表わす単位に、振幅、加速度(ガル)、震度がある。振幅は揺れ幅の大きさを、加速度は揺れの速さを物理的に示す。震度は以前は人間の感覚で評価していたが、1996年以後計測震度計により自動的に観測されるようになった。
[編集] 山崩れ、崖崩れ
不安定な急斜面が強い揺れによって崩壊する現象。谷の上流部でがけ崩れが発生した場合、岩石や土砂が谷筋に沿って長い距離を走る岩屑なだれ(がんせつなだれ)となる。崩壊によって斜面上にあった山林、田畑、住居、道路が被害を受け、更に落下した大量の土砂によって田畑や住居や道路が埋められる。山間部の河川では大量の土砂によって渓谷が埋まってダムを形成することがある。このダムは不安定なので後日決壊して下流域に水害をもたらす。1847年の善光寺地震では、善光寺平の西にある虚空藏(こくぞう)山が崩壊し、麓の犀川に高さ100mにもおよぶダムが出来た。このダムは地震発生の一ヶ月後に決壊し、善光寺平一帯に大規模な水害をもたらした。
[編集] 地割れ、液状化現象
地震の揺れによって地面にひびが入るのが地割れ。液状化現象は以前 流砂現象と呼ばれていたが、地下に水を大量に含んだ厚い砂層が存在する場合に発生する。通常は一応固体化している含水砂層が強震動によって流動化して地割れを生じ、割れ目から砂が吹き出たり(噴砂現象)、地面の沈下を引き起こしたりする。1964年の新潟地震では、旧信濃川の河道であった場所で建物の沈下や傾斜が多発した。阪神・淡路大震災では、神戸港の護岸の各所に砂を使用していたため、液状化によって岸壁が沈下し、港湾が長期間使用不能になった。
[編集] 建造物の損傷や崩壊と火災
強い揺れによって建物の柱組や壁が破壊され、建造物が損傷・崩壊し、中にいた人を埋めてしまう。調理や暖房に火を用いている時に建物が崩壊すると火災を引き起こす。地震時の火災は消火が極めて困難。地震による火災の特徴を列記する。
- 多数の個所で一斉に発生する。
- 水道管が破壊されて消火用水が供給できない。
- 崩壊した建物の破片が道路を埋めて通行が困難になる。
- 停電による信号故障により道路の通行が混乱する。
これらによって消防署による消火活動が十分に実施できない。また地震の翌日に破壊された無人の家屋から出火することがある。これは電気ヒーターのスイッチが入りっぱなしのまま(停電で発熱しない)家人が避難した後、停電が復旧しヒーターが発熱して周辺の可燃物を発火させる現象で通電火災と呼ばれている。
大きな地震では多数の橋梁や高架道路・高架線路が破損や落下するため、交通網が寸断される。1995年に起こった阪神・淡路大震災では、神戸市の大火災、山陽新幹線の高架の落下、高速道路の転倒等の被害を出し、現代社会の地震に対する弱点を明らかにした。
[編集] 断層周辺の地形変形による災害
地震は、震源断層に沿って岩盤がずれ動くことで発生するため、断層周辺では地形の変形が起こる。正断層や逆断層が動いた場合、断層を境に地面の上昇や下降が起こる。活断層データベースには、日本の主な活断層の、一回の地震に伴ってずれ動く量(単位変位量)などのパラメータや、それらの算出根拠となった調査データがまとめられている。
[編集] 津波
海底で大きな地震が起こった場合、海底地盤の変位が海水を動かし津波が発生する。大規模な津波は伝播範囲が非常に広いため、直接地震動を感じなかった海岸まで巨大な津波が襲うことがある。2004年のインド洋で発生した大津波は記憶に新しい。日本は過去何度も津波の被害を受けており、気象庁は警戒や予報に力を入れている。地震を原因とする津波被害で、海底地震に起因しない例として1792年に九州で起こった島原大変肥後迷惑がある。この事件は雲仙岳の火山活動に起因するマグニチュード6.4の地震で島原にある前山が崩壊し、大量の土砂が島原海に流れ込んで津波を発生したもの。津波の被害は島原対岸の肥後(熊本県)が最も大きかった。
[編集] 地面の水没や浅海の陸化
1662年の琵琶湖西岸地震では地盤の上下が大きな被害を与えた。地震によって琵琶湖沿岸が沈下し84haの田畑が水没したといわれている。この地震では北部の三方五湖周辺で地盤の上昇があり、河口が高くなったため川の水が海に行かずに周辺にあふれ、田畑や村落が水没する被害を出した。1804年の象潟(さきかた)地震では、最上川河口の酒田が大きな被害を受けた。象潟は、浅海に小島が点在してその風景の良さを松尾芭蕉にも謳われたが、この地震で海底が約2m上昇して一帯が陸地になり名勝が消滅した。
[編集] ライフラインが破壊されたことによる災害
大地震が起こった場合、上記の直接的な被害に加えて様々な災害が長期間続く。
[編集] 地震直後
地震によって送電線や変電設備が被害を受け停電となる。水道管やガス管は各所で破断するため断水や都市ガスの途絶が起こる。なお配管類の損傷は、地下から建物に入るまでの間の被害が最も多い。これは地面の揺れと建物の揺れに若干のずれがある事が原因である。病院や役所では自家発電設備や上水の備蓄設備を有しているところが多いが一般家庭では直接被害を被る。電気・水・ガスが無い状態では、食事・トイレ・風呂等の通常の生活が出来なくなる。また危険地域とみなされた場所に居住する市民等は避難所へ移動するが、ここでは食事や睡眠にも支障をきたすし、暑熱や寒気に対して十分な対処がなされていない。これらの状況によって体調を崩す人が出てくる。
[編集] 中・長期的な影響
阪神・淡路大震災の際は、道路や鉄道の被害が大きかったので被災地では生鮮食料品の供給がほとんどなくなった。この状況は2週間以上継続した。避難所での生活が長引くと心理的にも疲労が溜まり、病気になる人が出てくる。居住地の早期復旧が困難と判断された市民は仮設住宅に移動することになる。旧来の地域コミュニティーから断絶した生活が続くので、特に高齢者にとってつらいものがある。
[編集] 人為的災害
地震や火災に対する恐怖感や人種差別的発想による流言・飛語が飛び交い、暴動・焼き討ち・外国人襲撃等の事件が発生することがある。また、政府・中央防災会議や各自治体は、震災時の火災を「自助」と「共助」で防ぐよう言うばかりで、「公助」たるべき消防体制等を阪神・淡路大震災後も整備していないのも人為的災害の一種である。
[編集] 関連項目
- 自衛隊#災害派遣
- ライフライン
- ボランティア
- 挫滅症候群(クラッシュ症候群)
- ショック・ストレス・心的外傷後ストレス障害(PTSD)
- 防災倉庫、防災無線、ハザードマップ、自主防災組織、防災訓練
- 災害救助犬
[編集] 外部リンク
- 内閣府防災情報
- 「地盤のゆれやすさ全国マップ」(PDF)・各図表(PDF)
- 「わが国の災害対策」(PDF)
- 独立行政法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
- 緊急地震速報に関する研究調査や普及活動(特定非営利活動法人リアルタイム地震情報利用協議会)