Massive Ordnance Air Blast bomb
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MOAB (モアブ、Massive Ordnance Air Blast bomb、大規模爆風爆弾兵器)は、2005年現在、通常兵器としては史上最大の破壊力を持つ爆弾である。米空軍が開発した。空軍内部ではMother Of All Bombs (すべての爆弾の母)と呼ばれることもあり、俗称として知られる。制式名称 GBU-43/B 。 C-130 に搭載されてイラク戦争で実戦配備されたが、使用されなかった。
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[編集] 開発
MOABは、デイジーカッターの後継として、2002年に空軍研究所で開発が始まった。その後、2003年3月11日にフロリダ州のエグリン空軍基地で実地試験が行われ、11月にも試験が行われた。なお、空軍研究所では13tの重さがある MOAB の後継爆弾の開発が行われているという。
[編集] 概要
長さ約 9.1m 、重さ約 9800kg の爆弾で、 8482kg の炸薬があるという。炸薬にはスラリー爆薬もしくはトリトナール( TNT 80% とアルミニウム粉末 20% を混合したもの)と言われるが、明らかにされていない。巨大な爆弾のため通常の爆撃機には搭載できず、 C-130 や C-17 などの大型航空機の貨物搭載口から投下される。デイジーカッターと違い、パラシュートを使用せず GPS を使用して誘導されるため、デイジーカッターよりは命中精度は良く、また高高度から投下できるため敵の対空砲火を浴びる危険性が少ない(パラシュートを使用する場合、ある程度高度を下げる必要がある)という利点がある。
大きさとしては、第二次世界大戦中に使用されたグランドスラムよりわずかに小さいだけであり、現有されている通常爆弾としては最大のものである。実地試験では、その凄まじい爆発のため、原子爆弾のようにキノコ雲が発生したという。なお、 MOAB は燃料気化爆弾である、と言われることがあるが、これは誤りである。
[編集] 使用法及び評価
基本的な設計思想としては、ベトナム戦争及びアフガン戦争で使用されたデイジーカッターと同様である。しかし、イラク戦争では国防総省が「衝撃と恐怖」戦略の一環として、対人兵器として使用することを勧めた。そして、1発の MOAB が実戦配備されたが、使用されなかった。
大量破壊の手段が限られている中で、この爆弾を使用するかも知れないとのことが広く伝えられたため、これは心理作戦の一部であるともされる。実際に大量破壊兵器として使用する場合、以下の二つの問題がある。
- 対人兵器として使用する場合、クラスター爆弾のほうが有効である。
- 民間人が多い場所で使用する場合、多数の巻添え被害をもたらし、「無差別攻撃」と非難される可能性がある。
[編集] 性能諸元
- 全長 9.14m
- 直径 1.03m
- 総重量 9752kg
- 炸薬量 8482kg