PC-FX
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PC-FX | |
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メーカー | NECホームエレクトロニクス |
種別 | 据置型ゲーム機 |
発売日 | ![]() |
CPU | V810 |
対応メディア | CD-ROM |
コントローラ通信方式 | ケーブル |
外部接続 | ビデオ、S映像 |
前世代ハードウェア | PCエンジン |
PC-FX(ピーシー エフエックス)はNECホームエレクトロニクスがハドソンと共同開発したPCエンジンの後継機。1994年12月23日に定価49,800円で発売された。
目次 |
[編集] 概要
PCエンジン時代に一度終焉を迎えた「コア構想」が改めて継承されており、PC-FXボード、PC-FXGAなどPC上でPC-FXのソフトが遊べるボードが発売されたり、PC-9800シリーズ(PC-98)の外付けSCSI接続のCD-ROMドライブとして使えるなど、PC-98との連携が意識されたハードであった。また、家庭用ゲーム機としては初めて縦置きデザインを採用しており、その年の通産省グッドデザイン賞を受賞することにもなった。
動画専用のバスを備えるため、1994年当時の他の同世代機と違い直接、動画を扱うことが可能で、「バトルヒート」のような他機種では実現不可能な新次元のゲーム表現が可能であった。
[編集] 仕様
- CPU:NEC V810 21.475MHz
- メインRAM:2MB
- CDバッファ:256K
- 最大表示色数:1677万色
- 分解能:最大320×240ドット
- エフェクト:回転・拡大・縮小・セロファン・フェード・プライオリティ
- 動画再生:30フレーム/秒、フルカラー・フルスクリーン
- サウンド機能:ADPCM 2ch、波形メモリ音源(最大6音)
- 拡張端子
- 本体底 - 対応製品なし(メインメモリ拡張用スロット)
- 本体後部 - PC-98シリーズとの接続用
- 本体前面 - FX-BMP(本体メモリの4倍の容量を持つバックアップメモリパック)用
[編集] ハードウェア
CPUは親会社であるNECが開発した、オリジナル設計の32ビットRISC CPUであるV810(μPD70732GD-25)を搭載した。
このCPUは32ビットRISC CPUでありながら16ビット長の命令混在を許容することでメモリ使用効率の改善を図るなど、組み込み用途での使用に適したプロセッサであり、ゲーム機では他に任天堂のバーチャルボーイにも採用された。
これに対し、チップセットはハドソン製HuC62シリーズを採用した。
これは元々同社の手によってコード名「TETSUJIN」として開発されていた次世代ゲーム機のためのチップセットを基本としていたが、クボタコンプスとの共同開発が行われていた、表示個数やサイズなどに制限のない強力なスプライト機能を実装し、3Dグラフィック機能(演算性能10万ポリゴン/秒)の付加をも実現する新グラフィックチップ(HuC6273)の開発が難航して遅れたらしく、その代わりに前世代のPCエンジン用グラフィックチップ(HuC6270)を2個搭載し、これにMPEGデコーダ(HuC6272)を追加することで強力な動画再生機能を付与するという、はなはだアンバランスな構成となった。この結果、本機のグラフィック機能、特に画面モードとビデオメモリへのアクセス方法には様々な制約が存在することとなり、3Dゲームのみならず、2Dシューティング/アクション/対戦格闘ゲーム等の移植も困難になってしまった。
要約すれば、本機のグラフィック機能は「PCエンジン2台分の2Dグラフィック機能にMPEG再生機能が追加されただけ」というに過ぎず、他の次世代機群が次元の異なる高性能グラフィックコントローラ(例えばプレイステーションはそのグラフィックコントローラに36万ポリゴン/秒の3D演算性能を備えていた)を搭載していたことを考慮すれば、その敗北は自明のことであったと言えよう。
なお、開発の遅れていたHuC6273は1995年に発売されたPC-FXGAボードに搭載されて、PC-FXの本来あるべき姿を示したが、それは遅きに失したデビューであり、PC-FXGAボード自体もその後売れ行き不振から叩き売り処分の対象となって市場から姿を消し、当初計画されていたPCIバス対応版のPC-FXGA/PCIも製品化されずに終わっている。
[編集] その他
ソニーのプレイステーション、セガのセガサターンとほぼ同時期に発売され、32ビットゲーム機戦争と言われた販売合戦の一角を担うかに見えたが、2Dの動画機能を前面に押し出す代わりに、当時の他の次世代機最大のセールスポイントであった3Dポリゴン表示機能を全く備えていない(前述の通り、PC-FXGAには簡易的なものが追加された)、スプライトやサウンド機能がPCエンジンとあまり変わっていないなどの複数の致命的な戦略ミスにより約40万台と販売台数はストップし、たちまちに前2機の勢いに引き離されていく。PCエンジンの資産であったビジュアルシーンなどの「アニメーション機能重視」の長所を引き継ぐつもりで設計されたマシンであったが、完全に市場の読み違えで劣勢を余儀なくされる。
もう一点、本機の致命傷となったのが、キラーソフトと呼ばれる、広く万人にアピール出来るヒットソフトを生み出せなかったことである。プレイステーション、セガサターンにはそれぞれ「リッジレーサー」、「バーチャファイター」というキラーソフトを本体販促の加速に添えたことが成功に直結したが、本機PC-FXは一部のコアファン以外に本体の購買意欲をかき立てさせるようなキラーソフトを揃えることが出来ず、この加速のなさが余計にサードパーティーに積極的な参加を控えさせてしまった。パッドのボタン仕様が二列横並びの6ボタンと、当時の格闘ゲームを意識したものであるにもかかわらず、ボタンを多用するようなゲーム性の作品はほとんど出なかった。
こうした悪循環により結果的にソフトにも恵まれず、結局メーカー自ら『アニメフリークFX』シリーズを展開するなど、ギャルゲーやアニメなどの特定のファン層を対象とした間口の狭い作品偏重のラインナップとなっていったことが、更に本機の一般層への普及を妨げていった。
こうして発売された本機対応のソフトは隠れた名作もそれなりにあるが、一般受けするようなソフトが僅少であり、ゲームファンの中には「ほとんどがクソゲーだった」とさえ評論するユーザーも少なくない。
こうした劣勢の販売経過から開発ツールを一般に提供するという努力も行われたが、主だった成果は上がらずに終わり、本機は32ビット機としては最初に消えた3DOの次に淘汰されることになる。ソフトの総数自体もわずか62本(雑誌付録、体験版、PC-FXGA専用ソフトを除く)と少なかった。本機の失敗により、NECホームエレクトロニクスはNECグループの事業整理の対象になり、家庭用ゲーム業界から撤退することとなった。
当初はPCエンジン+アーケードカード向けでの制作が発表されていた『天外魔境III』が本機に移行したことにより、それに対する期待で一時売れ行きが伸びたものの、本機の売り上げ不振などの理由により、結局は発売中止になってしまった(その後、プレイステーション2で同じタイトルのソフトが発売されているが、当時開発されていたソフトとはシナリオ・キャラクターなどの要素が異なるため、別物といってもよい)。
[編集] マスコットキャラクター「ロルフィー」
ロルフィーは、PC-FXのマスコットキャラクターである。只野和子画。声は大野まりなが演じる。ロルフィーの設定年齢は13歳で、一部アニメファンに訴えるかのような幼い外見にされている。ロルフィーを題材にしたゲームソフト「となりのプリンセス ロルフィー」が発売されている。
アニメファンではないPC-FXのユーザーには評判が良くなかったと言われ、PC-FXのユーザーではない人間にはPC-FXのイメージがロルフィーによって決定付けられるという側面もあった。「ロリフィー」などと揶揄される事もあった。
「ロルフィーといっしょに、アニメゲームであそぼ(はぁと)」などといった、開き直りとも言える衝撃的なセリフが広告で使われた。
その後、NECが運営するプロバイダーBIGLOBEのBIGLOBEゲームの美少女18禁ゲーム、アダルトコミック総合ポータル「ドキドキCPLAZA」(18禁)のバナーにロルフィーらしき人物が描かれており、ヴァリスXほどではないものの、一部ファンにとって往年の美少女アイドルがAV女優になったような衝撃を与えた。
[編集] 関連商品
[編集] 周辺機器
- PC-FX SCSIアダプタ
- FX-PAD
- PC-FX マウス
- PC-FX バックアップメモリ
[編集] PC用カード
- PC-FXボード
- PC-FXGA(PC-98用)
- PC-FXGA(DOS/V用)
[編集] 代表作
- バトルヒート - 本体同時発売ソフトのひとつ
- アニメフリークFXシリーズ
- アンジェリークシリーズ
- ルナティックドーンFX
- 銀河お嬢様伝説ユナFX
- 虚空漂流ニルゲンツ
- 同級生2
- チップちゃん キィーック!
- ブルーブレイカー ~剣よりも微笑みを~
- きゃんきゃんバニーエキストラDX
- ファイアーウーマン纏組
- Piaキャロットへようこそ!!
- となりのプリンセス ロルフィー
- 超神兵器ゼロイガー
- こみっくろーど
- 負けるな! 魔剣道Z
- ファーストKiss☆物語 - PC-FXで最後に発売されたソフト
[編集] 外部リンク
- PC-FX MoeMoe - PC-FXに関する総合情報サイト
- 硬派なPCエンジンFX広場 - PCエンジンとPC-FXのファンサイト
- 日本テヘヘ会 - PC-FXとドリームキャストのファンサイト
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