センチメンタルグラフティ
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ジャンル | 恋愛シミュレーション |
対応機種 | セガサターン(SS) Windows95・98・NT4.0(Win) プレイステーション(PS) |
開発元 | NECインターチャネル |
発売元 | NECインターチャネル |
人数 | 1人 |
メディア | CD-ROM1枚(SS・PS)・2枚(Win) |
発売日 | SS:1998年1月22日 Win:1998年10月30日 PS:2001年3月29日 |
価格 | SS:7,500円 |
対象年齢 | 全年齢 |
『センチメンタルグラフティ』(Sentimental Graffiti) は、1998年1月22日にNECインターチャネルより発表されたセガサターン向けの恋愛シミュレーションゲーム。また、同ゲームを含む一連のメディアミックス企画の総称。略称で「センチ」「セングラ」などとも呼ばれる。アンチからは「チングラ」、「チンティ」などと呼ばれるがチンティはその響きの面白さからファンも稀に使う。
後にプレイステーション版やWindows版も発売された。なおWin版はWin2000以降は新しくゲームを始めると強制終了してしまうバグが報告されている。故に現状ではフリーソフトのセーブデータ編集ソフトやWEB上で公開されているセーブデータをダウンロードするしかない。パッチは現在公開されていない。
目次 |
[編集] 概要
[編集] ゲーム発売以前
1994年に発売された『ときめきメモリアル』が爆発的なヒット作となり、コンシューマーゲームにおいて恋愛ゲームという、ジャンルが広く認知されるに至った。それを受けて、『卒業』シリーズの主力スタッフであったNECインターチャネルの多部田俊雄とゲーム制作会社マーカスの窪田正義が、『ときメモ』に続く新しいブランド(「ネクスト『ときメモ』」と銘打っていた)とするべく共同考案したのが本作である。
脚本や文章を大倉らいた、キャラクターイメージを甲斐智久が担当。ヒロイン役の声優の内6人は青二プロダクションの新人を中心に起用。残りの6人は当時珍しかった一般公募による選考で揃えている、この6人はうさぎ組と呼ばれ、マーカスに所属し、同社倒産後は青二プロへ移籍した。いずれのスタッフも当時は知名度が低く、その分メディアへの露出も少なかったが、強力な販促活動でバックアップすることによって独自のブランドを作り出すという販売戦略であった。
それだけに当初から活発な宣伝がなされており、『電撃G'sマガジン』における連動小説の掲載を始めとして各ゲーム雑誌で多くの特集記事や広告が掲載された。1997年からはTBSラジオにて『センチメンタルナイト』が放送され、声優による本格的なプロモーションを開始。「SGガールズ」と名付けられたユニットを組んでイベントやコンサートが精力的に行われた。関連グッズの発売も積極的に行われ、中でもプレディスクとして制作された『センチメンタルグラフティ ファーストウィンドウ』は予約が殺到したために入手困難となり、プレミア価格で取引されるほどであった。
1997年11月には三一書房からブームに便乗して『センチメンタルグラフティ攻略読本』なる本がゲーム発売に先行して発売された。ゲーム発売元から許可を得ずに執筆されたためゲームキャラクターのイラストは一切使用せず、公開されているキャラクター設定から勝手にゲーム内容を予想して攻略(?)するという内容。攻略本ではなく『磯野家の謎』と同様の謎本である。
[編集] ゲームの発売
こうして発売前から大きな話題を呼んでいた本作だが、本編の発売は当初の予定であった1997年夏から大幅に遅れた。そして翌年1月22日にようやく発売、販売本数そのものは上々だったものの、ゲーム中のグラフィックがイメージイラストと違っていたことや内容が期待に応えるほどのものではなかったこと、またゲームジャンルのイメージからかけ離れたオープニングムービー[1]からウェブサイト上でクソゲーとして酷評されたこともあり、総じて低い評価を受ける事となった。
本来、ゲームのキャラクターグッズは「ゲームが主でグッズが従」という関係にあるが、本作の場合ゲームの発売するかなり前からグッズが展開されていたためファンの間ではグッズを基にしたイメージが形成されてしまい、ゲームのほうが「出来の悪いキャラクターゲーム」扱いされてしまった感がある。
- ^ 黒をバックに12人のヒロインが何故か水で濡れていたり、虚ろな表情で飛び跳ね、更には水を滴らせながら精気を抜かれたような顔つきで仰向けで宙を舞い、マジックポイントを吸い取られそうな踊りや拳法の構えをしているように見えるというもの。「暗黒太極拳」「暗黒舞踊」などの俗称がある。
[編集] 以降の展開
本編発売後も積極的な営業活動が引き続き行われ、本作の一年前を描いたTVアニメ『センチメンタルジャーニー』の放送やコンサートツアーなど新しい展開が見られた。これはプレイステーション用ソフト『センチメンタルジャーニー』の発売を睨んでのものであり、この際の販売はNECインターチャネルではなくバンプレストによって行われている。これまで行ってきた販売戦略によって固定ファンを得ていたこともあり、依然一定の人気を得てはいたが、肝心のゲームは再び延期の憂き目を見る事となる。
そして9月25日に発売された『センチメンタルジャーニー』の売上が低調に終わると、その後は急速に収束。撤退したバンプレストに代わって再び販売事業に乗り出したNECインターチャネルが続編『センチメンタルグラフティ2』を手掛けたが、再び発売は延期する。その際にはこれまでのような大規模な宣伝は見られなかった。本作の企画が立ち上がってから3年もの月日が経ち、また同ジャンルのゲームが氾濫していたこの時点において本作の求心力は既に失われていたのだ。 前作主人公が交通事故で死んだという設定、ヒロインの一人安達妙子の声優交代などファンからの批判も多い。前作のシナリオ担当だった大倉も続編のシナリオを担当しなかった理由について、「前作の主人公が死ぬ、と言う設定の変更が不可能で、書きたくても書けなかった」と言っている。
その一方で、2001年3月29日には電撃G's連載小説を元にしたノベルゲーム『センチメンタルグラフティ~約束』がプレイステーション向けに、本編のプレイステーション移植版と同時に発売された。
シリーズの最新作として2004年10月28日にプレイステーション2用ソフト『センチメンタルプレリュード』が発売された。しかしNECインターチャネルにとっても看板ではなくなっており、堀江由衣などの人気声優起用作品にも関わらず現在の扱いは以前とは比較にならない。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] ゲーム内容
高校3年になる春休み、かつて中学卒業まで幾度となく転校を繰り返した主人公(デフォルト名は田中一郎)の元に、「あなたに会いたい」と書かれた差出人不明の手紙が届く。手紙の送り主を探すために主人公は全国各地を回り、思い出に残る12人の少女と再会する。
一年間の間に、平日の学業とアルバイトをこなしながら全国12都市を回り、ヒロインとのイベントを発生させる事によって、ストーリーを進めるのが基本的な流れになる。手紙の送り主を探すのが本来の目的なのだが、実際はエンディングで最も親密になったヒロインが送ったということになる。それぞれのストーリーの進捗状況によって、各ヒロインごとのハッピーエンド、グッドエンド、バッドエンドの何れかのエンディングを迎える事となる。
平日は自動処理され、プレイヤーがコマンドを実行するのは土曜・休日・長期休校期間(春・夏・冬休み)のみ。休日に実行できるコマンドには「他の街に移動する」「電話をする」「バイトをする」「休む」などがあり、それぞれに応じた時間やお金が消費される。また移動・休養の際は選んだ手段によって料金や移動時間、体力(本作では行動力)の回復量が変わってくる。
ヒロインには「好感度」と「せつなさ度」が設定されており、好感度は会う事によって、せつなさ度は連絡を取らない事によって上昇する。せつなさ度が上がった状態で再会すると好感度が大幅に上がりイベントが発生し易くなるが、主人公の元に留守番電話が掛かってくるようになり、休日にメッセージを聞くための時間が自動的に消費される。また上げ過ぎると「せつなさ炸裂」状態となって一時的にヒロインと会えなくなってしまい、ハッピーエンドを迎えられなくなる。
実際はデートの約束がなくとも街を歩くだけでヒロインと会う事が出来るため、電話のコマンドはあまり意味がない。また好感度ではなくこなしたイベントの数によってエンディングが決定するため、好感度もそのイベントを発生させるため以外にはあまり意味のないものになっている。
[編集] 登場キャラクター
- 田中 一郎(たなか いちろう) ※デフォルト名
- 本作の主人公。小学4年の頃に青森を離れてから、中学卒業までの5年半を全国の12都市で過ごした少年。中学1年の前半については謎のままである。思い出の12少女と再会し、手紙の主を捜すために再び12都市を駆け巡るが…。
- 安達 妙子(あだち たえこ) 声:岡田純子
- 永倉 えみる(ながくら えみる) 声:前田愛
- 星野 明日香(ほしの あすか) 声:岡本麻見
- 保坂 美由紀(ほさか みゆき) 声:牧島有希
- 山本 るりか(やまもと るりか) 声:今野宏美
- 綾崎 若菜(あやさき わかな) 声:小田美智子
- 森井 夏穂(もりい かほ) 声:満仲由紀子
- 松岡 千恵(まつおか ちえ) 声:米本千珠
- 遠藤 晶(えんどう あきら) 声:鈴木麗子
[編集] ヒロインの在学校とその意味
ヒロインは12人全員がきちんと高校に在学しているが、これらの高校の名称は星野明日香の場合を除く他の11校はヒロインの個人イメージカラーに因んだ校名になっており、その型式は直接色名が付くタイプと名称の一部から色名を連想するタイプの2つに分かれている。
[編集] 直接色名が付くタイプ
- 青森県・県立 青垣高等学校:安達妙子(青色)
- 宮城県・私立 萌黄女子高等学校:永倉えみる(黄色)
- 石川県・県立 茶山高等学校:保阪美由紀(茶色)
- 愛知県・県立 水塚高等学校:山本るりか(水色)
- 京都府・私立 紫雲女子高等学校:綾崎若菜(紫色)
- 香川県・県立 白井坂高等学校:杉原真奈美(白色)
- 広島県・県立 朱之宮高等学校:七瀬優(朱色→赤色)
- イメージカラー自体は赤だが、朱色は髪の毛の色などで採用されている。
- 福岡県・私立 黒曜館高等学校:松岡千恵(黒色)
[編集] 名称の一部から色名を連想するタイプ
- 北海道・私立 祥桜学園高等学校:沢渡ほのか(ピンク色)
- 桜→花びら→ピンク
- 大阪府・私立 笹峰女学園高等部:森井夏穂(黄緑色)
- 笹→葉の色→黄緑
- 長崎県・県立 誠林女子高等学校:遠藤晶(緑色)
- 林→草木の色→緑
[編集] 星野明日香の場合
星野明日香の学校清華女子高等学校は、本作と同じ窪田正義が手がけた育成シミュレーションゲーム・『卒業』が初出。
『卒業』第1作目のヒロイン5人組の卒業から数年後のストーリーである『結婚』を大倉らいたが執筆する。これが好評を得て、後の本作の原作に繋がっている。
そのため、本作では明日香の高校である清華女子高等学校の制服を着た女の子のアイコンが存在する他、制服(デザイン・色)、校歌(曲・歌詞)、舞台背景、校長(キャラクターデザイン・役名・声優)が『卒業』第1作目と同一である。
[編集] テーマソング
- OP曲「雲の向こう」 作詞:為我井徹 作曲:田島浩二 歌:Sentimental Graffiti Tears
- ED曲「センチメンタル・ラブ」 作詞:六月十三 作曲:田島浩二 歌:Sentimental Graffiti Tears
- Windows版OP曲「Truly One」 作詞:M.S 作曲:田島浩二 歌:S.G.T with 渡辺かおる
- Windows版ED曲「My Only Love」 作詞:M.S 作曲:田島浩二 歌:S.G.T with 渡辺かおる
以下は、ゲーム中では各キャラクターの登場時に曲のみBGMとして流れる。
- 沢渡ほのか「Long Distance Call」 作詞:篠原美生 作曲:濱田智之 歌:鈴木麻里子
- 安達妙子「日曜日の丘」 作詞:浅田優美 作曲:徳永声一 歌:岡田純子
- 永倉えみる「私のもとへ逢いに来て」 作詞:浅田優美 作曲:篠原美生 歌:前田愛
- 星野明日香「Sweet Tears」 作詞:濱田智之 作曲:MUNETAKA SAKAMOTO 歌:岡本麻見
- 保坂美由紀「一枚の風景」 作詞:AYA KAGAMI 作曲:武井浩之 歌:牧島有希
- 山本るりか「水色の宝石」 作詞:篠原美生 作曲:武井浩之 歌:今野宏美
- 綾崎若菜「せつなさの行方」 作詞:篠原美生 作曲:濱田智之 歌:小田美智子
- 森井夏穂「君がいれば・・・」 作詞:浅田優美 作曲:浅田優美 歌:満仲由紀子
- 杉原真奈美「思い出を止めたままで・・・」 作詞:濱田智之 作曲:濱田智之 歌:豊嶋真千子
- 七瀬優「Only Lonely Star」 作詞:浅田優美 作曲:MUNETAKA SAKAMOTO 歌:西口有香
- 松岡千恵「Two Dreams」 作詞:濱田智之 作曲:武井浩之 歌:米本千珠
- 遠藤晶「振り向けば I Love You」 作詞:濱田智之 作曲:濱田智之 歌:鈴木麗子
ほとんどの楽曲はNECインターチャネルから発売されていたが、1998年に新バージョンのキャラクターソングがコロムビアから発売された。これらは『センチメンタルジャーニー』でのイメージソングとなっている。
[編集] センチメンタルグラフティ~約束
本作のメディアミックスの一環として制作された電撃G'sマガジン連載小説を元にした小説単行本上巻のタイトルであり、またそれを題材にしたノベルゲームである。ゲームは2001年3月29日にプレイステーション版が、2003年12月25日にドリームキャスト版が本編と同じくNECインターチャネルから発売された。
[編集] 小説版の内容
電撃G'sマガジン連載小説は、『センチメンタルグラフティ~約束』『センチメンタルグラフティ~再会』の上下巻に編集され、角川スニーカー文庫より刊行されている。上巻に当たる『~約束』は本編主人公と12少女との思い出とその別れを描いたものである。
なお、下巻に当たる『~再会』は本編のオープニング内容にほぼ準じたものであるが、設定時期が夏休みとなっている点がゲームと異なる(ゲームでは春休み)。
[編集] 新装版『+』(プラス)と『告白』
2004年10月、『センチメンタルプレリュード』の発売に合わせて、宙出版ハートノベルズより、同作の小説版、及び『約束』『再会』の新装版が『~+』(プラス)の表題で、それぞれ刊行された。 『約束+』には、「ザ・スニーカー」に連載された『センチメンタルグラフティ あなたにあいたくて』が追加収録され、また『再会+』には、主人公とヒロインの想いの成就を描いた『告白』の安達妙子編(脱稿直後に企画自体がボツになってしまった為、他のヒロインのストーリーは執筆されていない)が収録されている。
- 『センチメンタルグラフティ~約束+』 ISBN 477679070X
- 『センチメンタルグラフティ~再会+』 ISBN 4776790718
- 『センチメンタルプレリュード~キミと僕らの物語』 ISBN 4776790726
[編集] ラジオ番組
12人のメンバーが3人ごと4組に分かれて週替わりに出演。いずれもTBSラジオで放送されていた。
- センチメンタルナイト(1997年) - パーソナリティ:藤田淑子
- 帰ってきたセンチメンタルナイト(1998年)
- Onlyセンチメンタルナイト2(2000年)
[編集] 余談
この作品は、「卒業」のみならず、後の大倉の作品小説である「坂物語り」とも同一の作品世界とされる。
本作の方が先に作られているため、本作側からはその旨を窺い知ることが出来ないが、小説 「坂物語り」第3巻『坂物語り~君と吹かれた秋色の風』の第三章「弘前のりんご坂」に登場する保奈美の苗字が「安達」であり、更に105項の9行目に「青森市で酒屋を営む親戚」という部分が記されている。これは本作の安達妙子を示唆しており、このことから間接的に、3作品が同一の世界に存在することが伺える。