テルグ語
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テルグ語 తెలుగు |
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話される国 | インド |
地域 | アーンドラ・プラデーシュ州、タミル・ナードゥ州、カルナータカ州 |
話者数 | 約7~8,000万人 |
順位 | 13位 |
言語系統 | ドラヴィダ語族 南中央ドラヴィダ語 |
公的地位 | |
公用語 | インドの公用語の一つ、アーンドラ・プラデーシュ州 |
統制機関 | - |
言語コード | |
ISO 639-1 | te |
ISO 639-2 | tel |
ISO/DIS 639-3 | TEL |
SIL |
テルグ語(てるぐご、తెలుగు)は、ドラヴィダ語族に属し、インド南東部のアーンドラ・プラデーシュ州の公用語である。タミル・ナードゥ州、カルナータカ州などでも話され、ドラヴィダ語族の諸言語のなかでは、約8,000万人ともっとも多数の使用者がいる。しかし言語的求心性が弱く、標準化も進んでいない。
目次 |
[編集] 文字
ブラフミー文字より発展したテルグ文字を使用する。ブラーフミ文字は元々サンスクリットを表記するための文字であったため、発音上で、無用な混乱が生じている。テルグ語では、区別のない音であっても、それを表記するテルグ文字で区別があると、発音上でも区別を求めたので、文字表記されると、読む者によって、違う発音となって統一がない。
フランス語のリエゾンをもっと一般化したような「連音」があり、発音で聞くと、個々の単語の境界が不明である。19世紀のイギリス人が東洋のイタリア語と呼んだように母音に特徴があり、母音の数は20以上あるとはいえ実用的に使用される主要な単母音は四種類で、日本人には馴染みのある発音しやすい言葉である。
[編集] 歴史と文法構造
ドラヴィダ語を代表すると共に、外来の要素が最も少なくその古典的な形を維持しているのは、インド最南端とも言える場所に位置するタミルナードゥ州の公用語であるタミル語である。テルグ語は、ドラヴィダ語ではあっても、西暦1世紀頃に、南インドに勢力を確立したアーリヤ系のアーンドラ王朝の文化影響を大きく受けている。その文字ともあいまって、サンスクリット語からの語彙の借用や造語がきわめて多い。またヒンドゥスターニー語(ヒンディー語、ウルドゥー語)やペルシア語、アラビア語からの語の混入もある。
また北インドにイスラム諸王国が築かれると共に、逆に、南におけるヒンドゥー文化の正統維持者の自負を持ち、カースト制を重視した。この結果テルグ語の古典詩人たちは、多く、サンスクリットでも作品を造ったため、テルグ語には更に多くのサンスクリット系の語彙が流入した。またこのようなヒンドゥー文化の重視の為テルグ語話者自身に、テルグ語伝統への求心性が薄く、多数の方言に分化して、20世紀になるまで、共通語の試みも、自然的な収束もなかった。また、20世紀になって、ようやく共通語化が進められたが、それでも方言分化があり、逆に後退しているようにも見える。英語や近隣のドラヴィダ語などを話者が併用するため、膨大な使用人口を持ちながら、消滅へと向かっている可能性があるとさえ指摘する者もいる。 テルグ語は、名詞の格変化を表現するのに、すべての名詞の単数形・複数形に適用される決まった接尾音節を加える。この接尾音節は日本語の「格助詞」に似ている。そのため、インド・ヨーロッパ語のような屈折言語というより、日本語や、アルタイ諸語の言語に似ており、膠着語に近い。複数形を厳密に区別しなければならない点を除くと、日本人には理解しやすく修得しやすい文法構造である。
[編集] 格変化
例えば、Ramudu (男性名詞,単数・主格)の屈折変化は次のようになるが、ここで示された「接尾音節」が、すべての名詞に対し、単数・複数に関係なく付いて、格を表示するというのは、屈折言語における格変化というより、日本語などの膠着語における「格助詞」に近いものだということになる。
主格 (-は) : | Ramudu | ( -du ) | |
対格 (-を) : | Ramuni | ( -ni ) | |
造格 (-で) : | Ramuniki | ( -ki ) | |
与格 (-に) : | Ramuniki | ( -ki ) | |
奪格 (-で) : | Ramudininchi | ( -ninchi ) | |
属格 (-の) : | Ramunidi | ( -di ) |
[編集] 語順
また、文章を構成する要素単語の語順で見ると、テルグ語では、「行為主体(主格)-行為対象(対格)-行為・述語詞」というような順序である。「ラーマはボールを打つ」という日本語での言葉の語順は、「ラーマは」-「ボールを」-「打つ」という風に、テルグ語と同じである。
- Ramudu bantini kottadu
- ラーマは ボールを 打つ
このような特徴は、ドラヴィダ語一般にも言えることであり、大野晋が、「日本語ドラヴィダ起源説」を唱えて、タミル語で検証を試みたことも、決して荒唐無稽なこととは言えなくなる。
ただしこれは検証を試みる段階までの話であり、日本語の格助詞は上代にはあまり発達していなかった(「われボール打つ」のような文も一般的だった)こと、「du」と「は」、「ni」と「を」等の間に規則的な音韻法則が全く見出せないこと等を鑑みれば、彼の検証結果については大いに疑問が残る。(生物の収斂進化のように、後から似てきただけである可能性が否定できない。)
[編集] 文化的背景
テルグ語の話者は、南インドの大穀倉地帯に住み、米を主食とするので、文化的に日本に似た面もある。日本語で「稲」「米」「ごはん」が、独立した単語としてあるのと同様に、テルグ語でも、これらは独立単語である。米一粒一粒に女神が宿っているとされ、そのため、米一粒一粒も、大事に扱わねばならないという文化がある。米はまた繁栄の象徴で、常に複数で表現される。
[編集] 関連項目
[編集] その他
テルグ語で造られた映画の数は非常に多い。インドでも、もっとも多いのがテルグ語娯楽映画である。
カテゴリ: ドラヴィダ語族 | インドの言語 | アーンドラ・プラデーシュ