主格
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主格(しゅかく; 英 nominative case 羅 casus nominativus)とは名詞・代名詞の格のひとつであり、典型的には名詞や代名詞(冠詞・形容詞の場合は修飾する名詞)が文の主語ないし主語と同格の補語(属詞)になる場合に使用される。 ドイツ語では一格とも呼ぶ。 また、しばしば呼格を兼ねており、人・物への呼びかけなどにも使用される。
英語などのインド・ヨーロッパ語族では、格によって語形が変化するのが本来の姿であるが、現在では英語・フランス語・スペイン語・イタリア語など多くの言語で、代名詞(および、英語における名詞の所有格)を除いて格変化は消失している。
英語の人称代名詞には、主格・所有格・目的格の3つの格があり、主格はI, you, he, she, it, we, theyである。
格変化を保持している言語(代表例はドイツ語・ギリシア語・ラテン語など)では、名詞・代名詞は単数主格形、冠詞・形容詞は男性単数主格形をもって辞書の見出し形とする。 とくにギリシア語やラテン語の一部の名詞では、単数主格とそれ以外の格形で語尾が大きく変わるものがあり、後者を見て前者を推測できるようにならなければ辞書を引くことができない。
現代日本語の場合は、名詞に格助詞の「が」を加えることによって主格となる。日本語においても、主格が主語を標示するのが典型的であるが、「私は頭が痛い」「あの人は英語が話せる」「私はりんごが好きだ」などの例のように、格形態と文法関係にずれが生じることもある。この場合、格形態としては主格であっても文法関係(意味上)としては主語ではない。このような例は他の言語にも多く、例えばイタリア語の"Mi piace ~"(私は~が好きだ)でも、好む対象~が形式上の主格をとる。
「AはBだ」「AはBでない」の形式の名詞文(コピュラ文)におけるBは、主語Aと同格という意味で主格補語と呼ばれ、多くの言語では主格で表される。日本語と似た文法を持つ朝鮮語でも、否定の「Bでない」には主格助詞を用いる。しかし日本語では「で」(である)あるいは「に」(なり < にあり)という、主格とは異なる助詞を用いる点で特殊である。「AはBになる」のような変化を表す文でも、Bを主格で表す言語が多いが、日本語と同じように主格と異なる格で表す言語もある(フィンランド語の変格など)。
なお、日本語文語体の主格は元来、無標(格助詞を伴わない)だった。しかし、連体修飾節内の主格は連体格助詞の「が」または「の」で示す規則があったため、のちに体言の終止形が連体形合流したのに呼応して、連体格助詞だった「が」(一部方言では「の」)を付けるようになった。そこで現代語では「が」が主格助詞となったのである。