ニョロニョロ
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ニョロニョロは、トーベ・ヤンソン原作のムーミン・シリーズに登場する小さいお化け。白い靴下を逆さにしたような形をして、電気を帯びている。会話をすることはできないが、物語にしばしば登場し不思議な存在感を示す。
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[編集] 形態
体は白く細長い筒状で、スポンジでできているように見える。通常は直立しており、頭部は丸く、下部は擦り切れた様になっている。体長は個体によってまちまちであるが、だいたいムーミンママの腰あたり。ムーミンパパの発言によると「長い白い靴下」にいちばんよく似ている。また、場合によっては姿を見えなくすることができる。
腕に相当するものは無く、手は体の横に直接付いていて、物をつかんだり投げたりすることができる。体の下端には足がついており、すべるように移動する。
頭部には前方を向いて並んだ無表情な丸い目が2つあり、色は青・黄・赤・灰色に変化する。鼻・口・耳などは存在しない。視力は鈍く、聴力は無いが、地面からの振動は敏感に感じとることができる。
音声による会話はできないが、手を振ったりお辞儀をしたりすることでコミュニケーションをとる。まれに微かに声を出して歌うことがある。電気によって他人の考えを読み取ることができるとも考えられており、実際にムーミンパパの考えにあわせて動きを変えたりする行動が見られる。
身体に電気を帯びており、不用意に近づくと感電する。特に雷のあとには強く帯電し、全身が発光している。また、ニョロニョロの近くでは、物の焦げたような臭いや硫黄の臭いがすることが多いが、これがニョロニョロ自体の臭いであるか、電気によって物がこげるためであるかは不明である。
[編集] 生態
ニョロニョロは光沢のある白い小さな種から生まれるが、発芽する日は夏祭り前日に限られる。地面にニョロニョロの種子を蒔くと、すぐに頭部から順に生育し、最後に足が地面から出て移動を始める。生まれたてのニョロニョロは特に強い電気を帯びている。
成長したニョロニョロは、海上をボートや船で移動しながら各地の孤島を巡回している。巡回している際の個体数はまちまちであるが、かならず奇数である。上陸した島にはシラカバの皮の巻物を残していくことがある。この巻物に触ると感電するが、文字などは書かれていない。夕立を好み、雷が発生する場所に群れをつくることがある。
夏至の日には、ニョロニョロはムーミン谷の北北西に位置する決まった島に集まる。マホガニー製の大きな気圧計がついた青い柱を中心に、世界中から約700体が集合する。目的は不明。
[編集] 文化
ムーミンたちの間では、ニョロニョロの話をすることは上品なことではないとされている。ニョロニョロはひどい暮らしをしており、また危険であるともいわれている。ニョロニョロはお化けとして扱われており、そばに近づくことを嫌がる人も多い。
[編集] 参考文献
- トーベ・ヤンソン, 「ニョロニョロのひみつ」(『ムーミン谷の仲間たち』収録), 山室静 訳, 講談社文庫, 1979. ISBN 4-06-138085-0.
- 同, 『たのしいムーミン一家』第3章, 山室静 訳, 講談社文庫, 1978. ISBN 4-06-138062-1.
- 同, 『ムーミン谷の夏祭り』第6章, 下村隆一 訳, 講談社文庫, 1979. ISBN 4-06-138093-1.
- 同, 『小さなトロールと大きな洪水』, 冨原眞弓 訳, 講談社青い鳥文庫, 1999. ISBN 4-06-148503-2.