ファンロード
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ファンロード (Fanroad) は、編集プロダクション会社の銀英社編集、大都社発行のアニメ雑誌。毎月15日発売。
他のアニメ雑誌とは異なりライセンス許諾を得ず、読者投稿を元に編集構成される。そのため内容や印象は他のアニメ雑誌と異なり、同人誌に近い。この形態の雑誌としては根強い読者層を持っており、最盛期は「月刊OUT」(みのり書房、休刊)とは双璧を成していた。近年はインターネットの普及などによって読者数は減少し、2001年には発行部数も5万部を割った。主に10~20代の女性をターゲットとした編集になっている。
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[編集] 略史
1980年8月、ラポートより創刊する。もともとは同社発行のアニメ雑誌「アニメック」の税金対策として創刊、創刊時の誌名は「ふぁんろ~ど」とひらがな表記で、当時は隔月発行だった。創刊当時は赤字続きだったが、ラポートの二代目社長の優れたリサーチ能力によって編集内容をバックアップした事により徐々に上向き、月刊化後は圧倒的な人気雑誌となった。
2003年10月にラポートが倒産。10月号でその歴史は一度止まることになる(完成済みだった11月号は発行されなかった)が、スタジオケダマン時代の縁により少年画報社系の大都社がその発行を引き受け、2004年1・2月合併号から発行が再開されている。
[編集] 特徴
- アニメ雑誌としては珍しく、アニメや漫画、ゲーム以外にも、小説、映画、旅行、食べ物等、様々な趣味を幅広く扱う。特に食べ物と旅行に関しては、毎年数回「ゲゲボツアー」と称して台湾や香港など海外に旅行、様々な食を堪能したり、現地で見つけた変わり種を発掘したりしている。また珍ドリンクのことを「ゲゲボドリンク」、珍食品を「ゲゲボフード」と称し、読者間で紹介しあうこともある(例:メッコール)。
- ちなみに「ゲゲボ」とは、創刊当時からのマスコットキャラクターのカモノハシに、吹き出しで「ゲゲボ」と鳴かせた(言わせた?)表現があったところから、ファンロード読者の間で使われるようになったといわれる。意味としては「しょうがなくて呆れた」とか「情けない」「呆れつつも驚いた」ような表現として用いる場合が多い。前出の「ゲゲボドリンク」などの用例も、「(こんな飲み物があるのかと)驚き、あるいは呆れるような(情けない)味・品質の飲み物」に出会った際に使われる。汎用は広く、人の行動や物質、商品の他、漫画のキャラクターなどでも、その役まわりややられ方などがしみじみ情けなかったり、意味不明だったりした場合も「ゲゲボだ」と用いられる場合もある。
- 「ローディスト」と呼ばれる読者達はその熱狂性から「シンパ系読者層」という認識も産み出している。特に「お気に入りキャンペーン」では、読者の熱烈な投稿数によって、漫画家の人気ランキングが決まる。上位作品には「今月の○○」という専用コーナーが設けられる。
- 彼らローディストの「(投稿による)誌面上でのコミュニケーション」こそがこの雑誌のメインであるのだが、雑誌というメディアは「投稿から反映(掲載)までかなりの時間を要する」のであり、インターネット上のコミュニケーションに比べるとはるかに不便といえる。読者減少の一因はこの点にあると思われる。インターネット普及が予想されたより早かったとしても、未だに対応を考慮する姿勢が見られないことは不可解である。
- 人気が最も高いコーナーが「シュミの特集」(通称・シュミ特)の中の一つである、「シュミの大事典」である。このコーナーはある作品をテーマに、登場人物や用語などを見出しにした主に事典風のコメント投稿を五十音順に並べたもので、ページの外側にはモノクロイラストが掲載される。
- 用語の中には「アミバ」(北斗の拳)や「イニシャルビスケットのK」(同誌の編集長のペンネーム)「おめでとう!大事典に見事採用された…」など、作品に関係ないものも毎回表示される。アミバよりも掲載順が前にある用語には、必ずといっていいほど「アミバのトップを防ぐ○○」といったコメントが付く(アミバがブレイクする以前の大事典の初代イコンは一部でカルト的人気を博したミンキーモモだった)。またこの辞典形式のフォーマットは、のちにネットや同人レベル等での辞典的編纂本の礎となったが、実は「伝説巨神イデオン」ファンの投稿から採用されたものであり編集部の創案ではない。
- シュミの特集で取りあげられる作品は基本的に前述の「お気に入りキャンペーン」でのランキングなどに左右されるため、「週刊少年ジャンプ」連載作品に多く、最近では「月刊少年ガンガン」やその派生誌の「月刊コミックブレイド」、「コミックZERO-SUM」などに連載されている作品も取りあげられている。この他、「機動戦士ガンダム」シリーズやミュージシャン、美少女ゲームなどもよく扱われる。1作品だけでは特集のボリュームが足りないと思われる時には、メイン作品及び同ジャンルの作品という形での特集が組まれる。
- ターゲット層の嗜好の遷移から、近年では「週刊少年マガジン」や「週刊少年サンデー」、「週刊少年チャンピオン」での掲載作品はほとんど取上げられない。過去には「週刊ヤングマガジン」、「月刊アフタヌーン」の作品も取り上げられていた。
- 読者投稿のレベルが高く、特に漫画・イラスト系に関しては多数のプロ作家を輩出している。
- 長期間購読しなければ理解できない専門用語・慣習が多数存在する。本誌が歴史を重ねる中で形作られた貴重な文化といえるが、それらの用語・慣習に関する説明が乏しく「内輪ノリ」な部分も多々あるため、新参の読者が理解に苦しむところである(それすらもネタにされる)。
- ラポート時代には、初心者ローディストへの指南書として「ファンロードハンドブック」が1987年以降、毎年春先に出版されていた。この中で初心者用の用語解説のコーナーなども存在し、「アミバって何ですか?」など毎年同じような質問と回答が繰り返された。現在は後継誌(?)として「同人誌ハンドブック」が出版されている。
- 誌上でブレイクしてスターになりその後プロになった人は数多いが、何故か大成しないジンクスがあり、それにより真剣にプロ志望の読者が深入りを敬遠するようになったことが今日の投稿水準の低下した一因とも見られる。
- 80年代なかば頃には、当時のスター投稿者達の連載やイベント参加を積極的に雑誌のセールスポイントとして押し出していたが、学校を中退する・受験をウヤムヤにするなどプロ気取りの問題行動が一部にあらわれ、「学生」「会社員」等の身分の無い人は起用しないようスターシステムの手法が見直された。これは編集部の責任上当然の適切な措置だったが雑誌の持つ甘美で危険な魅力は損なわれた感がある。
- 90年代末以降、少年ジャンプの作品ばかりを特集する極端な誌面づくりを行い、少なからず潜在していたジャンプ作品を支持しない読者の離反を招いた。これは多様な読者相を破壊し投稿水準の低下をもたらした。さらに「素材」の人気より「料理」のセンスを身上とする雑誌のイメージと権威を失墜させたことも否定できない。
[編集] 主なコーナー
- シュミの大事典
- エンサイクロペディア・ファンタニカ(通称・ハシラ)
- マイ・キャラクターズ
- イラスト・ラボ
- お気に入りキャンペーン
- 見たいもの・見せましょう
- etc...
[編集] 昔あったコーナー
- ローディス島戦記
- 他多数
[編集] 出身作家、元々ローディストだった作家
- 秋山明(秋山たまよ)
- 秋山徹郎
- あさのまさひこ
- あずまきよひこ
- 東まゆみ
- 嵐馬破天荒
- 有馬啓太郎
- 一本木蛮
- 伊藤宏之
- 犬上すくね
- 漆原友紀
- エレメンタル(川添真理子)
- 大橋姉妹(楠桂、大橋薫)
- 音子(岩岡ヒサエ)
- 折原みと
- かえんぐるま(渡瀬のぞみ)
- 影崎夕那(影崎由那)
- 片山愁
- 神威(おかざき真里)
- 神坂一
- 切り裂き猟奇(霧咲遼樹)
- くつぎけんいち
- コーヒー
- 湖川みさき(こがわみさき)
- コゲどんぼ
- 湖東えむ(湖東美朋)
- さかざき咲羅
- 山里ようこ(さんりようこ)
- 椎名崇(秋吉くま子)
- 柴田亜美
- 島村春奈
- 志摩冬青(漆原友紀)
- 神牙☆銀(しんがぎん)
- 巣田祐里子
- ZUBOC(安永航一郎)
- すんぢ(いーだ俊嗣)
- 千堂ありる(るりあ046)
- たしろたくや(田代琢也)
- 篤見唯子
- 長井建(ながいけん)
- 永野あかね
- 中森一郎
- 猫田猫美(浅田ともみ)
- 猫乃都(児嶋都)
- ばらスィー
- 東田正美(新井理恵)
- 藤井昴(藤凪かおる)
- 矛井さとし(ジャイロ余目)
- 岬下部せすな
- みけおう
- 宮城とおこ
- むかでめりべ(蜈蚣Melibe)
- 六鹿文彦
- 八木沢りほ(やぎさわ梨穂)
- 山本弘
- 夢橋耕威智(高橋功一郎)
- 吉崎観音
- 乱魔猫吉
- 他多数
[編集] 豆知識
- ショタコン(正太郎コンプレックス)
という言葉はこの雑誌の編集長の発言が発祥という説がある。しかし実際は、彼が食事で同席した人物の思いつきであり、それを結果的に自分の手柄にしただけの事である。本当の発想者は事実上不明。
- ファロちゃん
創刊から数号のあいだ表紙セル画をかざったファンロードの初期イメージキャラクターの少女。しかし当初から「機動戦士ガンダム」のキャラクター、キッカ・キタモトに酷似していると読者から指摘・揶揄(やゆ)されることが多く、そのせいか月刊化以前に姿を消した。
ファンロードのイベントに招待され上京した当時の有名投稿者、緋本こりん氏が8月12日の帰路日本航空123便に乗り合わせ事故死した。9月号発売直前だったので1ヶ月以上正式発表がなく夏期のイベント等で大変な噂となった(正式な発表の際、編集長は噂した読者達を非難した)。