フランス国鉄
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フランス国鉄(フランス国有鉄道。仏語:SNCF, Société Nationale des Chemins de fer Français)は、フランスの全国ネットの鉄道網を統括する鉄道運営法人である。企業形態は、日本の旧国鉄(日本国有鉄道)などと同じく、国有の公共企業体である。本社はパリ市内にある。
なお、現在は、上下分離政策により、線路や駅などの鉄道施設(インフラ)は、政府系の公的機関であるフランス鉄道線路事業公社(RFF)が保有し、フランス国鉄は、列車の運行、鉄道車両の保有などを行っている。
1938年に全国組織としての「フランス国鉄」が発足した。それ以前は「6大私鉄」と呼ばれた民間鉄道会社を中心に運営されていた(一部は国営で運営されていた)。
古くより列車のスピードアップに力を注ぎ、鉄道における速度記録を絶えず更新し続けてきた。1950年代半ば、すでに331km/hの記録を残しており、これらの技術の蓄積がTGVの開発や、320km/hでの営業運転につながっている。
最近では交流電化が主流だが、直流電気機関車の製造技術は世界最先端を行くもので、先に記した直流電化区間での速度記録は、1955年3月28日にCC7107、翌29日はBB9004と、2種の直流電気機関車により達成されたものである。
また、世界中に名前を知られた名列車を数多く運転しており、ミストラル、アキテーヌ、フレッシュドール(金の矢)、トランブルー(青列車)等は特に有名であり、トランブルーは文字通り、日本のブルートレインのモデルとなった。
日本の新幹線開業後、ヨーロッパで初めて最高速度200km/h運転を行ったのもフランスが最初であった。
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[編集] 組織
1997年から始まった鉄道改革(上下分離と分社化)により、現在は以下の組織にて運営されている。
- フランス鉄道線路事業公社(RFF:Réseau ferré de France)
- 鉄道インフラ管理を行なう政府系の公的機関。
- フランス国有鉄道(SNCF:Société Nationale des Chemins de fer Français)
- 列車の運行、鉄道車両の保有などを行なう国有の公共企業体で、目的別に以下の組織に分かれる。
[編集] 路線
路線網は約29000kmで、電化率は約50%、複線化率は約20%である。ドイツ占領時代に複線化されたアルザス・ロレーヌ地方を除き、複線は原則として左側通行である。電化方式は、直流1500V(主としてパリ以南)と交流25kV50Hz(パリ以北、マルセイユ以東及びLGV全区間)が混在している。
フランスの鉄道網の特徴として、首都パリを中心に、放射状に各都市を結ぶ形態が顕著に現れている。TGVが走る高速路線もそうで、パリを中心としたネットワークを構成している。一方で、パリを通過しない経路での地方都市間の連絡は、どちらかというとあまり充実しておらず、必ずしも便利ではない。
パリ近郊とフランス北部、オランダ・ベルギー・ルクセンブルク・ドイツと国境を接するフランス東部は、鉄道網の密度が比較的高いのに対し、西部や南部、スペイン国境付近は、北部や東部と比べると、路線網が密ではなくなる。
高速鉄道路線は、2007年にドイツ方面の東線の開業が控えているが、以後の整備(スペインやイタリア方面)は財政的な問題もあり、建設ペースが鈍化すると言われている。
[編集] 車両
車両技術は古くから世界をリードする存在である。また、「ゲンコツ」に代表されるように、フランス国鉄を強く印象付けるスタイルの車両も多く存在する。
- 電気機関車
- フランスの電気機関車の特徴は、直流・交流・交直流という、電源方式の異なる機関車でも、同一スタイルで製造されたことが挙げられる。また、性能面でも、共通化が図られている。最近は交直流対応のみを製造しているため、このようなことはなくなりつつある。なお、フランスの電気機関車は、10000未満が直流1.5kV対応、10000番台が交流25kV50Hz対応、20000番台が直流1.5kV・交流25kV50Hz対応、30000番台が直流1.5kV・交流25kV50Hzともう一電源の3電源対応、40000番台が直流1.5kV・交流25kV50Hzともう二電源の4電源対応で、形式番号の前に軸配置(BB・CC)が付く。
- 主要形式
- BB9200型(DC1.5kV)/BB16000型(AC25kV50Hz):1950年代後期に製造された、フランス国鉄の幹線用電気機関車。丸味を帯びた箱型車体と、高い位置にある細長い運転台の窓が特徴の、当時の典型的なフランススタイルの機関車。開発者の名前から"Jacquemin" (ジャックミン)と呼ばれる。
- BB9300型(DC1.5kV)/BB25000型(DC1.5kV・AC25kV50Hz):1960年代後期に製造された、BB9200型/BB16000型の改良タイプ"Jacquemin"。
- BB8500型(DC1.5kV)/BB17000型(AC25kV50Hz)/BB25500型(DC1.5kV・AC25kV50Hz):1960年代中期に製造された近郊・軽貨物用機関車"Danseuses"で、"Jacquemin"より出力を落としている。
- BB7200型(DC1.5kV)/BB15000型(AC25kV50Hz)/BB22200型(DC1.5kV・AC25kV50Hz):1970年代から製造された機関車で、鋭角的で角張った車体に、大きく引っ込んだ前面窓という、それまでのフランススタイルとは一線を画した独特のスタイルで登場し、フランスでは"Nez cassés"、日本では「ゲンコツ」と呼ばれた幹線用電気機関車。もう一つのフランススタイルとして知られる。
- BB26000型(DC1.5kV・AC25kV50Hz):1989年から製造された、箱型・前面傾斜スタイルの幹線用200km/h対応機関車”Sybic”。
- BB36000型(DC1.5kV・DC3kV・AC25kV50Hz):ベルギー・イタリアの直流3kV区間に直通するため、1997年から製造された貨物用3電源対応電気機関車”Astride”。
- BB27000型(DC1.5kV・AC25kV50Hz)/BB37000型(DC1.5kV・DC3kV・AC25kV50Hz):アルストム社製のヨーロッパ汎用(セミオーダメードタイプ)電気機関車”Prima”。
- 上記のほか、かつて1970年代にTEEを牽引した機関車には、200km/h運転対応・"Nez cassés"(日本では「ゲンコツ」)スタイルのCC軸配置機関車CC6500型(DC1.5kV)、CC21000型(DC1.5kV・AC15kV16.7Hz)、CC40100型(ベルギー・オランダ・西ドイツ直通対応のDC1.5kV・DC3kV・AC15kV16.7Hz・AC25kV50Hzの4電源式)などがあったが、CC21000型は全車CC6500型に改造され形式消滅、CC40100型は既に引退している。
- ディーゼル機関車
[編集] 列車の種類
フランス国鉄には、以前は日本などと同様に、Rapide(特急)やExpress(急行)が存在したが、現在はそのような明確な種別名は付けられておらず、概ね、以下のような列車が運転されている。
- TGV
- TGV Duplex
- TGV編成のうち、2階建て編成を使用する列車で、全車指定席。
- TGV Lyria
- Artésia(アルテシア)
- EuroStar(ユーロスター)
- Thalys(タリス)
- Corail(コラーユ)
- Corail Intercités(コラーユ・アンテルシテ)
- フランス国内の都市間を結ぶ速達列車で、概ね3時間以内の中距離都市間を結ぶ。
- Corail Téoz(コラーユ・テオ)
- Elipsos(エリプソス)
- Artesia Night(アルテシア・ナイト)
- 国際夜行列車
- Corail Lunéa(コラーユ・ルネア)
- TER(テー・ウー・エル)
- RER(エル・ウー・エル)