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ブルートレイン (日本) - Wikipedia

ブルートレイン (日本)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ブルートレイン「富士・はやぶさ」(14系・24系)
ブルートレイン「富士・はやぶさ」(14系・24系)

日本におけるブルートレインは、客車を使用した寝台列車を指す愛称である。ブルトレとも略される。

一般には、1958年に登場した20系以降の固定編成を組む客車で構成された列車を指す。その創始は、同年10月に車両が旧型のものから20系に置き換えられた「あさかぜ」である。

目次

[編集] ブルートレインの定義

基本的には、冒頭に挙げた寝台専用列車のうち、20系以降の寝台客車で構成された特急列車、つまり「客車寝台特急列車」とされている。

しかし、1970年代後半以降には10系以前の在来形寝台車が経年劣化による廃車が進んだ事で、既に陳腐化した20系を急行列車に用いるケースが出て来た。この初例として、1976年東京駅大阪駅間運行の「銀河」、上野駅秋田駅間運行の「天の川」、上野駅~仙台駅間運行の「新星」が挙げられる。但し、この3列車は共に寝台車のみで組成された寝台急行列車であった事から、「単なる格下げ運用」と言うより「特急列車並み」という表現が用いられた。これは、使用当時にはまだ定期特急列車に使用されていたためであるが、1980年に最後まで20系が使用されていた「あけぼの」で使用車両を24系に変更すると20系は定期列車としては急行用車両に格下げされ、以降12系を座席車として使用するなどの施策が行われ、座席車が半数以上連結されるケースでも「ブルートレイン」と称されるケースも見られた。

北海道の場合には1982年に在来形客車の代替車両として14系が用いられた事もあり、当時の夜行列車である「利尻」・「まりも」・「大雪」もそれぞれ客車列車であった時期にはこう紹介された事例があった。

また、夜行列車や寝台列車としてのダイヤは踏襲されているが、電車化或いは気動車化された事でブルートレインと称せない事例もある。このため、運行本数が多かった「ゆうづる」・「はくつる」や「あかつき」・「明星」・「彗星」で581・583系を使用した列車はこう見なさない向きもあった。

このような事例は直近では285系「サンライズエクスプレス」化された「瀬戸」や「出雲2・3号」(変更直前の列車名称)、気動車に寝台客車を併結する形になった「利尻」・「おおぞら13・14号」→「まりも」などが挙げられる。

なお、青を基調とした車両色は寝台車を中心に10系及び1958年より上野駅青森駅間で運行した昼行特急列車である「はつかり」に用いられた車両にも用いられたとされる。

ただし、後者は従前の「あさかぜ」・「さくら」及び「かもめ」などで用いられた車両を集めた関係もあり、「単なるお色直し」と言う批判もあったと言われる。そのためか、2年後の1960年にはキハ81系によりディーゼル列車化され、これ以降定期昼行特急列車で客車列車の設定がなされないこともあり、「客車特急列車=寝台特急列車」として定着したことも一因でもある。

そのため、変わったところでは臨時列車である「つばさ51号」など座席車で12・14系を用いた列車をこう呼ぶ場合もあるが、これは一般的ではない。

例外的なケースとして、1991年に廃止された同和鉱業片上鉄道で運行されていたオープンデッキの旧型客車によって組成された列車も、客車の塗装が全面青色に白色の帯が入ったものであったため、地元民や鉄道ファンからは「ブルー・トレイン」と呼ばれていた。

[編集] 沿革と概要

[編集] 寝台特急列車専用車両の登場

ブルートレインの最初の形式、20系(ナハネフ22形)
ブルートレインの最初の形式、20系(ナハネフ22形)

1956年東京駅博多駅間で運行を開始した「あさかぜ」は、登場時こそ京阪神を深夜に通過するダイヤ設定で物議を醸したものの、東京対九州での乗車率は好調であった。しかし、同じ特急列車でも昼行列車である「つばめ」・「はと」「かもめ」が存在するが、使用車両が現行のA寝台に相当する二等寝台車に戦前製造のツーリスト式寝台車を連結するなどともすれば急行列車に用いられるそれと同じ車両を用いざるを得ない事から、特急列車に見合う車両が求められる様になる。

その寝台特急列車に充当するために設計・製造された車両が20系である。詳細は同車両の項目を参照されたいが、日本の客車としては初となる「固定編成」の考えに基き、全車両に初めて空調設備を設け、食堂車で調理の際に電気レンジを用いるなど、編成内の全てのサービス電源を編成端の電源車で賄う「完全電化」された車両でもある。

その塗色としては、同じ1958年に登場した昼行特急列車用の電車20系電車(後に称号改正で151系電車→181系)ではクリームと赤の明るい塗色を採用したが、こちらの20系客車は、ヨーロッパの寝台車に多く用いられていた青が選ばれ、塗装は屋根以外を青色にし、クリームの細いラインを車両側面の上部、中央、下部の3ヶ所に入れたものとした。

当初、20系は(東京対)九州方面の寝台特急列車のみに充当されたため、この車両を用いた列車は「九州特急」などと呼ばれた。

しかし、1964年からは東京から北へ向かう「はくつる」に充当される様になった事から、「九州特急」の呼称は不適切なものになった。その結果、ジャズナンバーの一つにもあり、フランス国鉄の夜行列車「ル トラン ブルー(青列車)」にあやかった「ブルートレイン」の呼称が普及したと見られる。そのため、元々は非公式な俗称であったが、1970年代以降に以下の施策も相まって国鉄当局によって公式に用いられる様になった。

[編集] ニューブルートレインの登場

1970年日本万国博覧会(いわゆる「大阪万博」)の開催に伴う輸送力確保のために座席車として12系が製造される。この車両は従来の10系までとは異なり、臨時列車団体専用列車に充当される前提で設計された関係でサービス電源を緩急車から供給する分散電源方式を採用した。また、当時既に20系以外にも一部客車で塗色として青い塗色の車両が存在した関係で塗色を「青地に2条の白帯」とした。

その後、この12系の設計を元にして新製された寝台車である14系は、B寝台寝台幅を20系車両までのものを踏襲せず、581・583系のそれに合わせる形を採用した。これにより、20系との差別が図られて登場当時は"ニューブルートレイン"とも称された。塗装も12系のそれが引き継がれ、20系のそれに比べ明るめの色となった。

以降、北陸トンネル火災事故により20系と同じく集中電源方式を採用した24系でも14系と同様の設計で製造される。また、B寝台が2段化された24系25形や14系15形では塗色は単に青1色となるが、白帯の替わりにステンレス製の帯が巻かれ、保守の面では一層の省力化が図られる様になる。なお、14系と24系も24系25形や14系15形と同様に2段式寝台に改修が行われるが、寝台の変更のみで更衣室が残るなどの差違が見られるものの、運用面での差違は図りづらくなっている。

ちなみに、14系と24系は設計上大きな差違に乏しい事から、1980年代中葉以降に個室寝台などに改造を行うにあたり14系と24系との間で車種変更が行われる事例が頻々に見られる様になった。

[編集] ブルトレブーム

しかし、これら"ニューブルートレイン"が登場した1970年代に、とりわけ後半から国鉄の運賃・料金の値上げと航空機新幹線高速バスの普及などで寝台列車自体の衰退が始まっていた事があり、国鉄が「星の寝台特急」と称したPR作戦を行った事があった。

例えば、寝台車とりわけB寝台の区分分けを行う際に星の数を使用して寝台の区分を行った。以下にそれを示す。

B寝台の区分
扉上部に於ける表示 寝台内容 該当車両
3段式寝台客車 20系までの在来寝台客車
未改修の14・24系までの寝台客車
★★ 3段式寝台電車 581・583系
★★★ 2段式寝台客車 新製車両としては14系15形・24系25形が該当
14・24系でも2段式に改修されたものはこれにあたる
★★★★ 4人個室寝台
「カルテット」
(1985年登場)
14系改修車両
寝台特急「はやぶさ」のテールマーク 左端に「流れ星」のマークが用いられている
寝台特急「はやぶさ」のテールマーク 左端に「流れ星」のマークが用いられている

また、21世紀初頭の現在まで寝台専用列車を表すのに使用される「流れ星」のマークもこの時に登場している。

それと共に、電車・気動車列車で並行して行われていた、編成最後部でも方向幕を採用した14・24系では"テールマーク"として図案化し各列車毎に使用する事で差別化を図った。なお、同時期に種別・列車名幕を設置した電車による昼行列車でも「絵入りヘッドマーク」として行われたと平行して行われたが、この施策は、従来牽引する機関車や最後部車両にヘッドマークが取り付けられていたが、省力化により1970年代までにはいわゆる"九州ブルトレ"とも通称された東京対九州間列車の東海道・山陽本線区間を牽引する電気機関車群を除いて事実上廃止されていた。これを簡易的な形であるが復活させる意味合いもあったとされる。ちなみに、この図案化したテールマークはおおむね好評であったことから、定期列車として運用されていた20系客車でも用いられた事例もあったと言われる。

こういった施策もあり、1976年頃から1980年代までは、鉄道ファンを中心にブルートレインの撮影が流行した事もあった。こういった一連の施策とファン達の動きは1980年代前半には「ブルトレブーム」と称された。

1986年には翌1987年に控えた国鉄分割民営化へ向けたダイヤ改正で個室寝台の増加もあり、B寝台の星による区分を廃したものの、施策自体はJR各社に継承される。

この集大成の一つとしては、1988年に開業した青函トンネル瀬戸大橋を経由して運行される列車の運行である。このうち前者にあたる「北斗星」は個室寝台を中心にした編成組成や専用色として塗色が「青に3条の金帯」に変更した事、食堂車の時間指定を行うなど従来の列車とは著しく異なった列車として紹介され、当時のバブル景気の風潮に乗った豪華列車として成功した例となり、「トワイライトエクスプレス」や「カシオペア」などに繋がるものとなった。このため、以降青函トンネルを通過するため運行経路・経由地から"青函ブルトレ"と通称される事となったが、車両塗色が「トワイライトエクスプレス」以降は青を基調としないものとなった関係でこれ以降「寝台列車」=「ブルートレイン」の構図は崩れた格好となる。

[編集] 平成以降の退潮

「北斗星」の成功の土台は、「あさかぜ1・4号」(運行当時)など在来の東海道・山陽本線経由の寝台特急列車で試行されたものがあるが、元々客車自体が老朽化している事もあって、1990年代中葉以降は引き継がれる事が少なくなって来ている。そのうち、元祖とも言うべき"九州ブルトレ"については、JR東日本・東海・西日本・九州の4社に跨る運用から、JR各社の思惑があり思う様な施策がなされぬまま、むしろ運行本数が減少する方向に進んでいる。

また、以下の様な要因もブルートレインの退潮に関与しているとされる。

  • 新幹線航空機など高速交通網の整備
    • 新幹線網の拡大や各地の空港の新設・改良など高速交通網の整備により、以前であれば夜行で移動する方が効率的であった区間でも昼間の移動の方が効率的になっている。加えて航空業界の規制緩和もあり、特に大都市間を中心に新規参入会社も出現し、航空運賃の値下げが発生し、空路へのシフトが加速した。
    • 一方で、JR旅客鉄道6社所有の機関車は、国鉄時代に製造された機関車のみを所有しており、JR分割民営化後に製造された新型の機関車(JR貨物のみ所有)は所有していない。したがって、ブルートレインの走行性能はほとんど向上せず、九州島内では、JR後に登場した新型電車による昼行特急に追い抜かれるなど、同じ特急とはいえ性能の差が大きく開いてしまった。なお、ブルートレイン「出雲」→寝台電車「サンライズ出雲」など直流区間のみを走行するブルートレインは高速走行対応の動力分散方式の寝台電車に置き換えられたケースがあるが、他のエリアでは交流区間・直流区間の両方の区間を走行するブルートレインが殆どで、新規に寝台電車を製造する必要があり、IGBTVVVF制御などの技術革新から製造は可能であるものの製造費が高額であることから2007年時点で製造開始される予定が無く、ブルートレインの高速化が進まない。さらに、九州新幹線部分開業に伴い「なは」が熊本駅までに短縮された例もあるように、整備新幹線開業と同時に並行する在来線をJRから切り離すといった事も寝台特急の運行を難しくしている。
  • 高速道路網の整備と高速バス路線網の拡大
    • 前記の高速交通網の整備と連動する形で、1980年代以後高速道路網の拡大と、これに連動した高速長距離夜行路線バスの拡大が進められた。運賃が鉄道の同区間の普通運賃並みで、ブルトレを含む夜行列車全体に大きな影響を与えた。その後、バス業界の規制緩和で高速路線バス網の拡大が進み、さらに運賃の安い、観光バスを使った都市間を結ぶツアーバス(出発地に集合しバスで移動、目的地で解散という事実上路線バスに近いツアー)も増加しており、高速バス同士の価格競争が進んでいることから(路線バスの側でも、区間によってはツアーバスに対抗した低運賃の便も登場)、蚊帳の外に置かれた夜行列車そのものが風前の灯に近い状態となっている。
  • 車内設備の陳腐化
    • 寝台の個室化要求が強いが、車両の置き換えがなかなか進んでおらず車両自体も老朽化している(主力となる24系25形車両の最後の新造年が1980年で、26年以上経過している)。また、ブルートレインでは「北斗星」に代表されるいわゆる青函ブルートレインを除き食堂車を廃止したことで、車内の供食環境はごく一部区間での車内販売に限定されて大幅に悪化している。一方、夜行高速バスでは休憩・乗務員交代を兼ねてサービスエリアに停車するため、便によっては(SAでドアを開放する場合)飲食料の確保が可能な場合もある。
  • 硬直した運賃制度
    • 航空機(航空会社)や高速バス(特にツアーバス)などは季節ごとの需要を勘案し、空席が多いと判断すれば定価(普通運賃)によらない思い切った割引運賃設定を行っているが、ブルートレインの運賃体系は従前のままで硬直化している。関係するJRが1~2社に留まる東京~東北・北陸に、「あけぼの」・「北陸」のB寝台・B寝台個室「ソロ」の利用も選択できる「青森往復きっぷ」・「秋田・大館フリーきっぷ」・「庄内往復きっぷ」・「北陸フリーきっぷ」などの特別企画乗車券がある程度である。
  • 鉄道会社側の事情
    • 上に記載された各社の思惑に加え、深夜帯の停車駅では、乗務員の交代を目的とした運転停車でも、例え利用者が全くいなくても停車する以上は駅員の宿直勤務が必要となる。このため利用の割に人件費が嵩み、収益を圧迫している事情がある。

これらの事情から、21世紀初頭の現在ではブルートレイン(も含む夜行列車)は次々と姿を消しているのが実情である。残ったものについても、複数の列車を併結した上で合理化を図るなどしている。また、ブルートレインではないが、北海道では合理化を目的に夜行の気動車に寝台車を連結する形での運行が試みられたが、一部の列車は需要の減少を理由に、旅行シーズンのみに運行される季節列車(臨時列車)に格下げされてしまっている。

[編集] 運行による分類について

沿革にある通り、「はくつる」の運行開始以降に発着地及び経由地により"○○ブルトレ"という俗称も使用された。これらを以下に示す。なお、総じて列車愛称が2つ以上ある時に用いられる事が多い。

  • 九州ブルトレ:主に東京九州各地発着の寝台特急列車。「あさかぜ」以来の「九州特急」がこれにあたる。2006年現行では「富士」・「はやぶさ」がそうなる。
  • 関西ブルトレ:主に京都新大阪大阪発着の寝台特急列車。1965年の「あかつき」の運行開始から。
  • 東北ブルトレ:主に上野東北各地発着の寝台特急列車。「はくつる」の運行開始から。2006年現行では「あけぼの」になる。
  • 山陰ブルトレ:1972年に「出雲」が特急列車に昇格した際に用いられた。なお、これは「九州ブルトレ」や「関西ブルトレ」との差別化の意味合いや一時期「出雲」や「いなば」と2つ列車愛称を用いた関係もある。現在山陰行きの寝台特急列車は「サンライズ出雲」のみになっているが、285系電車を使用しているため、厳密にはブルートレインとは言えない。
  • 青函ブルトレ:青函トンネルを介して本州~北海道間を運行する寝台特急列車に用いる通称。1988年の上野~札幌間運行の「北斗星」の運行開始と従前大阪~青森間運行の「日本海1・4号」が函館駅まで乗り入れた事から用いられる。

[編集] 現在運行されている「ブルートレイン」

次に掲げるものは、2007年4月現在、運行されているブルートレインである。

[編集] 特急列車

[編集] 急行列車

  • 銀河」:東京駅~大阪駅間運行

[編集] かつて運行されていた「ブルートレイン」

※運行区間は廃止直前時点のもの。

[編集] 特急列車

[編集] 急行列車

[編集] 関連項目

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