ボイジャー1号
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ボイジャー1号、ヴォイジャー1号(ボイジャー1ごう、Voyager 1)は太陽系の外惑星や太陽系外の探査を目的とするアメリカ航空宇宙局(NASA)の無人惑星探査機である。1977年9月5日に打ち上げられ、2005年現在も運用されている。ボイジャー1号は2005年現在、地球から最も遠い距離に到達した人工物体となっており、太陽系の「最後のフロンティア」である、太陽の影響圏から星間空間へと取って代わる広大な空間を飛行している。
ボイジャー1号は太陽から約140億km(約95天文単位)の距離で末端衝撃波面を超え、太陽系と星間空間の間の衝撃波領域であるヘリオシースに入ったと見られている。将来、ボイジャー1号が最終的にヘリオポーズを通過してもまだ探査機の機能が生きていれば、研究者が星間物質の状態を直接観測したデータを初めて得ることができると期待されている。
現在のボイジャー1号の距離では、探査機からの信号がジェット推進研究所の管制センターに届くまでには13時間以上かかる。ボイジャー1号は双曲線軌道に乗り、太陽の脱出速度に達しているため、再び太陽系内部に戻ってくることはない。ボイジャー1号はパイオニア10号や11号(運用終了)、姉妹機であるボイジャー2号とともに星間探査機へと役割を変えている。
ボイジャー1号の最初の目標は木星と土星及びそれらに付随する衛星と環であった。現在のミッションはヘリオポーズの検出と太陽風や星間物質の粒子観測である。2機のボイジャー探査機ではそれぞれ3個の原子力電池 (RTG) が電力を供給している。この発電装置は当初予定されていた寿命を大幅に超えて現在も稼動しており、2020年頃までは地球との通信を維持するのに十分な電力を供給できると期待されている。
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[編集] ミッション計画と打上げ
ボイジャー1号は元々はマリナー計画のマリナー11号として計画された。この探査機は当初から、計画当時の新技術だった重力アシスト(スイングバイ)を利用するものとして設計された。幸運にも一連の惑星間探査機の開発時期が、惑星の配置がほぼ同じ方向に集中する時期と重なったため、惑星グランドツアー (Planetary Grand Tour) と呼ばれる外惑星の連続探査が構想されることとなった。このグランドツアーは、重力アシストによる飛行コースを連続してつなげることによって、軌道修正に必要な最低限の燃料だけで単独の探査機が太陽系の巨大ガス惑星4個(木星・土星・天王星・海王星)を全て訪れることができる、というものであった。同型機のボイジャー1号及び2号はこの構想を念頭に置いて設計され、打上げ日もグランドツアーが可能な時期に設定された。
ボイジャー1号は1977年9月5日、NASAによってケネディ宇宙センターからタイタンIIIEセントールロケットで打ち上げられた。この打上げにわずかに先行して姉妹機のボイジャー2号も打ち上げられていた。ボイジャー1号は2号より後に打ち上げられたが、2号よりも飛行時間の短い軌道に乗せられたために先に木星と土星に到達した。
打上げ当初、タイタンIIIEロケットの第2段が約1秒分の燃料を残して予定よりも早く燃焼終了してしまった。このため地上クルーはボイジャー1号が木星に到達できないのではないかと心配したが、上段のセントールステージが十分な燃料を持っていたために加速の不足分を補うことができた。
ボイジャー探査機の搭載装置の詳細についてはボイジャー計画を参照のこと。
[編集] 木星
ボイジャー1号は1979年1月に木星の写真撮影を開始した。木星への最接近は1979年3月5日で、木星中心から349,000kmの距離まで近づいた。接近中には解像度の良い観測データが得られるため、木星の衛星や環、木星系の磁場や放射線環境などの観測の大部分は最接近の前後48時間内に行われた。木星の撮影は4月に終了した。
2機のボイジャー探査機は木星とその衛星について数多くの重要な発見をもたらした。中でも最も驚くべき発見は、過去に地上からの観測やパイオニア10号・11号で観測されていなかったイオの火山活動の存在を明らかにしたことである。
[編集] 土星
ボイジャー1号の木星での重力アシストは成功し、探査機は土星へ向かった。ボイジャー1号の土星フライバイは1980年11月に行われ、11月12日には土星表面から124,000km以内にまで接近した。探査機は土星の環の複雑な構造を明らかにし、土星とタイタンの大気の調査を行った。以前の発見でタイタンには濃い大気が存在することが分かっていたため、ジェット推進研究所のボイジャー制御チームはボイジャー1号のグランドツアーを終えてタイタンに接近させることにした(グランドツアーの続きについてはボイジャー2号を参照のこと)。タイタンへの接近軌道に乗ることでボイジャー1号はさらに重力アシストを受け、黄道面から外れる軌道に乗った。これによりボイジャー1号の惑星科学ミッションは終了した。
[編集] 星間ミッション
2機のボイジャー探査機は2020年頃まで、少なくとも観測装置の一部については十分稼動できる電力を供給できると見られている。
1990年2月14日、ボイジャー1号は2号の進行方向の観測を兼ねて、太陽系の各惑星を60枚の連続写真に収める「ポートレート」の撮影を行っている。画像では全ての惑星が点にしか写らなかった。水星は太陽に近すぎて、火星は太陽の光に霞んで写らず、冥王星(当時は惑星に分類されていた)は遠すぎて視野に入らなかった。
[編集] ヘリオポーズ
ボイジャー1号が星間空間を目指して飛行する間、探査機の観測装置は太陽系の調査を続ける。ジェット推進研究所の研究者はボイジャー1号・2号に搭載されているプラズマ波実験装置を用いてヘリオポーズの検出を試みている。
ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究室の研究者は、ボイジャー1号は2003年2月に末端衝撃波面を通過したと考えている。しかし他の研究者の中にはこれに異議を唱えている人もあり、『ネイチャー』2003年11月6日号で議論を行っている。2005年3月25日にニューオーリンズで行われたアメリカ地球物理学連合総会での科学セッションで、エド・ストーン博士はボイジャー1号が2004年12月に末端衝撃波面を通過した明らかな証拠があることを示した [1]。ボイジャーの太陽風検出器は1990年に機能を停止しているため、この問題に決着が付くまでには他の観測データが得られるまでなお数ヶ月かかるものと思われる。しかし2005年5月には NASA のプレスリリースにおいて、ボイジャー1号は現在ヘリオシースにいるとする見解が発表されている [2]。
[編集] 飛行距離
2007年3月27日現在、ボイジャー1号は太陽から153億km(102.23天文単位)の距離にあり、地球から最も遠くに到達した人工物体となっている。ボイジャー1号の速度は17.12km/s(3.61天文単位/年)で、ボイジャー2号より約10%速い。ボイジャー1号は現在特定の恒星をまっすぐ目指しているわけではないが、仮に太陽系に最も近い恒星系であるケンタウルス座α星に向かったとしても、到着するまでには約8万年かかる。
2006年8月、NASAはボイジャー1号が100天文単位の距離に到達したと発表した。[3]
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- NASA のボイジャー計画公式サイト
- Voyager Spacecraft Lifetime - ボイジャー星間ミッションの予定
- Spacecraft Escaping the Solar System - 現在位置、軌道図
- CNN: NASA: Voyager I enters solar system's final frontier - May 25, 2005
- Weekly Mission Reports - 現在の探査機の状態