マキバサシガメ
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マキバサシガメ科 Nabidae | ||||||||||||||||||
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![]() ハラビロマキバサシガメ Himacerus apterus |
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分類 | ||||||||||||||||||
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英名 | ||||||||||||||||||
damsel bugs |
マキバサシガメ(牧場刺椿象・牧場刺亀虫)はカメムシ目・トコジラミ下目・トコジラミ上科・マキバサシガメ科に分類される昆虫の総称。世界中に分布しており、他の昆虫などを襲う捕食性のカメムシである。学名のNabidae はタイプ属の Nabis から。この属名は古代ギリシアのポリス、スパルタの終末期の国政改革を行い、暗殺によって非業の死を遂げた王族出身の僭主 ナビス Nabis(en:Nabis)に由来するとされている。
- 名前や姿が似ているものにサシガメ科があるが、両者は色々な点で異なっており、現在は別の上科に分類されている。
目次 |
[編集] 特徴
[編集] 形態
体は多少なりとも細長く、数mm~10mm程度の大きさで、一見弱々しい姿のものも多い。体色は茶系統の地味な色彩のものが多いが、少数ながらカラフルなものも知られる。一見似ているサシガメ科と違って頭部を前葉と後葉とに区分する横溝はない。通常よく発達した複眼と2個の単眼を持つ。触角は糸状で、地上性種では体長の半分より短いが、植物上に生活するものでは体長の半分よりもずっと長いのが普通である。口吻は腹面に収められている時でも円弧を描いているため先端以外は体から離れており、この点でもサシガメ科に似る。しかしサシガメ科の口吻は3節であるのに対し、マキバサシガメ科では明瞭な4節からなっている。
前脚を捕食用に使い、これをカマキリの鎌のように使って獲物を捕獲して吸汁する。このため前脚が他の脚に比べ発達している傾向がある。翅は原則として4枚あるが、背中全体を覆う長翅型(ちょうしがた)のもから、腹部の大半が露出する短翅型のものまであり、同一種内で色々な型が出現することも多い。翅の発達したものには、頻繁に飛翔するものもある。
[編集] 生態
幼虫、成虫ともに捕食性で、自分より小さい昆虫などを捕食する。平地から山地まで色々な環境に生息するが、主に草地や丈の低い植物群落の草本上でよく見られ、樹上に棲むものは少ない。また、その名が示すように人手の入った環境にもしばしば見られるほか、湿地や河原などの環境に特異的に見られる種もある。アシブトマキバサシガメ亜科など地上性の種もあるが、多くの種が植物体上で生活しそこにいるアブラムシやカスミカメムシ類、メイガの幼虫といった害虫をも捕食するため、人間からは益虫とみなされることがある。しかし原則的には捕食対象の広いジェネラリストであり、特に「害虫」のみを捕食するというわけではなく、他に餌がない場合は共食いをすることもある(ただし、特定の害虫が大量発生していない段階で、害虫の個体群規模を一定レベルに抑制する上で、このようなジェネラリストの捕食者の果たす役割が重視されている)。卵は逆さにしたナス型、もしくはバナナ型で、ナイフ状の産卵管で植物の組織を切り裂いて、組織内部に産卵されるものが多い。この点でも、基物の表面に卵塊を産み付けるサシガメ科と大きく異なっている。
[編集] 分類
分類がやや難しく、属や種・亜種などの扱いが研究者によって異なるため、世界中に約21属500種[1]とも、約31属380種[2] とも言われる。一見サシガメ上科のサシガメ科の昆虫に名前も姿も似ており、古くは同じサシガメ科に置かれたこともある。しかし外見上の類似は同様の生態による収斂によるもので、両者には姉妹群のような直接の関係はないと見なされて、別の上科に分類されるようになった。
Nabidae マキバサシガメ科
- Nabinae Reuter, 1890 マキバサシガメ亜科 (下記の族を亜科とする考え方もある)
- Arachnocorini Reuter, 1890
- Carthasini Blatchley, 1926
- Gorpini Reuter, 1909 ベニモンマキバサシガメ族
- Nabini Reuter, 1890 マキバサシガメ族
- Prostemminae Reuter, 1890 アシブトマキバサシガメ亜科
- Prostemmatini Reuter, 1890 アシブトマキバサイガメ族
- Phorticini Kerzhner, 1971 チビアシブトマキバサシガメ族
[編集] 日本のマキバサシガメ科
日本にはおよそ8属25種ほどが知られ、その概要を以下に示す。ここでの属などの扱いは原則として『日本産昆虫目録データベース』[1]に従ったが、各亜属を属として扱う立場などもある。各種に分布の概要を示したが、北=北海道、本=本州、四=四国、九=九州、奄=奄美諸島、沖=沖縄諸島、西=西表島、台=台湾である。
- Prostemminae Reuter, 1890 アシブトマキバサシガメ亜科
- キボシアシブトマキバサシガメ Alloeorrhynchus vinulus Stål, 1864:屋久島~八重山・台・東洋区
- チビアシブトマキバサシガメ Phorticus affinis Poppius, 1915:石垣・西・台
- キイロアシブトマキバサシガメ Phorticus flavescens (Scott, 1880):本・九
- タイワンアシブトマキバサシガメ Prostemma fasciatum (Stål, 1873):奄・沖・西・台・東洋区
- アシブトマキバサシガメ Prostemma hilgendorffi Stein, 1878:北・本・四・九・ロシア東部・済州島・中国
- キバネアシブトマキバサシガメ Prostemma kiborti Jakovlev, 1889:本・四・九・ロシア極東部・韓国・中国・モンゴル
- Nabinae Reuter, 1890 マキバサシガメ亜科
- トゲホソマキバサシガメ Arbela simplicipes (Poppius, 1914) 西・台
- ホソマキバサシガメ Arbela tabida (Uhler, 1896) 本・九・対馬・屋久島・奄・中国
- アカマキバサシガメ Gorpis brevilineatus (Scott, 1874):本・四・九・対・ロシア極東部・韓国・済州島・中国
- ベニモンマキバサシガメ Gorpis japonicus Kerzhner, 1968 本・四・九・朝鮮半島
- ハラビロマキバサシガメ Himacerus apterus (Fabricius, 1798):北・本・四・九・旧北区
- クロマキバサシガメ Himacerus (Stalia) dauricus (Kiritshenko, 1911) 北・本・九・対・千島・ロシア極東部・中国・欧州
- ミスジマキバサシガメ Nabis (Dolichonabis) americolimbatus (Carayon, 1961):北・中国・モンゴル・ロシア極東部・新北区
- ハイイロナガマキバサシガメ Nabis (Limnonabis) demissus (Kerzhner, 1968):北・本(北部)・モンゴル・ロシア極東部
- タイワンナガマキバサシガメ Nabis (Limnonabis) sauteri Poppius, 1915:北・本(北部)・樺太・朝鮮半島・台
- オオナガマキバサシガメ Nabis (Limnonabis) ussuriensis (Kerzhner, 1962):北・本(北部)・ロシア極東部
- コバネマキバサシガメ Nabis (Milu) apicalis Matsumura, 1913:北・本・四・九・対
- エゾマキバサシガメ Nabis (Milu) reuteri Jakovlev, 1876:日本・ロシア極東部・韓・済州島・中国
- キベリマキバサシガメ Nabis (Nabicula) flavomarginatus Scholtz, 1847:北・中国・全北区
- オオマキバサシガメ Nabis (Nabis) ferus (Linnaeus, 1758):北・本・中国・旧北区
- ハネナガマキバサシガメ Nabis (Nabis) stenoferus Hsiao, 1964:北・本・四・九・対馬・西・朝鮮半島・中国・ロシア極東部
- ミナミマキバサシガメ Nabis (Tropiconabis) kinbergii Reuter, 1872:別名ネッタイマキバサシガメ。本・四・九・小笠原・沖・ミクロネシア・豪州・ニュージーランド
- ツマグロマキバサシガメ Stenonabis extremus Kerzhner, 1968:北・本(北部)・ロシア連極東部 絶滅危惧II類(VU)(2000年公表の環境省レッドリスト)
- オキナワマキバサシガメ Stenonabis orientalis (Reuter, 1910) :沖・石垣・西・フィリピン・ミャンマー
- セスジマキバサシガメ Stenonabis uhleri Miyamoto, 1964:本・四・九・奄・沖・台
[編集] 脚注
- ^ Kerzhner, I.M. (1996) Family Nabidae. in Aukema, B. & Rieger, C. (ed.) Catalogue of the Heteroptera of the Palaearctic Region. Vol. 2. Cimicomorpha I. – The Netherlands Entomological Society, Amsterdam:84-107.
- ^ Lattin, J.D. (1989) Bionomics of the Nabidae. Annual Review of Entomology. 34: 383-440.
上記のうち、Kerzhner, I.M. (1996)は宮本(1997)から、 Lattin, J.D. (1989) はAustralian Biological Resources Study(外部リンク)から二次的に引用した。
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- 宮本正一 (1997) ”マキバサシガメ科の概説と日本産の属・亜属の検索表ならびに既知種目録” ROSTRIA (46): 1-8.
- 友国雅章(監修)・安永智秀ほか(1993) 『日本原色カメムシ図鑑』 全国農村教育協会 ISBN 4881370529
[編集] 外部リンク
- カメムシも面白い!! - マキバサシガメ科(美しい生態写真)
- Nabidae - Australian Biological Resources Study(英語) - 科の説明
- DAMSEL BUGS - オレゴン州立大学のサイト(捕食中の写真など)