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下水道

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

明治10年代のレンガ製下水道管(横浜市)
明治10年代のレンガ製下水道管(横浜市)

下水道(げすいどう)は、主に都市部の雨水(うすい)および汚水(おすい)を、地下水路などで集めたのち公共用水域へ排出するための施設・設備の集合体であり、多くは浄化などの水処理を行う。

目次

[編集] 概要

汚水としては、水洗式便所からのし尿や、家庭における調理・洗濯で生じる生活排水と、商店やホテル・町工場から大工場にいたる事業場からの産業排水(耕作は除く)などがある。

雨水や汚水を都市部からその外へ流し去ることを排除といい、個人や事業者が下水道を利用して自らの汚水を流し去ることを下水の排除と呼ぶ。具体的には下水管へ水を流し込む行為を指し、その水質に対し地方自治体などの下水道事業者による排除基準が設けられている。

下水道は都市基盤整備の一環として多額の建設費を投じて整備され、建設後も維持管理や更新に多額の経費を要す国家レベルの公共事業であり、それゆえ先進国ほど普及率が高い傾向を示している。 日本の下水道普及率は2006年現在で約70%であり、他の先進諸国に比べると依然として低い普及率である。 また、都道府県別の普及率は、地域格差が大きく、未普及地域における早急な整備が求められている。

一方で、既に下水道が整備された都市においても、合流式下水道の改善、高度処理の推進、汚泥のリサイクルの推進、老朽化した施設の更新等、多くの課題が残されている。

統計・財政情報は、外部リンクの 国土交通省下水道部のサイトと、地方公営企業年鑑を参照されたい。

[編集] 目的

下水道の目的は、おもに以下の三点である。

  • 内水排除:都市部に降った雨水を速やかに流し去ることにより、水害を防止する
  • 汚水排除:し尿を衛生的に収集し病原体消毒することで、公衆衛生を改善する
  • 浄化:汚水中の有機物を酸化分解し、公共用水域の水質汚濁を防止する

近年はこれらに加え、

  • 環境保全:雨水も含めたより高度な浄化による、公共水域の水質ほか環境全体の保全・改善
  • リサイクル:有機物・無機物の資源化による、物質循環社会の一環としての役割
  • 情報経路:光ファイバー網などによる情報ネットワークを築くための社会資本

などが求められ、また担い手となりつつある。

[編集] 下水道の歴史

下水道の歴史は古く紀元前にまで遡る。しかし、工学的汚水浄化は近代以降を待つ必要があった。

  • 紀元前5000年メソポタミアの都市国家群で、排水溝が築造される。
  • 紀元前3000年モヘンジョ・ダロで、水洗便所と排水溝でつながった地下浸透ますが築造される。
  • 紀元前2000年頃 モヘンジョ・ダロの下水道設備が、路面下の管路枝網や人孔、沈殿池を備えるまでに発達
  • 紀元前600年頃 ローマでクロアカ・マキシマが築造される(かつてはこれが最初の下水道とされた)
  • 紀元前312年頃 ローマで上水道が築造される(やはりかつてはこれが最初の上水道とされた)
  • 645年 大化元年の難波宮遷都で排水溝が築造される。以降の都でも遺構が発見されている。
  • 1370年 パリに本格的な下水道が築造され、小説の舞台にもなった。
  • 1760年頃 下水を耕作地へ流してろ過・浄化させる灌漑法が最盛期となる
  • 1760年1830年 イギリス産業革命。以降、人口の集中に伴う生活排水対策が、都市の課題となる。
  • 1854年 ロンドンでジョン・スノウが、コレラ流行は汚水が侵入した井戸の使用が原因と疫学的に証明。
  • 1867年 テムズ川沿いに大下水道管が完成する。
  • 1871年 横浜で陶製管下水道が設置される。
  • 1882年 活性汚泥法の基礎となる研究が開始される。
  • 1890年頃 イギリスで薬品沈殿法、普通沈殿法による処理が行われる
  • 1895年 イギリスで腐敗槽が発明(自然腐化後、1~3ヶ月かけて固液分離する)
  • 1908年 アメリカで散水ろ床法の処理場が建設される
  • 1912年1915年 アメリカ、イギリスで活性汚泥法が実用レベルに確立される
  • 1923年 日本最初の下水処理場、東京三河島汚水処分工場が運転開始。標準散水ろ床法。
  • 1930年 日本最初の活性汚泥法処理場、名古屋市堀留熱田処理場が運転開始。散気式活性汚泥法。
  • 1934年 日本最初の分流式下水道が岐阜市で事業着手。
  • 1940年代 第二次大戦による経済的疲弊で、低コストの酸化池法の適用が増える(多くはその後改廃)
  • 1958年 下水道法公布(旧下水道法は1900年公布)
  • 1960年頃 都市化と化学肥料増産により農村還元できない余剰ふん尿が急増、し尿処理場建設が進められる。
  • 1960年 西ドイツで回転円板法が開発される
  • 1961年 9月10日を全国下水道促進デーとする。台風シーズンの二百二十日から選定。当時の普及率は6%。
  • 1972年 下水道事業センター(日本下水道事業団の前身)が設置される。
  • 1980年 普及率が3割を超える。
  • 2001年 普及率が6割を超え、一定の進捗を来したことなどから、9月10日を下水道の日と改称する。

[編集] 排除方式

雨水と汚水を排除するための流路を、どのように設計構築するかに依り二種に大別され、それぞれ特徴がある。

[編集] 合流式

汚水と雨水を同じ水路で集め、まとめて浄化処理して放流するものである。大阪市(一部を除く)等、比較的早い時期に整備を開始した地域に多い。

  • 埋設する管路が合流管1本なので、分流式より施工が容易で安価。
  • 降雨時に簡易処理で放流される雨水中へ未処理の汚水が混入すると、水質汚濁を生じる。
  • 雨水を流す穴が蓋に存在する為に管内で繁殖したゴキブリが大量に出てくる等の害虫問題が生じる、以前繁殖マンホールに殺虫剤をかけ騒ぎを拡大させた騒ぎも存在する。
  • 逆に、初期降雨に含まれるノンポイント汚染源に由来する汚濁物質を遮集して処理することが可能。
  • 近年、雨水滞留池の建設などにより、雨水放流に対する対策が推進されている。

[編集] 分流式

汚水と雨水を別の水路で集め、雨水はそのまま、汚水は浄化処理して放流するものである。現在新設される下水道ではほぼ全てがこの方式による。大阪市の平野・瓜破の一部ではこの方式で汚水を処理する。

  • 埋設する管路が汚水管と雨水管の2本である分、合流式より施工費が大きい。
  • 合流管に比べて汚水管は細いため、人が入れず清掃や点検などが行いにくい。
  • 原理上、降雨による汚水の希釈が生じないため、水量・水質の変動がなく、浄化処理を安定的に行える。

ただし、実際には降雨がある程度混入し(侵入水・不明水)、浄化処理に影響を与えるケースが少なくない。この原因として、汚水管への雨水管の誤接合、損傷した汚水管・汚水枡への地下水の侵入、マンホール・枡ふたの密閉度不足などがある。 逆に、降雨による管内堆積物の自然除去が期待できないため、清掃が必要になる。

[編集] 管路施設

水を流すための水路やパイプである管渠と、ポンプ場ほかの設備によって構成される。都市部に網の目状に張り巡らされた下水管路はまさに都市の静脈であり、公共財である。しかしその耐用度は、都市住民の公共心に依存している。

管渠は、一部の雨水を除き原則暗渠であり、収集方式は水への運動エネルギーの与え方により、自然流下式、真空式、圧力式に分かれ、それぞれ特有の付帯設備をもつ。

ポンプ場は、位置エネルギーを与えるための中継ポンプ場、雨水を公共水域へ排出するための排水ポンプ場、および終末処理場へ汚水を送るための場外ポンプ場に分かれ、必要に応じて設置される。

そのほか、放流する雨水を除塵・消毒する簡易処理設備、排出する雨水と処理場へ送る汚水を分ける遮集設備、遮集汚水を一時貯留する汚水貯留設備、などがある。

[編集] 自然流下式

古典的な、重力を利用して下水を流下させる方式。厳密な水密管路は不要で管渠の構造は比較的単純だが、堆積物の蓄積を防ぐために流速を確保しつつ、建設費の増大を招く埋設深増加を抑える設計が求められる。故に地形条件における制約の多寡が、建設費に大きく影響する。大規模から小規模まで適用され、主流である。

地形が急峻で流速が上がり過ぎる場合は減勢工と呼ばれる障害物を配した水路を設ける。これは、下水中の土砂による磨耗や水圧そのものによる下水管の損傷を防ぐ為の物である。このほか、河川の下等をくぐる場合は伏せ越しと呼ぶU字状の管渠を設けるなどして、重力と水の関係をうまく制御する手法が蓄積されている。

後述の真空式、圧力式においても部分的に自然流下式を採用する例が多い。

[編集] 真空

真空式下水道システム、真空式汚水収集システム、真空下水と称され、真空ステーション(真空ポンプ場)、真空管路、及び各家庭単位の真空弁ユニット(弁マス)から構成される。真空ステーションによって管路は真空状態(負圧)に保持される一方、家庭からの汚水は自然流下にて真空弁ユニットに流入し、貯留水位の変位によりフロートまたは圧力スイッチによって無電源で真空弁が作動し、真空管路へ吸引される。圧力差により汚水は空気と混合されて低比重の流体(気液混合物)となり、真空ステーションへと収集される。 自然流下式よりも地形条件に左右されにくく、敷設費が割安で一般に平坦で軟弱な地盤のエリアで採用が多い。また、真空ステーション以外に電気を必要しない。管路にはポリエチレン(PE)管や真空下水用PVC管が使用され、特にPE管は耐震管路が構築できる。農集や特環・特公下水道など、中~小規模向き。

  • 真空といっても実際は0.4気圧程度で、この陰圧で汚水のみ吸引・揚水するのは地球上では5~6mが限界である。これでは到底実用にならないのだが、上記の気液混合物とすることでこの制約を回避する(例えば、水対空気の比が1:3であれば、4倍の20mの落差を越えうる計算となる)。加えて、管路にも階段状のリフト構造を設けている。リフトは管路数十mおきに設置される逆勾配の短管で、気体の逆流は許しても液体の逆流は妨げる構造となっている。一回の吸引で真空ステーションへ達しなかった汚水も管路に担持され、他の真空ユニットから流入した気液混合物で後押しされる機会を待つことが出来る。この様に、真空式では水理工学的に高度な技を駆使して汚水を収集する仕組みが備えられている。

[編集] 圧力式、圧送式

小型の水中ポンプを多数設置し、各家庭からの汚水をポンプ圧送する方式。管路敷設の自由度が最も高い反面、多数のポンプの設置と動力・維持に費用を要する。とはいえ地形が極めて急峻な場合でも対応できる方式で、部分的・小規模向き。

地形上の制約などで全てを自然流下式や真空式で整備できない場合、部分的に圧送管路を設置することで、これを回避することは、標準的な設計仕様である。これを拡大し、1~数世帯単位で汚水マスから下水管へ汚水をポンプ圧送するシステムが、圧力式下水道となる。

圧力式や圧送管では空気の溶け込む機会が少なくなる為、腐敗やこれによる硫化水素の発生、または管路内部へのMAP等の析出といった問題を抱えるケースがある。これらに対する措置として、下水中へのオゾンなど酸化剤の注入やピグ洗浄といったものが用意される事がある。

[編集] 管種

下水道用管材として最も多く使用されているのが、硬質塩化ビニル管であり、用途に応じて様々な管種が用いられる。一般的には下水道協会規格製品(JSWAS)が使用される。

  1. 硬質塩化ビニル管
    1. VU管:水道用のVP管に比べて薄い(USUI)のでV’U’管と呼ぶようだ。JSWAS K-1
    2. リブ付き硬質塩化ビニル管:肉薄であるものの、リブで補強された塩ビ管。砕石基礎に向き液状化に強い。JSWAS K-13
  2. FRPM管
    自然流下の大口径管に使用される管材。強化プラスチック複合管 JSWAS K-2
  3. ダクタイル鋳鉄管
    水道用に使用実績の多いダクタイル鋳鉄管は、下水用途でも圧力管種として最も採用が多い。ただし、曲部や気層部に腐食破損事故が多い。この問題から内面塗装品に主力が移りつつあり、その腐食や電食に対する耐用年数は20~25年程度まで向上しているといわれている(水道用途の場合は40年)。耐震性を高めるためNS型が多く使われるようになってきた。JSWAS G-1
  4. ポリエチレン管
    近年ヨーロッパを中心に圧力管の主流となっている管種。耐震、耐食性に極めて優れた管材で、下水道用途では圧力管として小中口径クラスではダクタイル鋳鉄管に替わり設計採用が増えている。中口径(φ250~)管のイニシャルコスト高が難点。HDPEは高機能化されており、一般のポリエチレン管とは素材が異なる模様。JSWAS K-14
    自然流下向けの大口径管には、ハウエル管の製法を用いた管種もある。JSWAS K-15
  5. ヒューム管
    大口径管中心。昔から呼ばれる「土管」はこれ。管材に占めるシェアはかなり低くなってしまった。

[編集] 法律上の分類

[編集] 下水道法による下水道

下水排除のための、管路施設、処理施設、ポンプ施設その他の補完施設の総体で、かんがい排水施設と屎尿浄化槽を除く。

  • 公共下水道
主に市街地の下水を排除・処理するため、原則として市町村が管理する。個別の終末処理場を持つ単独公共下水道と、処理を流域下水道へ任せる流域関連公共下水道がある。
公共下水道は原則として市街地を対象としている(従って市街化調整区域の下水を流すことは許されない)が、補完するため外の区域を対象とする事業が用意されている。
  • 特定環境保全公共下水道(特環)
    水質の保全と生活環境改善を目的とする。処理場を持つ場合と、他の下水道(同じ市町村または他の市町村の公共下水道、および流域下水道)へ接続する場合とがある。
  • 特定公共下水道
    計画汚水量の2/3以上を特定の事業者が占める場合(工業団地など)に、適用される。
  • 流域下水道
複数の公共下水道の下水を受けて排除・処理するための下水道で、流域幹線と終末処理場を持ち、都道府県が管理する(2005年現在で31都道府県)。河川の流域に沿って設置され、県の建設事務所のほか公社や組合で管理される。受け入れる公共下水道の種別や構成の内訳は問わない。
  • 雨水流域下水道
終末処理場を持つ複数の公共下水道の雨水のみを排除するための下水道で、雨水の流量調節施設をもつ。2003年度の改正で追加された。
  • 都市下水路
都市部の洪水防止のための雨水排水路として設けられるもので、原則として明渠であり処理施設は有しない。既存の水路を改築する場合が多く、外観は小規模河川に似ているため「下水」のイメージを嫌い別称される例もある。

[編集] 下水道類似施設

広い意味での下水道で、処理施設は浄化槽法および廃棄物処理法の対象となり、汚泥は一般廃棄物である。

市街地外の人口密集地(集落)の水質保全と生活環境改善を目的とするもので、市町村または地元住民の組合が管理する。基本的に管路施設と終末処理場を持つが、雨水排除は分流式で行う。これは浄化槽法の対象に工場排水と雨水が含まれないためだが、少数ながら合流式で整備されるケースもある。

設計上の基準や施工方法、および排除を許される事業所などが幾分異なるが、つまりは、整備に必要な多額の建設資金に対する補助金を、どの省庁が交付するかの違いである。それゆえ周辺の舗装道路が国道・市町村道か、農道か、林道か、といった違いと関連性が深い。

  • 農業集落排水処理施設(農集):農林水産省の農業農村整備事業。公共下水道と並んで多い。
  • 漁業集落排水処理施設(漁集):水産庁の漁業集落環境整備事業。漁港の後背集落を対象とし、少ない。
  • 林業集落排水処理施設(林集):林野庁の森林居住環境整備事業。ほとんどない。

この3事業をまとめて集排とも称し、雨水管渠整備を含む場合もある。

  • 簡易排水施設 農林水産省の山村振興等農林漁業特別対策事業
  • 小規模集合排水処理施設 総務省の小規模集合排水処理施設整備事業
  • 特定地域生活排水処理施設 環境省の浄化槽市町村整備推進事業
  • 個別排水処理施設 総務省の個別排水処理施設整備事業で、いわば個人の合併浄化槽を買い上げる制度。
  • 地域し尿処理施設(コミプラ) 環境省の地域し尿処理施設整備事業。浄化槽法ではなく廃棄物処理法の対象

これらは国庫補助の対象事業だが、対象外の事業でも一部整備が行われている。

  • コミュニティ・プラント 特定の集合住宅や団地を対象に、市町村の単独事業で整備され、浄化槽法の対象。コミプラとは制度上別ものだが混用されているうえ、補助との関係も曖昧なケースがある。
  • 合併処理浄化槽 個人・法人が所有地内で集合処理を行う場合、管路を設けて下水道に類似する。全くの個別処理も含めるかどうかは分類の目的による。
  • その他 工場の排水処理施設で敷地内の生活排水を処理する場合などは、法令上も微妙なケースが多い。

なお、し尿処理場は管路施設がない等の点で下水道ともこれら類似施設とも大きく異なるが、処理施設に関しては共通点も多い。

[編集] 処理施設

正式には終末処理場だが、一般的に下水処理場と呼ばれている。最近は、浄化センターや水再生センターなどの愛称が付けられることが多い。図面上の略号は□で囲ったT。

処理施設の能力は日平均、日最大、時間最大の水量負荷について立方メートル毎日で表示される。これらを設計負荷または設計能力と称し、計画下水量に基づく下水道計画の一環として定まる。

[編集] 普及率

下水道整備の進捗率を人口の割合で表した指標で、国が集計する。対象により数種あり、人口に依らないものもある。全国集計の基礎となる県や市町村レベルの値も、一部がサイトなどで公表されている。

[編集] 種類

  • 汚水処理 下水道処理人口普及率と高度処理人口普及率が国交省から毎年8月下旬に公表されている。これと同時に環境省から公表されている指標として、汚水処理人口普及率がある。これは管轄が分かれる類似施設を含めたもので、平成8年度から集計がはじめられ、平成14年度までは汚水処理施設整備率と称した。

なお、普及率は面整備により汚水処理施設へ生活排水を排除できるようになった人口の率であり、実際に排除を行っている率ではない事に注意。報道でよく混同されているが、実際に汚水管を接続している人口率は、水洗化率として環境省の一般廃棄物関連部局で集計されている。これは、一般廃棄物処理場であるし尿処理場への計画収集人口と、自家処理人口を合わせた非水洗化人口と総人口を二分した、水洗化人口の割合である。

水洗化人口は、公共下水道人口にコミプラ人口と浄化槽人口(合併浄化槽人口+単独浄化槽人口)を加えたもので、家庭用浄化槽も含まれる。し尿処理場の収集対象に浄化槽汚泥が含まれる関係で、この部分は統計的厳密さにやや欠けるきらいはあるが、下水道使用料金やし尿くみ取り手数料の収入を集計資料とするため、実際の接続状況をよく表している。

  • 雨水排除 下水道による都市浸水対策達成率:整備対象地域のうち5年確率の大雨に安全とされる区域を、面積の割合で示す。
  • 環境保全 下水道水環境保全率:公共用水域の水質保全に関する3つの対策の進捗状況を示す。下水道処理人口普及率と高度処理人口普及率に加え、合流式下水道整備地域の合流改善対策の普及率を、水環境改善の観点から必要とされる地域について集計したもの。

[編集] 現状

平成17年度末の値と、前年度からの差分

  • 下水道処理人口普及率 69.3(+1.2)%(下水道利用人口÷総人口[1]
  • 高度処理人口普及率 14.0(+0.8)%
  • 都市浸水対策達成率 52.7(+0.8)%
  • 下水道水環境保全率 31.4(+0.1)%
  • 汚水処理人口普及率 80.9(+1.5)% ←単独浄化槽は生活排水を処理しないため、含まれていない
  • 水洗化率(平成16年度) 88.1(+1.0)%
    • 公共下水道 62.7(+1.4)% ←下水道処理人口普及率との差が、未接続率と見なせる
    • コミプラ 0.3(+0.0)%
    • 合併浄化槽 10.0(+0.1)% ←集排ほかを含む
    • 単独浄化槽 15.0(-0.7)%
    • 非水洗化率 11.9(-1.0)%

なお、都道府県下水道構想(整備についての基本計画)の集計によると、最終想定普及率は88%とされる。

[編集] 問題点

下水道の整備は地方公共団体の財政事情や地形的特質に大きく影響されるため、地域格差が大きい。 東京、大阪などの大都市圏の普及率は、ほぼ100%となっているが、10%台にとどまっている県もある。大まかに言って普及率は西日本は低く東日本は高い傾向にある。 新しく下水道の建設を行うとき、事業実施主体(市町村等)は公共汚水桝までの工事を実施する。宅内の配管工事費用は個人負担となるため、下水道への接続については下水道法により義務づけられているものの、経済的やその他の理由により放置されていることがあり、水洗化率が延びない要因となっている。下水道に接続しない場合、合併浄化槽が義務づけられる以前に建築された家屋から排出される家庭排水は、未処理のまま垂れ流されていて、河川の汚濁原因の一つとなっている。

[編集] 世界の下水道事情

日本の下水道普及率70%は先進国中に限って言えば高いとは言えない。しかし全世界では現在なお下水道計画さえままならぬ国も多く、普及率が過半数に達している国はむしろ少数派である。これは例えば、国連が提唱する「人間の安全保障」達成への要素を欠いた国と地域がなお多いことを意味している。とりわけモンスーン気候に属するアジアは多雨・高温多湿で下水道の必要性が高い環境にもかかわらず、多くの都市で普及率は低い。

[編集] 特徴的な事業の例

  • 下水道台帳のWeb公開 東京都下水道局
  • 高度処理の普及 滋賀県流域下水道
  • 汚泥の集約処理 横浜市汚泥資源化センター
  • 風力発電 掛川市大須賀浄化センター
  • 水力発電 神戸市湊川ポンプ場
  • トンネル式処理場 島根県クリーンセンター鹿島

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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