信長の野望・天翔記
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ジャンル | 歴史シミュレーション |
対応機種 | PC-98 DOS/V Windows3.1~XP(2000除く) FM TOWNS Macintosh スーパーファミコン プレイステーション セガサターン プレイステーションポータブル |
開発元 | コーエー |
発売元 | コーエー |
人数 | 1~8人 |
メディア | CD-ROM |
信長の野望・天翔記(のぶながのやぼうてんしょうき)は1994年、光栄(現コーエー)から発売されたパソコン(PC9801)用歴史シミュレーションゲーム・信長の野望シリーズの第6作である。「天翔紀」は誤り。
その後、パソコンではDOS/V、FM TOWNS、Windows、Macintosh、家庭用ゲーム機ではスーパーファミコン、プレイステーション、セガサターンなどに移植された。ただし、スーパーファミコン版には容量の関係で、内容が大幅に修正が加えられている。2005年にはPSPにも移植された。菅野よう子が音楽を手がけた、最後の信長の野望シリーズでもある。信長の野望シリーズでは、PC9801で発売された最終作であり、以降はWindowsに移行した。
なおWindows版では他機種に比べ音楽の曲数が大幅に削られている。なおコーエー定番シリーズ版も含め、Windows2000では通常ではインストールできない。(正規の手順ではない方法でインストールは可能)
目次 |
[編集] 内容
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] 概要
戦国大名を選び、全ての城を攻め落とし全国統一を目指すゲームである。前作の覇王伝と違い本城や支城の概念がなくなった。そして城の数が214と非常に多くなり(スーパーファミコン版は120)、さらに季節ごとにゲームが進行するようになった(これまでは月ごとであった)。前作にあった従属同盟・優位同盟のシステムはなくなった。本作では統一の手段は武力統一、全国の城を全て支配下に置くこと、この1つだけである。他の作品では可能な同盟統一、つまり征夷大将軍になって他大名全てと同盟しただけでは統一はできない。
また前作の論功行賞は大幅に簡略化され、知行制はいったん姿を消し、家臣の勲功により身分が「足軽頭」「侍大将」「部将」「家老」「宿老」と上がり、それに応じて最大兵数も決まるようになった。
なお本作品から、大名家を滅ぼしても大名が勝手に自害してしまうことはなくなった。斬首するか逃がすかを選ぶことができ、逃がした場合は大名は浪人になる。また他国情報を忍者などを使わないと見られない作品もあるが、本作では自由に見られる。
歴史イベントがより充実した作品でもある。「桶狭間の戦い」や「本能寺の変」、さらには羽柴秀吉にまつわるイベント「懐中の草履」なども収録されている。
[編集] 強力な思考ルーチン
全体的にコンピュータが好戦的で、一度の戦争で最大9城が戦場となるため、勢力の急拡大や衰退が起こりやすい。コーエーでは珍しく、ある程度の勢力の大名でも油断すると滅ぼされる怖さがある。1回の戦争だけで2大名以上が滅亡することもある。「システムがシンプルがゆえにコンピュータが強い」、これは他のコンピューターが強いとされるコーエーの作品にも共通する特徴である。
また、戦場となる範囲が広いため、自勢力が戦争に巻き込まれる危険性が高い。そのため、一方向からの敵に備えるだけでよい奥羽・蝦夷や九州、特に大砲や鉄甲船が入手可能な九州の大名は有利であり、挟み撃ちされやすい畿内・中部の不利が前作までより拡大している。
この他、本願寺家は畿内に城が分散し、一見不利なようだが以下の理由(特に2番目と4番目)により非常に手強い。特に「信長包囲網」シナリオでは、しばしば織田家を圧倒する勢力となる。
- 一向宗の存在する城を支配する友好度が20以下(COM担当時は40以下)の大名に、一向一揆を発動できる。一揆は周辺の城を巻き込むこともある。
- ゲーム開始時から鉄砲を大量に所有している。
- 大名の一門衆は他の武将より裏切りにくいが、特に本願寺の一門は絶対に裏切らない。
- 一門以外の武将も、他勢力に裏切りにくくなる。このゲームは内応が成功しやすく、一部の義理堅い武将を別にすれば忠誠度100でも内応を実行させることができる。しかし、本願寺家に仕えた状態だと、たとえ義理が最低の松永久秀であっても忠誠度も90未満に下げないと内応の実行を反古にされる。
[編集] 軍団制の導入
これまでのシリーズでは一国一国を委任することが出来たが、城ごとの委任は出来なくなった。その代わり、全国を統一するために大きくかかわるのが軍団による支配である。軍団を編成しない限り全国統一は難しく、軍団長人選がポイントである(優秀であっても、松永久秀や武田信玄など、野心が高く、不義理に設定された武将は謀反を起こしやすい)。勢力が拡大し城を多く支配する段階では軍団編成は不可欠で、配下軍団への指示が領国を大きく左右する。
パソコン版のみだが1季節に1度武将の会見が可能で、武将の現在希望する命令を聞く事ができる。これを奨励したり、叱咤などを行うことで、武将のアルゴリズムに手を加えることができる。
[編集] 教育システム
本作での能力パラメータは特殊で、「政才」「戦才」「智才」「魅力」「野望」「相性」「寿命」「勇猛」「義理」「独立」である(隠し含む)。また「政才」「戦才」「智才」の最大値は200、「魅力」「野望」は100である。また「政得」「戦得」「智得」という習得度もA~Cで設定されている。
本作ではどの武将も登場したばかりの頃は能力が低い。内政や戦争、そして教育により能力が成長する。そして政治・戦闘・智謀の上限値がそれぞれ「政才」「戦才」「智才」、伸びやすさが「政得」「戦得」「智得」である。内政・外交・戦闘の適性を見極め、適材適所の配置が重要である。また今回はAI(人工知能)を採用し、配下武将に自分の戦略思考を学習させることができる。
[編集] 適性・技能の導入
本作より武将に兵科適性及び技能が設定された。これにより各武将が更に個性化された。
兵科適性は「足軽」「騎馬」「鉄砲」「水軍」についてそれぞれS及びA~Eで設定されている。これにより例えば九鬼嘉隆の「陸に揚がった河童」振りが表現されている。
- 足軽
- 一斉攻撃が可能。但し移動してからの一斉攻撃は不可。攻城戦においては城壁・堀への侵入が可能。
- 騎馬
- 移動してからの突撃が可能。野戦では非常に高い機動力を誇るが攻城戦ではその機動力は失われてしまう。
- 鉄砲
- 鉄砲攻撃が可能。但し移動してからの鉄砲攻撃は不可。攻城戦においては足軽隊より成功率が落ちるが城壁・堀への侵入が可能。野戦・攻城戦共に雪・雨の時、さらに攻城戦で堀にいる場合は砲撃が出来ない。
- 水軍
- 海戦の強さ。高いと一撃で相手部隊を消滅させることがある。
技能には次の種類がある。
- 挑発
- 戦争時は敵を挑発混乱させ、数ターン操作不能にする。相手が離れた所にいても可能。平時にも「合戦誘発」が使用可能。
- 焼討
- 戦争時は火攻が可能になる。平時にも「焼き討ち」が可能になる。
- 弁舌
- 戦争時は鼓舞を掛けた時に周囲の部隊ともども士気を上げられる。平時には物資の売買や調略に有利になる。
- 流言
- 戦争時は隣接した敵を混乱させ、数ターン操作不能にする。平時には「流言飛語」が使用可能。
- 煽動
- 戦争時は煽動が1部隊に1回限り使用可能になる。結果何が起こるかは分からない。平時には「一揆煽動」が使用可能。民衆への施しの際、効果に補正が掛かる。
- 流出
- 戦争時は臨時徴兵ができる(ただし足軽部隊時のみ)。平時には「住民流出」が使用可能。
- 暗殺
- 戦争時にも平時にも武将の暗殺ができる。
- 一喝
- 戦争時に隣接する敵・味方全てを1マス先に跳ね飛ばせる。城郭を跳び越えさせることも可能。平時には使えない。訓練の際、効果に補正が掛かる。また調略時に相手との相性が悪いとマイナス補正が掛かる。
- 騎鉄
- 隠し技能。騎馬鉄砲隊が組めるようになる。(伊達政宗などが所有する。PK版では教育により習得もできる。)
特技の導入で、毛利元就や松永久秀、斎藤道三などの智謀が高く「暗殺」「流言」などを持つ武将の脅威が、戦闘力200と全武将中最大を誇る上杉謙信以上に顕著になった。
これらを活用することにより形勢を一気にひっくり返すことも可能である。特に暗殺や内応(それ以外には特技ではないが鉄甲船も)は強力過ぎるため、「縛り」、すなわち自ら使用禁止にしてプレイする者もいる。
[編集] 職業
職業も一部の武将に設定されており、大きく戦略に影響することがある。
- 忍者
- 足軽隊を率いている場合、通常の武将より強さを発揮し、城壁を越えやすい。また調略の成功率が高い。
- 僧侶
- 石山本願寺など一向宗の武将に多く見られる。効果は講義でコメントが変わる他、披露の問答において智謀に補正が掛かる。
- 剣豪
- 調略の暗殺に大きく影響する。講義でコメントが変わることもある。披露の御前試合で戦闘に補正が掛かる。
- 茶人
- 内政面、軍事面でよく「~の後に飲む茶はまた格別」と話す職業。披露の茶会において政治に補正が掛かる。
[編集] シナリオとパワーアップキット
シナリオは機種によってさまざまである。PC版の場合は、「信長誕生」、信長が初陣の頃、桶狭間の戦いの頃、信長包囲網の頃、本能寺の変の頃、信長の死後の関ヶ原の戦いの頃などシナリオが充実している。主人公が織田信長なのは変わりはないが、「信長誕生」には父の織田信秀が登場している。信秀で全国を統一するのは不可能ではない。
またパワーアップキット版では武将が300人追加され、徳川光圀、さらには徳川家光や林羅山など信長が亡くなってから生まれる人物も登場する。パワーアップキット版に登場する鍋島光茂は、全シリーズを通して最若年(1632年生まれ)である。このほか、新武将の登録や既存武将の能力を変えることも可能である。さらに、一部の歴史イベントの発生を制限できたり、城名や家紋の変更ができたりなど、シリーズでも屈指の充実ぶりを誇る。
なお、通常版では武将は暗殺を受けない限り、戦死することはなかったが、パワーアップキット版では戦死させることもできる。ただし、そうすると寿命も約10年短くなるため注意が必要である。
パワーアップキットは、PC版の他、プレイステーション版とサターン版に存在する。ただし、追加された武将はPC版より少ない。
プレイステーション版では、武田信玄が上洛に成功して三河・尾張・美濃・近江等を併合する一方で、織田信長が伊勢一国、盟友の徳川家康が遠江一国を領有する小大名に没落していると言う設定のシリーズ初の仮想シナリオ「信玄上洛」が登場した。
[編集] スーパーファミコン版のみの設定
スーパーファミコン版はかなり他機種と仕様の差がある。以下「信長の野望~天翔記~Wiki」より主なものを要約。詳細はリンク先(外部リンクに掲示)参照。
- シナリオは「信長初陣」、「信長包囲網」の二編がある。
- 城が大幅に減ったため将軍就任イベントの条件が城領有80になっている。
- 大内、細川が弱体化。ややバランス取れている。
- 武将・大名の削減。
- 蘭奢侍(らんじゃたい)をもらえるなど、歴史イベントはパワーアップキット版に準じて追加されている。
- コマンド面では能力値、勲功が上がりやすい。また会見がない。
- 教育で騎鉄を覚えられる。
- 6人一組の連隊で行動し、自分以外はすべて委任状態。戦いになると陣形を決めて行動する。
[編集] 評価
本作の評価は概ね高い。「光栄」時代の集大成[1]、一つの頂点とする意見が多い。あえて不評な部分を書くとすれば「武将の成長幅が余りにも大き過ぎる」ことと「同時登場武将数の制限が厳しい[2]」ことが挙げられる。戦国後期の武将は本来の登場年代を過ぎても登場が繰り下げられることがあるのはシリーズに共通した特徴である。しかし本作の場合武将数が非常に多く、もっとも武将の多い1570年~80年頃だと、10年以上遅れることもある。[3]そのため、戦国後期の武将はなかなか登場できず、やっと登場できても潜在能力のある武将ですら、戦場では戦闘力の上がりきった歴戦の武将により画面上からたちまち消されてしまうということも少なくない。
更にPC98からWindows95への移行したての時期の作品であるため、現在見るとグラフィック的には派手さに欠けることも確かである。
しかし骨太な作品として、特にWin版は非公式ツールなどでゲームを拡張して遊ぶ愛好者がいまだにいるほどの作品である。
- ^ 「最終作」という意味ではない。次作将星録も「光栄」時代の作品である。
- ^ 本作では500人。
- ^ 短命な武将は、元服直後に寿命が尽きてしまうことさえあった。ちなみに本作より武将数の多い嵐世記、蒼天録は制限が緩和され、この現象はほとんど見られなくなった。
[編集] 外部リンク
- 信長の野望・天翔記 公式サイト
- PSP版公式サイト
- 信長の野望~天翔記~Wiki
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