修士 (経営学)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
中立的な観点:この記事は、中立的な観点に基づく疑問が提出されているか、あるいは議論中です。そのため、偏った観点によって記事が構成されている可能性があります。詳しくは、この記事のノートを参照してください。 |
修士(経営学)(しゅうし けいえいがく)とは、経営学に関する修士学位。経営学修士とも。 MBA認証機関であるAACSBから認証を受けた機関より受けた経営学修士は、MBA(Master of Business Administration)とも称される。
目次 |
[編集] 概説
1980年代初期にはビジネス界の「エリート」の学位として知られていたが、大衆化が進み、今では米国だけで500を超える大学院でMBAが授与される。MBAは経営幹部へのパスポートとして定着しており、特にトップスクールのMBAは高額の初任給で大企業の幹部候補として採用される例も多い。M7(Magnificent-seven - 映画「荒野の7人」の英語名と同じ)と呼ばれる、ハーバード、スタンフォード、コロンビア、シカゴ、ペンシルバニア(ウォートン)、ノースウェスタン(ケロッグ)、MITの7校は、有名であるとされる。欧州では、ロンドン・ビジネススクール、INSEAD、IMDの3校が有名である。
有名校のMBAは、大企業で活躍するための優先チケットを与えられるようなものであるが、有名校のMBAが社会での成功を約束されたものではない。ハーバード等の誰もが知っている有名校のMBAホールダーであっても、実績が伴わなければ解雇されることも多い。
最近では大学院によってはEVENING MBAなど働きながら取得できるプログラムの創設にも力を入れており、いかに他大学院との差別化ができるかを競っている。
近年、MBAも社会の要請により姿を変えてきており、1990年代における大企業のマネージャーの養成機関から、最近では起業家養成機関としても脚光を浴びつつある。最近の米国におけるトップMBAスクールの存在価値は、既存のビジネス理論の習得というより、ビジネスで成功するための知恵を勉強する場所と考えたほうが良い。日本人にとってMBA取得には、英語能力と最新ビジネススキル、そして米国等での企業社会構造のリテラシー向上というメリットがあるが、中国はじめアジアからの留学希望者の急増により、トップ校の日本人に対する入学基準は非常に厳しくなっている。例えば、某MBAではバブル期に30名もの日本人が合格していたが、現在では1桁前半、というのが実情であり、トップ10を合計しても年間100名前後である。実際の選考では、英語能力を測るTOEFL、GMATの高得点はもちろん、会話能力を見るための面接を基本として、実務経験の濃さや将来のビジョンを盛り込んだ論文の内容が特に重視される傾向にある。
MBAと一言で言っても、その資格が有する質は各ビジネススクールによって異なる。ビジネススクールは各々個性を持っており、協調性を重んじる所もあれば、個人経営主義を重んじるところもある。したがってビジネススクールを選択する際には、ただ偏差値や知名度だけを意識するのではなく、そのビジネススクールがどういった文化、性格を持っているのかにも重点を置かれたい。
また個人の学習目的によってもMBAの質は多様化する。たとえばマーケティングについての学習に2年間というスクールライフの大部分を費やした学生と、ファイナンスについての研究に時間を注いだ学生では、路線が違う以上その質も確実に異なる。つまり「何」を学びたいのか明確でないと、各々の科目をただ中途半端に学んで、あまり成果を得られない、ということも起こり得るといえる。企業から金銭的援助を受け、ビジネススクールに入学したといえども、自分が明確な学習目標を持っていない、あるいは企業から学んでくるべき科目を指定されていないというのであれば、卒業して企業に戻っても著しい効果は望めないかもしれない。
さて、MBAを取得することによって具体的に得られるスキルについては、ファイナンス、会計などの各科目の専門性もさることながら、「グローバルなビジネス観」、「リーダーシップ」、「英語でのコミュニケーション力」、「意思決定ツールの拡大」など、ビジネスにおいて有用なものがあげられるだろう。
もっとも、ホルダーは上記のスキルを誇張しすぎないことには注意されたい。さもないと能力の過大評価、及び、企業のホルダーに対する過度な期待を生みかねない。企業内において、ホルダーと非ホルダーの間の期待ギャップをなるべく小さくするような姿勢が大切である。それがうまくいけば、ホルダーを介して効果的なビジネスを達成できるだろう。
MBA取得者の欠点として、目先の利益にこだわって問題の根本的な解決を先延ばしして、その場しのぎの方法を用いて短期的には企業の黒字化に成功するものの、後になって取り返しのつかない結果に陥れてしまう傾向がある。ビッグスリー(アメリカ3大自動車メーカー)の経営危機が良い例である。
なお、近年では技術版MBAと呼ばれる、製造業や技術系ベンチャー企業などに関する経営を学ぶMOT(技術経営)にも注目が集まっており、日本でも技術経営大学院を設置する大学も増えている。
[編集] 日本国内でのMBA私称問題
経営学修士号には研究科課程と実学型課程があり、実際のMBAは後者となる。 また、日本の文部科学省は本来のMBAに近い修士課程を専門職大学院として分類し、学位も専門職学位となり経営学修士(専門職)として研究型の経営学修士課程と区別している。
米国のMBA認証機関であるAACSBからMBAと認証されているのは慶應義塾大学、名古屋商科大学、テンプル大学の3校のみであり、これからMBAを取得しようとする学生は学校の選択に注意が必要である。 また、公的な場で上記3大学院以外より発行された日本の経営学修士号をMBAと用いる事は学歴詐称に当たる。
近年のMBAブームや、生徒獲得のため、日本の大学院の経営研究科コースでMBAと私称するケースが多いが、日本の文部科学省はMBAという英語の表記に一切関知しておらず、それらの大学院より発行される修士は認定校制度上のMBAという学位ではないため、MBAという英語表記を用いることは適切ではない。
また、MBAは認定校制度上の学位であるため、「日本に合わせた」などと独自にカリキュラムを変更することや、ファイナンス(専門職)、会計(専門職)をMBAとすることは論外である。
[編集] 日本の主な経営学修士プログラム・ビジネススクール
日本における「経営学修士教育」が注目を集め始めたのは比較的最近である。慶應義塾大学、国際大学、筑波大学、神戸大学などのプログラムが、その先駆であり、慶應義塾大学が1978年にMBAコースとして社会人向けに2年制の修士課程を設けたものが最古であるとされている。
近年では、京都大学、早稲田大学、一橋大学、立教大学、九州大学、青山学院大学、グロービス経営大学院大学、名古屋商科大学、小樽商科大学、香川大学も新規参入し、力を入れている。文理問わず社会人の入学が多く、ビジネス街の中心部にサテライト教室を設ける大学院もある。
こうした社会人を対象とした経営学修士プログラムは、フルタイム型、パートタイム型、完全遠隔型に分かれる。フルタイム型(京都大学、慶應義塾大学、国際大学、一橋大学などのプログラム)は、社会人が2年間休職して経営学修士課程に参加する。パートタイム型(筑波大学、グロービス経営大学院大学、名古屋商科大学などのプログラム)は、平日の夜や土日を利用して通学しながら、残りを個人学習する。完全遠隔型(ビジネス・ブレークスルー大学院大学、グロービス・レスターMBAジョイントプログラムなどのプログラム)は、通学をほぼ必要とせず、全国・海外どこからでも受講できるプログラムである。
[編集] 日本の主なMBAプログラム・ビジネススクール
MBAと言う英語表記の学位は日本の文部科学省は関与していない。MBA認証機関であるAACSBからMBAと認証されているのは慶應義塾大学、名古屋商科大学、テンプル大学の3校のみ。 したがって、それ以外の日本の大学院では認定校制度上のMBAとは異なる。 MBAの英語表記も日本国内では基準や規制がないため野放しの状態で、専任教官の陣容、授業プログラム的に本来のMBAとは歴然と差があっても、MBAと私称するなどの問題もある。
[編集] アメリカの主なMBAプログラム・ビジネススクール
- ウォートン・スクール(Wharton School):ペンシルバニア州フィラデルフィアにあるペンシルバニア大学の大学院。
- ロス・スクール・オブ・ビジネス(Stephen M. Ross School of Business):ミシガン州アナーバーにあるミシガン大学の経営学部及び大学院。
- シカゴ大学経営大学院(University of Chicago Graduate School of Business、Chicago GSB):イリノイ州シカゴにあるシカゴ大学の経営学部大学院。
- ケロッグ・スクール・オブ・マネジメント(Kellogg School of Management):イリノイ州エバンストンにあるノースウエスタン大学の大学院。
- ハーバード・ビジネス・スクール(Harvard Business School、HBS):マサチューセッツ州ケンブリッジにあるハーバード大学の経営学大学院。
- コロンビア・ビジネス・スクール(Columbia Business School):ニューヨーク州ニューヨーク市にあるコロンビア大学の経営学大学院。
- トービン・カレッジ・ビジネス・スクール (Tobin College of Business School) ニューヨーク州ニューヨーク市にあるセント・ジョーンズ大学の経営学大学院。
- スタンフォード大学経営大学院(Stanford Graduate School of Business):カリフォルニア州スタンフォードにあるスタンフォード大学の経営学大学院。
- MITスローン・スクール・オブ・マネジメント(MIT Sloan School of Management):マサチューセッツ州ケンブリッジにあるマサチューセッツ工科大学の経営大学院。
- タック・スクール・オブ・ビジネス(Tuck School of Business at Dartmouth):ニューハンプシャー州ハノーバーにあるダートマス大学の経営学大学院。
- ハース・スクール・オブ・ビジネス(Haas School of Business):カリフォルニア州バークレーにあるカリフォルニア大学バークレー校(UCB)の経営学部・大学院
- アンダーソン・スクール・オブ・マネジメント(Anderson School of Management):カリフォルニア州ロサンゼルスにあるカリフォルニア大学ロサンゼルス校の大学院
- マーシャル・スクール・オブ・ビジネス(Marshall School of Business):カリフォルニア州ロサンゼルスにある南カリフォルニア大学(USC)の経営大学院
- アトキンソン・グラデュエート・スクール・オブ・マネジメント(Atkinson Graduate School of Management):オレゴン州ウィラメットにあるウィラメット大学の経営学大学院。
- フクア・スクール・オブ・ビジネス(Fuqua School of Business):ノースカロライナ州ダーラムにあるデューク大学の大学院
- ケナン・フラグラー・ビジネス・スクール(Kenan Flagler Business School):ノースカロライナ州チャペルヒルにあるノースカロライナ大学チャペルヒル校の大学院
- テッパー・スクール・オブ・ビジネス(Tepper School of Business):ペンシルバニア州ピッツバーグにあるカーネギーメロン大学の大学院
- ジョンソン・スクール(Johnson School):ニューヨーク州イサカにあるコーネル大学の大学院
- マコームズ・スクール・オブ・ビジネス(McCombs School of Business):テキサス州オースティンにあるテキサス大学オースティン校の大学院
- カールソン・スクール・オブ・マネジメント(Carlson School of Management):ミネソタ州ミネアポリスにあるミネソタ大学ツインシティー校の大学院
- マーティン・J・ウィットマン・スクール・オブ・マネージメント(Martin J. Whitman School of Management):ニューヨーク州シラキューズにあるシラキューズ大学の大学院
- ロバート・H・スミス・スクール・オブ・ビジネス(Robert H. Smith School of Business):メリーランド州カレッジパークにあるメリーランド大学の大学院
(順不同)
[編集] ヨーロッパの主なMBAプログラム・ビジネススクール
- ロンドン・ビジネス・スクール(London Business School):イギリス・ロンドン
- INSEAD:フランス・フォンテーヌブロー及びシンガポールにある大学院大学
- IMD(International Institute for Management Development、国際経営大学院):スイス・ローザンヌ
- IE(Instituto de Empresa):スペイン・マドリード
- HEC(Hautes études commerciales Paris):フランス・パリ
[編集] 日本で取得できる海外のMBA
ボンド大学大学院 - ビジネス・ブレークスルー MBAプログラム
英国国立ウェールズ大学経営大学院MBA(日本語)プログラム
[編集] 中国のMBA事情
中国ではMBAが過剰なまでに注目されており、現在MBA取得者が200万人も居ると言われている。[1]
[編集] 外部リンク
[編集] 関連項目
カテゴリ: 改名提案 | 中立的観点に議論ある項目 | 教育に関するスタブ | アメリカ合衆国の教育 | 学位 | 称号 | ビジネススキル