十二国
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十二国(じゅうにこく)は小野不由美の小説『十二国記』シリーズの舞台となる架空の世界の呼称、またはそこに存在する12の国の総称である。
十二国の世界は、山海経に登場するような神仙や妖魔の存在する世界である。文化、政治形態は古代中国(特に周)に類似しており、絶対的な王制である。しかし世襲制ではなく、12の国はそれぞれ神獣麒麟(きりん)が天意に従って選んだ王により統治されている。王は諸侯を封じ、政治をさせる。王や一部の高位の官は神仙として不老長寿(だが必ずしも不死ではなく、胴や首を断たれれば死んでしまう)の身体を得て、天意に従う形で国を治めることを求められている。麒麟が失道にかかりそのまま死・禅譲するか、誰かに討たれない限り王は死なない。
他国への軍事的干渉は、その国の国主が助力を求めてこない限り天意によって厳しく禁止されており、理由の如何を問わず破った国は王・麒麟ともに悲惨な死に方をし国号も変わる(覿面の罪)。この点が他の異世界ファンタジー小説と大きく異なる設定である。それは戦闘シーンや戦争そのものを描くことが本作の主眼ではないからであろう。王とそれを選ぶ麒麟、そして天意とは何なのかという問いが、作品全体の主題となっている。さらに、サイドストーリーとして最初に執筆された『魔性の子』では、この異世界が我々の暮らす現実世界に干渉したときの恐怖がホラー小説として描かれており、甘い異世界幻想に収まらない世界観を提示している。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
目次 |
[編集] 基本設定
[編集] 創世神話
この世界には独特の創世神話が存在している。それは単に過去のことを語る神話として存在しているのではなく、具体的な「天の意思」として今なお現実に機能している太綱等とも密接に結びついている。それはおおよそ次のようなものである。
- かつて世界は九州と四夷の合わせて十三州からなる今とは全く違う世界であった。しかしそこでは人々はあまりにも条理をわきまえず無軌道に生きていた。天帝がどれだけ諭しても誰も行いを改めず、戦争が絶えることなく血の河が流れるほどであった。
- そこで天帝は決意し、世界の全てを一度滅ぼして5人の神と12人の人を除いて全てを卵に返した。
- 中央に五山を作り五山を取り巻く部分を黄海とした。5人の神を龍神として五山のそれぞれを守らせた。
- また12人の人にそれぞれ3つの実がなっていて蛇が巻き付いている枝を渡した。3つの実はそれぞれ土地と国と玉座になり、残った枝は筆になった。蛇は太綱、土地は戸籍、国は律、玉座は仁道、筆は歴史をそれぞれ示している。
[編集] 天帝
天帝(てんてい)とはこの世界の最高神であり創造主でもある。今の世界が出来る前から世界の支配者であったが、かつての世界があまりにも乱れたものであったため世界を一度滅ぼして全てを卵に返し現在の十二国世界を作った。十二国世界の全てを作り、天綱を定めて今も世界の全てを治めているとされる存在である。麒麟が王を選ぶのも天帝の意思に従って選んでいるとされている。単に「天」と呼ばれることもある。玉京に住むと伝えられている。しかし五百年王と麒麟をやっている延国主従でも「会ったこともないし会ったという奴も知らない」という状況であり、本当に実在するのかどうか不明である。かつては確かに存在したのだが、今はもういないのではないかといった推測がなされたこともある。
[編集] 王
王は麒麟によって選ばれ、天帝に代わって国を統治する人物。選ばれる資格はその国に戸籍を有している事と、麒麟のみが感じ取る王気を有している事である。この王気は、天帝の意思すなわち天命とも云われているが、はっきりした事は不明。過去に無能な王や女王が数多くおり、長期間統治する名君や賢君と呼ばれる者は少数派である。また、謀反などで王が危機に陥っても、基本的には天帝が天命を下した責任を取って助けてくれることはない。これらのことから、景王陽子や李斎のようにこの天命というシステムや天の存在自体に疑問を持つ者もいる。ただし、天仙たちの発言からその天命の真相についてある程度のことは想像できる。まず犬狼真君によると、王としての責任を理解できないものは決して王に選ばれることはないという。また碧霞玄君によると、天の条理は王だけでなく天そのものも束縛するルールであるという。これらの発言が仮に正しいとすれば、最初から無能である人物が王に選ばれることはなく、即位後に王が失政を犯すのは長期に渡って王としての責務を果たすことが出来なかったからということになる。実際、600年もの間各国の興亡を見てきた奏国の利広によると、王の統治には幾つかの転機点が存在するらしい。
まず最初は統治を始めた時期で、実務に長けた官僚団を制御できるかが、大きな問題であるらしい。官僚の制御に失敗し、国家統治への気概を失うことがこの時期には多い。次に一般的な人間の寿命が過ぎたあたり。この時期になると、不老不死であるにもかかわらず人間としての寿命が尽きたことを考え始め、精神的に耐え切れなくなるものと思われる(仙も、この時期に仙籍を返上したり、隠遁して姿を隠す者が多い)。次が300年ほど経過した時期。長期にわたる統治によって名君と評された王が、この時期に自滅に至る事例が多い。このまま王として永遠に統治し続ける事の重圧に、精神が耐え切れずに破綻するものと思われる。
もちろん、これらの転機点以外で倒れる王も数多く、常にこの事例に該当することではない。
麒麟により王となった者は神籍に登録され、以後は不老不死となり、冬器以外では危害を受けない体になる(この点は仙と同じ)。各国の宝重の中には王のみしか扱えないものもあり、麒麟とともに王にとっての切り札となる。麒麟が失道するほどの失政がない限り、王が王座にいることで天災や妖魔の襲来を減らすことが出来る。王にとっての最も基本的な職務に当たるが、王宮にいれば良いのか諸々の儀式を行うことが必要なのかなどの詳細は明らかにされていない。
[編集] 麒麟
麒麟(きりん)は一国に一の最高位の神獣。王気を頼りに自らの主(王)を選ぶ。その後は臣下に下り、宰相となる。
麒麟は十二国世界の中央の島・黄海の中央にある五山の一つ蓬山で生まれ、育てられる。「蓬山の小さき者は麒麟のみ」と言われる所以である。麒麟の卵果は捨身木に実る。麒麟は慈悲の生き物であり、その性質上、血の穢れを最も嫌うので、肉などは当然食べられない。血の臭いが充満した戦場などに行くと、最悪の場合倒れてしまう。特殊な能力として、妖魔を自分の臣下(使令、しれい)として従える事ができる。但し自己の能力を超えた力を持つ妖魔を従属させる事はできない。本性の麒麟に転じたときの角が力の根源である。自分の選んだ王が道を失うと、麒麟だけがかかる「失道の病」にかかり、王が改心するか退位しなければ数ヶ月から1年で命を落とす。
雄の麒麟を麒、雌の麒麟を麟という。たとえば、慶国の麒麟は雄なので景麒(けいき)、範国の麒麟は雌なので氾麟(はんりん)と呼ばれる。ただし、そう呼ぶのは私的な会話の場合のみで、公式の場では一般に役職名の宰輔(さいほ)あるいは畏れ敬って台輔(たいほ)と呼ばれる。他国の麒麟の場合は国号をつけて景台輔などと呼ぶ。(後述)
人の姿から獣の姿になることを転変(てんぺん)、逆に獣から人になることを転化(てんげ)という。蓬山で生まれ育った麒麟は獣の姿で生まれ、成長に伴って転化を覚える。しかし、泰麒のように十二国外での生活が長すぎて転変が困難な場合がある。また、成獣すると外見上の成長は止まるが、成獣までの年月はそれぞれの麒麟によって異なる。
なお、人型のときの髪は獣型における鬣となるため、基本的に麒麟の毛は梳るだけで切ったり結ったりはしない。結うと転変したときに首が曲がって戻らなくなる(実際に昔の采麟がそうなったという)し、切ると毛が不揃いになるからである。鬣(=髪)の長さも成獣までの年月(=外見年齢)によって変わり、外見年齢が年上であるほど髪も長い。
[編集] 昇山
昇山(しょうざん)とは、王に選定されることを望む人々が、自力で蓬山に登ってその国の麒麟に面会することである。昇山によって麒麟に面会できるのはその国に籍がある者だけである(たとえば、景麒に面会できるのは慶の人間のみ)。よって朱旌のように仮の戸籍しかない者は昇山できない。また、一生に一度しか昇山できない規定がある。
なお、現在の十二国の王のうち自分で昇山したことが明確に分かっているのは供王・珠晶と泰王・驍宗の2人。延王・尚隆と景王・赤子は麒麟が蓬莱に赴いて王を選び、宗王・櫨先新はその経営する旅館に宗麟が訪れている。利広によると劉王・助露峰も昇山はしていない。他の国については不明。采王・黄姑は前王が蓬山で禅譲した後に王となったが、采麟が王宮に帰還した直後に黄姑に王気を認めたのか、一度蓬山に戻ってから黄姑が昇山したのかも分かっていない。
昇山するには、黄海に辿り着いて「門」を通らねば金剛山の中に入ることができない(金剛山や「門」については後述)。麒麟と面会した結果、王気を認められなければ「中日・至日(ちゅうじつ・しじつ=次に「門」が開く日、およそ3ヵ月後)までご無事で」と言われるのが定石である。というのも、蓬山を含む五山の外は妖魔が跋扈する黄海であり、蓬山から無闇に出ると命の危険に晒されるからである。
特に最初の昇山者の中から王が出たときは、その王を「疾風のように王になった者」の意味で瓢風(ひょうふう)の王と呼ぶ。瓢風の王は傑物であり名君になる可能性が高いとされる一方ですぐに斃れることもあるとされている。現在の泰王驍宗や先代の采王である砥尚が瓢風の王とされている。
[編集] 妖魔・女怪 ・妖獣
妖魔(ようま)とは、十二国の世界では天の理に反する生き物たちを指し、蟲(むし)と呼ばれる小さくて無害なものから、大型で甚大な被害を及ぼすものまである。麒麟に折伏されたものを特に使令と呼ぶ。
これまで様々な妖魔が確認されているが、全て牡(オス)しか存在しない。言葉は喋らないとされているが使令となった妖魔は喋ることが出来るし、人妖の中には人を騙すために簡単な会話くらいなら出来るものもいる。妖獣との決定的な違いは「飼えない」事とされ、殺そうとしてもなかなか死なないが、捕らえるとすぐに死んでしまう。通常は一匹で行動する妖魔でも同種の妖魔を呼ぶことが出来るし、無害な蟲を殺すとそれを察したかのように大物が現れるなど、その生態については謎に包まれている。一部の妖魔は酒、玉、貴金属などに酔うなど、妖魔の性質は断片的わかっているものの、全ての妖魔がそうなのかはわからない。使令となった妖魔も自らの出生や生態については、命令されても一切しゃべらない為、どのようにして生まれてくるのかすら分からない。黄朱の中には黄海の中に妖魔が生まれる木があるのではないかとして探す者もいるが、発見した者はいない。
基本的に金剛山を越えることは出来ず、したがって黄海のみに生息するはずであるが、王が天命を失うと何処とも無くその国内に妖魔や妖獣が出現するようになる。一説によると、天命がある内は地下で眠っているとも言われるが、所詮は憶測に過ぎない。
妖魔と妖獣の区分けは極めて主観的で曖昧であり、白雉八十七年の乗騎家禽の令により、雁州国においては妖魔は妖獣と同等の扱いとなった。
女怪(にょかい)は麒麟と同じく捨身木(12の枝と12の根を持つ木)から生まれる。枝に麒麟の卵果が実るとそれに対応する根にも女怪の卵果が実る。女怪は麒麟より先に生まれて麒麟の誕生を見守り、乳母として育てる。さまざまな動物が入り混じった姿をしており、混ざっている動物の数が多いほど優秀とされる(現在のところ、泰麒の女怪・汕子が最も優秀ということになる)。姓は必ず白(はく)と名乗る。
妖獣(ようじゅう)は上部に記した様に、妖魔との区別が非常に難しく、その定義付けは人によって様々である。ただ概ね妖獣は、人間が飼い馴らして騎獣(きじゅう)にする事が可能で、また積極的に人間を襲う事はない(飼うことはできても、馴らす事はできない妖獣もいる)。騎獣となった妖獣は、人間に飼い馴らされる事により、本来妖獣として持つ能力が減っていくが、それでも他の騎乗可能な馬や牛と比べても、その移動速度は圧倒的に優れており、中には空を飛ぶことが可能な騎獣もいる。
[編集] 蝕
蝕(しょく)とは時空間の乱れとでもいうべきものであり、これにより十二国世界と我々の世界が一瞬つながってしまうことがある。十二国世界で生まれるはずだった人間が、我々の世界において生を受けることが稀にある。この現象は子を宿した卵果が蝕で流される際に発生する。流された子は本来と異なる姿(胎殻 たいかく)で生まれるが、十二国世界に帰ればあるべき姿に戻る。これらの人間を「胎果」と総称する。景王赤子(中嶋陽子)と延王尚隆(小松三郎尚隆)、延麒六太、泰麒蒿里(高里要)は胎果である。また、反対に我々の世界の人間が蝕によって十二国世界に流されることもある。
自然に起こる蝕以外にも、麒麟は蝕を起こすことが出来る。これを鳴蝕(めいしょく)という。自然の蝕に比べれば小規模で被害も少ないが、王がこれを利用して十二国世界と我々の世界を行き来すると双方に大災害が起こる。王以外でも伯位以上の仙ならば行き来することが出来るが、胎果でない限り十二国世界の人間は我々の世界では確固たる形で存在できない。また十二国世界の一般の人間は蝕を通って行き来すること自体が出来ない。日本や中国では一般人である海客・山客が蝕を通れること、十二国世界でも確固として存在できることを考えれば、十二国世界の方が不安定な世界であることがうかがえる。
[編集] 卵果
卵果(らんか)とは、十二国世界におけるあらゆる生き物の卵の総称である。木の実の形をしている。十二国世界では人間も動物も母親ではなく卵果から生まれる。人間や家畜は里木(りぼく)、獣や魚や植物は野木(やぼく)、麒麟と女怪は蓬山の捨身木(しゃしんぼく)に実る。どの木も白く、妖魔が近づかない。
人間の場合、夫婦が縁起物の細帯を縫い上げ、それを里木の枝に結び付けて天に祈る。夫婦の人格が天に認められれば、その枝に卵果が実り子供が生まれる。そのため、十二国世界では子供が多い者ほど人格が優れているということであり、再婚相手として歓迎される(血縁関係が希薄なので、婚姻と離婚にはおおらかなため)。
獣や植物がどのようにして実るのか、現在のところはっきりしていない。
麒麟の場合、捨身木の12の枝が十二国それぞれに対応しており、麒麟が死ぬとその国の枝に新しい卵果が実る。また、女怪は捨身木の根に実るが、女怪が麒麟より先に生まれることから、やはり麒麟同様に前の麒麟の死によって新たな卵果が実ると思われる。
なお、里木に祈る日は何を願うかによって決まり、月の何日であるかによって
という風に決まっている。
[編集] 海客・山客・胎果
十二国世界には蝕によって蓬莱や崑崙から人間が流されてくる。蓬莱(日本)から来た人間を海客(かいきゃく)、崑崙(中国)から来た人間を山客(さんきゃく)と呼んで区別する。また本来は十二国に生まれるはずだった人間が、誤って卵果のとき異界に流され、そちらで育ち、再び十二国に戻ってくることもある。そのような人間を胎果(たいか)と呼ぶ。
海客は虚海の岸にたどり着き、山客は金剛山の麓にたどり着くとされている。海客が最も多くやってくるのは慶、次いで雁、次いで巧である。海客がやってくるときには触が発生するために、生きてたどり着く海客よりも死体で漂着する海客のほうが多い。生きてたどり着く海客は巧で3年に1人程度である。
海客や山客は仙になるか、こちらの言葉を習得しない限り、言葉で通じることができない。壁落人に拠れば、神仙以外は胎果といえども同じだという。初歩的な中国語の知識のあった東大生の壁落人でさえ最初はかろうじて筆談が出来た程度であり、「最初の1年は本当に辛かった。」と語っている。松山老人に至っては十二国に来て半世紀たってもほとんど言葉がわからないまま生活していた。
海客や山客の扱いは大綱に定めが無いため、各国の政策にゆだねられている。多くの国ではおおむね浮民と同じ扱いであるが、雁・奏・漣等では紙・印刷技術・陶磁器・医術といった有用な技術をもたらすとされているため優遇されている。中でも雁では海客は役所に届ければ海客としての身分証明書を受け取ることが出来、それを使って一定の生活費を受け取ることが出来たり、学校や病院を利用することが出来たりする。雁では海客はこのように優遇されているため海客でないのに海客を名乗る偽物もいるらしく、郵便番号や市外局番を聞かれて本物(の日本人)かどうかを確かめられる。逆に巧では海客がやってきた時の蝕で被害が出たかどうかによって「よい海客」と「悪い海客」に分けられれ、悪い海客(事実上ほとんどの海客)は「国を滅ぼす」として処刑されることになる。
現在明らかになっている胎果は延王尚隆、延麒六太、景王陽子、泰麒蒿里の4人。蝕によって流される卵果はこの4人以外にも多数あると思われるが、王や麒麟のように十二国に不可欠な存在でない限り、捜索して連れ戻すことがないので、大多数の卵果は再度蝕に遭遇しない限り日本や中国で普通の人間として一生を終えることになる。『魔性の子』主人公の広瀬は異世界の記憶を持っているが胎果なのかなどの詳細は不明。なお、胎果は十二国に戻れば本来の姿に戻るとされ、実際に陽子は肌・髪・瞳が変化して完全に別人相に変わったが、尚隆のように大して姿の変わらない者も居る。また蓬莱(日本)や崑崙(中国)から十二国へ「人間」が流されることが可能だが、逆に十二国からは、麒麟や王、仙伯以上の仙でないと虚海を渡ることが出来ない。そのため、蝕によって十二国側の一般人が蓬莱(日本)や崑崙(中国)に現れることはなく、胎果として流されるケースしか存在しない。
[編集] 仙
仙(せん)とは仙籍(せんせき)と呼ばれる特別な戸籍に名前を記載された人間をいう。王と麒麟は神籍(しんせき)と呼ばれる仙籍とはまた別の特別な戸籍に入るため厳密には仙とは区別され、総称して神仙(しんせん)と呼ぶが、広い意味でまとめて単に「仙」と呼ばれることもある。海客や山客も仙になることが出来る。
仙になると、不老となると同時に病気にならず、冬器でなければ傷つけることもできない体になる。たとえ怪我をしても通常の人間と比べて回復が早く、多くの場合自然治癒する。また妖魔や獣の意思も感じ取れるようになり、海客や山客のような言語を異にする者とも言葉が通じるようになる。通常の仙はそれ以外に何か特殊な能力を持つようになるわけではないとされている。但し伯位以上の高位の仙(仙伯)は、虚海を越えることができるとされており、蓬山の女仙が麒麟に乱暴をはたらいた者に対して「女仙の仙たるところを見たいか」と語ったりしているので、仙の中には何らかの特殊な能力を持つ場合もあると考えられる。ただ仙伯にしろ蓬山の女仙にしろ、共に自力昇仙した飛仙であるため、位や仙となる過程によって違いが存在すると思われる。また清秀が鈴にたいして「ねえちゃんは仙だから自分がまもなく死ぬのがわかるのか」と尋ねるなど、一般庶民は仙が何か特殊な能力を持っていると考えている場合もあるようである。なお、仙になると外からは見えないが額に第三の目と呼ばれる何らかの器官が生まれ、それが仙としての能力に関係しているとされている。
王に仕える官吏のうち一定以上の地位にあるものは仙籍に登録され、それが仙の大部分を占める地仙(ちせん)となる。官吏になったことにより仙になった者は通常は官吏を辞職すると同時に仙籍も返上するが、希に梨耀のように、それまでの功績によって官吏を辞職しても仙籍をそのままにする者もいる。また王による任命以外に、自分で誓願を立てて仙になった者もいる(これを自力昇仙と呼ぶ)。蓬山で麒麟や玄君に仕える女仙や、遠甫(老松)のように人格や行いを天に認められた「老」の字が付く仙である。それら現在は王に仕えていない仙は飛仙(ひせん)と総称される。ただし天界に属する特別な仙は天仙(てんせん)と呼ばれ、一般的に神と同列に扱われるが、天仙になる為の条件については不明。国家体制に属していない飛仙と天仙は積極的な社会への干渉は禁じられており、天仙に至っては神仙以外との係わり合い自体が制限される。
更夜を例にとると、雁国元州夏官射士に採用された時に雁国の仙籍に入り(地仙)、斡由の反乱後は仙籍はそのままで雁国を離れて(飛仙)、その後いつのまにか天仙(犬狼真君)へと変わっていたが、天仙となった今でも仙籍は当初のまま雁国にある。
また仙籍と戸籍の関係であるが、祥瓊が慶国に女史として仕えるにあたって、出身国の芳国から慶国に戸籍を移している。ただ戸籍取得以前に慶の仙籍に入っていたので、単に仙となるのであれば戸籍の有無に関係なく何処の国であっても可能で、一定以上の地位につく場合には、その国の戸籍が必要になると思われる。
ある者が王になった場合には配偶者や子供などその家族も仙になることが出来るが、親族を無制限に仙にすることは出来ない。特に王の息子は太子、娘は公主と呼ばれる。またある者が仙になった場合でも親子と配偶者は一緒に仙になることが出来るが、仙にはならず配偶者と別れてしまうことも少なくない。
[編集] 半獣
人の姿も獣の姿もとることが出来る人間のこと。半獣も普通の人間同士の子供として生まれて来るのだが、どのような場合に半獣になるのかは不明である。人間の姿であるときは普通の人間と全く区別出来ない。さまざまな獣と人間との半獣が存在する。自分の意思で人間の姿にも獣の姿にもなれるが、ほとんど獣の姿で過ごす者もいれば人間の姿で過ごす者もいる。ちなみに楽俊はネズミの姿のほうが気が楽だとのこと。
もともとはほとんどの国で制度的に差別されており、成人しても正丁になれない、学校へも行けない、官吏にもなれないという扱いを受けていた。そこまでの扱いをする国は次第に減り、戴で新王(驍宗)が制度を廃止した(但し国が混乱しているため徹底はされていないらしい)ために法的差別が残っている国は巧だけになった。慶でも巧ほどでは無いにしても半獣に対する差別は残っている。しかし、制度上では半獣に対する差別がほとんど無いことになっている雁国の大学でも、「半獣の姿で授業を受けるな」と言われたり本を囓ると思われたりするなど事実上の差別は根強く存在する。
[編集] 名前の構成
大筋において古代の中国の制度をもとにしていると思われるが、整った戸籍制度の存在が大きく影響している。
- 姓(本姓)
- 親から引き継いで生まれたときにつき、死ぬまで変わることはない戸籍上に記載される姓のこと。婚姻すればどちらかがどちらかの籍に入るが、それは戸籍上だけのもので本人の姓は変わらない。「前王と同姓の者は次の王にはならない」の基準となる。
- 名(本名)
- 戸籍や仙籍簿に記載される正式な名。身分の高い人間の本名が呼ばれることはほとんど無い。昔気質の人を中心に本名を呼ばれることを嫌がる人が多いが、特に気にしない人もいる。
- 氏
- 成人(数えで二十歳)になったら自分で選んで付ける。そのため未成年は氏を持たない。親と子は同じ氏ではない。主に「氏+字」の組み合わせを名乗る。
- 字
- 呼び名、通称。普通、字というときは本字のみを指すが、広義には小字や別字を含む。
- 本字
- 親や本人が日常その人間を呼ぶためにきちんと決めたただ一つの字を指す。
- 小字
- 子供の時の呼び名
- 別字
- 字がすでにあるときに改めて別に付けられた字のこと。狭義には本字に準じてきちんと決められたものだけを指すが、広義には他人が勝手に呼び始めたあだ名や通称のようなものも含まれる。主人(特に王)から別字を与えられることがあるが、これは名誉なことである。
[編集] 用語
- 天帝(てんてい)
- この世界の創造主であり、治めているとされるが、存在は不明である。
- 主上(しゅじょう)
- 臣下から王に対する尊称。対して他国の者からは国姓を冠して某王と呼ぶ。
- 失道(しつどう)
- 王が道を踏み外す(天意に背く)と麒麟がかかる病気。一度かかると滅多に治ることはなく、王が死ぬか道を正せば治るが、あまり例はない。病状が悪化し、麒麟が死ねば数ヶ月から1年ほどで王も死ぬ。
- 旌券(せいけん・りょけん)
- 戸籍のある土地を離れた人間の身分を証明する小さな木片。表には本人の姓名が記される。裏には発行した役所の名称か身元保証人の名前を書く。正式に旌券を発行するときは旌券を戸籍の上に重ねて小刀で3つの傷を付けておき、必要な場合には本物かどうか照合する。
- 朱旌(しゅせい)
- 旅先で旌券を失う等して自分の戸籍のあるところ以外で旌券を発行したときは仮の旌券であることを示すため朱い線を入れることから、正式な旌券を持たず仮の旌券のままで旅をしながら生活する者をこう呼ぶ。
- 朱民(しゅみん)
- 朱い線の入った朱旌のままで旅をしている者のこと。
- 浮民(ふみん)
- 旌券を持たずに旅をしている者のこと。
- 荒民(なんみん)
- 戦乱や災害のために住んでいたところを逃げ出してきた者のこと。
- 黄民(こうみん)
- 「黄海の民」と言う意味からこのような呼び方をする。また古くは旅券を黄色く塗っていたからだとも言う。
- 黄朱の民(こうしゅのたみ)
- 黄朱、黄民、朱民、朱旌とほぼ同じ意味。
- 割旌(かっせい)
- 他人に雇われ家生となった浮民の別名。逃げ出して役所の保護を求める事が出来ないように旌券を割らされるためこう呼ばれる。
- 界身(かいしん)
- 銀行のような役割を果たす組織。他国他都市に存在する他の界身とは「座」と呼ばれる強力な組織で繋がっている。座に参加している界身の烙款らっかん(焼き印)があれば、同じく座に参加している界身のどこでも金銭を受け取ることができるようになっている。
[編集] 地理
世界の中央に円形の島があり、黄海と呼ばれる。「海」という呼称であっても、実際には海ではなく一国に匹敵する広大な土地で、森林や谷川といった起伏の富んだ地形に妖魔・妖獣の跳梁跋扈する、人外の荒地である。黄海の外延部には、金剛山と呼ばれる登攀不可能な断崖絶壁の険しい山脈が存在する。それはまるで、難攻不落の城壁の様に黄海の周囲を取り巻いており、人々の行く手を阻んでいるようである。その為、金剛山を越えて黄海内部に移動したり外に出たりするには、金剛山に4つ存在する「門」からしか、出入りすることは出来ない。
金剛山の4つの「門」は四令門と呼ばれ、それぞれ
- 令乾門 - 黄海の北西部にあり、対岸が恭州国
- 令坤門 - 黄海の南西部にあり、対岸が才州国
- 令艮門 - 黄海の北東部にあり、対岸が雁州国
- 令巽門 - 黄海の南東部にあり、対岸が巧州国
に存在し、金剛山全体から見れば、金剛山脈の切れ目の断崖の麓にある小さな砂州の様な、非常に限定された土地である。この「門」が開く日は、一年に一回、それもそれぞれ定まった日(春分・夏至・秋分・冬至)だけである。この「門」が開く日を安闔日(あんこうじつ)と呼んでいる。「門」がある土地は、海を挟んだ対岸の国の「飛び地」になっている場合があり、特にこの「門」が開く時は、黄海の内部から妖魔が外部に向かって大量に溢れ出て来る可能性がある為、この「門」に飛び地がある国は、非常に厳重な警備体制を敷いている。
ただし麒麟や玉葉の招きを受けた者などは、金剛山を空から越えることが許される。だがその際にもある程度の高度(作中では「雲海の上」と表現している)が必要だと思われる。
一方、黄海の中央には五山と呼ばれる霊山・聖地があり、神獣麒麟はこの五山の一つの、蓬山で生まれ、育てられる。 五山とは、崇高、蓬山、崋山、霍山、恒山である。
黄海を4つの内海が取り巻いている。北から時計回りに黒海、青海、赤海、白海と呼ばれている。
さらにその周りを8つの国が取り巻いている。北から時計回りに以下のように呼ばれている。
- 柳北国(りゅうほくこく)
- 雁州国(えんしゅうこく)
- 慶東国(けいとうこく)
- 巧州国(こうしゅうこく)
- 奏南国(そうなんこく)
- 才州国(さいしゅうこく)
- 範西国(はんせいこく)
- 恭州国(きょうしゅうこく)
その外側には果て無き虚海(きょかい)が広がる。この大陸のごく近くに4つの島国がある。北東から時計回りに以下のように呼ばれている。
- 戴極国(たいきょくこく)
- 舜極国(しゅんきょくこく)
- 漣極国(れんきょくこく)
- 芳極国(ほうきょくこく)
慶東国・奏南国・範西国・柳北国の4国を四大国、雁州国・巧州国・才州国・恭州国の4国を四州国、戴極国・舜極国・漣極国・芳極国の4国を四極国と呼ぶ。
国名は正式名称で呼ばれることはあまりなく、一般には慶国→慶のように略して呼ばれる。国の大きさは、一国を抜けるのに馬で3ヶ月、国境の山脈あるいは海を通るのにおおよそ1ヶ月かかるほどである。
これらの地形は幾何学模様を描いており、何らかの巨大な力が十二国に存在するのではないかと思わせる。
十二国世界では、我々の世界の日本・中国はそれぞれ倭(倭国)・漢または蓬莱・崑崙と呼ばれ、それぞれ世界の東の果て・世界の影に位置するとされる。
なお、日本(蓬莱)から見た十二国については、作中で一度[1]だけ常世(とこよ)と呼ばれている。
[編集] 気候
概要を述べると、北は寒く南は暑い。そのうち最も寒いのは北東の戴である。というのは冬になると北東から条風(季節風)が吹き、雪を降らせるからである。この風は北の国々を冬の間凍えさせる。他に柳、芳にも雪が多くつもる。雁も北東に位置するため、この風の影響を強く受け柳と同程度に寒い。恭も条風の影響を受けるが、山を越えるため、乾燥した風が吹く。
南方に目を転じると、非常に温暖であり、漣では二毛作が行なわれ、冬でも戴の春や秋の気候である。また奏の最南端では冬でも外で眠れるといわれる。
[編集] 法令
[編集] 天綱・地綱
天綱(てんこう)とは天帝が定めたとされる、王を含めた十二国世界全体が守らなければならない法のことで、太綱(たいこう)や施予綱(せよこう)とも呼ばれる。その内容は創世神話とともに、蓬山において王が登極するときに王と麒麟の頭の中にすり込まれるが、"王や宰輔が心得ておくべきことが「太綱の天の巻」に書いてあり、井田法のことが「太綱の地の巻」に書いてある"といった記述もあることから、文書化されたものも存在すると考えられる。天綱の第一は「天下は仁道をもって治めなければならないこと。」であるとされる。この天綱に背いた場合には、罰則が王や麒麟に下されることになるが、どのような罰則が下るかは記述が無く、実際に起こった過去の実例から推測するしかない。また天網の記述は極めて簡潔であり、実際の事象が天網に反するか否かの判断が難しい場合もあり、その際は玉葉が相談窓口になる。たとえば、『月の影 影の海』のラストで偽王を倒すため陽子を立てて雁国の王師が慶に攻め入っているが、この時点で陽子は麒麟との誓約を済ませてはいるものの正式に登極したわけでは無かった。この行為が覿面の罪に触れるかどうかについて玉葉に確認をとっている。
なお、作中にはこの世界の決まり事のいくつかについて「これは天の意思である」といった表現をとっていることがあるが、これらがすべて天綱のことを示しているのかどうかは不明である。
地綱(ちこう)とは王が発布する法のことであり、天綱に対してこう呼ばれる。国によって違う制度、王によって違う(変えられた)制度などは地綱によって定められていることになる。浮民・半獣・海客・山客などをどう扱うか、民にどれだけの税を課すかといったことは地綱で定められている。地綱は天綱に違反した内容をもつことは出来ない。例えば、かつてある国の王はその国に戸籍のない男女同士でも結婚し子供を作ってよいと定めたが、「同じ国に戸籍のある男女同士でないと結婚できない」という天綱の定めに反していたために誰も里木に帯を結ぶことが出来ず、子供を作ることも出来なかった。
なお、州候も自分の治める州に適用される法令を定めることが出来るが、その内容は天綱にも地綱にも反することが出来ない。ただし地綱に反した場合は天綱に反した場合と異なり、王宮に知られない限り無効となることはないようだ。実際、独断で地綱の定めより遥かに高い税を取り立てている州候や郷長も存在した。
[編集] 覿面の罪
覿面の罪(てきめんのつみ)は天綱に定められた最も重い罪の1つで、「軍兵を率いて他国に入ること」をいう。「王も麒麟も数日のうちに斃れる」とされる。[2]
実際に過去にあった例として、才の遵帝が他国に軍を侵入させた場合に発動した。慈悲深い名君として知られる遵帝は「相手国の民を救出するため」に出兵したのであり、天網に背く行為との認識は誰にも無かった。しかし軍の越境から程なく、彼と麒麟が急死してしまった。それが覿面の罪であるとは当初誰にも分からなかったが、次王が御名御璽の国号の変化に気付いたことで覿面の罪が認識された。国号が変わるということは王が非常に重い罪を犯したことを意味するものであり、過去に国号が変わった同様の例としてあげられているのは、「王が失道して麒麟が死んだ事に逆上して次の麒麟が生まれてこないようにするため蓬山に侵入し捨身木を焼き払い女仙を皆殺しにした」という場合である。さらにこの罪は軍隊の侵入にとどまらず、麒麟が使令だけを送り込むことも該当し、『月の影 影の海』では、失道の病で臥せっている塙麟がわざわざ雁まで赴いた。軍事力を以て他国を支援する場合は、その国の王から正式な依頼が無い限り許されない。
なお、アニメでは覿面の罪の定義そのものが原作と大きく異なっており、「天命に逆らい人道にもとる事」・「天命なしに死を選ぶ(≒禅譲する)事」・「他国に侵入する事」の3つが覿面の罪であるとされている。この3つは原作においても「王が行ってはならないこと」であるとはされてはいるものの、覿面の罪の結果国号が変わるとすると「天命なしに死を選ぶ事」(禅譲)で国号が変わることは無いため原作の記述とは両立できない。
[編集] 勅令・初勅
国が制定する普通の法は官からの奏上を王が裁可する形で制定されるが、王が自ら制定して発する法令を特に勅令という。一般的に勅令は王朝が形をなしていくはじめの頃と傾いていく終わりの頃に多い。中でも新王がはじめて発する勅令のことを初勅(しょちょく)と呼び、多くの場合は王がその国をどのような国にしたいのかを示すものになっている。中にはとうとう初勅を出さなかった王もいる。実際に次のようなものが初勅として出されている。
- 慶東国景王赤子 伏礼を廃す
- 雁州国延王尚隆 四分一令(土地を四畝開墾した者にはそのうちの一畝を自地として与える)
- 漣極国廉王鴨世卓 民は健康に暮らすこと
なお、法令ではないその案件一回限りで有効な王の命令は勅命と呼ばれ、勅令とは区別される。管理の任免などを行うのはこちらの勅命である。
[編集] 官位・官職
官位 | 天官 | 地官 | 春官 | 夏官 | 秋官 | 冬官 | 地方 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
王 (おう) |
王 | |||||||
公 (こう) |
宰輔 | |||||||
侯 (こう) |
冢宰 三公 |
州侯 | ||||||
伯 (はく) |
飛仙 | |||||||
卿伯 (けいはく) |
太宰 | 大司徒 | 大宗伯 | 大司馬 | 大司寇 | 大司空 | 令尹 牧伯 |
|
卿 (けい) |
将軍 | |||||||
上大夫 (じょうだいぶ) |
||||||||
中大夫 (ちゅうだいぶ) |
遂人 | |||||||
下大夫 (げだいぶ) |
大僕 | 朝士 | 郷長 | |||||
上士 | ||||||||
中士 | ||||||||
下士 |
王の朝議に出席できるのは、高位の官のみである。
- 宰輔(さいほ)
- 王の補佐役。各国の麒麟がその役に就き、宰輔と呼ぶのは畏れ多いため台輔(たいほ)と呼ばれる。位としては唯一の公爵位を持ち、朝臣の筆頭である。元々麒麟は慈悲と正義の生き物であり、王が民に対して無慈悲な行いをするのを諫める役目も持つ。
- 三公(さんこう)
- 宰輔の唯一の臣下。三公は位としては冢宰や諸侯と同等だが、政治介入力は持たず、王の相談役・教師となり、助言をする存在。次の三つの官職である。
- 太師(たいし)
- 太傅(たいふ)
- 太保(たいほ)
- 三孤(さんこ)
- 三公の次官
- 傅相(ふしょう)
- 宰輔が幼いようなときは教育係として、随時側で面倒を見る。
[編集] 六官
六官とは、「天官、地官、春官、夏官、秋官、冬官」の6つの官職のことである。六官長の位は卿伯。
- 冢宰(ちょうさい)
- 六官を取り纏める長である。この官職は、朝臣の筆頭である宰輔が、首都州の州候を兼ねて非常に忙しい身分の為、現実的には朝臣の頂点になる宰相の職にあたる仕事を行う。
[編集] 天官
宮中諸事を掌る。
- 天官長太宰(てんかんちょうたいさい)
- 天官の長。古くは冢宰を兼ねた。
- 小宰(しょうさい)
- 天官長の次官
- 内宰(ないさい)
- 内宮を管理する。
- 内小臣(ないしょうしん)
- 内宰の下で王と宰輔の世話をする官。
- 閽人(こんじん)
- 門の側で控え、来訪者の素性を改め控え、取り次ぐ役を持つ官。
- 大行人(だいこうじん)
- 来訪者の案内をする官。内殿までは入れない。
- 掌舎(しょうしゃ)
- 宮中の建物の管理を行う。
[編集] 地官
土地戸籍を掌る。
- 地官長大司徒(ちかんちょうだいしと)
- 地官の長
- 小司徒(しょうしと)
- 地官長の次官
- 遂人(すいじん)
- 治水など山野を治める官。
- 田猟(でんりょう)
- 人民の管理と納税のための台帳整備する官。
[編集] 春官
祭祀を掌る。
- 春官長大宗伯(しゅんかんちょうだいそうはく)
- 春官の長
- 小宗伯(しょうそうはく)
- 春官長の次官
[編集] 夏官
軍事を掌る。
- 夏官長大司馬(かかんちょうだいしば)
- 夏官の長
- 小司馬(しょうしば)
- 夏官長の次官
- 射人(しゃじん)
- 王の身辺警護の長官。
- 虎賁氏(こふんし)
- 公(外宮)においての王の警護をする官。射人である司右(しゆう)の下官である。
- 大僕(だいぼく)
- 内宮における王の身辺警護をする小臣の長。司馬の官。
- 小臣(しょうしん)
- 王の身辺警護をする官。
[編集] 秋官
法令・外交を掌る。
- 秋官長大司寇(しゅうかんちょうだいしこう)
- 秋官の長
- 小司寇(しょうしこう)
- 秋官長の次官
- 朝士(ちょうし)
- 警務法務を司る。特に諸官の行状を監督し、王に奏上できる官。
[編集] 冬官
造作を掌る。
- 冬官長大司空(とうかんちょうだいしくう)
- 冬官の長
- 小司空(しょうしくう)
- 冬官長の次官
- 匠師(しょうし)
- 物品を作る官。
- 玄師(げんし)
- 呪具を作る官。
- 技師(ぎし)
- 新しい技術を探す官。
- 三官が冬官長の下で、国のためにそれぞれの工匠を抱えている。
[編集] 軍
十二国では天綱に覿面の罪が定められているために、基本的に他国との戦争が存在しない。その代わりに警察というものが存在せず犯罪者の取り締まりや貴人の警護、王宮や都市の警備なども全て軍がおこなう。更に土木工事なども将兵が動員されることがあり、軍事以外にもいろいろな作業に従事する。
また軍の体系は天綱に定められており、王が勝手に拡張・増強するのはもちろん、削減する事も出来ない。
[編集] 王師六将軍
禁軍三軍と首都州師三軍を合わせて王師(おうし)という。
- 禁軍
- 王直属の軍であり、王以外の者が統帥権を持ち命令を下す事は、まず有り得ない。また、その国で一番の強兵が集まった精鋭部隊であり、その軍の指揮官である将軍も優秀な人物であることが多い。
- 左将軍
- 中将軍
- 右将軍
- 首都州師
- 首都に配置された軍であり、統帥権は宰輔である麒麟にある。その為か、現実的には王も首都州師の統帥権を持っている事になる。(この理由から、禁軍と首都州師を「王師」と呼ぶ)ただ手続き上、宰輔の承認が必要な為、宰輔不在で承認が得られない場合には、軍を動かすことは出来ない。
- 左将軍
- 中将軍
- 右将軍
[編集] 軍の編成体系
1つの国に存在する軍は、大きく2つに分けられる。1つは、禁軍と首都州師の「王師」であり、もう1つは、首都州以外の八州(余州)の「州師(しゅうし)」である。軍の名称は順に、「左軍、右軍、中軍」と呼称され、州師のみ更に「佐軍」が加わる。その軍の数は、王師がそれぞれ三軍、州師が二軍から四軍とされているが、これ以上の軍備は太綱によって禁じられている。
軍の規模には、「黒備、白備、黄備、青備」の4種類が存在する。
- 黒備(こくび) 兵数:12,500
- 白備(はくび) 兵数:10,000
- 黄備(こうび) 兵数:7,500
- 青備(せいび) 兵数:2,500
王師六軍(禁軍三軍と首都州師三軍)は、黒備で常備するのが通常で、専業の兵卒があたる。それが不可能である場合は、白備、黄備とその規模を下げていくのが、通例になっている。 一方で州師は、通常は黄備の常備で、また佐軍に関しては、おおむね青備が常備となっている。急あって軍を動かす時には市民から兵を募り、更に火急の時には徴兵する事となっている。
軍の編成単位には、「師、旅、卒、両、伍」がある。
- 伍(ご) 兵数:5
- 両(りょう) 兵数:25 (5伍)
- 卒(そつ) 兵数:100 (4両)
- 旅(りょ) 兵数:500 (5卒)
- 師(し) 兵数:2,500 (5旅)
[編集] 地方
地方は、州、郡、郷、県、党、族、里という形で分けられている。国に州は9つと決まっているが、それ以下の単位については特に数の決まりはない。
- 州候(しゅうこう)
- 各州で、州六官を任命し実際に統治する。
- 各国には州が九つあり、各州の州候は王が任命する。首都州の州候は、必然的にその国の麒麟がなる。
- 令尹(れいいん)
- 州候の輔佐役。
- 射士(しゃし)
- 州候の身辺警護の長。
- 牧伯(ぼくはく)
- 王の勅命で、州候の監督をする。
- 太守(たいしゅ)
- 郡の長。
- 郷長(ごうちょう)
- 郷の長。
- 県正(けんせい)
- 県の長。
- 里宰(りさい)
- 里の長。
[編集] 国情
- 王や麒麟については十二国記の登場人物も参照。
[編集] 慶東国
首都は堯天、王宮は金波宮。景王 赤子、麒麟は景麒。崇山を中心に花びらのような形を配置された十二国の内、慶東国はその中央より真東(3時方向)をその領地とする。気候は日本に近いが冬はやや寒さが厳しく、大きな鉱山や他国に輸出できる物は無く、資源的にはあまり恵まれていない。大陸の東端にあたる為、虚海から流れ着く海客が最も多とされている。
現在、物語の主人公・中嶋陽子が王となっている。
昔、達王が300年間善政を布いたが、最近では3代続いて無能な女王が即位し、そのうち最後の予王舒覚の治世はわずか6年。予王崩御後は妹の舒栄が偽王となっていた。したがって達王崩御以来、国内の状態は悪化の一途をたどり、更に王の統制が緩み為政者の腐敗も横行する状況に陥っていたが、陽子の登極から3年を経て国内体制も再建され、現在では雁国を始め国外に難民として避難していた人々も戻りつつある。とは言え、まだ復興の緒に就いたばかりであり、国力は貧弱の一言で足りる。
[編集] 雁州国
首都は関弓、王宮は玄英宮。延王 尚隆、麒麟は延麒(六太)。王も麒麟も胎果で治世は500年に及び、現在北方で最も豊かな国。国土は崇山から1時半の方向、慶東国の北側に隣接する。主な産業は農業、商業。
資源的には慶と同じく恵まれておらず、更に慶よりも北方に位置する為、寒さも厳しい。戴などの北方の諸国は特に、一旦王が倒れると瞬く間に荒廃するようで、500年前に尚隆が登極した時は、陽子が登極した時の慶よりも遥かに酷く、わずか30万たらず(通常の1/10以下)の人民しか残っていない、まさに「折山」と呼ばれる程の赤貧洗うが如しの様な荒廃振りであった。
現在は、他国では一般的な農民が副業でやる乗合馬車や安宿などが存在しない程、平均的な国民の生活水準が高い。この繁栄により尚隆は宗王と共に稀代の名君と称されるに至るが、他人の10倍は我慢強く、かつ有能な官吏たちの奮闘のおかげでもある。奏国の宗王一家も、麒麟以外に身内を持たない身で500年治世を行ってきた尚隆を賞賛しつつ、型破りな王と麒麟に振り回されながらも国をしっかり支え続けてきた官吏たちの能力を認めている。
更夜との約束のために、十二国で唯一、妖魔を敵対生物としない法を制定し、家畜などにも妖魔の名を連ねている。また、半獣に対しても最も差別の少ない国として知られ、海客についても差別することなくきちんと受け入れる制度を整えている。
国力は当然ながら十二国屈指を誇るが、慶からの難民が帰国し始めた矢先に海を隔てた隣国戴から大量の難民が押し寄せ、また慶を通り抜けて来る巧からの難民も増加の傾向にあり、近隣諸国からの難民対策が大きな課題となっている。更に長期間安定していた北隣の柳が傾く傾向を見せ始まるなど、予断を許さない状況が続いている。六太曰く、尚隆は厄病神。
[編集] 戴極国
首都は鴻基、王宮は白圭宮。泰王 乍 驍宗、麒麟は泰麒 蒿里。北東の最も寒い国。玉を産出する。
先王崩御から10年も麒麟の不在で昇山すら出来ない状態が続いていたが、この期間は仮朝を中心に国内体制は維持され、国情の悪化は最小限に留まっていたと思われる。しかし、驍宗の治世下でようやく復興が始まった矢先に王と麒麟を失い、更に驍宗が任命した重臣のほとんどが行方不明となり、国内体制は崩壊する。
現在、実質的な支配者として阿選が統治している形を取っているが、反阿選勢力の弾圧以外は妖魔が跳梁跋扈するに任せた放任状態が続いており、厳しい気象条件と相まって民の疲弊は激しく、国家滅亡の淵に立たされていると言って良い状態と思われる。現に6年ぶりに十二国に戻ってきた泰麒も「この国は天帝からさえも見捨てられた」との旨発言している。
既に妖魔によって国外との連絡は途絶し、難民の国外脱出は不可能になっており、通常の王不在時と比べても妖魔の跳梁や国内の荒廃は不自然なほど酷く、しかも肝心の王は行方不明であったが崩御していない不可思議な状態に陥っている。また李斎の言によると、当初優勢だった反阿選勢力は突然の寝返り者が続出して四分五裂の末に壊滅したとの事。この突然の反乱と王の失踪、不可解な内部崩壊、それに続く速すぎる荒廃には何らかの異常な力が介在していると推測されている。
現在も泰王は消息不明のままだが、決死の脱出行を成功させた李斎の懇願を受け、景王陽子の提案で各国が協力して日本と中国を捜索、ついに泰麒を発見し連れ戻すことに成功した。
なお、1度国号が変わっていることが作中で明言されている。
[編集] 恭州国
首都は連檣、王宮は霜楓宮。供王 珠晶、麒麟は供麒。治世90年ほど。主な産業は林業など。黄海の北西部にある令乾門を飛び地として所有している。
先王崩御後27年間にわたって王不在による荒廃が進んでいたが、新王珠晶の下で国内の復興はほぼ目処が付き、現在は比較的安定している。そのため近年は王不在となっている芳国を支援したり、亡国の兆しを見せ始めた柳国に備え始めるなど近隣に目を向け始めているが、秦や雁などの大国はもちろん、隣国範と比べても国力はまだまだ弱い。
慶とは逆に過去に途方もなく長く在位した女王がいたため女王に対しては好意的で、むしろ新王が男だと民はがっかりするほどである。
珠晶は昇山の途中で、国王になったら恭全体を乾の街のような「妖魔に対する防備を備えた国」にして次の王不在期間に備えると語り、更にそれは王がいる間でなければ出来ないと語っていたが、その計画が今どうなっているか不明。
[編集] 漣極国
首都は重嶺、王宮は雨潦宮。廉王 鴨 世卓、麒麟は廉麟。南西に位置し、最も暖かい国。廉王は農民出身で「万民は健康に暮らすこと」と初勅を出したことで有名。本人の弁によると「国王はお役目、農夫が仕事」という認識らしい。泰麒は一度この国を訪問している。
国情については不明であるが、泰麒捜索の際に呉剛環蛇を持つ廉麟が比較的長期にわたって国を空けていた事から、少なくとも差し迫った危機は無いと思われている。
[編集] 才州国
首都は揖寧、王宮は長閑宮。采王 黄姑、麒麟は采麟 揺藍。治世12年ほど。現在のところ特に国情に不安はない模様。
現王は采麟にとって二人目の王。先代は梧王砥尚といい、前王の汚吏を一掃して政務に励んだ。理想は高く王臣とも清廉で民への愛情に溢れていたが、望ましい政治とは何かを深く考えなかったがために政策は成功しなかった。こうして王に明らかな非道はなかったにもかかわらず国土は荒れ、ついに王も禅譲して斃れる悲劇となった。一見、夢見るように無邪気と見える采麟の発言に漂う、悲しみの所以である。また、この時に支援を受けた関係で奏国と誼がある。
[編集] 奏南国
首都は隆洽、王宮は清漢宮。宗王 櫨 先新、麒麟は宗麟 昭彰。治世は600年に及び、あと80年程で史上最長の王朝となるも未だ傾国の兆しは無く、磐石と言って良い統治体制を堅持している。ただ宗王によると、雁に比べ官が「のんびり」しているとの事。
国情が安定しているだけでなく、十二国全体を視野に入れた政策を採っている数少ない国。例えば、遠く離れた北方の柳国に亡国の兆しを見出すと、柳の隣国恭への具体的な支援策を考えたり、雁の負担を軽減するため巧北部の難民を船を使って奏に導く策を考えるなど、常に近い将来に起こり得る事象に対して十二国全体のバランスを考えた準備をしている。
[編集] 柳北国
首都は芝草、王宮は芬華宮。劉王 助 露峰、麒麟は劉麒。著名な法治国家であり、芳極国の先王である仲韃もこの国を範として法を整備したが、芳とは異なり民を直接取り締まる法律よりも、むしろ法が公正・厳格に施行されることを目的とした体制整備に重点が置かれていた。この体制が功を奏して、厳正な法治体制の下で安定した治世が120年間程続いていた。
しかし最近ではこれまでの法治体制を自ら崩すような政策が続き、地方にいくと公然と賄賂を要求する官吏が現れている。ただ未だ王と麒麟が健在で且つ法治体制の破綻も顕在化していない段階なのに、天候不順や虚海沿岸に妖魔が出没し始めるなど荒廃の兆しが現れ、巧国や戴国と同じように何か通常とは異なる事態が発生しているのではないかと危惧されている。
[編集] 範西国
氾王 呉 藍篠、麒麟は氾麟 梨雪。治世はおよそ300年、この頃に斃れる王は多いが利広によれば特に問題なく先に進みそうとのことである。国土は慶からちょうど崇山を挟んで反対の位置にある。芸術品などの細工物や船の梶などの細かい物を作る技術に秀でた、いわば技術立国。
他国から原材料を仕入れて、国内で加工して輸出するという国柄から、関連国の情勢には常に注意を払っている(泰麒捜索の際に、玉の産地でもある戴国の実情に最も精通していた)。
[編集] 芳極国
首都は蒲蘇、王宮は鷹隼宮。王も麒麟も不在。先の王は健仲韃(けんちゅうたつ)麒麟は峯麟。あまりにも苛烈な法を敷いたため、数十万に及ぶ民が処刑されるに至り、恵州侯月渓が中心となって八州全てが蜂起し、王と麒麟が共に放伐された。治世約30年であり、諡(おくりな)は冽王。
現在は内外から仮王として認知された月渓が実質的に国を治め、荒廃をよく押さえ込んでいると評価されている。ただし供王珠晶によると、蓬山にあるはずの峯果が行方不明という情報があり、詳しいことは不明ながら王不在が長期化する事が危惧されている(現在蓬山に麒麟は居らず、麒麟の卵果も塙果のみ)。
必王(12代目か13代目の王)の時代に山客によって仏教が伝えられ、最初に寺が建てられたのがこの国である。そのため死体は荼毘に付するし里祠も建物の並びが廟堂風ではなく寺堂風になっている。
[編集] 巧州国
首都は傲霜、王宮は翠篁宮。王も麒麟も不在。海客は3番目に多く3年に1度ほど流れ着く。
自身の治世に劣等感を持っていた先の塙王は、雁に500年の繁栄をもたらした延王と同じ「胎果の王」が隣国慶に立つのを恐れ(=民に比較されるのを恐れ)、麒麟(塙麟)の反対を押し退けて陽子抹殺を試みる暴挙にでる。そのため塙麟が失道の病に懸かり、ついに塙麟共々崩御することになった。治世50年であり、錯王と諡(おくりな)される。
現在は仮朝によって統治されているが、空を覆うほどの妖魔の出現で巧国と黄海の間の巽海門周辺の内海は船の運航が不能なほどの惨状になっており、巧国を脱出する難民も増え続けている。なお蓬山の捨身木には通常は一年未満で麒麟となる塙果が、既に3年以上実ったままになっている(陽子が登極した時に既に塙果が実っており、泰麒捜索時にも塙果のままだった)。
[編集] 舜極国
徇王、麒麟は徇麒。治世は40年程。原作中唯一登場していない国。玉、薬水を産出するらしい。
多くの国が参加した泰麒捜索にも協力しなかったが、その理由は国で内乱が起こったからだとされ、詳しい状況は不明ながら余り安定した治世ではないと思われる。現在の徇王は登極前は官吏だったらしい。
[編集] 各国の宝重
[編集] 慶東国
- 水禺刀(すいぐうとう)
- この刀は真の所有者=景王のみしか使用不可能な代物。魔力が強力な妖魔を滅ぼす代わりに封じ、剣と鞘に変えて宝重としている。封じこんだのは達王。
- 上手く支配できれば刃が輝いて、水鏡を覗く様に未来・過去・遠くの事象でも映し出すが、気を抜けばのべつまくなし幻を見せる為、鞘で封じている。鞘で封じる以前、当初は長い柄の偃月刀(えんげつとう)であり、水鑑刀(すいかんとう)と呼ばれていた。
- 鞘は、変じて禺(さる)を現す。禺は人の心の裏を読むが、こちらも気を抜けば、持ち主の心を読んで惑わす為、剣で封じている。
- 現在は陽子の身に起こったハプニングにより鞘の方が力を無くしているため、位の高い仙ならば誰でも抜刀はできる。しかし藁すら切れない。現在の状態では、水鑑刀と言った方が良いかもしれない。
- アニメ内では、遠甫ならば鞘を修復するのは可能だったが、陽子はこれを拒否。
- 碧双珠(へきそうじゅ)
- 怪我や病気を癒す力がある。空腹感を薄れさせることもできるようだ。
[編集] 漣極国
- 呉剛環蛇(ごごうかんだ)
- 銀の腕輪。蛇の形をしており、使用時には、蝕を起こさずに十二国と、蓬莱や崑崙に穴を通せる。人は通せないし、一度に大勢も運べないなど制限も多い。しかし蝕を起こさない、つまり地上に被害をもたらさないため、泰麒捜索の際には大いに役立った。
[編集] 才州国
- 華胥華朶(かしょかだ)
- 宝玉で出来た桃の枝。枕元に差して寝ると、花が開き華胥の夢を見せて理想の国のあるべき姿を見せてくれると言われていたが、実際には自身が迷った時や自分の本音が分からなくなった時、その人自身の理想の国を夢で見せてくれる力を持つ。梧王・砥尚の時に、枝が折れて欠けた状態になったが、その後、采王・黄姑がどうしたのかは不明。
[編集] 範西国
- 蠱蛻衫(こせいさん)
- 薄い紗のような衣。纏うと見る人にとって、好ましいように見える衣。
- 鴻溶鏡(こうようきょう)
- 映った者を裂くことが出来る鏡。遁甲できる生き物に限り、理屈上は無限に裂くことが可能。ただし、裂いた分だけ、能力も弱まる。
[編集] 巧州国
- 腕輪(名称不明)
- 塙麟がつけている腕輪。詳細は不明。アニメ内では景麒の角に呪をかけ、霊力を封じるために使った。