戸籍
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戸籍(こせき)とは、戸と呼ばれる家族集団単位に国民の身分関係を明確にする目的で作成される公文書である。日本では、戸籍法に定められている。
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[編集] 概要
古代以来の中国の華北社会では戸(こ)と呼ばれる形態の緊密な小家族が成立し、これが社会構造の最小単位として機能していた。そのため政権が社会を把握するためには個々の戸の把握が効果的であり、支配下の民の把握を個人単位、あるいは族的広域共同体単位ではなく、戸単位で行った。この戸単位の住民把握のために作成された文書が戸籍である。中華王朝や漢族世界が華北から拡大しても、政権の民衆把握は戸籍を基礎として行われ、さらには中華文明から政治的、文化的影響を受けつつ国家形成を行った日本、朝鮮半島国家など周辺地域の国家でも戸籍の制度は踏襲された。
日本では律令制を制定して戸籍制度(→古代の戸籍制度)を導入した当時、在地社会の構造は華北のように戸に相当する緊密な小家族集団を基礎としたものではなかった。平安時代になって律令制衰退後、朝廷による中央政府が戸籍によって全人民を把握しようとする体制は放棄され、日本の在地社会の実情とは合致しなかった戸籍制度は、事実上消滅した。地域社会の統治は現地赴任国司筆頭者(受領)に大幅に権限委譲、さらに受領に指揮される国衙では資本力のある有力百姓のみを把握して田堵・負名とし、民衆支配はもっぱら彼ら有力百姓によって行われるようになった。その後、上は貴族から下は庶民に至るまで、家(いえ)という拡大家族的な共同体が広範に形成され、支配者が被支配者を把握しようとするとき、この自然成立的な「家」こそが把握の基礎単位となった。全国的な安定統治が達成された江戸時代の幕藩体制下でも、住民把握の基礎となった人別帳は、血縁家族以外に遠縁の者や使用人なども包括した「家」単位に編纂された。従来の封建的社会構造を打破し、中央集権的国民国家体制を目指す明治維新において、「家」間の主従関係、支配被支配関係の解体は急務であった。新政府は戸籍を復活させて「家」単位ではなく「戸」単位の国民把握体制を確立し、「家」共同体は封建的体制下の公的存在から国家体制とは関係のない私的共同体とされ、「家」を通さない国家の個別個人支配が可能となった。このように戸籍制度の復活は封建的な主従関係、支配被支配関係から国民を解放するものであったが、完全に個人単位の国民登録制度ではないため、婚外子、非嫡出子問題などの「戸」に拘束された社会問題もまた存在する。そのため、現代ではより個人が開放された制度を目指して、戸籍制度を見直す議論も存在する。
[編集] 各国の戸籍制度
戸籍制度は東アジアで戸と呼ばれる中華文明圏で成立した家族集団の認定を基礎とする、他地域には存在しない特有のものである。近代以降国民、或いは住民の把握は国家により個人単位、或いは家族集団単位で行われ、欧米でもアングロサクソン系国家では個人単位、大陸系国家では家族登録制度を採用する傾向がある。戸籍は家族集団単位に把握する制度の代表的なものであるが、国家に認定された家族集団が東アジア固有の戸の思想系譜を引くものでなければ、それは戸籍制度ではない。アメリカ合衆国のようなアングロサクソン系国家は国家による家族登録を行わない伝統を持ち、戸籍のような家族単位の国民登録制度は存在しない。社会保障番号(ソーシャルセキュリティーナンバー)制度はあるが、これは年金加入・支給の管理の為の、日本の基礎年金番号相当で、戸籍のようなものは存在せず、結婚などの登録も役所の住民登録で済まされる。多くの州では居住地でなくとも婚姻届を受理する。こうした戸籍と類似した家族登録制度の不存在はイギリスやオーストラリアにも当てはまる。
[編集] 中華人民共和国
中華人民共和国では戸籍を「戸口」といい、全ての人民は機関・団体・学校・企業など、「単位」とよばれる組織のいずれかに属するようになっている。「単位」の所在地により、俗に城市戸口(都市戸籍)と農村戸口(農村戸籍)と分けてよばれている。
改革開放以前、住居分配・初等中等教育・医療・食料配給などは基本的に単位ごとになされ、事実上、本籍地以外の所で生活する事は不可能であった。改革開放以降、食料配給の廃止や外資企業の出現による単位への所属が流動化、インフラ設備の向上による流通の発展と第3次産業の発展、農村部経済の破綻と沿岸都市部での労働者需要のによる「民工潮」(盲流現象)などから、本籍地以外でも社会的サービスを受けられるようになったが、依然として初等中等教育は基本的に不可能で、医療では医療費面で差別があり、信用度の問題で銀行からの融資を受けられないことや、福利厚生費を企業が負担しなければならないので就職が難しい などの問題がある。
戸口の移動は、大学卒業して国家機関や団体、大企業などへの就職による移動が基本で、最近では多額納税者や、小都市では住宅購入で戸籍の移動を認める地方政府もある。 戸口を記した「戸口簿」は中華人民共和国公安部(中国の警察)が管理している。
中国では戸口簿の他に中国全人民ひとりひとりには「人事档案」というものがあり、人事档案には先祖の階級をもとにした「本人成分」から始まり、家族構成・学校成績・党歴・就職・結婚・言動・旅行歴・交友関係・犯罪歴など、生まれた時から現在までの個人情報の全てが書き込まれている。人事档案は単位の共産党人事部、もしくは地方共産党支部の人事局や労働局が厳重に管理しており、もちろん非公開で、本人はその内容を生涯知ることは出来ない。
[編集] 朝鮮
朝鮮半島国家は古代の律令制導入以来戸籍制度を維持してきた。李氏朝鮮時代は良民と賤民に身分が分かれており、良民には士大夫(両班)の特権階級と郷吏(中人)・常漢・庶人・良人(常民)の平民階級があり、賤民には奴婢と白丁があった。
戸籍にその戸の身分が記載され、平民階級には役などが課された。
その後、やはり戸籍制度を採る日本統治時代を経て身分の記載は無くなったが、現在の大韓民国においても戸籍は継承されており、徴兵制の運用もあって管理が厳しい。近年、戸籍制度は人権侵害や男女差別の温床とする批判が高まり、2008年に戸籍制度が廃止されることが決まった。軍政時代は、戸籍は警察が管理していた。
[編集] 台湾
台湾は日本統治時代に日本の戸籍制度に改変された。現在の中華民国支配下でもID制度と平行して存在しているが、一般的にはIDの方が多用される。韓国同様、中国国民党が独裁していた時代には、戸籍は警察が管理していた。
[編集] 日本の戸籍制度の歴史
- 1872年:明治5年
- 1915年
- 身分登記簿が煩雑であったため廃止し、戸籍簿に一本化された。
- 1970年4月
- 壬申戸籍を封印(後廃棄年度経過)
- 1976年
- 除籍現戸籍閲覧の禁止
- 2004年
- オンラインでの戸籍手続の扱いを可能とする法改正等が実施され、システム構築のあたっての基準書「戸籍手続オンラインシステムの構築のための標準仕様書」が全国市町村に配布された。
- 婚外子に対する「男・女」という続柄差別記載がプライバシー権の侵害であると判示され、11月1日以降の出生については、「長男・長女」式に記載することになった。それ以前に出生した婚外子については、現行の除籍されていない戸籍についてのみ、申し出によって更正するとした。当事者が申し出ても更正を拒否するなど、差別記載を温存する「改正」であるとして批判されている。
[編集] 旧規定における戸籍用語
- 戸主・家長
- 一家の代表者のこと。現行戸籍制度の筆頭者と違い、戸主に強い権限が与えられていた。
- 女戸主
- 私生子・私生児
- 認知されていない非嫡出子のこと。
- 庶子(しょし)
- 認知された非嫡出子のこと。
- 婿養子縁組
- 男性が結婚時に別な戸籍に入り、戸主になること。現在でも、男性が結婚相手(=妻)の父母の養子になってから結婚することを婿養子や入り婿というが、「結婚後に妻の姓を称する=婿養子」という誤解が多い。
- 入夫婚姻
- 家督相続
- 推定家督相続人
- 離籍
- 復籍拒絶
- 一家創立
- 廃家
- 絶家
- 分家
- 廃絶家再興
- 族称
- 襲爵
[編集] 日本の戸籍制度
[編集] 戸籍制度の目的
相続、納税、年金、婚姻、福祉、旅券発行などの手続きを迅速かつ確実に行うために用いられる。また住民票を一元化して管理する目的もある。 日本において戸籍(こせき)制度とは、住民登録制度とともに、日本の国民を管理する制度である。ただし元来は徴税・徴兵のために設けられたものである。
[編集] 戸籍制度の利点と欠点
出生から死亡までの履歴が記録されているので、相続などの手続きの際に取るべき手順が明確である。また、住民基本台帳制度との連携により、戸籍の附票を見れば以後の転居の履歴が判明するため、犯罪者や債務者の逃亡が行いにくくなっている。その反面、ストーカーやDV・児童虐待の加害者が目標を追跡するとき、目的を偽って戸籍の附票を取得すれば、現住所が突き止められてしまうという問題も抱えている。
依然として就職時などには同和地区出身者や、非嫡出子、父子家庭、母子家庭への偏見があり、本籍地や家族構成などの情報はプライバシーとして守るべきものだとの考え方も強くなってきている。このため、就職時は各社の独自用紙ではなく統一用紙を使うようになってきている。また、市町村名までの出生地は移記すべき事項と定められているので、転籍・分籍といった手段をもっても新戸籍に記載される。
戸籍謄本の身分事項【従前戸籍】には親の本籍が記載される。転籍歴の記載は無い。(戸籍事項・戸籍改製【改製事由】平成6年法務省令第51号附則第2条第1項による改製)
現行制度では外国人と結婚しない限り夫婦別姓が不可能なため、結婚すると今まで公的に使い続けていた苗字が変わって不便な思いをする人もいる。そのため、旧姓の書類が必要になる度にペーパー離婚をする場合もある。
性同一性障害者は戸籍上の性別と現実の性別が違う場合があるため、日常生活で提出する書類などでトラブルになることがある。この問題は新しい法律ができて徐々に改善されてきている。なお半陰陽など、乳児の段階で性別が明確でない場合は性別留保ができる。
結婚していない女性が産んだ子(非嫡出子)は、養子にならない限り嫡出子に比べて相続分が不利であり、就職や縁談の際も偏見を持って見られる場合が多いため、婚外子差別問題として市民団体などが問題提起している。
[編集] 戸籍
自治体によって取り扱いが違うものもありますので、実際に各種手続きをする際には、役所・役場に直接ご確認ください。
戸籍簿には、ほとんどの日本国民の氏名生年月日などの基本情報と、結婚などの事跡が記載されており、行政事務においてきわめて重要な役割を持っている。戸籍は日本人個人の身分関係を証明する唯一無二の公的証書である。戸籍は和紙に印刷してあるが、以前は枠以外は手書きで書かれていた。しかしながら戸籍制度のみでは、居住地域にあった行政サービスの提供や、現代社会の多様なニーズへの対応が不可能なため、住民基本台帳を基にした住民票制度が戸籍制度を補う存在となっている。また戸籍と住民票をつなげる証書として附票の存在もある。
戸籍謄本には、一人もしくは二世代の生年月日、死亡年月日、性別、氏名、続柄(血縁関係)、婚姻歴、離婚歴、養子縁組歴などの情報が記載されており、戸籍の附票には現住所と転居履歴が記載されている。
日本の戸籍には日本国籍がある人物のみ記載される。日本国籍がある日本在住者は、戸籍と住民基本台帳の両方に記載されているが、日本国籍がある外国在住者と住所不明者は、戸籍にのみ記載されている。
法律上は、住民基本台帳には記載されているが戸籍には記載されていない人物(住民票がある無戸籍者)も存在しうる。しかし、無戸籍者を住民登録してはならないという通達が出されているので、そういった人物は実際にはほとんど存在しないとされるが、その通達を守っていない自治体では少数ながら存在するようである。
天皇と皇族は戸籍ではなくて皇統譜に記載される。そこで、天皇・皇族は“日本人ではあるが「国民」ではない”と解する見解もある。しかし、各人の家族関係を明らかにするための戸籍法・皇統譜令の存在によって、国民の要件を定める国籍法を解釈するものであり、法律論としては正しくない。
[編集] 戸籍の届出の種類
- 本人の本籍地または届出人所在地でしなければならない(第25条)
- 書面または口頭ですることができる(第27条)
出生届 (戸籍法第49条の届) |
子供が生まれたときに14日以内に届ける。名前が決まっていない場合でも14日以内に届けなければならないので、14日以内に決まりそうにない場合は先に空欄で出生届を出しておき、名前が決まったら追完届を出すことになる。両親が外国人であっても、日本国内で生まれた場合は届けなくてはならない(戸籍への記載はない)。出生証明書の添付が必要である。普通は本人は提出しない。 |
離婚届 (戸籍法第76条の届) |
離婚をする場合に届ける。筆頭者でない側が、戸籍を抜けることになる。協議離婚と裁判離婚の2種類がある。また、配偶者の家に嫁又は婿として養子女に入り、婚姻時に養子縁組届を提出している場合は養子離縁届を添えて提出する必要がある。 |
婚姻届 (戸籍法第74条の届) |
婚姻(結婚)をする場合に届ける。男性は18歳以上、女性は16歳以上でなければならない。20歳未満の初婚の場合は片親の許可が必要である。2人の20歳以上の証人が必要である。女性は離婚後半年たたなければ前夫以外の人と結婚できない(再婚禁止期間)。猶、婚姻届と離婚届を同日に提出することも可能である。また、配偶者の家に嫁又は婿として養子女に入る場合は配偶者の両親を養親とした養子縁組届を添えて提出する必要がある。 |
死亡届 (戸籍法第86条の届) |
死亡を知ってから7日以内に届ける。死亡診断書又は死体検案書の添付が必要である。いわゆる行き倒れの場合は行旅死亡人といわれ、引取り人を探すために市区町村長から官報に掲載される。事件本人が提出することできない唯一の届である。 |
認知届 (戸籍法第60条の届) |
(主に男性が)生物学的な自分の非嫡出子を法的な自分の子とするための届出。ただし、子供の母が別な男性と結婚している場合、子供はその夫婦の嫡出子となるので、嫡出否認もしくは親子関係不存在の訴えが認められるまで認知できない。 |
養子縁組届 (戸籍法第66条の届) |
養子を受け入れるための届出。年上の人物と尊属と自分の嫡出子は養子にできないが、嫡出でない実子と、実弟、実孫などは養子にできる。 |
養子離縁届 (戸籍法第70条の届) |
養子を解消するための届出。 |
特別養子縁組届 | 特別養子を受け入れるための届出。実親が養育に不適格であるなどの特段の事情がある場合のみに認められる。通常は6歳未満でなければ特別養子縁組はできず、縁組には家裁の許可が必要。 |
特別養子離縁届 | 特別養子を解消するための届出。特段の事情がある場合のみ認められる。 |
離縁の際に称していた氏を称する届 (戸籍法73条の2の届) |
養子離縁によって旧姓に戻った人が養子時の苗字に戻るための届出。 |
離婚の際に称していた氏を称する届 (戸籍法77条の2の届) |
離婚によって旧姓に戻った人が婚姻時の苗字に戻るための届出。離婚から3ヶ月以内に届け出なければならない。 |
親権(管理権)届 | 「親権者指定」「親権者変更」「親権喪失」「親権喪失取消」「親権辞任」「親権回復」「管理権喪失」「管理権喪失取消」「管理権辞任」「管理権回復」の10種類の届出があり、子供を養育する権利と財産を管理する権利についての手続きを行なうための届出。 |
失踪届 (戸籍法第94条の届) |
ある人が平常地域で行方不明になった場合(普通失踪)は、最後の目撃日から7年後に家裁が6ヶ月間の失踪宣告を行なって官報などに掲示する。戦地や沈没船などで行方不明になった場合(特別失踪)は、戦争終結ないし船の沈没から1年後に家裁が2ヶ月間の失踪宣告を行なって官報などに掲示する。それでも発見されない場合は失踪が確定するので、この届を提出すると失踪した人は死亡したものとみなされ、相続などが行なわれる。 |
復氏届 (戸籍法第95条の届) |
配偶者と死別した人が、旧姓に戻る場合に行なう届出。 |
姻族関係終了届 (戸籍法第96条の届) |
配偶者が死亡してもそのままでは配偶者の血族との間に姻族関係があるため、姻族が生活困難になった場合などに扶養義務がある。そういう場合に姻族との関係を終了させるための届出。 |
推定相続人廃除届 (戸籍法第97条の届) |
ある人が死んだ時に相続する権利がある人が、その人に対して著しい虐待などをした場合に相続権を消滅させる届出。いわゆる勘当のことだが、子が親に対して廃除をすることもできる。 |
入籍届 (戸籍法第98条の届) |
子供のいる夫婦が離婚後に、子供を非筆頭者側の戸籍に入れて子供の苗字を変更する場合、または自分の戸籍に子供がいる独身者が、結婚後にその子を自分の戸籍に入れて子供の苗字を変更する場合に行なう届出。 |
分籍届 (戸籍法第100条の届) |
一人だけ戸籍を分ける際に出す届出。主な用途としては、転籍や氏の変更などを行なう場合、戸籍全員に影響があるため、分籍する人だけ影響をなくすなどのものがある。筆頭者と配偶者以外で20歳以上の人であれば届出が可能である。 |
国籍取得届 (戸籍法第102条の届) |
片親が日本人であるなど日本人に近い外国人が、日本の国籍を取得するための届出。 |
帰化届 (戸籍法第102条の2の届) |
外国人が日本国籍を得るための届出。帰化の許可は法務大臣が行う。申請から許可までは相当の日数を要するが、国籍法の要件を満たしている限りは、不許可となる事例は少ない。帰化の条件としては、「引き続き5年以上日本に住所を有すること」「20歳以上であること」「本人または配偶者や親族に正常な生計を営む資産および能力のあること」「日本国憲法を守り、素行が善良であること」「日本政府に脅威を与えたり、社会秩序を破壊するようなことがないこと」であるが、日本人との一定の身分関係を有する者については、要件が緩和される。 なお特別帰化という制度もあり、「日本人と結婚していること」「日本に10年以上住んでいること」「日本に対して特別な功績があること」を満たしている場合は適用される。 |
国籍喪失届 (戸籍法第103条の届) |
日本は二重国籍を禁止しているので、外国籍を得たときに届け出て、日本国籍を放棄する。 |
国籍選択届 (戸籍法第104条の2の届) |
二重国籍の日本人がどちらかの国籍を選択する場合に届け出る。二重国籍になったのが20歳未満であれば22歳が期限であり、20歳以上であればなった時点から2年が期限である。期限を越えると自動的に日本国籍を選択したものとみなされる。 |
外国国籍喪失届 (戸籍法第106条の届) |
二重国籍の日本人が外国の国籍を喪失した場合に届け出る。 |
氏の変更届 (戸籍法107条1項の届) |
家裁の許可を受け、苗字を変更する。よほどの事情が無ければ許可されない。 |
外国人との婚姻による氏の変更届 (戸籍法107条2項の届) |
外国人と結婚した日本人はそのままでは苗字は変わらないが、結婚後6ヶ月以内であればこの届出で苗字を変えることができる。 |
外国人との離婚による氏の変更届 (戸籍法107条3項の届) |
外国人と結婚後、107条2項の届出によって苗字を変えた人が、離婚したあと3ヶ月以内に旧姓に戻るための届出。 |
外国人父母の氏への氏の変更届 (戸籍法107条4項の届) |
片親が外国人の場合、子が親の苗字を名乗るための届出。家裁の許可が必要である。 |
名の変更届 (戸籍法第107条の2の届) |
家裁の許可を受け、下の名前(諱)を変更する。「腰巻」「及位(のぞき)」「ミス子」「運子(うんこ)」などの珍名、また“田中角栄元首相と同名である為に学校で虐められた”としての申し立てによる変更例がある。珍名でなくても、ある程度の期間その名前を使っていると許可されやすい。その他、裁判所の提供する変更申立書記入例には「難読である」「異性と紛らわしい」「近くに同姓同名がいる」「外国人と紛らわしい」「神官・僧侶となった/やめた」などの場合が例示されている。個人的趣味や感情、信仰上の理由などだけでは不足であるとされている。 また代々世襲名を名乗っている家系について、その世襲名を名乗ることが変更事由として認められている。 |
転籍届 (戸籍法第108条の届) |
本籍地から遠い場所に住んでいるため謄本などの請求が面倒であるような場合に、本籍の場所を移転するための届出。また、転籍をすると一見して離婚歴が見えなくなるため、離婚歴などを隠す目的に使われる場合もある。複数人が存在する戸籍のうち、自分一人だけが転籍をする場合は、先に分籍をしておかなければならない(ただし分籍時にも本籍地は指定出来るので、分籍届と転籍届を個別に出す必要はない)。 |
就籍届 (戸籍法第110条の届) |
本来は日本国民ではあるが戸籍がない人物(例:樺太などの旧日本領からの引揚者、無戸籍者、未就籍児、両親が没した中国残留孤児)が、家裁の許可を得てから既存の戸籍に入ったり、新しい戸籍を作ったりするための届出のこと。 |
未成年者の後見開始届 (戸籍法第81条の届) |
両親が死亡するなどして未成年者に親権を行使する者がいない場合、または親権者に管理権がないときに届出が必要になる。 |
不受理申出 | 婚姻届や離婚届などを無断で提出されないための申し出。ストーカーなどからの防衛に使われる。人気アイドルなどもこの制度を利用しているといわれる。 |
不受理申出取下書 | 不受理申出を取り消すための書類。 |
妊娠届 | 届出は義務ではないが、妊娠した場合に届けると母子健康手帳がもらえる。米が米穀通帳による配給制だった時代は、妊娠届を出すと配給量が増えたが、現在は形式化している。 |
死産届(しざんとどけ) (昭和21年厚生省令第42号(死産の届出に関する規程)による) |
12週以上の胎児を死産・中絶した場合にこの届出を行う必要がある。この届出を行うことにより、死胎についての埋葬火葬許可証が発行される。 |
[編集] 戸籍関連の書類
戸籍謄本(とうほん) | 戸籍内の全員の内容を複写した紙。電算化済みの自治体では、戸籍全部事項証明書ともいう。(“謄”は全文写しの事) |
戸籍抄本(しょうほん) | 戸籍内の1人だけの内容を複写した紙。電算化済みの自治体では、戸籍個人事項証明書ともいう。(“抄”は必要部分写しの事) |
「省略抄本」と通称されているもの | 現戸籍や除籍の必要な事項のみ記載した抄本。電算化済み自治体では、一部事項証明書、記載事項証明書ともいう。 |
除籍謄本 | 除籍された戸籍の謄本のこと。電算化済みの自治体では、除籍全部事項証明書ともいう。相続のときに、相続権利者の存在を調べるために請求されることが多い。 |
除籍抄本 | 除籍された戸籍の抄本のこと。電算化済みの自治体では、除籍個人事項証明書ともいう。 |
戸籍の附票 | 住民票の移動履歴が書いてある書類のこと。転出すると住民票は除票になり、5年たつと破棄される場合が多いので、そういった場合に住所移転の履歴を調べるために使われる。ただし、転居のたびに本籍を移しているような場合、途中の在住履歴がわからなくなる場合もある。 |
戸籍の除票 | 除籍された戸籍の附票のこと。5年以上保存される。 |
再製原戸籍証明 | 戸籍の再製が行なわれたときに、再製される前の戸籍について証明する書類。 |
不在籍証明 | ある人物がある番地の戸籍に記載されていないことを証明する書類のこと。 |
婚姻要件具備証明書(独身証明書) | 外国人と結婚するときに必要な書類で、大使館などから発行される。 |
受理証明書 | 各種の届出を受理したという証明書で、外国への提出などに使われる。 |
記載事項証明書 | 各種の届出を複写し長が認証した証明書で、「死亡届記載事項証明書」は遺族年金・簡易保険の手続きに使われる。 |
上質紙を用いた婚姻・離婚・養子縁組・養子離縁又は認知の届出の受理証明書 | 表彰状のような外観の受理証明書。大切な事項の記念として請求される場合が多い。手数料約1400円。 |
身分証明書(身元証明書) | 禁治産・準禁治産宣告を受けているかどうか、成年被後見人であるかどうか、自己破産者かどうかが書かれている書類。被保佐、被補助については記載されない。就職などの時に一部の職種(例:警備業における警務職)で要求される場合がある。 誤解されるが、この書類で本人証明は出来ない。 |
[編集] 戸籍制度にまつわる誤認識
- 【誤】本籍地とは出生地のことである
- 【誤】北方領土に本籍は置けない
- 【正】日本が領有権を主張しているところであれば、実効に関係なく置くことが可能である。
- 【誤】本籍地とは現住所のことである
- 【正】転居しても本籍地を変える必要は全くなく、現住所と本籍が違う者は沢山いる。
- 【誤】結婚するときは入籍届を出す
- 【正】結婚するときは「婚姻届」。「入籍届」は全く違う届けになるのでご注意を。
- 【誤】死者が筆頭者なんてありえない
- 【正】同じ戸籍の在籍者であれば、筆頭者は死亡しても変わらない。
- 【誤】戸籍の筆頭者は全て既婚である
- 【正】例えば「分籍届」という届けをすることによって未婚者でも筆頭者になる事ができる。
- また、養子をとった場合や三代戸籍の禁止により、母について新戸籍を編成したシングルマザーの場合も、筆頭者となる。
- 他に棄児発見の申出があった場合、市町村長に「氏名をつけ、本籍を定め」られ戸籍に記載されるため当該棄児が筆頭者になる。
- 【正】例えば「分籍届」という届けをすることによって未婚者でも筆頭者になる事ができる。
- 【誤】兄弟姉妹間では養子縁組をできない
- 【正】養子が養親より年下であれば養子縁組はできる。
- 【誤】夫婦の戸籍で苗字が記載されるのは必ず夫である
- 【正】婚姻時に夫婦は同じ氏を称することになるが、その際には夫・妻の氏どちらでも選択することができる(民法第750条)。どちらの氏でもない氏を使う事は出来ない。
- 【誤】自己破産をしたり刑罰を受けたりすると戸籍に載る
- 【正】ケースバイケースになる。※
- ※戸籍には記載されないが、罰金以上の刑が確定した場合、本籍地の市町村の事務所に備え置かれた「犯罪人名簿」(部外秘)に記載される。
- 犯罪経歴証明書(無犯罪証明書、警察証明書、ポリスレポートなどとも呼ばれる)などによって証明されるが、要求元の相手国外務省以外の者は本人を含め中身を知ることはできない。封印されており開封すると無効になる。また、申請手続きが非常に厳格なので法的に必要な場面(主として外国永住権申請の際の必要書類)以外での発行は事実上不可能である。
- 自己破産をした場合は本籍地の市町村の事務所にある「破産者名簿」に記載されるが、免責をうけると記載されなくなる。
- 【正】ケースバイケースになる。※
- 【誤】養子は2人までしか取れない
- 【正】何人でも養子にすることができる。これは相続税法上、相続財産の基礎控除の適用となる養子の数が(実子のいない場合)2名までであることと混同された誤解である。
- 【誤】私の子が2人とも長男なんておかしい
- 【正】例えば再婚相手の長男が戸籍に在籍していて、その後再婚相手との間にできた最初の男の子は「長男」になる。嫡出でない子でも、母との続柄として「長男」と記載されるため、そのような事態が生じる。
- 【誤】引っ越したら本籍を移さなければいけない
- 【正】引っ越しても本籍を変える義務は法律上ない。
- 【誤】戸籍には同和地区であるとの記載がある
- 【正】現在の戸籍には記載されない。また、記載がある除籍謄本などを取得しても塗抹されているため読めない。
現在の戸籍制度では、上記【誤】の部分の主張は全て間違いであるが、未だに戦前の家長制(家制度)の戸籍制度の記憶は根強く、この点を誤解して戸籍制度を批判する人も多い。#ワンポイントも参照。
[編集] 戸籍の用語
- 筆頭者
- 配偶者(はいぐうしゃ)
- 結婚相手のこと。基本的にはいずれかが戸籍の筆頭者で、もう片方が非筆頭者。
- 養子
- 法的に相続権などを与えられた人のこと。養子を受けいれる親は養親という。
- 戸籍上は男性は「養子」、女性は「養女」と記載される。
- 特別養子
- 法律上の立場が実子とほぼ同じ養子のこと。戸籍上は実子とほぼ同じ表記がされるが、戸籍に詳しい人であれば特別養子であると判断できる。
- 嫡出子(ちゃくしゅつし)
- 「摘出」ではなく「嫡出」である(前者の読みは「てきしゅつ」)。結婚中または離婚後300日以内の女性が生んだ子のこと。夫と血のつながりがなくても、嫡出否認もしくは親子関係不存在の訴えが可決されるまでは嫡出子である(これを嫡出推定という)。
- なお、結婚後200日以内に生まれた子は、嫡出子としても非嫡出子としても出生届が出せる。
- 入籍
- 結婚・出生などにより、すでにある戸籍に入ること(要は戸籍謄本に本人の情報が記載されること)。「入籍届」は、親が離婚した際、子を非筆頭者側が引き取って旧姓を名乗る場合に出すもの。
- ワイドショーなどでよく使う「入籍」という用語は、主に結婚のことを指していることが多く、中には「婚姻届」を「入籍届」と言うことすらある。⇔除籍(1)
- 除籍
- 死亡、結婚、離婚などにより、ある人が戸籍から除かれること。電算化されていない戸籍謄本では、除籍されたひとの名前に赤ペンで大きくバッテンが書かれる。
- 用例「親が死亡により除籍された」⇔入籍
- 全員が除籍され、除籍簿に入った戸籍のこと。全員の除籍により誰もいなくなった戸籍は除籍簿に入れられ、80年以上保存される。80年以上は保存する義務はなく、市町村によっては廃棄が始まっている。除籍は、本来的には相続等における証明としての機能を果たすが、同時に、意義のある史料でもあるため、歴史研究者などからは廃棄が始まっていることを問題視する意見も上がっている。
- 用例「家系図を作るために除籍を取った」⇔現戸籍
- 死亡、結婚、離婚などにより、ある人が戸籍から除かれること。電算化されていない戸籍謄本では、除籍されたひとの名前に赤ペンで大きくバッテンが書かれる。
- 分籍
- 一人だけ戸籍を分けること。分けた当人が戸籍の筆頭者になる(その際に本籍地も設定できる)。20歳以上で、結婚歴がなければ可能(結婚歴があればその時点で親の戸籍からは離れているので無意味であるし、離婚して夫婦で戸籍が分かれてもそれを分籍とは呼ばない)。
- 転籍
- 本籍を別の場所に移すこと。戸籍内の全員が一緒に転籍することになる。
- 就籍
- 出生届、就籍届などにより、これまで戸籍に記載されていなかった人が新しく戸籍に入ること。
- 現戸籍・現在戸籍
- 現在使用されている戸籍のこと。⇔除籍(2)
- 改製原戸籍
- 現行以前の戸籍制度の戸籍簿のこと。現場では「現戸籍」と混同しないために「はらこせき」ともいう。
- 昭和改製原戸籍
- 1948年制定の戸籍よりも前の戸籍のこと。改製より50年保存される(延長論あり)。
- 平成改製原戸籍
- 電算化済み自治体で、1948年制定の戸籍のこと。改製より100年保存される。
- 再製原戸籍
- 汚れや不実記載などにより、戸籍再製の手続きが取られた場合の、古い方の戸籍のこと。
- 電算化
- 事務の効率化のために、コンピューターで戸籍を管理すること。電算化によって戸籍謄本はこのように変わる。
- 未就籍児・未就籍者
- 無戸籍児・無戸籍者・無籍者
- 戸籍に記載されていない人のこと。未就籍者も含む。詳しくは「無戸籍者」を参照。
- 職権消除(しょっけんしょうじょ)
- 担当者が職業上の権限によって、事実でない記述を戸籍から抹消すること。
- 例えば江戸時代生まれの人物の死亡届が出されていないような場合に管轄法務局の許可を得て行なう。
[編集] ワンポイント
- 祖父母が孫を養子にした場合を除き、祖父母と孫は同じ戸籍に入れない(三代戸籍の禁止)。
- 同じ戸籍に記載されている人物の苗字はすべて同じである。
- 続柄について
- 「長男」や「二女」などの呼び方は、同一の夫婦間だけのものであり、連れ子の場合などは一つの戸籍に複数の長男がいるような場合や、二男が長男より年上であるような場合もある。
- 嫡出子は「長男」「二男」などと表記されるが、非嫡出子は「男」「女」と表記される。(住民票では「子」で統一している)
- (2004年から、非嫡出子でも希望すれば「長女」「二男」などの記載ができるようになった。)
- 命名について
- 命名に使える漢字は、常用漢字(1945字)と、人名用漢字(983字)である。ただし、字数についての制限はない。
- 同じ戸籍内にいる人物と同じ文字の名前を付けることはできないが、同じ読み方の名前を付けることはできる。例えば「昭雄(あきお)」と「昭夫(あきお)」のように同音異字の場合は可能であり、「慶次(よしつぐ)」と「慶次(けいじ)」のように異音同字の場合は不可能である。なぜなら、戸籍に読み方は記載されないからである(翻せば、読みを替えるだけなら改名の必要はないことになる)。なお、「龍」と「竜」などは新字体と旧字体は同じ字とみなされるため、「龍雄」と「竜雄」のような場合は不可能である。
- 余談だが、夫婦で名前(字)が全く同一という例は少数ながら存在する。
- 漢字表記と読み仮名は全く関連がなくてもよい(当て字が許される)。
- 直系の戸籍は無制限に取れるが、傍系の戸籍は用途の制限があるため、家系図の作成の際に問題になる場合がある。
- 同じ市区町村内で転籍することを管内転籍というが、実質的なメリットはない(そもそも本籍地に法的な意味合いがないので、転籍自体に殆どメリットがない)。
- 壬申戸籍以降の戸籍簿にも身分などの事項は記載されていたが、謄本または抄本を取ると塗りつぶされているため見ることは、通常、不可能である。
- 相続時に養子は2人までしか税金が控除されないため、養子は2人までしか取れないという俗説があるが誤りである。養子は無限に取れるため、これを利用した苗字変更による債務逃れが問題になっている。
- 親権者であることと戸籍(苗字)が同一であることは関係がない。その他、戸籍は筆頭者を筆頭にした血縁者や養子などの繋がりを示すもの以外の何物でもない。
- 制度上、氏と名の字数に関して制限ないため、最短氏と名で2字以上あれば1000字(帰化、外国人との婚姻や養子なる場合など)でも可能である。
[編集] 関連項目
- 戸籍法
- 本籍
- 国籍
- 住民票 - 住基ネット
- 結婚 - 婚姻 - 離婚 - 夫婦別姓
- 無戸籍者
- 部落問題
- 配偶者による暴力 - 児童虐待
- 性同一性障害 - 半陰陽 - 性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律
- 家制度
[編集] 参考リンク
[編集] 戸籍の基礎知識
[編集] 戸籍制度の議論
[編集] 参考文献
- 青木義人・大森政輔著『全訂戸籍法』日本評論社、1982年