噂の眞相
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噂の眞相(うわさのしんそう)は、株式会社噂の眞相が発行していた雑誌である。反権力スキャンダリズムを標榜していた。略字での表記は「噂の真相」。略称は「噂真」(うわしん)、「ウワシン」。
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[編集] 沿革
1979年3月に編集発行人岡留安則によって創刊された月刊誌。毎月10日発売。誌名は敗戦直後の暴露雑誌『眞相』(人民社)と、梶山季之の個人誌『噂』に由来する。発行は株式会社噂の眞相。部数では『文藝春秋』に次ぐ規模を誇っていた。休刊時の公称部数は20万部(実売12万部)。
もともと2000年に休刊予定だったが、名誉毀損等による裁判費用捻出や記事での反論のため延期。しかし訴訟の多くが確定したため、2004年4月号をもって休刊。なお休刊時には黒字であった。
皇室、政治経済から芸能界ゴシップ記事まで、「タブーなき雑誌」を標榜した雑誌である。古くからジャニーズ事務所のジャニー喜多川のホモセクハラ疑惑を記事化していたが、ジャニーズ事務所から「噂の真相は存在しないものとする」と黙殺されたため、抗議や訴訟沙汰は一切無かった。
検察の不正追及にも熱心で、東京地検特捜部が和久峻三の名誉棄損で岡留らを起訴したのは、時の東京高等検察庁検事長・則定衛の愛人スキャンダルを掲載して失脚させた事などに対する報復だったと言われている。
過激な記事内容も多いことから様々な団体からの反発も強く、2000年6月には、「噂の眞相」編集部を日本青年社三多摩本部隊長・副隊長が襲撃[1]。スタッフ5人が怪我するテロ事件もおきた。
[編集] 主な内容
[編集] 常時連載
- Photo Scandal モノクログラビアで、各界の有名人のスキャンダルを掲載。
- とびら 足立三愛のイラストにより、「架空の人物」の男女スキャンダルを紹介。『このイラストは実在の人物とは関係ありません。「噂の眞相」とびら絵傑作選』(ISBN 4894361485)として書籍化されている。
- 撃 コラム。
- 一行情報 未確認ネタや掲載に間に合わなかったネタを各ページ左側32文字で掲載。『噂の眞相一行情報大全集』(ISBN 4872574346)として書籍化されている。
- 荒木経惟 包茎亭日常(~2004年4月号)
- 高橋春男 絶対安全Dランキング(『噂の真相』休刊後は『WiLL』で連載継続)
- 筒井康隆
- 笑犬樓よりの眺望(1984年5月号~1993年10月号 断筆宣言により終了)
- 狂犬樓の逆襲(1998年8月号~2004年4月号)
- 宅八郎 業界恐怖新聞
- 本多勝一 蒼き冬に吼える(~1998年10月号)
- ナンシー関 顔面誌上主義(本人死去のため2002年8月号で打ち切り)
- 斎藤美奈子 性差万別(~2004年4月号)
- 佐高信 タレント文化人筆刀両断!(~2004年4月号)(『噂の真相』休刊後は『創』で連載継続)
- 中森明夫 月刊ナカモリ効果(~2004年4月号)
- 田中康夫の東京ぺログリ日記 田中康夫の日記。(『噂の真相』休刊後は『SPA!』で連載継続)
- 永江朗 メディア異人列伝(~2004年4月号)
- 大槻義彦の反オカルト養成講座(『噂の眞相』休刊後は『ダカーポ』で連載継続)
- 週刊誌記者匿名座談会 現役の週刊誌記者がマスコミの裏側を語る座談会。(『噂の真相』休刊後は『ダカーポ』で不定期に特集)
- 七人のバカ 各界の著名人(主に保守系文化人)の発言や執筆文を毎月7名ずつ取り上げ、痛烈に批判するコーナー。
- 読者の場 読者のための投稿ページ(記事で取り上げられた人物が『反論』の投書を送ってくる事もあった)。各連載の執筆者への批判意見は原則として掲載しないという『不文律』があった。
- 編集長日誌 編集長岡留安則による編集後記
[編集] 来歴
1980年6月号で皇室ポルノ記事を掲載し、右翼団体は「噂の眞相」へは直接の抗議を行なわず、印刷会社と広告主へ猛烈な抗議活動をした(菊タブー)。印刷会社から印刷を断られた「噂の眞相」は、廃刊の危機を迎える。結局編集長が謝罪文を書くことで決着。株式を公開していないサントリーを除いて、大口の広告出稿はなくなり、これを機に広告収入に頼らず実売収入に頼る営業方針が確立。また、圧力を防ぐ為、印刷会社は休刊まで明らかにされなかった。
1984年12月8日発売の1985年1月号で、グリコ森永事件におけるハウス食品事件での11月14日の犯人逮捕失敗を報道。この件は警察とマスコミの間で結んだ報道協定により24日の間報道されておらず、噂の真相の報道が協定を解除させるきっかけとなった。警察庁は噂の真相発売の4日前から何回も掲載を取りやめるよう、編集長に申し入れを行なったが、聞き入れられなかった。発売同日、警察は噂の真相社を家宅捜索。さらに17日には岡留編集長宅の捜索も行なった。容疑は、東郷健が編集長を務め、噂の真相社が発売元となっていた同性愛雑誌「ザ・ゲイ」の猥褻図画販売目的所持であった。「噂の眞相」側は、報道協定破りに対する警察側の報復だと見做している。2006年現在「ザ・ゲイ」の編集・発行は東郷が代表を務める市民団体「雑民の会」となっている。
1993年10月号で筒井康隆が『日本てんかん協会』から、角川書店発行の高校国語の教科書に掲載された短編小説『無人警察』での『てんかん』の描写が差別的であるため、同作品を削除するか他の作品に差し替えるよう抗議された事により、連載『笑犬樓よりの眺望』で『断筆宣言』を発表し、同連載をはじめ、全ての執筆活動を停止した。しかし、1996年末、筒井康隆は『噂の眞相』等幾つかの出版社と弁護士立会いのもと、『自主規制撤廃に関する覚書』を取り交わして執筆活動を再開。連載のタイトルを『狂犬樓の逆襲』と改題の上、1998年8月号より連載を再開した。
1994年、『断筆宣言』を発表して終了した筒井康隆の連載『笑犬樓よりの眺望』に代わリ、田中康夫の連載『東京ペログリ日記』を開始したところ、以前より宅八郎が田中康夫を批判していた連載『業界恐怖新聞』が一時休載することになった(宅八郎の弁によれば「自分が攻撃/批判している人物との同一媒体への寄稿を控えたいという意志を通せなくなるために編集部との話し合いがこじれて休載になった」という)。宅八郎と田中康夫が揉めたため、両者の間で板ばさみ状態になった編集長・岡留安則は、心労で胃潰瘍を患い、胃に穴が開いたという。その後安部譲二の仲裁により一度は和解したものの、当て逃げ逮捕事件を理由に宅八郎の連載を打ち切った。ただし、後に宅八郎が『SPA!』での連載を休載に追い込まれた際は、宅八郎の反論原稿を掲載している。
1994年1月号で和久峻三のスキャンダルを掲載、これに対して和久は東京地検特捜部に名誉棄損で刑事告訴。編集長と担当デスクが在宅起訴される。両名は無罪を主張するも、東京地裁は編集長を懲役8月、執行猶予2年。デスクを懲役6月、執行猶予2年とする判決を下す。東京高裁、最高裁へ審理が進むも2005年3月7日、最高裁は上告を棄却する決定を出し、判決が確定する。
1998年当時、同誌でコラムを連載していた本多勝一は、岩瀬達哉が報じたリクルート接待疑惑をめぐって、半年近くに渡って岩瀬や同誌を批判するコラムを書き続けていた。 この本多のコラムに業を煮やした編集部側は、同年10月号で、〔『新聞が面白くない理由』が告発した朝日幹部リクルート接待旅行の真相を徹底究明し、本誌が断裁す〕という記事を掲載し、同時に本多のコラムを打ち切った。
1999年5月号で則定衛東京高等検察庁検事長(当時)の愛人スキャンダルを掲載。朝日新聞が後追い記事を一面トップで掲載した結果、辞職に追い込まれる。
2000年6月号で森喜朗の大学時代の売春防止法違反での検挙歴を掲載。森喜朗は名誉毀損で民事訴訟で提訴するも、東京地裁は噂の真相側の申し立てに基づき、警視庁へ検挙歴の照会を依頼、しかし警視庁は拒否した。結局2001年、賠償金なしの和解で決着。
2004年4月号の「25周年記念号」を以って休刊。但し、休刊後に最後の別冊『追悼・噂の眞相』も発売されている。休刊後も、公式ホームページは閉鎖されずに残されている。
[編集] 関連書籍
- 岡留安則『武器としてのスキャンダル』(パシフィカ, 1982年 ISBN 4827511497; 筑摩書房 ちくま文庫, 2004年 ISBN 4480039422)
- 岡留安則『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書, 2005年 ISBN 4087202755)
- 岡留安則『「噂の真相」イズム 反権力スキャンダリズムの思想と行動』(WAVE出版, 2005年 ISBN 4872902254)
- 岡留安則『編集長を出せ!「噂の真相」クレーム対応の舞台裏』(ソフトバンククリエイティブ,2006年 ISBN 4797333421)
- 岡留安則『「噂の真相」編集長日誌』(木馬書館, 1984年 ISBN 4943931103; 社会思想社 現代教養文庫, 2000年 ISBN 4390116339)
- 岡留安則『タブーなき闘い—続「噂の真相」編集長日誌』(木馬書館, 1989年 ISBN 4943931189; 社会思想社 現代教養文庫, 2000年 ISBN 4390116347)
- 岡留安則『噂の真相—編集長日誌〈3〉』(木馬書館, 1994年 ISBN 4943931375; 社会思想社 現代教養文庫, 2001年 ISBN 4390116401)
- 岡留安則『「噂の真相」編集長日誌〈4〉』(木馬書館, 1999年 ISBN 4943931537)
- 岡留安則・佐高信『100人のバカ』(七つ森書館, 2007年 ISBN 4-8228-0740-1 連載『七人のバカ』の単行本化)
- 西岡研介『スキャンダルを追え!「噂の真相」トップ屋稼業』(講談社, 2001年 ISBN 4062108615)
- 神林広恵『噂の女』(幻冬舎,2005年 ISBN 4344010469)
- 歪・鵠『「非国民」手帳 「噂の真相」匿名コラム「撃」』(情報センター出版局, 2004年 ISBN 4795841829)
- 筒井康隆『笑犬樓よりの眺望』(新潮社,1994年 ISBN 4103145226; 新潮文庫,1996年 ISBN 410117136X 解説・岡留安則)
- 筒井康隆『笑犬樓の逆襲』(新潮社, 2004年 ISBN 4103145277 単行本化に際し『狂犬樓の逆襲』を改題。『噂の眞相』連載分以外に、他誌で発表したエッセイも収録)
- 田中康夫『東京ペログリ日記』(幻冬舎, 1995年 ISBN 4877280888 )
- 大槻義彦『大槻教授の反オカルト講座』(ビレッジセンター出版局, 2004年 ISBN 4894361477 解説・岡留安則)
- 永江朗『メディア異人列伝』(晶文社、2005年 ISBN 4794966415)
[編集] 注記・参考資料
- ^ 岡留安則「言論弾圧には断固屈しない!!」内外タイムス 2000年6月23日