夢見るシャンソン人形
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夢見るシャンソン人形(ゆめみるシャンソンにんぎょう、フランス語原題:Poupée de cire, poupée de son)は、セルジュ・ゲンスブールが作詞作曲したフランスのポピュラー音楽。フランス・ギャルが歌唱、1965年の第10回ユーロビジョン・ソング・コンテストで優勝したのを切っ掛けに大ヒットし、ヨーロッパだけでなく日本でも人気を博した。ギャルは岩谷時子の訳による日本語の歌詞で、またドイツ語やイタリア語の歌詞でも唄っている。そのほかにも数多くの言語によるカバーが存在する。
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[編集] タイトルの皮肉
この歌のタイトルは「蝋と音の人形」と訳されることが多いが、フランス語では、de の後ろに広義の物質名詞が冠詞なしで続く場合、de の前の名詞を構成する「素材・材料」の意味となるのが普通である。前半の「 poupée de cire 」は、まさに「蝋を材料とする人形」の意味であるが、後半の「 poupée de son 」は、「音を材料とする人形=音の人形」という意味には通常ならない。「音の人形」という風に理解できる為には、son に冠詞、通常、定冠詞が付いている必要があり、「 poupée du son 」でなければならない。
ところが、この歌の題の場合は、冠詞なしの「son」であり、この場合は、son は「音」ではなく、「ふすま(小麦から出来るヌカ)」の意味である。つまり、後半の「 poupée de son 」は「ふすまの人形」で、タイトル全体は、直訳すると「蝋の人形、ヌカの人形」の意味となる。ゲンスブールが「音」と「ヌカ(ふすま)」がフランス語では同じ son であることより、同音異義語の音韻を引掛けて、揶揄、皮肉めいた内容の詩作を行ったものであることが歌詩の内容(恋愛も知らないアイドル歌手が恋愛の歌を唄う)からも判断できる。
[編集] ゲンスブールの歌詞とギャル
この歌のタイトルはもっと詳しく考えると、更に皮肉や嫌味が入っているとしか思えず、それは悪意の領域にまで踏み込んでいる。1966年にギャルは、同じくゲンスブールの制作した『 Les sucettes 』という歌を唄いヒットするが、sucette(スュセット)は、ロリポップ・キャンディ(子供などが嘗める棒状の飴)という意味の他に、フェラティオの意味が隠語としてあり、当事、若年のアイドルであったギャルは、このような二重の意味に気付かず、無邪気にロリポップを嘗める映像などで登場していた。
後年、ギャルはヒット時点では、「蝋人形、ヌカ人形」の歌詞やタイトルに込められていた二重の意味に気付かなかったと述べ、本作より距離を置き、もはや言及しなくなったとされる。
[編集] 主なカバー
[編集] 他国語での表記
- Io Sì, Tu No (イタリア語、「私はイエス、あなたはノー」)
- Lonely Singing Doll (英語)
- Boneca de Cera, Boneca de Som (ポルトガル語、「蝋人形、音の人形」)
[編集] 日本以外のアーティスト
- スール・プリュ!
- トゥインクル
- Die Aeronauten
[編集] 日本のアーティスト
- 中尾ミエ
- 弘田三枝子
- 小林麻美
- ジューシィ・フルーツ
- チョコレート・ファッション(高嶋ちさ子)
- 細川ふみえ(日本語詩:サエキけんぞう)
- ブリッジ
- 松本英子
- Les MAUVAIS GARCONNES(レ・モーヴェ・ギャルソンヌ)
- Licca(酒井彩名、あびる優、木南晴夏)
- dolls
- マイメロディ(声優:佐久間レイ)
- ゴーグルエース
- ムーンライダース&島谷ひとみ(2004年、NHKの音楽番組「夢・音楽館」で唄われた)
- 石川梨華(2006年6月18日放送された、フジテレビの音楽番組「堂本兄弟」で唄われた)
- 明和電機(2003年のパリ公演で演奏された。歌詞の部分を人工声帯ロボットが唄っている)
[編集] その他
- 野本かりあの「ショコラに夢中」(テレビアニメ「シュガシュガルーン」オープニングテーマ)のモチーフ元である。
- 日本に於けるカバーでは、バンド演奏用に原曲を再現し編曲すると中尾ミエの音源に近い(このときの演奏はジャッキー吉川とブルー・コメッツ)。日本語詩の内容は細川ふみえの音源が原曲に近い(このときの日本語詩はサエキけんぞう)。
- 最も有名な訳詩は岩谷時子のもの。フランス・ギャルの日本盤CDに鳥取絹子による対訳詩が収載されており、原作の内容が辛辣であることが判る。岩谷時子の訳詩制作方針はこちらを参照のこと。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 原歌詞 [フランス語・英語]