廃墟
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廃墟(はいきょ、廃虚は代用表記、英語:Ruins、ドイツ語:Ruine)とは、建物や施設、鉄道、集落などが使われないまま放置され、荒れ果てた状態になっているものを指す。
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[編集] 概要
建物、施設などが使われなくなったとしても、他用途に転用され、適切な維持管理が続けられていたり、あるいは全くの更地になっていれば、廃墟とはいえない。跡地利用も難しく、管理を続けるのも困難な場合には、建物、施設などが放置に任され、歳月とともに朽ちて崩壊し、あるいは草木に覆われて廃墟化の過程が進行する。その様子は在りし日の様子を懐かしむ人などにとって、時間の経過をリアルに感じさせるものであり、特別な寂寥と愛着を感じさせる。
建設を発注した企業が倒産した、あるいは公共事業の一環として建設されたがその公共事業が中止になったなどの理由で、建設中の状態のまま放棄され、全く使われてない建築物もある。これらも廃墟に含まれる。
ナチスの強制収容所跡や広島の原爆ドーム、ハワイの真珠湾のアリゾナ (戦艦)などある時代の悲惨な状況を後世に伝えるため、破壊あるいは放棄され廃墟同然となった状態で意図的に当時のまま保存している例もある。
[編集] ロマン主義的廃墟趣味
かつて19世紀後半、イギリスやドイツのロマン主義でも、こうした廃墟、特に古代ギリシア、ローマのそれに関心が集まり、競ってその方面に出かける文人やそうした古代遺跡を版画や絵画に描いたり、あるいは君主の中には領地の中に故意に人工の古代の廃墟を配した庭園を作らせたものもいた。(特に古代ローマ時代の様式が好まれた) こうした廃墟を好んで作品のモチーフとした画家に、ドイツのカスパー・ダーヴィド・フリードリヒらがいる。また、 アドルフ・ヒトラーも廃墟絵画を好み、また自ら計画した建築物や都市も前提として立派な廃墟となることが条件であったという。彼の計画した都市は奇しくも敗戦ともに廃墟になったことになる。
[編集] 日本の廃墟ブーム
以前から鉄道ファンの一部に廃線跡をたどる者(廃線マニア)はいたが、近年では、廃墟となった施設、学校、鉱山などの跡を訪ねて回る廃墟マニアが増えてきており、『廃墟の歩き方』(2002年)といったマニュアル本やWebサイト、DVD-Video、さらには廃墟を舞台としたアダルトビデオなども、人気を得ている。廃墟マニアは、
- 廃墟化した建物が持つ特有の雰囲気に魅力を感じる者
- 廃墟となった施設が使われていた頃の様子を想像し、愛着を感じる者
- 探検感覚で廃墟を探索する者
- 旧式のドアの取っ手や、水道の蛇口、照明器具などの収集の目的を持っている者
などに大まかに分類される。
- 廃線マニアの本としては、堀淳一『消えた鉄道 レール跡の詩』1983年あたりがはしりであろう。廃墟ブームのはしりとしては、宮本隆司『建築の黙示録』1988年、久住昌之、滝本淳助『東京トワイライトゾーン タモリ倶楽部』1989年、丸田祥三『棄景 廃墟への旅』1993年などが考えられる。廃墟ブームを生む下地として、赤瀬川原平らによる超芸術トマソンから路上観察学への活動も存在した。 (久住、滝本は赤瀬川の流れを汲む)
現在の日本では、廃墟が感傷の対象や芸術の題材としてより、恐怖スポット(心霊スポット)として若者などの間で話題になることがある。実際には特に忌まわしい事件が起こっておらず、全く根拠がない都市伝説である場合が多い。日本の場合、特に都市部では新陳代謝が激しく、廃墟が廃墟として長時間そのまま残されることはあまりない。都市開発の計画が頓挫した場所などが廃墟状態になることもある。
[編集] 廃墟ブームの問題点
ロマン主義におけるように創造の契機となる高尚な廃墟趣味も存在しうるし、敷地外の一般公道などから廃墟の外観を眺めるだけであれば違法行為に当たらないが、近年の興味本位な廃墟マニアの中には、単なる好奇心から法を犯したり、危険な行為、迷惑行為をして世の顰蹙を買い、問題となることもしばしばある。
- 廃墟とはいえ土地・建物には所有者がおり、無断で廃墟の敷地内に立ち入った場合、不法侵入であり、刑事罰の対象にもなる。
- 廃墟の内部に残っている備品を勝手に持ち去った場合は窃盗となる。(差し押さえられている物件の場合、パンフレットなど通常は自由に持ち帰ることができる物を持ち出した場合も窃盗にあたることに留意する必要がある。)
- 廃墟では地盤や建物が、一見そうは見えなくても崩壊するおそれがあって危険な状態の場所もある。
- 不潔な状態になっている場合もあり、古釘を踏み抜いたり、転倒などでケガを負った場合、破傷風などの病気にかかるおそれもある。
- 虫、動物などがいたり、他の不法侵入者(ホームレス、暴走族、サバイバルゲームプレイヤー、いかがわしい行為に及ぶカップルなど)がいる場合があり、事件事故等に巻き込まれるケースもある。
[編集] 廃墟の例
- 廃校
- 鉄道の廃線・もしくは建設中に放棄された未成線
- 廃道
- 廃鉱およびその周りの鉱山住宅跡(例:軍艦島) - 近年では鉱害問題や美観等から完全に撤去され、覆土工事や植樹工事によって痕跡すら無くなる事が多い。また、坑口は閉山後はコンクリートや石等で封鎖する事が義務付けられている。
- 廃工場(ソビエト映画『ストーカー』では廃工場が舞台に設定された)
- 廃病院(使用済みの注射器などが放置されている場合もあり、特に危険である)
- 廃業した遊園地・ホテルその他レジャー施設・リゾート施設(例:横濱競馬場、五色園 - 愛知県日進市、お寺が管理する宗教公園。管理放棄の状態にあるが、4月のみ桜の名所に戻るため有料。)
- 建設中に放棄されたリゾート施設(廃墟としてはマニアの垂涎の場所である)
- 旧日本軍の軍事施設・地下壕(例:山口県周南市大津島にある人間魚雷回天の発射練習基地)
- 米軍の軍事施設跡、または居住施設跡。1950年代オールデイズの雰囲気が漂う場所も多い。但し立ち入った場合、国内法が適用されないので最悪の場合射殺されたり、非常に重い刑罰が科せられる可能性あり。
- 移転後の国立大学や国立の研究所の建物(旧国立公衆衛生院、広島大学旧校舎など)
[編集] 廃墟が登場する映画作品
- ソビエト映画アンドレイ・タルコフスキー監督『ストーカー』『ノスタルジア』
- 宮崎駿監督『千と千尋の神隠し』
- 大友克洋原作『AKIRA』
- 深作欣二監督『バトル・ロワイヤル』
- 黒沢清監督『CURE』
- 漫画『ゲットバッカーズ』
- 行定勲監督『世界の中心で、愛をさけぶ』
[編集] 廃墟が登場する映像作品
- NHKドラマDモード『深く潜れ~八犬伝2001~』(軍艦島が舞台)
[編集] その他
- 老朽化した集合住宅(同潤会アパート、香港の九龍城砦など)で、建物の破損が進行し、空き部屋が多くなっているような場合に廃墟と表現される場合もあるが、本来の住民が居住している場合、放置されている訳ではないので、廃墟と呼ぶのは適切ではない。また住民の立場から見れば、自分たちが住んでいる場所が廃墟ということはありえないし、そのように見なされることに不快感を感じる。
- 原爆ドームは原子爆弾で崩壊した状態であるが、史跡(世界遺産)として保存され、倒壊しないよう補強などの措置が取られている。なお、同所への外部者の立ち入りは制限されている。
- 作られた当時最新の設備を誇った炭鉱集合住宅などを史跡として保存することを求める運動があるが、一般に公開する場合は、保守や安全対策(万が一来園者に事故が起きた場合の管理者としての法的責任の問題)など建物を改めて建築するほどの予算が掛かることになり実現は難しい状況にある。
[編集] 関連項目
- 犬島精錬所跡
- お化けマンション
- バベルの塔
- 軍艦島(端島)
- 松尾鉱山
- 宮本隆司
- 丸田祥三
- 遺跡
- ゴーストタウン
- 恐怖スポット
- カッパピア
- プローラ
- 杉沢村伝説(都市伝説)
- 厚木恵心病院
- 摩耶観光ホテル(神戸市灘区)
- ヴィッラ・アドリアーナ (ティヴォリ)
[編集] 外部リンク
- 廃墟Explorer
- 廃墟HAZARDと言うセクションに、廃墟を訪れる際の危険について解説されている
- 廃墟伝説
- 北海道美唄市我路の廃墟、廃屋
- 廃墟デフレスパイラル 廃墟を美の対象として捉え、写真公開を目的にするサイト
- 小学館、めくるたび特設サイト小学館による、丸田祥三の廃墟写真の特設サイト
- 東海廃墟・心霊情報局 ちりちり 東海地方を中心にした廃墟の写真レポを行っているサイト
- 廃墟ちゃんねる